「変化する消費のカタチ~未来を良くする選択とは~」

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):お待たせいたしました。こちらが最後のセッションになります。どうぞ最後までお付き合いください。

「変化する消費のカタチ~未来を良くする選択とは~」ということで。このテーマの沿った、私が大好きなみなさんをお招きしております。

あらためまして、本日モデレーターを務めさせていただきます、マクアケ共同創業者/取締役の坊垣でございます。どうぞよろしくお願いいたします。みなさまのご紹介に入る前に、私もちょっとだけ簡単に自己紹介したいなと思います。マクアケ創業から、代表の中山と共同創業の木内とともに3人で立ち上げて、ちょうど8周年ということで、今日を迎えさせていただいております。

マクアケはコロナの中でもよりたくさんのニーズをいただいて、実行者さまのお問い合わせも増えユーザーさんも増え……というところで、本当にみなさまに支えられて、今があるなと思っているんですが。

直近のコロナの状況を経て、応援購入いただく分野の変化だったり、消費者のみなさんの変化も本当に身近に感じています。新しいものが生まれる場であるからこそ、そのような変化はすごく顕著に現れる場だなと思っておりまして。

今日のイベントでもそのようなテーマについて、それぞれ分野ごとにお話ししてきたかなと思うんですが、本セッションは、その“トリ”といってもいいかなと思います。最後のセッションですので総まとめ的に、直近のコロナ禍も踏まえた消費の変化が、今、どう起こっているのか?

それに対して、私たちがどう対応していくといいのか? といったところを見つめるかたちで、お話しを展開していければなと思います。

ウェディングから洋服のプロデュースまでこなす、黒沢祐子氏

坊垣:では、みなさまのご紹介にまいります。まずは、黒沢祐子さんからよろしくお願いします。

黒沢祐子氏(以下、黒沢):よろしくお願いします。簡単に自己紹介させていただきます。黒沢祐子と申しまして、ウェディングのプロデューサーが一番メインの仕事になっております。

去年から鎌倉に移住しまして。それはコロナがきっかけというのもあったんですが、そこからライフスタイルの、例えばインテリアだったりファッションのスタイリングだったり、そんなことも始めてゆるやかにやっております。坊ちゃんとはお友だちであり。

坊垣:はい。

黒沢:同世代よりちょっと下だけど、とても尊敬している友人です。よろしくお願いします。

坊垣:よろしくお願いします。私はふだん「祐子さん」と呼んでいるので、今日もそう呼んじゃうんですが。祐子さんはインスタとかSNSでも、女性にすごく影響力があって。

直近はお洋服のプロデュースもされて、今日まさに着ていらっしゃる青い“祐子ブルー”のワンピースもすごく素敵なんですけれども。テーマ性にこだわってお作りになられていますよね。

黒沢:そうですね。洋服についても、あとで話題になるのかもしれないのですが。ビームスのプロの(山﨑)元さんを隣にして、ちょっとおこがましいんですけれどさっきもその話をさせていただいて(笑)。自分が鎌倉と東京を行き来する中で、やはりファッションが好きなんですけど「すごいシワになるなぁ」とか。東京に住んでる時はいくらでもクリーニング屋さんがあったんですけど、鎌倉だと営業時間を含めてなかなか(思うようには)やってない。

坊垣:そっかそっか。出しに行くだけでも、ひと手間。

黒沢:そうですね。ということもあり「シワにならなくて家で洗える素敵なお洋服が、東京でも鎌倉でも着られたらいいな」と思いまして、本当にこの春から作り始めて。実は(イベント開催時の)今日の23時59分までが締め切りになるんですけど、完全受注生産でやっております。

坊垣:私はこのワンピースの白を購入させていただきました。今回は3型をご展開されていて、全部同じテーマ。シワにならずにおうちで洗えて。私のイメージとしては「大人が素敵に着られるワンピース」。

黒沢:はい。そうですね。

坊垣:ですよね。それぞれのデザインが、ちょっとずつテーマも違って、すごく素敵。私は実は全型を購入させていただいたんですけれども(笑)。祐子さん、それこそインスタとか含めてすごく影響力あるので。私の周りの友人とかも、テーマも含めて私もすごい気に入ってシェアさせていただいたら、周りからも「私もこれ欲しいんだけど、どれが似合うかな」「サイズどうだった?」みたいなお問い合わせがめっちゃ来て。さすがの祐子さんの影響力。

黒沢:さすが取締役。ありがとうございます。

坊垣:ということでお洋服のこだわりも、それこそサステナブルに、結局は「自身が身に着けるものがどうであると幸せか?」みたいなところ。

黒沢:そうです。

坊垣:今までの感覚からちょっと進んで、心地よさの概念がより進化しているかなと。

黒沢:本当にそう思いますし、あとは今回、10代から70代の方までご購入いただいて。「3世代着られる」というのは、それだけでサステナブルだと考えていて。「どんなシーンでも、どんな年代でも似合う服」というのは一生モノだし、それを家でザブザブ洗って……というのは、すごくいいなというコンセプトです。

坊垣:ありがとうございます。ご自身が今、感じられている変化みたいなところを、このあと深掘っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

黒沢:お願いします。

ビームスでは経営企画を担当する、山﨑元氏

坊垣:では、山﨑さん、よろしくお願いします。

山﨑元氏(以下、山﨑):ビームスの山﨑でございます、よろしくお願いします。ビームスでは経営企画をやらせていただいています。今、マクアケさんと取り組みをさせていただいていて、「マクアケグランプリ」というものを開催しています。

ビームスの社内ビジネスモデルコンテストみたいなものを、マクアケさんのステージ上でやらせていただいていて。今日はちょうどそのプレゼンテーションもあったんですけれども、多数応募のあった中から今は6案が出ていました。

その3案が昨日(イベント開催当時)にローンチしています。ビールを作ってみたりとか、子どもの知育玩具の「ふくパズル」というものを作ってみたいとか。あとは沖縄のかりゆしのシャツを作ってみたり、そんなものが出ておりまして。「ビームス マクアケ」と検索していただいたら出てくると思います。

坊垣:もともとは何案くらいが社内では挙がったんでしたっけ?

山﨑:40いくつだったと思います。

坊垣:そうですよね。まさにマクアケ自体が「最初に何かを始める時のトライアル」としてはすごくやりやすくて。まさに受注生産の仕組みであると同時に、実際にどういう方が反応してくださっているか? とか、これが反響あるのかどうか? みたいなこともテストトライできるので。たぶん若手の方の新しいチャレンジとかにも、すごく向いているかなと思っていて。

今回、このお話しいただいた時に「ぜひやりましょう」ということで。かなりスピード感持って始めさせていただいて。

山﨑:そうですよね。

坊垣:まだご連携・提携始めて10ヶ月くらいなんですけど、もうこのグランプリを開催して、実際に物が発表できるタイミングまでこのスピード感できて。「さすが山﨑さんのスピード感」と思っております。

山﨑:いえいえ。「マクアケグランプリ」をやった背景も、消費者の変化だったり、小売業も変わっていかなきゃいけないところもあって。僕らもすごく変わらなきゃいけないタイミングだなと思っているので、1個1個勉強させていただければと思っています。

坊垣:ありがとうございます。企業として、その変化どう捉えてらっしゃるのか? みたいなところを、今日は山﨑さんに深掘って聞いていきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

「すべて手仕事で作るチョコレートブランド」の山下貴嗣氏

坊垣:では最後に山下さん、よろしくお願いします。

山下貴嗣氏(以下、山下):山下です。お願いします。Minimal- Bean to Bar Chocolate - (ミニマル)というチョコレートのブランドをやっております。僕たちの特徴は、チョコレートの原材料のカカオ豆が、赤道直下のアジアとかアフリカ、中南米に生育しています。

みなさんの身近なところでいうとガーナとか、南米のエクアドルというのを聞いたことがあるかもしれませんが、そういうところに生育しています。そこに自ら行きまして、農園で豆を目利きして、買って、輸入して。東京の白金高輪に工房があり、そこですべて手仕事でチョコレートを作るというブランドをやっております。

スライドにも書いていただいているんですけど、マクアケでは2019年に初めて新しいコンセプトのガトーショコラ専門店を代々木上原に出す時に、先に会員のみなさんを募集させていただいたのですが、1,600人くらいご支援をいただきました。

坊垣:そうそう。大反響でした。

山下:そのおかげで、本当にその立ち上がりから……やはりお店を立ち上げる時には、先にお金を全部使わないといけないじゃないですか。内装に使ったりとか。

坊垣:そうですね。

山下:でも「立ち上がる前の段階でお客さんが1,000人以上いる」という、ものすごい贅沢な状態からお店を始めることができておりまして。チョコレートって夏はほとんど売れないんですけど、3年目の今、夏でも人が並んじゃって。30人くらい。

坊垣:本当ですか? すごい!

山下:それは本当にMakuakeで初速を付けていただいたおかげで。そこからすごくファンの人たちが連鎖的に広がっていって。今日も僕、手土産を買いに行こうと思って上原店に行ったら、ものすごくお客さんが並んでいて買えなくて(笑)。ここだけの話、後ろからちょっと(笑)。

(会場笑)

山下:でも、本当にMakuakeのおかげで、ありがたいことに3年目になったんですけど。上原のお店がすごくいろんな人に愛していただけておりますので。ありがとうございます。

坊垣:うれしいです。場所はそんなに、すごく人通りが多いところではないじゃないですか。

山下:ぜんぜんです。駅からは近いですが、細い路地裏にあるんで。

坊垣:Makuakeの飲食店プロジェクトでも、やはり「路面で目につくところじゃなくても、先にお客さんを集められたり、コミュニティが作れるとすごくやりやすい」っておっしゃられることが多くて。そういう意味ではお店の立地とかも含めて、チャンスを広げるところに、もしかしたらご協力できているのかもな? と、ちょっと思ったり。

山下:場所って、あまり関係ないじゃないですか。「先にクラウドファンディングで始めます」とか「Makuakeの応援購入で始めます」みたいなことに、場所って関係ないんで。そうすると、結果、その「隠れ家的な場所が逆にいい」みたいにもなるんですよね。

坊垣:そうなんですよ。「私だけが知っている」とか「先に見つけた感」みたいな特別感をご提供できたりするので。ありがとうございます。すごくチョコレート自体がおいしいんですけど、山下さんご自身のこだわりとかお考えがしっかりおありになって、しかもそれを言語化されるのがすごい上手なので。

私も実は消費に関する『Makuake式「売れる」の新法則』という書籍を書かせていただいているんですが、その第2章にも、まさに山下さんのお言葉をお借りした「うまくいくブランドは『2階建て』である」という章が(笑)。あれはまさに私が考えていたことを、山下さんに言語化いただいて。「それだわ!」と思って拝借した言葉なんです。

「店に足を運んで、洋服を選んで買う」に気持ちが向かない消費者

坊垣:ということで、普段からいろいろとご一緒させていただいているみなさんです。

最近はコロナもありつつですが、私はこの変化って、コロナが後押ししているだけで、その前から出てきていた流れだったかな? と思っています。やはり「消費者の感覚がいきなり変わってきた」とか急激に変化しているのではないか? と、マクアケを通して感じておりまして。みなさんがそれぞれ、そのあたりをどのように感じられているか? について、率直に聞いていきたいなと思います。

まずは山﨑さんから。ビームスという大きなブランドをお持ちになられていて、たくさんのお客さまがいらっしゃる中で、実際にお店を通してだったり、お客さまと接している中で感じる変化ってどのようなものがありますでしょうか?

山﨑:まず一番大きいのは、お店の入店客数はめちゃくちゃ減っています。今年の上半期で、2019年対比で言っても3割以上減っているので。

坊垣:なるほど。

山﨑:そのくらい今、お客さまは「お店に足を運んで、洋服を選んで買う」ということに気持ちが向いていないんだろうな、と思っています。

あとはその中で、代わりにデジタルはもちろん伸びているんですけど、すごく顕著なのは、デジタルの上で人を見ていらっしゃるなと。服が欲しくて「(デジタル上で)この方が着ていらっしゃるこの服がほしい」という流れというのが、すごく強いなと思っていまして。

坊垣:そうですよね。

山﨑:スタイリング投稿という、各ショップスタッフがコーディネートを投稿するものを、10年くらい前からやっているんですけど。積み上げていって、レベルも高くなっていて。スタッフ3,000人がそれぞれ投稿して、それを見て(顧客が)買ってくださるみたいな。うちのEコマースの売上の7割が、それを踏んで買っているという状態。

坊垣:そうなんですね。すごい!

山﨑:なので、デジタルの上で人の魅力を伝えていくというのが、すごく重要なんだろうなと思っています。

坊垣:しかも、その方がスタイルがいいからとか、当然、そのスタイリングがいいからというのもありながら。その人の内面とか、その人の人間性みたいなものが溢れ出る部分もあって。「その人のファンだから買う」みたいな流れがあるような気もしてて。

山﨑:そうなんです。ビームスのスタッフってすごくおもしろくて。いわゆるイケメンとかすごくきれいな人もいらっしゃるんですけど、すごくずんぐりむっくりな男性だったり、太っている男性だったりとか、たくさんいるんですよね。

その人たちが、自分のスタイルというか、別に太っていても痩せていてもオシャレはぜんぜんできるので。「こういうふうにすれば格好良く見えるんだ」みたいな。「モデルを通じて」ではないところで見えてくる、というのがおもしろいところかなと思っていますね。

気を付けているのは「常にリアルであること」

坊垣:そうですよね。「人に付く」というのはまさにで。祐子さんのふだんの発信を見ていても、祐子さんのファンの方がインスタ見ていらっしゃいますけど、祐子さんのライフスタイルとか見た目とかももちろん好きだけど、その「ライフスタイル」とか見た目の奥にある「内面的なもの」。それもたぶん発信されているから、(ファンに)伝わっていて。

黒沢:そうですね。私はもちろん有名人の方に比べたら、ぜんぜんフォロワーさんが多いわけではないんですけど、でも1つ気を付けているのは「常にリアルであること」。私は演じることができなくて、すべてさらけ出せるし、そのままの自分。画面上で見ているオンとオフが違うんじゃなくて、本当にたぶんそのまま(笑)。

坊垣:そのままですね(笑)。私はよくわかります。

黒沢:本当、いろいろダダ漏れなんですけど、それでいいなと思っているし。そこに共感してくださる方が、それこそ(ウェディングプランナーとしての仕事の依頼として)結婚式を頼んでいただいたりとか。もともとは「年間に10組」くらいで結婚式の仕事をしていたんですけど、昨年はコロナで集まれないから、1組しかできなかったんですね。その時に私、ウェディングプランナーしかしていないし、フリーランスなので会社にも所属していないし、ヤバいと思って(笑)。

生きていけないと思って。その時に本当に自分と向き合った時に、まず東京にいることも「これって私、今、すごい幸せなのかな?」とか「(東京に)いる意味って何なんだろう?」と考えた時に。「自分が今できないことにもっと自然と向き合って、いろんなところからインスピレーションもらって、フラットになりたい」と思って、本当に1ヶ月で鎌倉に引っ越したんですよね。

坊垣:早かったですよね(笑)。

黒沢:そうそう。というのと同じタイミングぐらいに「このままウェディングの仕事がない」と言っていたって、誰かからお金をいただけるわけではないので。自分で生活するためにどうしたらいいんだろう? と思って。

ファッションのスタイリングは、私がすごい好きだったので勝手に趣味でやってたんですけど。これからって、結構みなさん家にいる時間も長いし、例えばインテリアに対してお金をかけたりとか、住環境。今まで日本のみなさんが、そこまでお金をかけてこなかったところだったりとか。

その中から「家にいる時間が長くてもサラッと着られて、小さいお子さんがいてもしょっちゅう洗えたりとか、手間のかからない洋服。でも1枚着るとおしゃれになるものを作りたいな」なんて思っていたら、ちょうどずっとウェディングドレスのデザインをしていた方が「いつかライフスタイルのウェア作りたい」と言うので。

今まで他のリクエストもあったんですけど、なんかピンとこなくて。「別に洋服って世の中に溢れているし、私が作んなくてもいいでしょ」って。やりたいという気持ちはあるけど。それがやはり鎌倉、東京を行き来する中で、そういう部分につながっていって、そこはコロナを経て変わったことですよね。

坊垣:だからリアルだし、自然に祐子さんご自身の自然な感覚に任せて、ライフスタイルを変えたりとか、無理しない姿勢でいらっしゃったことが、逆に自身の環境変化を生んで。それにまた違うチャンスだったり、流れというかご縁が引き寄せられて来ている感じ。

黒沢:そうですね。よく言うと思うんですけど「こうしなきゃいけないのにな」とか「こうするべき」っていうのが、私は本当に全部なくなって。自分がしたいこと。人生っていつ終わるかわからないって、本当に前から思っていましたけど、よりリアルになった。こういうパンデミックが起きることを誰も予想していなかったし。だからこそ「じゃあ今、自分がやりたいこと全部やろう。やりたい」と思って。

でも一応、慎重にやっているんですけど、その流れに身を任せるというか。わりと過去の自分はすごくジェットコースターみたいな。東京に住んでる時とかは、けっこう刺激を求めて生きていて(笑)。

でも今は、本当に「凪の状態」というのが私の中の一番深い部分にあって、いつもフラット。「変わらない」というのを心がけて。そうすると本当に病むこともないし、なんかあっても「まあ、しょうがないよね」というふうに、すごく楽になりました。でもそれはすごく環境の変化が(要因に)あるかなと思います。

今は「情報の非対称性がなくなっている」おもしろい時代

坊垣:そうですよね。まさにライフスタイルみたいな意味合いでいくと、鎌倉に引っ越されたことが1つのポイントとしてはあると思うんですが。(山﨑さんも)同じく軽井沢に……いつからでしたっけ?

山﨑:14年ぐらいですね。

坊垣:時期としてはすごい先に行かれてますよね。私も最近は「ちょっと田舎暮らしっていいな」とか「ちょっと離れたところいいな」と思うんですけど。軽井沢はいかがですか?。

山﨑:逆にバブルな感じになってきているので。アレなんですけど。

坊垣:そっかそっか。

山﨑:でもたぶん時間・テンポがものすごく東京よりゆっくりで。ゆっくりでいることの心地よさというか。もともと僕も広島出身で都会の人間ではないので、そこの時間というのはすごく気持ちいいですよね。

坊垣:そうですよね。そのあたりは山下さんのテーマではかもしれないですけど(笑)。

山下:完全に羨ましいと思いながら。

坊垣:そうですよね。山下さんは、それこそチョコレートの原料を求めに現地に行かれていますよね。

山下:そうです。本当にジャングルに行っていますね。

坊垣:私なんか、そこはまさにリアル感というか。ご自身で足を運ばれるところにすごいこだわりがおありになるんじゃないかと思っていて。それはどういう思いからやられていることなんでしょうか?

山下:商域の変化の話でいいますと、単純に情報の非対称性がなくなっているというか。昔はテレビが強くて「テレビで取り上げられると流行る」みたいなことが、みなさん、スマホで情報が取れるようになるので。

僕らなんて、(まだ発信力も)本当に小さい僕が最初にチョコを始めて。海外に行ってジャングル行って「そこに生えている実がチョコレートになるんだ」という感動を単純に発信していた、というところから僕らは始まっているんですよね。

やはりその原体験がすごくあって、ちょうど丸7年経つんですけど。未だに産地に行くということが、僕の中では1つの冒険だったりとかワクワク感を生んでいて。単純にそれを発信していったものが、たぶん今までだったら誰も知らなかったと思うんですよね。

坊垣:はい。

山下:今がすごくおもしろい時代だなと思うのは、やはり情報の非対称性がなくなっているんで、お客さんがそういうちょっとマニアックな情報にリーチしやすくなった。

坊垣:そうなんですよね。

山下:そうすると、お二人の話を聞いていてもそうだなと思ったんですけど。祐子さんに祐子さんのファンがいらっしゃって、ビームスのスタッフのみなさんにファンがいらっしゃるというのは、たぶんさっきの話でデジタル上に、例えば僕のファンがいるかどうかはあれですけど「山下という変なやつが、なんかおもしろいこと言ってる」と。

坊垣:いますよ! います。います(笑)。

山下:それで「なんか暑苦しくチョコレートの豆を買いに行っている」みたいな。そのストーリーをちゃんとリーチしてくれる人たちがいて、嫌いな人もたぶんいると思うんですけど。「おもろいな」と思う人たちが増えてくると、今までみたいに「テレビに紹介されたからどうこう」とかではなくて、この人の生き様とか思いみたいなものに共感するからプロダクトを買う、みたいなところにたぶん変わっていっているんじゃないかなと、すごく思います。

坊垣:そうなんですよね。私も「マスが本当に効かなくなっている」と思っていて。やはり「テレビを見て、次の日の学校での会話は必ずみんな共通だった」という時代。「見ていないと取り残される」みたいな時代から、オンラインの時代になって。みんな見ているものが違い、情報を選択できる中で、当然ながらそれによって価値観だったり、感じることも多様化していっている。

モノを作る過程で“負”を発生させている企業を信頼できるか?

坊垣:逆にいうといい面もそうなんですけど、悪い面も見つかりやすくなっていて。私、実はサスティナブルとかSDGsが進んでいる流れって、それが背景にあると思っているんですよ。つまり、いいこともそうなんですが、悪いこともバレちゃうから。例えばモノづくり1つとっても、それに作られる過程で“負”を発生させている企業を信頼できるか? とか。

黒沢:そうね。

坊垣:そういう負を抱えているものを、本当に自分がお金を出して買いたいか? とか。それに加担することにそれはならないのか? とか。そういった感覚が、このオンラインの時代になったからみなさんが持てるようになったのかな? と思っていたりします。

ビームスさんとかで、それこそアパレルの領域。まさにそういうことがテーマになってから、けっこう時間が経っているかなと思うんですが。そこに対して、企業としてはどのように今は向き合われています?

山﨑:いわゆるサステナビリティということですよね。

坊垣:そうですね。

山﨑:企業としては去年、サステナビリティ経営方針というものを定めて。

坊垣:はいはい。

山﨑:会社のミッション・ビジョンの次、ど真ん中に置いていまして。

坊垣:もう、ミッションの中に。

山﨑:ミッションの次に置いていますね。

坊垣:そうなんですね。

山﨑:そもそも、やはりみんな洋服大好きでうちの会社に入って来ているんで、大好きな洋服を無駄にしたいメンバーなんて、ほとんどいないですよ。

坊垣:そうですよね。

山﨑:それを普通に「やろうぜ!」ということで「つづく服。」というキャンペーンを始めています。やはり大切な大好きな服を、自分じゃないけど他の方が受け取って、着ていただいたらいいんじゃないかというニュアンス。

あとは「修理してずっと使い続けよう」といったニュアンスで、この夏ぐらいから始めていまして。そこは、洋服屋のビジネスとは相反する部分なんですけど、新品が売れるに越したことはない。

坊垣:そうですよね。

山﨑:昔の考え方だとそれに越したことはないんですけど、それよりもやはり重要なのって、古着ブームもそれは絶対あると思うんですけど、そういったこと(サステナビリティの考え)はすごく今、大きいことになっています。

坊垣:そうですよね。ビームスさんとかだと、ターゲットゾーンもすごく若い方を含んでいると思うんですが。いわゆるZ世代と呼ばれるような若い方々の感覚変化は、まさに著しいのかなと思っていて。そのあたりも実際に感じられる部分もありますか?

山﨑:そうですね。でも古着屋さんとかメルカリもそうなんですけども、特に中学生とかを見ていると、イケアのバッグに自分の服をダッと入れて、古着屋さんに行ってその場で売って、翌週の服を買って帰るんですよね。毎週それを繰り返している中学生がいるみたいで。

坊垣:へえ!

山﨑:「服を所有する」という感覚が、彼ら彼女らからなくなっていて、どんどん、みんなの共有財になりつつある。そんなことがティーンでは起きている気がしますね。