日光を浴び続けると、なぜぐったりとした疲労感を感じるのか

ハンク・グリーン氏:ビーチで一日を過ごした後は、けだるく感じますよね。数時間日光浴を続けてから、「運動もしていないのに、なんでこんなにぐったりするんだろう?」と思ったことはありませんか? 日光を浴び続けると、なぜ疲労を感じるのでしょうか。

実は日光を浴びた人体は、高温、脱水、紫外線などのダメージから身を守り、長時間活動するため、日光を浴びる前に比べて疲労するのです。

深部体温を一定に保つ仕組みを「体温調節」といいます。この体温調節は、実は人体に大きな負荷をかけます。人体は体温を巧みに一定の温度に保つために、活発に活動します。正常範囲内であれば、その負荷は「ちょっとうたた寝をしたくなる程度」に収まります。

ところが、危険なレベルにまで体温が上昇すると、熱中病(heat exhaustion)となり、心拍の上昇、異常な発汗、吐き気などが生じます。

体温が40℃を超えてしまうと、重度の熱中症、つまり「heat stroke」となり、意識を失ったり反応がおかしくなったり(例:声をかけても反応しない、おかしな返答をする、ガクガクとひきつけを起こす、まっすぐ歩けないなど)して、最悪の場合は死に至ります。

日光を浴び続けることで人体が受けるダメージ

太陽の下で長時間過ごして体温が上昇すると、人体は発汗し体温を下げます。これはたいへん巧妙な仕組みです。

ところが発汗すると代謝が上昇し、体内の水分が表皮へ運ばれて体外へ放出されるため、脱水症を起こすことがあります。水分の補給をすれば脱水は治まりますが、発汗が危険なレベルに至ってしまうと、深刻な状態に陥ります。

まず、体内の水分が減少すると、わずかですが血液量も減少します。すると心臓は心拍を上げて、これを補おうとします。つまり、高い気温の下では心臓と肺に負荷がかかります。日光を浴び続けることで人体にかかる負荷は、温度調節と脱水だけではありません。紫外線によるダメージにも対処しなくてはなりません。

日光にはさまざまな波長の紫外線が含まれるため、人体の細胞に変異を起こしたり、抗体反応を抑制したりなどの悪影響を及ぼします。紫外線が照射されると、表皮細胞のDNAが切断され、「塩基置換」が発生します。

DNAを構成する塩基の1つである、チミンのシトシン(RNAおよびDNAの必須構成要素)が置き換えられ、俗に言う「フィンガープリント(個体ごとのDNA断片のユニークなパターン)変異」を引き起こします。皮膚がんの原因は、半分以上がこうしたDNA変異だと言われています。

とはいえ、ビーチで一日過ごした程度では、こうしたダメージは心配ありません。しかし無防備に繰り返し日光を浴び続けると、皮膚がんの原因となる危険性があります。

日焼け跡がかゆくなるのは、免疫細胞が活動している証拠

人体は、こうしたダメージを受けてしまった細胞を処分する必要があります。免疫システムの活動により、表皮の血流が増加して白血球が運び込まれ、この白血球がダメージを受けた皮膚細胞を処分します。日焼けをすると、表皮が赤くなって触れるとヒリヒリするのは、これが原因です。日焼けしてむずがゆいのは、こうした免疫細胞が活動している証拠です。

また、温まった血液を体内深部から流動させることにより、深部温度を低下させることもできます。つまり、紫外線ダメージの修復と同時に体温調節もできるのです。

こうして免疫細胞が活発に活動するので、疲労感を覚えるのです。脱水や、日光の高温に晒されて受けたダメージの修復を効率的にする休息が必要となるためです。

こんなにも忙しい活動だとわかると、日光浴の後にけだるく感じるのは、もっともだと思えますね。良いニュースは、涼しい日陰に移動して失われた水分を補給すれば、重症でない限りこうしたダメージからは簡単に回復できることです。