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いま、地方の挑戦者がアツい。~ニッポンのものづくり~(全2記事)

日本で初めてデニム生地を作った、創業128年の老舗・カイハラ 「開発に10年かけた新素材」をMakuakeで製品化した理由とは

2021年9月11〜12日に開催された「Makuakeミライマルシェ@オンライン」。本記事ではその中から「いま、地方の挑戦者がアツい。~ニッポンのものづくり~」の模様を公開します。

「いま、地方の挑戦者がアツい。~ニッポンのものづくり~」

松岡宏治氏(以下、松岡):では時間になりましたので、「いま、地方の挑戦者がアツい。~ニッポンのものづくり~」のセッションを始めさせていただきます。私、本日モデレーターを務めさせていただく松岡と申します。よろしくお願いします。

このセッションの概要なんですが、地方というか日本の企業ですね。中小企業の割合が全体の99パーセントを占めるなかで、中小企業がどういったチャレンジを行って今後成長していけるのか? というところが、日本の未来にすごく関わっているのかなと思っています。

その中で今回は、地方発のものづくりをされているすばらしいお三方をお呼びさせていただきました。地方が秘めている可能性やこれまでのチャレンジなどをひもといていって「次の地方発の日本の未来」をどう作っていけるんだろうか? についてディスカッションしていければと思ってます。

私はふだん大阪におります。地方がテーマのセッションをご一緒させていただいているんですが、実は地方の出身ではないんです。東京出身で東京で育ったんですが、マクアケの関西支社を立ち上げるタイミングで、まだ5年ほど前ですかね? 大阪に引っ越して。そこから大阪・九州・東北・北陸に行ったりして、地方のメーカーさんとお仕事をさせていただいている立場になります。

日本で初めてデニムの生地を作った会社、カイハラ

松岡:ではさっそくですが、今回ご登壇いただいているみなさまの紹介に入らせていただければと思います。まずはカイハラ株式会社 執行役員 営業本部長の稲垣さま、よろしくお願いいたします。

稲垣博章氏(以下、稲垣):よろしくお願いします。カイハラ株式会社の稲垣といいます。弊社は広島県福山市に本社を構えてデニムの生地の製造販売をして、創業128年の会社になります。

松岡:ありがとうございます。福山って、そもそもデニムの産地として有名なエリアですよね? 

稲垣:そうですね。創業は備後絣という絣(かすり)ですね。1893年に絣を創業としまして。1970年に日本でデニム用の初のロープ染色機を作りまして。そこからがデニム事業の始まりですね。

松岡:いわゆる「日本で初めてデニムの生地を作った会社」ということですよね?

稲垣:そうですね。そこがスタートですよね。

松岡:ですよね。今や、日本全体で作られてるデニム生地の半分がカイハラ製? 

稲垣:そうですね。だいたい半分ぐらいは。

松岡:そうすると、ご覧いただいているみなさまの履いてらっしゃるデニムも、もしかすると。

稲垣:そうですね。

松岡:可能性は高いですよね! 

稲垣:はい。あると思います。

松岡:ありがとうございます。そのように、スケール大きくモノづくりをされている会社様かなと思いますので、後ほどそのあたりも触れさせていただければなと思っています。よろしくお願いします。

稲垣:はい。よろしくお願いします。

「釜焚き」という手法にこだわり続ける、創業97年の木村石鹸工業

松岡:次は木村石鹸工業株式会社の木村さん、よろしくお願いします。

木村祥一郎氏(以下、木村):はい。木村石鹸工業株式会社の木村です。よろしくお願いします。木村石鹸は大正13年、今年創業97年を迎える老舗です。「石鹸」と社名に入っているので、みなさんのイメージどおりだと思うんですけど、主に洗剤、洗浄剤とかを作っている会社になります。

僕は2013年に木村石鹸に戻ってきたんですけど、その時はどちらかというとOEMで。BtoBで裏方の仕事ですよね。開発とか製造を請け負ってやる仕事で、あんまり表に出る仕事じゃなかったんですけど。2015年から自社ブランドを立ち上げて、2020年にMakuakeで初めて一般消費者向けのヘアケアの分野、シャンプーとコンディショナーをやらせていただいて。そこでMakuakeさんを使わせていただいて、という感じです。よろしくお願いします。

松岡:ありがとうございます。石鹸というと、すごく生活に馴染み深い商材なのかなと思ってるんですが。木村さんのところの特徴としては、釜炊きで作られているというところかなと思います。

そのあたりの製造に関して、少し教えていただいてもいいですか? 

木村:石鹸はいろいろ製造方法があるんですけど、うちは釜焚きっていって、釜で本当に熱を入れて作る。油から石鹸を作るという製法なんですね。

ただ、それがいいというわけでは、……まぁもちろんいいと思ってるんですけど(笑)。特に「それじゃなきゃダメ!」というわけじゃなく。親父がずっと石鹸作りが好きで。社内的には「非効率だからやめたほうがいいんじゃないの?」って感じではあったんですけども、それでも続けていて。。

ただ、OEMの仕事なので「釜焚きでやってる」とか「わざわざ石鹸を原料で作っている」ということ自体は、表に出したらコストダウンの対象になっちゃうので、あまり表に出してなかったわけですよね。

でも、僕は帰ってきて自社ブランドをやる上で、「釜焚き」という手法をこだわって続けていることはすごく魅力的だなと思って。「わざわざこれ職人がこんなことをやってるんだ」と。それを1つの特徴として使えば、覚えやすいブランドになれるんじゃないかなぁ? とかって思って。今は象徴的なポイントとして使っている感じですね。

松岡:ブランドサイトには、職人さんが品質確認のために実際に手で触ったり、なめたりしてるって書いてありましたね。

木村:なめてるのは親父がやってたんですよ。職人とかが一応ヘラで泡の状態を見たりとかするんですけど、親父は「そんなもん面倒くさいから、なめてやろう」とかって言うんですけど(笑)。

松岡:ご自分の舌で(笑)。

木村:最近の職人は、さすがにそれはやらないですけどね。そんな感じですね。

松岡:なるほど、ありがとうございます。また後ほどブランドに関してもお話をおうかがいさせてください。ありがとうございます。

「漁具」の販売からスタートした、燕三条の山谷産業

松岡:そして最後に、株式会社山谷産業の山谷さん、よろしくお願いします。

山谷武範氏(以下、山谷):よろしくお願いします。新潟県の三条市からきました、山谷産業の山谷と申します。うちはお二方と違って、うちで商品を製造しているということはなくて。周りの企業さんにお願いして作ってもらってるというかたちですね。企画会社です。三条市だけではなくて隣の燕市を合わせて「燕三条」というような地域です。

松岡:はい。有名ですよね。

山谷:まぁ、本当になんでも作れるという場所です。それこそ金属もあるんですけど木材もあるし、紙もあるしというかたちで、すべてがパッケージングできるような地方なので。すごくモノが作りやすい産地になっていますね。

うちの会社自体は「漁具」という、漁師さんの道具を作ってもらって販売するというところから始まってたんですけど。20年前からECですね、今でいう楽天とかAmazonとか、そういったかたちで燕三条の商品を売ることに特化して今に至ります。

8年前にアウトドア用品をプロデュースして販売したら、ヒットして。その時のECサイトの名前だった「村の鍛冶屋」が、ブランドになって、今も続いているという感じです。

松岡:ありがとうございます。アウトドアとかキャンプされる方、視聴していただいている方々だといらっしゃるかなと思いますが、もう知らない人はいないんじゃないか? ぐらいの屋号ですよね。

山谷:いや、そこまで……(笑)。

松岡:言い過ぎ?(笑)。

山谷:言い過ぎ。

松岡:僕もけっこうTwitterとかいろいろフォローさせていただいているんですけど、山谷産業さんのアカウントはユーザーとすごく距離が近いというか。山谷さん、あれってご自身で(運営・運用)されているんですよね? 

山谷:自分もそうですし、4人ぐらいでやってますね。SNS。

松岡:すごくユーザーの声を拾いながら、商品を販売したり作ったりされてるんだなぁと思ったり。そのへんはTwitterなども気にしながら進められてるんですか?

山谷:そうですねTwitterにしろインスタにしろFacebookにしろ、お客さんから「こういうのを作ってほしい」という声は少なからずあがってくるので。じゃあそれをどういうふうにして商品化につなげていくか? という検討を繰り返していて。結局、お客さんからの話が上がって1年後にやっとお披露目できるプロジェクトもありました。

そういったかたちでお客さんと密接になっていくことが、今は楽しくてしょうがない。今、自分がつけているペンダント自体も、うちのユーザーさんで彫金をやっている方が「山谷産業のペグでペンダント作りたいんですけどいいですか?」みたいな感じで、提案をいただいて。

それがきっかけでうちのサイトでも販売させていただいている感じなので。本当に、密接にやりながらというような感じですね。

松岡:すごいですね。売り手・買い手が作り手になっているということですよね。

山谷:という感じです。

松岡:すばらしいですね。そのへんもまた後ほど詳しくおうかがいできればなと思っています。

開発に10年かかった、カイハラのデニム生地「モンスターストレッチ」

松岡:ではここからはフリートークというかたちで、いろんなお話をさせていただきたいなと思ってます。今回のトークテーマが「いま、地方の挑戦者がアツい」というところですね。

日本を代表する方々に集まっていただいて、みなさん、すごい挑戦をされているのかなと思ったりするので、そのへんの「挑戦」というワードから、いろいろとひもといていきたいなと思います。まずはカイハラさんにお話をおうかがいします。

今回マクアケで……すごく伸びる「モンスターストレッチ」という名前の生地で作ったデニムをMakuakeで販売されました。これは開発に10年かかったそうですね。

稲垣:そうですね。素材の開発だけで10年。

松岡:そのへんの素材開発に関する想いですとか、お伺いしたいなと。実際、カイハラさんの立ち位置でいうと、基本的にはいわゆるBtoBと呼ばれる?

稲垣:そうです。

松岡:アパレルメーカーさんとかに生地を卸す立ち位置だと思うんですけど、そこからMakuakeを使って「直接、消費者に商品を届けていこう」と思われた経緯をおうかがいしてもいいですか? 

稲垣:わかりました。まず、先ほど松岡さんから紹介があった「モンスターストレッチ」。これはアイデアとしては、ちょうどストレッチのジーンズがどんどん増えてきて、さらにシルエットも細いものがどんどん増えてきて。

ジーンズっていったらやはり「リーバイスの501」じゃないですけど、やっぱり綿100の、洗いの“顔”にこだわったものなんですけど。それをストレッチで表現すると、どうしても“顔”が。洗い込んだ時の表情を“顔”と言うんですが、これがどうしても出ない。これ(「ストレッチ性」と「顔の出方」の両立)を妥協せずに、やはり作っていきたい。

実を言うと、これって我々の中では相反することなんです。

松岡:それは「顔にこだわると、ストレッチ性がなかなか出しづらい」ってことですか? 

稲垣:そうですね。

松岡:それはどういうロジックで……。

稲垣:ストレッチというのは生地が洗って縮むんですが、縮んだ分が今度は伸びるというかたちになるんです。ですからどうしても、リアルなコットン100のジーンズの顔というのが表現しにくいんです。

松岡:なるほど。

稲垣:その部分を妥協せずやっぱりやっていきたいと。ただ、普通の作り方をしていたら達成できないんですね。ここは、実を言うと開発のメンバーは相当大変だったと思うんですけど。すごく業界的には非常識なことを言ってるんで。

僕らは営業のほうがあんまり入っていって、どんどん「どうだ?」「どうだ?」ってやってると、やっぱり地に足をつけた開発はなかなかできないですから。もう開発に一任して「とにかくこれを達成しよう」と。「何年かかっても達成しよう」ということで。

アパレルメーカーに卸すのでなく、直接、消費者に届けた経緯

松岡:10年前にそれを達成するためのプロジェクトが発足したということですか? 

稲垣:一応そうですね。だから僕も途中の報告があがってくるまでは、ずーっと「どうなってるんだろう、どうなってるんだろう……?」と思いながら待ってたんですけど。開発のメンバーがこの10年の間に、おそらく何百種類も糸のテストをしたり織りのテストを重ねて、品質とも“顔”を含めて世の中に出せる状態になったのが、ちょうど昨年ですね。

松岡:すごいですね。そこまで時間とお金もかかってるのかと思うんですけど、それを普通だったら、やっぱりBtoBなので「アパレルメーカーさんに卸して、出していってもらう」という流れだと思うんですけれども。

今回はその流れを飛び越えて、直接、Makuakeというツールを使って消費者に届けていただいた。ここの経緯はどういった流れだったんですか? 

稲垣:そうですね。やはりコロナも多少なり影響はありましたね。私たちとしても、ブランドを通して自分たちの素材を消費者のみなさんに履いていただくというところが一番大きな・一番いいストーリーではあるんですけど、消費者のみなさんが外に出なくなって、アパレルのみなさんも非常に厳しい環境になっていく中で、注文も落ちました。

その中で支えになったのが、やはりうちの社員であったりとか、開発に携わったメンバーの想いですよね。

松岡:そうですね。10年分の思いが。

稲垣:これをこの環境下で、どのようにすれば世の中に出すことができるのか? それをすごく考えましたね。

松岡:なるほど。10年かかってるから、その分の関わった人のすべての想いが積み重なった生地だった、ということですよね。

稲垣:そうですね。だからそこは本当に量だけじゃなくて、そのような想いをどういうかたちで達成するか? というのが一番大事かなぁと。

松岡:なるほど。

木村:それって、発注側からは怒られないんですか? 

稲垣:発注側ですか? 

松岡:ちょっと答えづらい質問かもしれないですけど……。

稲垣:これはまぁ発注側というか、事前にまったくこれまでのお客さんに対して話をしてなかったわけじゃないんですよ。当然「一緒につくりませんか?」という主旨の提案も何社かさせていただいてましたし。ただお客さんのほうもですね。なかなかそうはいっても新しいものにチャレンジしにくい環境下であったかなぁと。

素材に興味を示してもらって、採用してもらったブランドもあります。ただ、やはりせっかくここまで大々的にやったんであれば、こういう(コロナの)状況もありますし、「我々もなにか新しいことにチャレンジしていく、いいタイミングじゃないかなぁ」といって模索していた時に、ちょうどマクアケさんを知りまして。

松岡さんには、以前うちの会社にも来ていただいたことがありましたんで。

松岡:工場見学に行かせてもらったことがありました。

稲垣:すぐ連絡させていただきまして。ちょっと相談させていただいて……というのが、ちょうど1年前。去年の9月だったと思うんですね。

「アパレルブランドと同じ目線」でチャレンジできた

木村:開発の人たちは、Makuakeをやることに対しては前向きに喜んでくれる? 

稲垣:そうですね。全体的には、みなさん喜んで関わってくれましたね。

松岡:なるほど。もともと開発の方々は、商品が世の中に出ていく部分までは従来の流れだと見られなかったりするのかなと。普通は自社で作った完成した商品があって、営業の方が発注を持ってきたら卸すもので。このモデルだと、なかなか開発の方々が「最終的に自分たちが作った商品が、消費者にどう受け入れられたんだろう?」とかって、なかなか感じとりづらかったりするのかなと思っていたんです。

その点、Makuakeをやったことによる効果というか。職人さんとか、実際に現場に携わっている方々の声としては、そのへんはいかがでしたか?

稲垣:そうですね。それは開発だけじゃなくて、我々営業もそうなんですけど。やはり「お客さん」という各企業のフィルターを通して消費者の声は聞くんですけど、それって“生の声”が直接聞けるわけじゃないんですよね。

今回Makuakeをやった目的というのは、まずはそういった直接の声が聞けること。そして後で思ったんですけど、今回初めて「アパレルブランドさんと同じ目線」でチャレンジできたというのは、今後の事業に関しても、ブランドさんへ僕らとしては今度なにをしないといけないのか? といった目線が、少し変わったかなぁって……。

松岡:なるほど。自分たちで商品やブランドを出したことによって「アパレルメーカーってこういう景色を見てるんだな」っていうのが、いわゆるシンクロ体験できたというか。

稲垣:そうですね。

松岡:なるほど。それは確かにあるかもしれないですね。

稲垣:そうですね。

「自分たちで売る覚悟があるかどうか?」

松岡:「BtoBからのBtoCへの展開」というところでいうと、木村石鹸さんも同様な流れだったかなと思うんですけど、今のお話うかがっててどうですか?

木村:そうですね。僕らはビジネス形態としてはBtoBですが、C向けの最終製品まで製造してたわけです。

松岡:なるほど。

木村:あとは「自分たちで売る覚悟があるかどうか?」みたいなところと「提供している会社さんとの販路のバッティングがなければ(OK)」ということだったんで。本当、覚悟の問題なんですよ。

ただ社内的には、ビジネスモデルが違うとオペレーションがぜんぜん違うじゃないですか。OEMだと「まとめて作ってまとめて納品して」というのに対して、個人だと本当に数十個単位で送らないといけなくなったりとか。そういう社内の体制を変えていくみたいなところで、頭で理解しててもなかなか気持ちが追いついていかないとか「面倒くさい」というか「効率が悪いんじゃないか?」「こんなことをやってて儲かんないんじゃないか?」という、社内が疑心暗鬼になるんですよね。

だから、ある一定まで成功体験を積み重ねないと、なかなか「これやってて大丈夫かな?」という。本業がやっぱりどうしてもOEMなので「本業のほうがダメになるんじゃないか?」って思ってしまうので。そこをどうやってマインドチェンジさせるか? みたいなのが、すごく難しかったですけどね。

松岡:「ある程度の成果が出るまで」って、BtoCのいわゆるブランドを作っていくというのは、けっこう時間がかかるかなと思ったり。一朝一夕にはいかない。ただ、いわゆるBtoBの営業って受注さえ出ちゃえば、すぐものづくりに反映されるじゃないですか。ここってどうやって耐えたんですか? 

木村:これね、今でもまだありますよね。どうしても営業は「目標を達成したい」とか「なるべくまとまった大きな売り上げが欲しい」みたいな役割があるじゃないですか。一方で、「それやったらブランドを毀損しそうだな」とかというのもあるわけです。中長期的には。

そこはずーっと葛藤してて。ただ何回か転機はありました。最初の転機は、ブランドを作った後に展示会に出した時に、初めて直接バイヤーさんとかからうちの会社のことを褒められたことですね。OEMの営業で、会社のことを褒められることってあんまりないんですよ(笑)。

普通はどっちかというと価格叩かれるとか。「こういうのを作って」って言われて、作れなかったら怒られるぐらいの感じで(笑)。

松岡:なるほど。

木村:それがなんかおもしろそうな会社だと。「すごい歴史があって、さらに『釜焚き』ってすごい面倒くさいことやってるんだ」っていうことが褒められたんですね。それで結構うれしくなったとか。

あとは実際に発売された商品が、みんなが知ってるお店に並んで。うちの会社の商品が並んでて、お父さん・お母さんが周りに自慢できるみたいなことがあったりとか(笑)。

松岡:わかりやすい(笑)。

木村:あとメディアに取り上げられたりとかっていう、そういうのが徐々に徐々に積み重なって、だんだん協力してくれるようになってきた感じですね。

松岡:なるほど。やっぱり、ちょっとずつ成功体験というか、みんなのモチベーションが上がるようなところを1個1個積み重ねていくことによって前に進みやすくなる、みたいな。そんな感じなんですかねぇ。

木村:そうですね。やり方としては、別会社を作ってそこだけ独立させてやったほうが、本当は効率いいのかもしれないですけど。うちの場合は、やっぱり「工場とセットで木村石鹸のブランドがある」と思っているので。今やっていることの延長でやりたかったので、ちょっと時間がかかりましたけどね。

OEMの企業を囲い込まず、逆にオープンにする効果

松岡:なるほど。ここまではどちらかというと「作る側」のお話をうかがっていったんですけど、山谷さんは「売る側」になるかなと思います。売る側の視点として、今みたいなお話ってどう受け取られていますか? 

山谷:そうですね。売る側の意見からいくと、売る側で「(うちの)OEMはどこで作ってますよ」って出してるところって、ほぼないんですよ。

松岡:あー、なるほど。

山谷:うちは逆にインターネットで販売する時に「この商品はここの工場で作っていますよ」っていうのを、OEMであったとしても出してるので。このへんの担保ですかね。お客さんに対する担保の取り方が、普通の企画をしている会社とちょっと違うのかなって。

松岡:それは山谷さんが燕三条のものを「すごくいいから世の中に広げていきたい」という思いがあるので、企業さんの名前を出しているんですか? 

山谷:そうですね。「世の中に出して知らしめたい」というのが1つと、あとうちが名前を出すことによって、そこの会社に直接BtoBの取引の注文が行くんですよね。

木村:それはOKなんですか? 

山谷:それはぜんぜんOKで。逆にそうやっていけば、燕三条が盛り上がっていくというような考え方でいるので。だから自分のところで(工場を)囲い込むようなことはしないです。変な話ですけど「この商品は、木村さんで作っているよ」というのを、どこの会社もほとんど言わないじゃないですか。

それを言うことによって、他の会社も木村さんのところに行く。そこで、逆にまた良い商品が出てくれば「うちもまた違う商品を考えよう」というので切磋琢磨していけばいいんですけど。でも、みんなだいたい囲い込むんで(笑)。

松岡:言わないですねぇ。

稲垣:そうですよね。

木村:「隠したい」というのもある。

山谷:そこをうちは逆にオープンにしていくことによって、燕三条地域が全体として盛り上がれるという。そうするといろんなとこから、逆に「うちのも、今度は考えて」みたいな感じで、どんどんお話をいただけるようになってくるので。うちは逆にそうやって、どんどんいろんな会社さんを紹介していくという売り方をやってますね。

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