「リーダーをやりたくない」は「食わず嫌い」かも?

――仕事をしていると、やむを得ずそのチームのリーダーになってしまったり、そうならざるを得ない場面がたくさん出てくると思います。「あまりやりたくないのにな」と思っている人がそうなってしまった場合、まず最初にやるべきことは何か、お伺いしたいです。

田中聡氏(以下、田中):何をやるべきかの前に「心持ち」かなと思うんですけれども。その人はやりたくないわけですよね。嫌々やるということですよね。

――「できればやりたくなかったな」ぐらいの気持ちだと思います。

田中:ちょっと遠回りな答えになっちゃうかもしれないんですけど、「どうして自分はやりたくないのか」を考えてみるのが大事だと思うんですね。

実はその「やりたくない」という気持ちは、単にめんどくさそうとか、あるいは自分の周りにいる同じようなリーダー職に就いている人たちが楽しくなさそうだからとか。「代理経験からの学習」という言い方をしますけど、自分以外の他者の経験を勝手に憑依させて、「だから自分もやりたくない」と思い込んでいるケースがけっこうあると思うんです。

要するに「食わず嫌い」ですよね。人は基本的に、経験したことがないものに対して否定的に捉えがちな生き物です。大抵の場合は、やってみたらまた違った感情と出会えるんですよね。なので、「できればやりたくない」という思いの背後に特に明確な理由が見当たらないようであれば、「頭であれこれ考えすぎずに、とりあえず1回やってみよう」というのが、私なりの答えです。

事前に魅力を教えてもらっても、管理職はやってみないとわからない

田中:実際、リクルートマネジメントソリューションズ社が行った管理職向け調査によれば、半数ぐらいの管理職がもともと「管理職になりたくなかった」って答えてるんですよ。でも、「なりたくなかった」と答えている人のうちの半数強ぐらいが「実際にやってみたら自分には向いていた」と答えているんですね。

――やってみたらマインドが変わるんですね。

田中:興味深いのは、その調査の中で「『気持ちの変化があるんだったら、事前に教えてくれていればよかったのに』と今になって思うことはありますか」と尋ねたら、やっぱり「管理職をやってみないとわからない」という回答が多いんですよね。いくら事前に「管理職ってこんなに魅力的な仕事でね」と伝えても、やっぱり人は経験の中からでしか学べないことがあるということです。

だから本人が持つべき心持ちとしては、さっきも言ったように「せっかく与えられたんだったらやってみようかな」ってまずは一度思ってみる。

そして、もう1つ大事なことは、「やってみて本当に向いてないと思ったらすぐに降りる」という覚悟を持っておくこと。潔く降りることも、大事なリーダーシップだと思います。嫌々やってるマネジャーやリーダーに、人はついていきたいと思わないでしょう。

「なぜあなたに管理職を任せたいか」と伝えられている会社は少ない

田中:また、「君に管理職を任せようと思う」と言う誰かがいるわけですよね。一般的には、人事や上司だと思いますが、その人がきちんと「なぜあなたに管理職という仕事をお願いしたいと思ってるのか」を説明して、本人の意味づけを促した上で任せることもとても大事です。

当たり前のような話ですが、実際にそれをできている会社はそう多くありません。例えば、日本能率協会マネジメントセンターが行った昇進昇格実態調査でも、昇進昇格試験の対象者に「合否の理由」や「今後の期待」が伝えられているケースは4割以下に留まるという結果があります。

上司なり人事なりが意味づけをちゃんとしてあげずに、「じゃあ○○さん、4月から管理職になるんで、よろしくお願いします」とか、あるいは辞令のメールが1本送られてくるようなことが多いと聞きます。

――よくありますね。「年次が上がったから」とか、よくわからない理由で役職がつくんですよね。

田中:そうです。あとは「お前もそろそろあれじゃない? 受けておいたほうがいいんじゃない?」ってなかば強引に管理職昇格試験に手を挙げさせられて、筆記試験を受けて、人事との面談を2〜3回やって「はい、おめでとうございます」って(笑)。一言も「自分からやりたい」と言った記憶はないんだけど、いつのまにかそう仕向けられている。

どちらかと言うと、その管理職の仕事の魅力とか醍醐味とか意義、あるいは本人がやりたくないとその時点では思っていても敢えて任せてみようと思う、その「任せる側の意志」をどれだけ丁寧に伝えられるのか。これが今、会社全体で求められているとても大事な機能だと思います。ほとんどの企業ができてないと思いますけど。

1回2回の失敗で、「自分は向いていない」と思い込まなくていい

――そうですね。リーダーになりたくない人の中には、「食わず嫌い」の人もいらっしゃると思うんですけど、もう少し年齢が上がって30代とか40代手前ぐらいの方の中には、一度リーダーをやってみたけど失敗して、苦手意識を持っている人もいるんじゃないかなと思っています。

そういった失敗経験や苦手意識がある人が、もう一度リーダー職になるためには、どういう心持ちでやったほうがいいのか。アドバイスがあればぜひ教えていただきたいんですけれども。

田中:基本的にマネジメントする相手は「自分とは異なる行動原理で動く人」ですよね。そういった多様で異質な人たちを率いながら、まだ見ぬ成果を取りにいく仕事って、死ぬほど難しいわけですよ(笑)。なので、失敗はつきものです。

あのユニクロの柳井正さんだって「一勝九敗」って言ってるわけですよね。つまり過去の1回2回のつまずきの経験で「自分は向いてない」って烙印を押すこと自体が、僕はナンセンスなんじゃないかなと思います。まずその「一戦必勝」のような価値観や考え方をマネジメントに持ち込むのを控える・止めるべきだと思います。

逆の言い方をすると、どんなにマネジメント理論を学んで場数を踏んだとしても、あらゆるチームを成功に導くことは難しい。コケることもあるし、うまくいくこともある。現実はその連続のなかにあるのだと思います。通算で勝率が上回ってたら善とするぐらいの適度の曖昧さ。「そういうこともあるよな」って思い切るぐらいの感覚が大事な気がしますね。

つまり「あなたの思っている失敗って、大した失敗じゃないよ」ということ。これが失敗を克服するための第一のアドバイスですね。ただ一方で、その失敗経験を放置しないことも重要です。失敗経験の中から学べることはたくさんあります。なぜその時に失敗してしまったのかを深く振り返り、自分なりの教訓をつくることも大事ですね。

花形事業のエリート社員でもぶつかる、新規事業の「壁」

田中:これは管理職というよりリーダーとしての私の研究で言うと、例えば、花形事業のエースとして活躍している、順風満帆にエリート街道を歩んでいた人が、会社からある日突然「新規事業をやってみろ」と言われると。「会社の新しい事業の柱を作るために、君に新規事業を立ち上げて欲しいんだ」って言われるわけですよ。

でも本人は、実はその部門で将来役員までいこうと思っていたので、突然梯子を外されたように感じるわけです。

――そうですね。

田中:でもやらなきゃいけないからやり始めるんです。その過程で、既存事業ではまったく経験しなかったような現実に直面するんです。とにかく何をやってもうまくいかない。経営が任せるって言ったわりには、結局経営層だって見てるのは既存事業の方向ばっかりで、新規事業を相手にしてくれない。既存事業の部門も新規事業のことをまったく理解していないから、リソースも提供してくれないし協力してくれない。

メンバーも既存事業のように優秀なプレイヤーがいない中で、ちょっと会社のお荷物になっちゃったような人たちが、新規事業という名のもとに「お預かりしてください」と言われて、その人たちをマネジメントしなければいけない。いろいろ苦しい中でやっていかなきゃいけない時に、最初はやっぱり「会社が悪い」と、他責から入るんです。

それでもうまくいかないという現実に向き合わされる中で、次第に矢印を自分に向けるということをみんな経験していくんですよね。「あれ、ひょっとしたら自分のマネジメントの仕方に問題があったじゃないかな」と気づき始めるんです。

「経営のフォロワー」ではなく真の「リーダー」になるための学び

田中:昔はポジションがあって、たまたまそこにメンバーがいただけで通用していた。それを「自分にはマネジメントの能力がある」って過信していた。だけど、本当に何もないところで新しくビルを1個立ち上げろって言われたら、何から考えていいかわからないわけです。

顧客もいない、売る商品もない、サービスもない、使えないメンバーだけがたくさんいる。このような状況のなかで、トップダウンのマネジメントが通用しないということに初めて気づくんですね。一方で、やっぱり上(経営層)から与えられるものをただ下(メンバー)に伝える「伝達者」としての役割だけじゃなくて、自分が本当の意味での「リーダー」にならなきゃいけないんです。

新規事業をやると、「会社の経営層も答えを持っていない」ってわかるんですよ。既存事業だったら「お前らここに行け」って言えるので、上から言われたようにメンバーに対して伝えればよかったんですけど、新規事業をやると、本当の意味でリーダーになる。自分でビジョンを作って自分で行く先を決めて、でも成果が出なかったら自分でケツを拭くという感覚になるんです。

今までのマネジャーとしての自分って実は「リーダー」じゃなくて、「経営のフォロワー」だったんじゃないかということに気づき始めるんですよ。そこからが本当の意味でのマネジャーとして一皮むける経験になっていくんです。

ちょっと話が脱線しましたが、要するに失敗を経験する中にはたくさんの学びがある。だから適度に「10回やれば5回ぐらいはそういう経験もするよ」って思いながら、過去の失敗経験の中にリーダーとしての至らなさや振る舞いに問題があったんじゃないかと、自分を批判的に省みる中でどんどん成長していくんじゃないかなと思います。

――なるほど。すごくわかりやすかったです。「ビジネスの問いすらわからない状況」という意味では、管理職も新規事業のリーダーも共通してるところがありますよね。

多様なメンバーのチームを動かすために必要なマインド

ーー先ほどから「多様なチームメンバー」というキーワードが出てきます。ダイバーシティが推進される一方で、やはり同質な人たちを束ねていくよりも、多様なメンバーをまとめることってはるかに難しいじゃないですか。多様性のあるチームメンバーを動かしていく時のポイントやコツがあれば、ぜひ教えていただきたいんですけれども。

田中:束ねる時のコツ……。

――そうですね。むしろ「束ねる」という言葉がちょっと違う気もするんですけれども。どう思われますか?

田中:そうですね。「リーダーが自分1人で解決者になろうとしない」ということですかね。自分はマネジャー、他のみんなはメンバーだと線引きをして、孤立したら負けると思うんです。

例えばメンバーにカナダ人の女性の方もいるし、日本人でたまたま自分と同じ大学を卒業した若手の新人もいる。一方では障がいを持っている方がいたり、実は過去にお世話になった新人時代の上司が、今自分の部下にいるとか。もうなんかごっちゃごちゃじゃないですか。

そういう時に「よし! 俺がなんとかしなきゃ。まず1on1だ!」って言って、一人ひとりと話をしても、仲間や支援者がいないままの状況では、ほとんどの場合は徒労に終わり、孤独感と無力感だけが残ることになります。

この1対多勢の発想を変えることが大事です。上司がピラミッドの上にいて、下にメンバーがいて、この人たちの横の関係性をどうつなげてあげようかと考えるよりも、多様なチームがあって、たまたまその中に自分もいるぐらいの感覚がいいと思うんですね。

「マネジャーの問題」ではなく「チームの問題」と再定義する

田中:ロナルド・A・ハイフェッツというリーダーシップの研究者がいます。彼が、マネジャーが対処しなければいけない問題、つまり「やりくり」しなきゃいけない問題には、大きく2種類あると言っています。

1つは「技術的な問題」、もう1つは「適応課題」です。技術的な課題はわかりやすくて、今あるノウハウを使って、ある程度解決ができるような問題。どこかに正解が転がっているようなやつですよね。だけど「適応課題」は、答え自体がなくて、みんなで新しい方法を学んでいかないといけない。このチームの多様性の問題って、多くは「適応課題」なんですよ。

――答えがない問題ですね。

田中:このハイフェッツのとても大事な指摘で、マネジャーは「技術的な問題」に対しては自分が解決する当事者として当たればいい。ただ「適応課題」はスルーしろって言うんです。スルーっていうのは、自分一人で解決しようとせずに、「手放せ」という意味です。

要するにマネジャーの問題として捉えるんじゃなくて、そこにいる当事者全員の問題だという風に問題の意味づけを再設定しなさい、と言っているんです。

例えば「うちのチームってちょっとギスギスして困ってるよね」ってメンバーが言っているとするじゃないですか。マネジャーは、そのメンバーに「それはマネジャーの問題だ」といかに思わせないか、「自分たちの問題だよね」と思わせるかが大事だというわけです。つまり「背負いすぎるな」ということだと思うんです。

「管理者」というイメージを持つと、どうしても「自分が管理しなきゃいけない」と思い込んでしまうんです。その管理する意識を手放して「みんなの問題だよね」とできるかどうか。

従業員意識調査の結果は「マネジャーの通信簿」ではない

田中:よくある話で言うと、例えば「エンゲージメントサーベイ」をやりますよね。全社を挙げて従業員意識調査をやると、まずマネジャーの手元に結果が返ってきますね。

そうすると、「去年に比べてスコアが下がってるな」とかなるわけですよ。「リモートワークの影響なのかわからないけど、なんか経営とか会社に対する不信感が高まってるぞ」という。「平均値」という名の矢がバンバン飛んでくるわけです(笑)。

ここで、「背負っちゃうマネジャー」が何をやるかというと、例えば、その結果を自分の机にそっとしまってなかったことにしようとしたり、悪いところよりもいいことばかりを強調して「君たちは大丈夫」という謎の抗弁をしはじめるんです。

そうじゃなくて、もっとさらけ出せばいいんです。エンゲージメントサーベイはマネジャーの通信簿じゃなくて、「チーム全員の通信簿」なので。まずみんなが集まる会議の真ん中にその結果をポンと置いて、「この間みんなに協力してもらった意識調査の結果なんだけどさ、こんな結果になっちゃってんだよねぇ」って言って。「ぶっちゃけ、どんな感じ?」「みんなの印象合ってる?」って。

「今日もチームは順調に問題だらけ」

田中:要するに「みんなで解決する問題」ってことなんですよ。多様性の問題は、チームメンバー全員の問題。ポイントなのかコツなのかもわかんないですけど、僕はそういう見方の変化がとても大事な気がしますね。

――背負い込むことが心理的な負担になってしまって、それこそ最初の「管理職は元気がない」という状況を作ってしまうんですね。みんなの問題だとさらけ出すことで、逆にちょっと肩の荷が降りるところもありますね。

田中:メンタルモデルを変えることですね。チームで起こる問題なんて、日常的な問題で特別なことじゃないよと思うことが大事です。逆に「チームがうまくいってる状態を、あなたは本当に今まで見たことがありますか?」って思うんです。

書籍『チームワーキング』の共著者であり、共同研究者でもある立教大学経営学部中原淳先生の言葉を借りると、「今日もチームは順調に問題だらけ」です(笑)。

――(笑)。いいですね。

田中:チームというものをあまり美化しすぎずに、「問題は日常的に起こってる」という前提を持つ。じゃあ(その問題は)誰が解決するのかというと「みんなで解決するんだ」と。この2つのマインドセットを持つ必要がありますね。

管理職にならないとキャリアアップはできないのか?

――ありがとうございます。最後の質問になるんですが、「管理職にならないと出世やキャリアアップができない」って、本当にそうなのでしょうか。これから「管理職にならなくてもいい選択肢」はありますか?

田中:マンパワーグループさんの調査で「管理職になりたくない人が8割を超えた」という結果があって、最近日経新聞にも出ていましたよね。

まず社会的な地位やステータスという意味での出世やキャリアアップを本心から望んでいる人が、そもそも減ってきているんじゃないかなと思うんですよね。もちろん給料は欲しいけど、それと引き換えに大切なプライベートが犠牲になるぐらいだったら、自分は余暇の時間も大事にしながら自分らしく働きたい、と思っている人が多い気がします。

仮にその「キャリアアップ」が指していることが、お金をもらって社会的に地位を上げていき、自分の名前で仕事をしていくという話で言えば、別に管理職になる必要はまったくないのかなと思います。例えばエンジニアとか、いわゆる高い専門性を持ってその技術・知識・技能を持って渡り歩ける人は、むしろスタッフ職のほうがマネジャー職よりも仕事に価値があると思われていて、給料も高いですよね。

ただ一方で、何をやりたいかがそこまで明確に定まってなくて、「この道で自分は食っていくんだ」という人じゃなければ、逆説的になりますが、キャリアのどこかで一度くらい管理職を目指してみるのもいいんじゃないかなと思っています。

さっき言ったように、やってみないと本当の意味での好き嫌いとか向き不向きって判断ができないと思うからです。だから「嫌ならやめよう」というオプションを常に持ちながら、1回ぐらいチャレンジしてみるのもいいのかなと。

経験の差が生む「断絶」を乗り越える、「全員管理職」のアイデア

田中:いまは管理職不人気時代ですけど、管理職じゃないと味わえない仕事の醍醐味が見過ごされたり、過小評価されてしまうのはもったいないと思うんですよ。まず一番わかりやすい話で言うと、働き方の裁量って管理職のほうがありますよね。いちいち上司に決裁をとらなくていいし、いろいろと融通が利きます。だから「自分らしい働き方をしたい」という人ほど、僕は管理職をやってみることをおすすめしたいなと思いますね。

上流の仕事を経験できるのも管理職の魅力です。自分で組織の目標を立てて、周りに対して影響力を発揮しながらチームを動かすとか、そういう大きな仕事を経験できるのも管理職の醍醐味ですね。

――ありがとうございます。1回やってみろってことですね。

田中:少しでも機会があって、アレルギーが出るほど嫌じゃなければ、一度経験をしてみるのも良い気がしますね。あと、これは完全に余談ですけど、思考実験として僕がよく考えるのは、社員全員が一度は管理職を経験してみるという世界です。もちろん現実的にはさまざまな制約があって難しいこともわかってますが。

――全員が管理職をやってみる。

田中:はい、そうすると原理的には、全員が管理職の立場を理解できるようになりますよね。管理職の立場がわかるようになると、メンバーとしての管理職の支え方がわかってくると思うんです。

――なるほど、逆の視点ですね。

メンバーの立場でも、一度管理職を経験していると「あの人きっと今苦しいはずだよな」「次はこうサポートしてあげよう」って思えるようになる。やっぱり管理職をやったことがないと永遠にわからないことだし、管理職の人たちも「お前にはわかんないよ」って思っちゃうんですよね。そういった経験の差が生み出す断絶を、全員が管理職を経験することで乗り越えられないかというアイデアです。

まずは「管理職」の捉え方を変えるところから

田中:書籍『チームワーキング』では「全員リーダー」という考え方を提唱しています。全員がリーダーになりうるという前提で、自ら当事者意識を持ってチーム活動に貢献するというスタンスの重要性を説いています。ただ、こういう話をすると、「私はリーダーをやったことがないので」と言う方がどうしても出てきます。

『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』

管理職イコール偉い人とか、特別な人というある種の「特権階級」のような概念を捨てて、みんながキャリアのどこかで一度は経験するものぐらいに思えるといいですよね。実際にそういう世界になれば、本当の意味で管理職をみんなで支えられるし、あるいは「管理職に頼っていてもだめだな」っていい意味で割り切って、自分がなんとかしなきゃいけないと思える若手・中堅が増えてくると思うんですよね。

――そこは先ほどのお話のように、1回やってみようということで意味づけをしてあげるのが大事ですよね。

田中:そうですね。それを実現しようと思ったら、リーダーをやった人や管理職の人が、もう1回メンバーに戻るということをごくごく自然に行える環境にしなきゃいけないんです。これが左遷とか降格になっちゃうと意味が変わるので。

「今はたまたま管理職をやっています」という感じで、みんなが管理職を経験していくようになれば、マネジメントの世界は大きく変わるんじゃないかなと日々妄想しています。

ーーまずは「管理職」に対する意識や意味づけを変えていくことなんですね。そこが変われば、「管理職なんてできない」という気持ちも徐々に変わってくるかもしれませんね。田中先生、今日はありがとうございました。