24歳で約1億円の借金を抱える

花海志帆氏(以下、花海):それではこれから、三田紀房先生の経歴を年表で振り返るとともに、自身を襲ったピンチをどう乗り越えてきたか、ご紹介いただきたいと思います。

では最初のピンチは何だったのでしょうか。三田先生の最初のピンチは24歳の時。「家業を継ぐも、大借金があることが発覚!」ということですが、大借金ってどれくらいだったのですか……?

三田紀房氏(以下、三田):ざっくり1億円くらいはあったと思います。

花海:1億円! 当時24歳ですよね?

三田:まあ、全部自分が背負ったわけではないんですけどね。家全体の借金としては1億円はあったと思います。

花海:サラリーマンの平均生涯年収が2億円って言いますよね。24歳でその半分を背負うって、かなり辛いですよね。

三田:そうですね。ただみなさん「借金」というと、現金で借財があるという感覚だと思うのですが、借金というのは基本担保があるので、要するに資産と借入金のバランスなんです。資産を上回ると負債になりますが、負債と借金が同じ額であればそこまで深刻な問題ではないんです。

花海:24歳の時もそういうふうに考えられていたのですか?

三田:はい。金融機関は利息さえ払えば基本文句を言わないので。

花海:え~! 肝が据わっているというか……。

三田:いやいや。基本商売屋というのは借金があるので、実は家の中をじたばたするような状況ではないんです。でも払わなくていいということでもないので、「いつかは払わなきゃいけないな」とはずっと思っていましたね。

西武デパートに勤務後、家業を継ぐため実家へ戻る

花海:ちなみに「家業を継ぐ」ということでしたが、何をされていましたか?

三田:出身が岩手県北上市なのですが、そこにある商店街で衣料品店をやっていました。

花海:なるほど。今まではずっと家のお手伝いをされていたということですか? それとも都会に出てお仕事をされていたのですか?

三田:高校を出て、大学に入るために上京しました。大学を出てからは西武百貨店に入社したんです。

花海:一流ですね。

三田:西武デパートに1年勤めていたのですが、家から帰還命令が出まして。

花海:帰還命令(笑)。

三田:「帰ってきてお前も手伝え」と、半強制的に(笑)。それで百貨店を退社して実家に戻りました。その時期に大型店がどんどん地方にも進出してきたんです。ちょうど町の近くにも大きなショッピングセンターができたために、商店街にお客さんが全く来なくなってしまいました。そこから業績が転げ落ちるように悪くなりました。

三田氏が漫画家を目指したきっかけ

花海:社会人1〜2年目で家業を継いで、借金があることが発覚して、しかも周りの百貨店に客足が取られていってしまった。三重苦のように思えますが、どのように乗り越えられたのですか?

三田:まあ、乗り越えることは不可能ですよね。

花海:あれ? 乗り越えていないんですか。

三田:100パーセント無理ですよね(笑)。それでも業績を立て直すためにいろんなことをしました。品揃えを変えたりとか、取引先をもっと儲かる問屋さんに変えたりとか、やれるだけのことはやっていました。

花海:衣料品店を立て直すために、いろいろアイデア出されたということですか?

三田:分かりやすく言うと、儲かる商品を扱うということですね。仕入れ先の掛け率が高いものばかり扱っていたんです。どうしても長年の取引があるので、急に辞められないんですよね。

花海:衣料品店を立て直すために努力をされていたんですね。そこから漫画家にはどうしてなろうと思ったのでしょうか?

三田:衣料品店が閉店するだろうというのは目に見えていたわけです。お店を閉めた後に何をやろうか考えた時に、とりあえず手っ取り早く一人でできるのが漫画だったということですね。

未経験のスタートから新人賞を目指した

花海:漫画家ってアシスタントの方を雇ったり、出版するにあたって結構大変なイメージがありますが..….。

三田:最初は全部1人で描きます。1~2ヶ月かけて全部1人で仕上げるんです。それを漫画雑誌の新人賞に応募するんです。雑誌の新人賞の大賞の賞金が100万円だったんですよね。その100万円を取りに行くという感じでした。そこに「現金100万円あげます」と書いてあるわけですからね。

花海:それは賞を取ったら、ですよね。

三田:そうです。賞を取れるように描くんです。

花海:すごい……自信はあったんですか?

三田:描きあがったものを見たら、「そこそこいけるな」と思いました。

花海:それまで漫画を描かれた経験はあったのですか?

三田:全くなかったです。

花海:全くなく!? すごいですね。編集者の方は「大物新人が来た!」と思われていたのではないでしょうか?

三田:けっこう昔は青田買いというか、たくさん(漫画家を)取っていたんですよ。しかもその雑誌が新人をたくさん集めて、これから踏み出そうという感じだったんです。雑誌の中に大賞を取った作品が載っていて、それを読むと、これくらいならいけるなという感じ、あるじゃないですか。

花海:あったんですね。

三田:これで100万だったら、この半分はもらえるだろうと思っていました。

花海:応募したのはどんなジャンルだったのですか?

三田:ほのぼのした、ハートウォーミングみたいな感じでした。

第二の人生を歩むための手段が「漫画」だった

花海:1人で漫画を描くのは根気がいると思うのですが、家業に比べたらできるという自信はあったのでしょうか?

三田:商売って自分の力ではどうにもならないことがあるんですよね。例えば、すごくいい夏物服を仕入れたのに夏が寒かったとか、冬物をしっかり品揃えしたのに暖冬だったりとか。天気とか景気とかは自分ではどうにもならないですけど、漫画は全部自分でコントロールできるんですよね。

全部1人で完結できるというところに漫画家の魅力があるなと思います。これは後から気づいたことですけどね。

花海:なるほど、ありがとうございます。「三田先生、すごく楽天家ですね」というコメントも来ていますが、「楽天家」ということでもないですよね。とりあえず挑戦してみて、事業をたたむとか、判断されますよね?

三田:ある程度予測がつくんですよね。そこに必死にしがみつくわけではなくて、どうやって撤退するかを考えるわけです。撤退した後の自分の第二の人生のルートをちゃんと作っておかないと、「お店閉めました、もう何もありません」ではどうにもならないですよね。次のルートを作りながらお店を撤退する準備をしていくということです。

花海:いきなり撤退するのではなくて、次の道ができてからということですね。

三田:ちゃんとサバイバルできるルートを確保しておくんです。それが漫画だったということですね。

家業と漫画家、二足のわらじで活動していた時期も

花海:では続いてのピンチにいきましょう。こちらです。「デビューするがヒット作に恵まれず!」30歳の時だったということですが、どういうことだったのでしょうか?

三田:編集部の方から「月刊連載をやらないか」という話をいただきましたが、その頃はお店もやっていたんです。なので、お店をやりながら月刊連載をやるという二足のわらじ状態でした。その頃は編集部の方からお仕事の依頼を受けることが多くて、それをずっとこなしていくうちにそれだけで生活できる、生ぬるい期間が何年か続きました。

ただ、これを続けていくと漫画家として消えていくなという予感があって、代表作を持たなきゃいけないなと思った時に、どうしようかと。

花海:才能に恵まれた三田先生なら、ヒット作なんてすぐに生み出せそうな気もしますが。

三田:そう甘くなかったんですよね。

花海:そうだったんですね。そのピンチをどう乗り越えられたのでしょうか?

三田:ある雑誌からお声がかかって、『漫画ゴラク』という週刊雑誌があるのですが、そこから漫画を描かないかというお誘いを受けまして、そこの編集者が「自分が好きなものを描いていいから」と言っていただいたんです。

そこでずっと温めていた「高校野球の監督を主人公にした漫画をやらせて欲しい」と言ったら、「じゃあそれをどうぞ」と言っていただきました。

読者アンケートで上位をキープするため、ある作品を研究

三田:それで連載が始まったのですが、自分が好きな作品だったのでなんとか長く続けたいなというのは自分の希望としてありまして、そこでどうやったら雑誌の中である一定のポジションについて長く続けられるかというのを自分なりに研究して実行しました。

それがたまたま評価を受けて、長期連載に持っていくことができました。これが最初の代表作として認めていただけるようになったということです。

花海:漫画の裏側というものがよくわかっていないのですが、長期連載をするにあたって何か条件があるのですか?

三田:やっぱり読者アンケートで人気を取らなければいけません。毎週ランキングで出ますので、なるべく上位にい続けないといけないです。

花海:なるほど。上位にい続ける法則は先生なりに持っていますか?

三田:まず、人気ランキング1位の漫画を徹底的に研究することですね。

花海:ちなみに先生が研究されていた漫画は何だったのでしょうか?

三田:『漫画ゴラク』では『ミナミの帝王』という作品です。もうぶっち切りの1位でした。

花海:まさに帝王ですね。

三田:『ミナミの帝王』にある程度似たテイストを入れれば、読者もこっちになびいてくれるのではないかと(笑)。そういう作戦でした。

『ミナミの帝王』から学んだ、人気作品の3つのルール

花海:言える範囲で結構なのですが、どの範囲を参考にしたのでしょうか?

三田:ナンバーワンの秘訣は3つあると思っています。1つは顔が大きいことです。『ミナミの帝王』は1ページに主人公の顔をドカンと描いているページが多いんです。それで私も顔を大きく描くようにしました(笑)。

花海:たしかに『ドラゴン桜』もコマの割りに顔が大きいですよね。

三田:はい。2つ目は決め台詞があるんです。必ず毎週1個「〇〇やで!」とか、その話を象徴するような決め台詞を無理やりでもいいからつけようと思いました。

3つ目は比喩表現を多用するんです。例えば『ミナミの帝王』の中で、「あいつは蛇みたいなやつや!」というセリフがあるのですが、必ず顔の横に蛇を描いているんですね。蛇のビジュアルも一緒にくっつけると、すごくインパクトがあるなと自分なりに分析しました。なので、必ず何かに置き換えた比喩表現を一話の中に入れていきました。

この3つを取り入れていたら、ランキングがじわじわ上がってきて、これは効果があるなと感じました。それを続けていくうちに読者の支持を得られるようになりました。

花海:なるほど。顔を大きく、決め台詞を決める、比喩表現……たしかにインパクトがあって記憶に残りますね。

自分の作風が生み出せるまでインプットを続ける

三田:読者の印象に強く残るように工夫することが大事だと思います。一度読んで記憶に残るような漫画は、おもしろいと思ってもらえるのではないかと思っています。なのでこの3つをルール化しました。

花海:そのルールを守り続けていたら、アンケート1位をずっとキープできたということですか?

三田:そうです。ちゃんと成果として現れてきました。それ以来自分の表現の型というものを定めて、他の作品でも必ずこれを繰り返すようにしたら、自分の作風というか、作品のカラーができてきました。これはやってよかったなと思います。

花海:ちなみに最近の漫画の法則というのはありますか?

三田:僕は特に変えていないです。徹底してこの3つでいこうかなと思っています。

花海:なるほど。失礼かもしれませんが、『ミナミの帝王』を参考にされたということで、「もしかしてパクリなんじゃないか?」とか言われたことはありませんでしたか?

三田:うーん、もしかしたら言われていたのかもしれないですね。でも気にしないので。

花海:気にしない!? そうなんですね!

三田:「パクっていますね」と言われたら「はい、パクっています」と言います(笑)。

花海:潔いですね。あくまでもお手本として、自分の作風が出るまで作品に落とし込むということが大事なのですね。

三田:そうですね。ある意味開き直ったほうが勝ちだと思っているので、「パクっているでしょ」と言われたら、「はい」と言うしかないですね(笑)。

花海:なるほど。でもこれは漫画だけの話ではなくて、受講生のみなさんにも通じる話ですよね。例えばコロナ禍で、他社がやっている新しい飲食店の形態とか変わった営業方針とか、真似していいと思います。真似をすることで、自分なりの道が拓けてくると思うので、参考になりますね。

41歳、3本の連載を同時に抱える

花海:続いてのピンチはこちらです。「連載を同時に3本抱えることになる!」41歳の時ですね。でもこれは嬉しいピンチですよね。

三田:そうですね。漫画家として雑誌から依頼を受けるのは名誉なことなので、嬉しい悲鳴ですね。ただ、3本抱えるとなるといろんな面で大変になりますね。

花海:これは週刊連載ですか?

三田:いえ、これは週刊2本と隔週1本です。

花海:それは大変そうですね。

三田:そうですね。自分の人生の中でも一番漫画を描いた時期だと思います。

花海:その嬉しい悲鳴をどうやって乗り越えたのですか?

三田:その頃は、先ほどお話しした野球の漫画は『漫画ゴラク』の方で連載を1本やっていたんです。そうしたら『ヤングマガジン』という雑誌に「うちでも描かないか」とお声がけしていただいたんです。

ヤングマガジンは今でも人気ですが、当時はものすごい、大メジャー雑誌だったんです。野球で言えば、ニューヨークヤンキースから「うちに来ないか」と言われているようなものです(笑)。

花海:たしかにメジャー級ですね。

未経験のアシスタントも採用した「人海戦術」

三田:ここで断ったら二度とヤングマガジンで描けないと思ったので、その時は週刊誌を1本やっていて大変だったのですが、「やります」と返事をしました。

花海:二つ返事で?

三田:はい。まず返事をしてから考えようと思いました。「2〜3日考えます」と言うと、熱が冷めてしまうじゃないですか。その時に編集長が直々に来たんです。

花海:それは断れないですね。

三田:編集長が直接来るというのはよっぽどのことなので、これは絶対に断ってはいけないなと思いました。「やる」と返事をしてからどうするか考えました。

三田:まずアシスタントの数を倍にしようと思って、求人雑誌に募集を出しました。未経験者の方や色んな方がたくさん来たのですが、「とりあえず頭数がいればなんとかなるだろう」と思って。

花海:初心者でも受けたんですね!

三田:とにかく仕事場に人がいっぱいいると安心するんです。

花海:なるほど。確かにアンケートで上位を取らなきゃいけないというプレッシャーがありながらですもんね。

三田:そうなんです。人海戦術でなんとか乗り切りました。

花海:それだけ忙しい状況になることはわかっていても、チャンスをつかみに行ったのですね。ありがとうございます。

三田氏が考える、若いうちしておいたほうがいいこと

花海:それでは続いてのコーナーに参りましょう。続いては「サバイバル名言」です。三田先生の作品といえば、数々の名言が出てくることで有名です。こちらのコーナーでは、作中に出てくるサバイバルにまつわる名言の穴埋めを、先生に事前に用意していただきました。みなさん、穴埋めクイズに挑戦してみてください。

それでは最初の名言はこちらです。「生き残りたいなら若いうちにすることは○○だ!」みなさんは何だと思いますか? 「失敗」「投資」「冒険」「自己投資」「苦労」「挑戦」などなど、受講生の方から続々とコメントが来ております。それでは先生、解答をお願いします!

三田:「人と会うこと」です。

花海:人と会うこと……どういうことでしょうか?

三田:つまり、コミュニケーション能力ですね。これは人と実際に会ってコミュニケーションを取らないと身につきません。若い時から経験して積み重ねないと、年を取ってからは身に付けるのが難しいと思うんです。若いうちは行動力がありますから、ぜひ自分のネットワークを広げてほしいですね。

自分の自信を見せるためにも、人に会うことが大切

花海:年を取ってからでは身に付けられないのでしょうか?

三田:年齢は関係ありませんが、「若いうち」というキーワードがあるので、そういうトレーニングを積んだ方がいいということです。

花海:「今日が一番若い」と言いますからね。先生は若い頃、人とよく会っていたのですか?

三田:先ほどお話しした商売の中で、飛び込みで問屋に行ったりするので、初対面の人に「いや~。もう売れて売れて」みたいなことを言わなきゃいけないんですよ。

花海:なるほど。自信を見せるというか。

三田:そうですね。問屋が売れていない店に商品を卸すわけがないので。

花海:確かに、おっしゃる通りです。この「人と会う」というのは、自分を知ってもらうことももちろんですが、相手のいいところを真似る機会にもなるということですよね。

三田:そうです。やっぱり人と会うと刺激になりますよね。

花海:なるほど、ありがとうございます。

1人でも漫画は描けるが、ヒット作品にはチームワークが必要

花海:では続いての名言に参りましょう。「ヒットを生むためには○○を怠るな!」です。漫画のヒットの法則は先ほど三つ教えていただきましたが、ここでは名言なのでまた別ですね。それでは正解を見てみましょう。

三田:「飲み会や会食」です。

花海:あれ? さっきと同じような……(笑)。どういうことですか?

三田:「漫画を描く」ことは1人でもできますよね。でも「ヒット」となると、作品だけの力でヒットさせるのはよっぽどの傑作でない限りないんです。ヒットさせるにはやっぱり編集者との強い絆やチームワークが必要なので、そのために良好な人間関係を築くには飲み会や会食は大事だと思います。

花海:なるほど。こういう飲み会や会食で編集者と距離を縮めているからこそ、ヒットが生み出せるということですか?

三田:そう言うと極端かもしれませんが、頻繁にコミュニケーションを取ることは大切ですね。もう一つの面は、飲み会や会食ってそれまで会ったことのない人がいることがありますよね。その人と話したことが何かのきっかけでアイディアになることもあるので、今はコロナでなかなか難しいですが、大勢で集まる場に顔を出すのは有効だと思います。

傑作とは、天から降ってくるものではない

花海:先生はこのコロナ禍でどうされていますか? リモート飲みとかされているんですか?

三田:それはやっていないですね。外出もなるべく控えていますが、これからそういう機会があれば、怠らずにまた参加していこうと思っています。

花海:受講生の方からも「ヒットは人を介してなされるものなんですね」とコメントが来ています。たしかにそうですよね。

三田:1つ付け加えるとしたら、なんでも自分でやろうとしないことです。

花海:相手に任せるということですか?

三田:はい。自分の能力なんてたかが知れていますので、いきなり天から降ってくるように自分で傑作が生み出せるという考えは、僕は一切ないです。人と会って、その偶然の出会いから何かインスピレーションを得たアイディアの方がおもしろいのではないかと思います。

なので、自分で何でもかんでもやろうとせずに、人の手を借りた方がヒットに結びつきやすいと思います。

ある学校へ取材に行き、教員との会話から生まれた作品

花海:言える範囲でいいのですが、そういう人との出会いによって得たアイデアって具体的にありますか?

三田:『インベスターZ』とかはそうですね。東北のとある野球の名門校に取材に行ったことがあって、その取材で監督や部長と会食したんです。本当は野球の話を聞きに行ったのに野球の話はそっちのけで、「学校の経営が厳しい」という話ばっかりしていました。

花海:そうなんですか。

三田:それで帰りの新幹線で「学校の経営ってどうやったら安定するのかな」と考えていたんです。私立学校の経営ってけっこう厳しいらしいんですよ。学校の資金者が学校を運用するために多額の資金を出して、その運用益で成り立っているらしいんです。

これを大人がやり取りしているのはおもしろくないじゃないですか。中学生の子どもがやっていたらどうだろうとと思ったわけです。「投資部」という部活にして、主人公の中学生が入るというストーリーを思いつきました。その帰り道で大体設計図ができました。

花海:早い! 帰り道に設計図ができてしまったんですか!

三田:なので、その野球の監督から学校経営の愚痴を聞いていなければ、この作品は生まれなかったわけです。

花海:すごくアンテナを張っていますね。今って飲み会に参加するのが無駄というか、生産性がないなと思っている若者が多いですが、そこでの愚痴さえも漫画のアイデアに変えてしまうというのはさすがですね。

三田:自分によっぽど自信があればいいのですが、僕は自分の能力にそんなに自信がないので、人からどんどんアイディアを引っ張り出して漫画にしています。

花海:なるほど、おもしろいですね。ありがとうございます。

お金を稼ぐことはゴールではなく手段

花海:では続いての名言に参ります。「人生の成功とはずばり○○である!」です。先生、正解をお願いいたします。

三田:「お金を稼ぐこと」です。

花海:どういうことでしょうか?

三田:「成功者」と呼ばれるのは、お金をたくさん稼いで税金をいっぱい払った人ですよ。

花海:これまでの先生の話だと、「人に恵まれること」とかそういうことなのかなと思ったらお金なんですね。

三田:税金をたくさん払えば払うほど、やっぱり社会に対する貢献度は高いわけじゃないですか。税金をいっぱい払うには、いっぱい稼がないといけないので、社会に貢献するには稼ぐことが大事だと思いますね。

花海:なるほど。お金がゴールというわけではないんですね。

三田:そうですね。食べるためというわけではないです。

花海:何かやりたいことがあってそういうお考えなのか、ある程度ここまでは貯めて貢献しようとお考えなのか、どちらなのですか?

三田:貯金しようとか、資産を増やそうとか、そういう願望はないですね。

花海:そうなんですね。先生の漫画を読んでいると、お金が大好きなイメージもありますが…

三田:20代の時に相当お金で苦労したので、お金に対する執着は人一倍強いと思います。「夢を叶える」「人から愛される」とか、そういうことも大事なのですが、こういう質問に対しては、僕はなるべく具体的な物で答えるようにしています。そこで「お金」がぴったりだったということですね。

花海:なるほど、ありがとうございます。名言とともに三田先生の考えを伺いました。先生、本日はありがとうございました!