気軽に“クール”を着脱する、若い世代

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):そうですよね。このテーマは山下さんにも投げかけたいんですが。この前、違う会合でお話しをしていてちょっと思ったことで、物を買う時の感覚として「格好いい」とか「クール」ってすごく重要な感覚だと思うんですよ。

「格好いいから買う」とか「クールだと思う」という感覚的なもので、私は「クールだなと思うものの概念自体」が変わってきているんじゃないかな? と思っていて。

いわゆる「見た目が格好いい」とかだけじゃなくて、その背景にあるものも含んだ「多面的な格好いい」みたいな。そういいたクールという概念が、若い方を中心にすごく広がっているんじゃないかなと思っていて。チョコレートブランドとしてのミニマルは、私はすごいクールだって多面的に感じていて。それはデザインだけじゃないと思うんですよ。

そのへんの考え方・こだわりが、たぶんおありになるかなと思っていて。お聞きしたいなと思っていました。

山下貴嗣氏(以下、山下):すごく同感で。当然、Z世代というんですかね。若いお客さんも、うちはチョコレート店なのですごく多いんですけど。彼ら彼女らがたぶん気にすることって、例えばチョコレートの世界でいうと、オーセンティックなキラキラ宝石みたいな、高級ショコラみたいなのも当然好きなんですけど。

うちってどっちかというと、それに比べたらすごくシンプルでミニマルな、チョコレート屋らしくないデザインなんですけど。やはりそっちのほうが、若い子たちはすごく受け入れやすい。

その裏にある、僕らのような「フェアトレードで買っています」とか「こういうことにこだわってやっています」みたいなのがわかると、よりそこを深く愛してくれるというのはあるなと。

一方でさきほどの、クールという感覚ってすごく大事だと思うんですけど。そういう意味でいうと、坊垣さんが今おっしゃったクールの意味が、僕らの世代より下の子たちって、ちょっと変わってきている感じがしていると思います。

坊垣:そうですよね。

山下:もう1個、最近思うのは、結構気軽にその“クール”を着脱するんですよね。

坊垣:ああ。

山下:例えば僕らって「これ、クールだよね」って1回言っちゃったら、結構それにこだわって。

坊垣:はいはい。

山下:「言っちゃったし」と思って、そこをずっと変えないみたいなことが1つあるんですけど。若い子の世代って、もっと気軽なんですよね。なので、SDGsとかサステナブルというのを「クールだよね」と彼らは言うんだけど、それを重く・義務とは捉えていないんですよね。

「これ、格好いいよね。でも次はこっちだよね」みたいな感じで、クールを簡単に着脱できるというか。それはすごく「責任感がない」ということもあるのかもしれないですけど、僕はすごく自由な感覚だなって。

なので、シンプルに自分のクールをどんどんシェアするし、シェアされたものをどんどん受け入れるし。という「奥深さみたいなものをクールだと感じる。でも、クールの着脱にそんなにこだわらない」みたいな、この2つがあるなとすごく思います。

「しなきゃいけない」「こうあらねばならない」という感覚の少なさ

坊垣:なるほど。さっきの祐子さんの「べき」という話。しなきゃいけないとか、こうあらねばならないみたいな「べき」という感覚が少ないのかもしれないですね。今の子たちが。

黒沢祐子氏(以下、黒沢):そうですね。教育なのかな、親なのかな?

坊垣:これ、なんなんですかね。

黒沢:(Z世代よりも上の世代が持っている)刷り込み? 「上の人は偉い」みたいな。

坊垣:はいはい、わかります。

黒沢:「逆らえない」みたいな。

山﨑元氏(以下、山﨑):体育会的なね。

坊垣:「お金持ちは素晴らしい」みたいなね。

黒沢:そうだよね。

坊垣:そうそうそう。固定概念が。

黒沢:でも、なんか「そんなの関係ない!」じゃないけど。本当に自分がどう思うか。どう感じているかで、本当に(Z世代は)チョイスしていっているのかなというのは思うから。

坊垣:そうですよね。

黒沢:そこは確かに。

坊垣:柔軟にね。ある意味。

黒沢:乗り換えていくというか、波乗りしていける感じ。

「なんでもいい。流行っていれば買う」ではない女性たち

坊垣:確かに確かに。併せてサステナブルとか、それこそ体に入るものや肌に付けるものとかに対する興味・関心からなのか、女性のほうがオーガニックとかも含めて、変化に柔軟だったりキャッチアップが早いんじゃないかな? と、ちょっと思っていて。

黒沢:確かに。

坊垣:女性の変化はすごく感じるんですよ、私の周りも私も含めて。やはり「どんなものを消費の対象にしたいか?」というこだわりが、いい意味である人が増えている。「なんでもいい。流行っていれば買う」じゃなくて、というのをすごい感じていて。

祐子さんのフォロワーのみなさんの感覚の変化だったり、お客さまの変化みたいなの、何かありますか?

黒沢:そうですね。でも私のフォロワーさんって、わりと最初からあまり変わらないんですよね。

坊垣:なるほど。

黒沢:私自身、本当に「流行りの人になりたくない」という(笑)。

坊垣:わかります。

黒沢:そういう思いが昔からあって。だからそういうこと(流行りを追うこと)は自分もしたくないし、結構自分の中のしっかり信念があって、棲み分けをしているので。けっこうその部分が強い方がファンにいらっしゃるんですけど。

それこそ本当に10代の子も見てくれてる一方で、70代のフォロワーさんもいるし。「うちの孫が」みたいなメッセージくださったりとか。そういう意味では、あまり私は変化を自分のフォロワーさんには感じていないんですけど。そういう(変わらない)部分が好きな人が、もともとファンで。

坊垣:そういうことですよね。

黒沢:ずっと付いてきてくださっているのかな?

坊垣:もともと祐子さんがすごく自然体で、リアルを重要視されているから。それに呼応してくださっているみなさんだから、そういう意味で、祐子さんと同じように自然体の方が多いのかもしれないですよね。もしかしたらね。

黒沢:そうですね。ちゃんと「自分」「芯」を持っている方が多いのかな? と感じてます。

アパレルショップが「ビデオ通話で1対1の接客をする」時代

坊垣:そういう意味ではオンラインツールって、本来は顔を合わせないので距離感が遠いはずなんですけど、ちゃんとコミュニケーションが取れるツールでもあるので。たぶん企業とお客さまとか、個人同士もそうなんですけど、実はすごく精神的には近いというか、近い距離感でコミュニケーション取れる部分もあるかなと思っていて。

コミュニケーションの取り方って、すごく重要だなと思っていたりするんですが。この変化の時代に合わせて、ビームスさんが企業としてコミュニケーションの仕方を変えたとか、お客さまとの接し方でこういうことを工夫しているとか、そういうことってあります?

山﨑:やはりデジタルツールを使った接客は、いろいろやっていますね。チャットは当然なんですけれども、あとはオンラインで予約をして、いわゆるビデオ通話で1対1の接客をする。そうするとすごくいいのが、ワードローブの中を見せていただけるんですね。

坊垣:ああ、そっか! おもしろい!

山﨑:お客さまも「これとこれに合わせる何かが欲しいんだけど」みたいなことを、自分の手持ちの服を見せながら言えるので、すごく便利という声があったり。

坊垣:なるほど。

山﨑:いわゆるライブコマースって、ちょっとまだ発展途上なんですけど。今後は2,000人のスタッフがいつでもどこでもライブコマースが始められるような状態で、1対1,000とか、1対1万とかじゃなくて、1対1とか1対5とかのライブコマースみたいなものは広げていきたい。

このお店の「仲いいお客さんだけ対象のライブコマース」とか「いい新作入った」みたいな。そういうこととかできたらいいなと思っていますね。

デジタルとリアルがシームレスになっていく感覚

坊垣:なるほど。山下さんは何かデジタルツールの活用とか含めてありますか? 行列ができているそのお客さんってどこから来ているのかな? というのがすごい気になって。

山下:僕らは、去年は店舗を閉じているんですよね。銀座のお店を閉じたんですけど、実は富ヶ谷と上原のもともとあった店には、すごくお客さんが戻ってきているんですよ。

それって何かというと、コロナ禍を機にデジタル上でのシフトをして、けっこうがんばって発信をしたことによって、そのデジタルで知ってくれた人たちが、デジタルでも買うし、そのあと「お店にも行ってみよう」と言ってお店に戻ってくる。

逆に言えば、お店に来てくれた人が「実はデジタルでも買えるんだ」というふうに、デジタルとリアルがシームレスになっていくという感覚を、この1年すごく感じていて。それができると、たぶんその店舗の場って今までは「買う人」「売る人」みたいな境界線があったんですけど。これがもうちょっとだけ「僕たちの世界観をリアルに一緒に体験する場所」みたいなところに、店舗の位置付けがデジタルによって変わったりとか。

逆に店舗で伝えたことをちゃんと補完するために、デジタル上のコンテンツが変わったりとか。たぶんこの相互のシームレスのものがすごくうまくいくと、お客さんがデジタルとリアルを通してのコミュニティみたいなものに入ってきてくれる、という感覚がこの1年はありますね。

「身長何センチの人が何サイズ着ている」というアナログな発信の価値

坊垣:そうですよね。だからコロナの影響でリアルな場所は、なかなか既存の使い方だけだと厳しい状況が生まれている中で、たぶん新しい使われ方。「本質的な価値が何か?」ということが、すごく重要になっているんだろうなと思っていて。

それこそデジタルとリアルの境界線をなくしている原因になっていると思うんですけど、お洋服だったら例えばオンラインでも当然買えるけど、やはり試着してみることはできない。今はデジタルツールでも「前買ったお洋服と同じサイズです」とか出てくるじゃないですか。

でもやはり買ってみたら「袖がなんか違うな」みたいなのとか、似合う似合わないとか。直近も祐子さんがお洋服を受注販売された時に、やはり展示会をやられて。

黒沢:そうですね。この時期なので非常に迷いもあったんですけど、もちろんきちんと人数制限してというところも含めて、やはり触れてほしい。私も洋服が大好きだし、坊ちゃんみたいにオンラインで買うこともあるんだけど、失敗もたくさんするし。「これ返品できないんだ」とか。

坊垣:そうですよね。

黒沢:そう。だからリアルに触っていただくということが大事なのと、もう1つ。オンラインで自分でマネキンになって、いろいろコーディネートの組み合わせとか角度とか(笑)。

坊垣:そうですよね。

黒沢:それで「サイズ感わかりました」とか。あと、みんなの写真を撮らせてもらって、身長別にこう……。

坊垣:めちゃくちゃ細かく発信されてて。

黒沢:「何センチの人が着ているのが何サイズ」というのを全員並べたり。

坊垣:「坊ちゃん、何センチだっけ?」って(笑)。

黒沢:そうそう。それをとにかくひたすら発信して。みなさん、それを参考に購入するというジャッジになったのは、結構アナログですけど。でもそういうことなのかなって。

坊垣:私もおもしろかったなと思ってて。祐子さんの展示会にお友だちも含めてたくさんいらしているけど、限られた方で。その方々が当然いろんな体型でいろんな好みでいらっしゃるから、その人たちがさらにそれを発信することで、もしくはその人たちの着ている様子を祐子さんが発信することで、一般の方からすると「私、この人に近いからこれがいいかも」とか。

黒沢:そうですね。モデルさんが着ているとすごく素敵に見えるじゃないですか。でも結局、着るのって一般人じゃないですか。

坊垣:そうです。そうです。

黒沢:だから私も今回、自分が全部モデルになってやったのは、自分が本当にリアルな体型だし、わかりやすいし。

坊垣:めっちゃスタイルいいんですけどね。祐子さんは。

黒沢:いえいえ、そんなことは。もちろんそこ(プロのモデル)にお金をかけたくないというのもあって、だったらそれの分、みなさんに還元したいというのもあったんだけど。やはりリアルの人が着ているとよりわかりやすいのかな、とは思いますよね。

坊垣:そうですよね。

黒沢:消費者として。

ブランドが“より自分のものになっていく”プロセス

坊垣:あとは、食べ物だとやはり食べてみないとわからないじゃないですか。そういう意味での、当然ながら店舗の良さだったりもありながら。でもやはり一度食べていただければ、オンラインで買えたほうが楽だしみたいな。やはりそこをうまく使い分けていく必要性ありますよね。

山下:あると思います。やはりお客さんはリアルを求めていらっしゃると思うんですよね。特にコロナって、お客さんはみなさん来ておっしゃるんですけど「本当にやっと来れました」とか。

うちのスタッフとあまり会話できないんですけど「ちょっと(話を)して帰るだけで、すごく救われます」みたいな話がけっこうコロナが出た時にあったりして。なので、デジタルとリアルで共通モードとしては、たぶん、より「個人的なつながり」というか。

坊垣:はいはい。そうですね。

山下:さっきの祐子さんのお話しも「体型が自分に近いから似合うかもしれない」ということ。「これってどうですかね?」ということをやり取りすることで、ブランドがより自分のものになっていくというプロセスを、たぶんデジタルでもリアルでも両方やっていく。それはやはり、リアルのほうが力としては大きいというのがあるんじゃないかな、と思います。

坊垣:そうですよね。私が今日もお話しを聞いていて思うのが、みなさんがリアルに発信をされているなと思うし、それぞれがやはり大事に思っていることを、しっかりブランドに反映されたり、日々の行動に反映されているんじゃないかなと思っていて。

それが(世間に)求めてられていると思ったりするんですよね。明確なスタンスの提示というか。それが世の中に迎合して「こうしたほうがいいんじゃないか?」みたいなことだと、バレてしまう。それ自体(迎合)が伝わってしまうみたいな世の中になってきていて。

「ちょっと尖っていても、その人らしさが見える」みたいなことのほうが、すごく共感を得られる時代になってきているのかなというのを、あらためて感じさせていただきました。

Makuakeで得られたデータの利用法

坊垣:では最後に、何か1つだけ質問にお答えして終わりたいなと思います。「Makuakeを活用することで得られたデータがたくさんあると思いますが、そういう利用のされ方をされていますか? 差し障りのない範囲でお願いします」。これ、お二人がもしかしたらお答えいただけそうであれば。

山下:やはり「Makuakeの会員から(ファンに)なってくれた方が、買っていただけるLTV(顧客生涯価値)が高い」とか。

坊垣:ああ、うれしい!

山下:単純にあります。

坊垣:なるほど。ありがとうございます。山崎さんもやってみて、Makuakeの裏側のデータで参考になられていることとかってあります?

山﨑:まだそこまでできていないので。

坊垣:そっか、そうですね。確かに確かに。これからかな。

山﨑:ただ、挑戦者側は応援コメントをよろこんでいますね。

坊垣:ああ、そうですよね。

山﨑:ふだんデザイナーから見ると、お店という1つの中継地点のお客さんにつながる。でもそれが(Makuakeだと)、ダイレクトにやり取りができて。それで自分の魅力を伝えられているというのは、すごく喜んでいるところだと思いますね。

坊垣:ありがとうございます。ということで、今日は本当にありがとうございました。短いお時間だったなぁと感じているんですが……。

この画面を通してでも、お三方のお考えとかお人柄がたくさんの方に伝わったんじゃないかなと思っていて、これがちゃんと伝わるのはオンラインのいいことだなとあらためて思っておりました。

では本セッション、以上とさせていただきます。