テレワーク下で生産性をUPさせる! 進化系雑談のつくりかた

河合優香理氏(以下、河合):みなさん、本日はお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。株式会社Enbirthの河合と申します。本日はお昼の時間帯で、テーマも「雑談」ですので、みなさんお昼ご飯でも食べながら、ぜひ気楽な気持ちでご参加いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

さっそく始めていきたいと思います。本日は「テレワーク下で生産性をUPさせる! 進化系雑談のつくりかた」というお話ですので、まずみなさんに聞いてみたいと思います。みなさん、テレワークしていらっしゃいますか? 「しているよ」という方は、(Zoomで)手を挙げるなどリアクションしてくれるとうれしいです。

けっこう(手が)挙がりますね。みなさん、やはりもうテレワークですね。ありがとうございます。ちなみに、うちの主人は某日系家電メーカーに勤めていますが、去年の3月から1年半の間に出社したのはなんと3回だけ。1回目はハンコを押しに行って、残り2回はワクチンの職域接種に行っただけ。本当に3回しか出社せず、あとはずっと家にいるというのもどうなんでしょうか(笑)。

広瀬眞之介氏(以下、広瀬 ):ワクチンとハンコが同じレベルなのがすごい(笑)。

河合:さすが日系大企業ですよね(笑)。

「正直、忙しい時に雑談で時間を取られるのってキツい」

河合:もう1つ、せっかくなのでみなさんに聞いてみたいと思うんですけれども。テレワークにおいて「雑談タイム」みたいな、コミュニケーションを増やす取り組みってしていると思いますか? していると思う方は「そう思う」、まあまあしていると思う方は「ややそう思う」、「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」など、いかがですかね?

みなさんポチッとしてくださいましたか? じゃあ、いったん締め切りますね。こんな結果になりました。「そう思う」「ややそう思う」、けっこうばらつきましたね。「どちらとも言えない」という方もいらっしゃる。なるほどですね。ありがとうございます。

実は「雑談ってすごく大事だよね」ということが、いろんなメディア(で取り上げられていて)、調査結果にも出ているんです。雑談は、生産性や創造性を高めるといった記事もよく目にすると思います。

じゃあ、実際のところどうでしょうか? 私の周りでも「雑談(の取り組みを)やっているんだけど、発言するのはいつも同じ、声が大きい人なんだよね」「正直、忙しい時に雑談で時間を取られるのってキツいよね」「なんとなくやってみたんだけど、自然消滅しちゃったよ」などの声がけっこう聞かれます。

そこで、弊社の調査結果から見えてきた、テレワークについての興味深い事実を簡単に紹介させていただきます。

「テレワークで済む仕事でも出社すべき」という、出社プレッシャー

河合:まず、1つ目。「上司と部下で認識にギャップがある」ということ。「テレワーク下において感じていることを教えてください」と聞いてみたところ、第1位は「仕事から離れられない感じ」でした。これ、あるあるですよね。

私もテレワークしていると、どうしてもオンとオフの切り替えがすごく難しくて。土日でも、早朝でも、夜でも、なんとなく仕事しちゃうんです。仕事からどうしても離れられない感じが、けっこうあるなと思っています。ただ、今日ご注目いただきたいのはここなんですね。

「出社している人に気を遣う」「テレワークで済む仕事でも出社すべき」という、「出社プレッシャー」を感じるという人たちが、実は無視できない数値で存在しています。じゃあ、いったい誰がこう感じているのか。20~30代の若い世代が、出社している人たちに気を遣っています。

じゃあ、誰が出社しているのか。出社しがちなのは、40代なんですね。20~30代の若い世代は、どうしても40代くらいの上司が出社していると「出社プレッシャー」を感じてしまって、必要がないのになんとなく出社しているのが見てとれます。

また、すごく興味深いのが、(出社プレッシャーと)労働時間との関係性なんですね。出社している人に気を遣っている(テレワークの)人は、実はダラダラと仕事をしてしまう傾向があります。

やはり出社している人に気を遣っているので、長時間働くことでなんとか穴埋めしようという気持ちが働くのかもしれません。なので、この出社プレッシャーと労働時間の関係性は、気をつけて見ていく必要があると思います。

中途半端な雑談の取り組みが、社員の孤独感を強めている

河合:ここからが本題ですが、今回のテーマである雑談などの「コミュニケーションの取り組み」は、実際に効果があるのか。調査結果で見ていきたいと思います。

まず、「雑談と生産性」について。先ほど、みなさんにもアンケートを取った「テレワークになってから、コミュニケーションを増やすため、雑談の取り組みをしていますか?」という質問に対して、「しているよ」(「そう思う」)とご回答くださった方たちは、やはり生産性が上がったと認識しているんですね。

でも、注意して見なければいけないのが、「ややそう思う」の人たち。先ほども何人かいらっしゃいましたが、そういう取り組みをしてはいるけど、自信を持って言えるほどでもないレベルだと、「生産性は変わらない」と回答しているんです。

つまり、「そう思う」と言えるほど自信を持って、しっかりと雑談の取り組みをしているのであれば生産性を上げる可能性がある。でも、中途半端だとあまり効果がないことが、この結果からわかります。

もう1つ興味深いのが、「雑談と孤独感」の関係性なんですね。「テレワークをすることで孤独を感じる」というお話は、いろんな記事や調査結果で出ていると思います。そして、雑談をすることで孤独感は解消されるのか。やはり、雑談の取り組みを「している」(「そう思う」)と自信を持って回答している方たちは孤独感が軽減されています。

でも、「ややそう思う」と回答している方たちは、逆に孤独感が増しているんですね。なんとなく雑談の取り組みをすることによって、逆に孤独を感じてしまっている。みなさんも、「ああ、そういうこともあるかもしれない」と感じるんじゃないでしょうか。

しっかりした雑談の取り組みをするのであれば、孤独感の軽減につながるが、中途半端だと逆に孤独感が増してしまうのが、調査結果から見てとれると思います。やはりやっているだけでは意味がなくて、雑談といえども、どうやるのかが非常に重要なんですね。

「ビジネスボードゲーム」を使用した人材育成

河合:そこで今日のメインのテーマですが、「雑談を効果的に行うにはどうしたら良いのか」ということで、広瀬さんにバトンタッチさせていただきます。広瀬さん、お願いします。

広瀬:我々はリモートのコミュニケーションにおいて、特に雑談部分に関して力を入れてやってきたので、その知見を一部ご披露できたらなと思っています。スライドはちょっと量が多めなんですが、パパッと移動するので、話を聞くことに集中していただければと思っております。今日はこんな感じでいきます。

私の知人・友人もいらっしゃっていますが、あらためて(自己紹介をさせていただきます)。「遭遇設計」という小さい会社をやっておりまして、これまで主に人材変革や組織変革のお手伝いをさせていただく仕事を行ってきております。

今は「ビジネスボードゲーム」と呼ばれるアナログゲームの形態で、人材育成などをお手伝いしております。会社のメンバーが作ったゲームで、一番有名なのは「サイゼリヤの店長運営ゲーム」というものですが、こういったものを開発しております。

これは完全オリジナルで、サイゼリヤのノウハウも入りまくっていて、一般販売はできないんですけれども。ご依頼いただいたマネージャーさんからは、「5年間くらい店長をやらないと理解できないことが、このゲームを数日やるだけで学べる」と、おっしゃっていただいています。擬似体験によって人を育成することを得意としております。

そもそも「雑談」の定義とは?

広瀬:本題のリモートワークについての課題、特にコミュニケーションについて進めていきます。みなさんご承知のとおり、リモートワークでは「コミュニケーション」や「ストレス」などが基本的に問題になりやすく、コミュニケーションの中でも特に「雑談」が足りないということです。

先ほど河合さんがおっしゃったように、雑談がストレス解消のカギになったり、イノベーションの種になったりすると言われています。

倉貫(義人)さんというフルリモートワークの会社の社長さんが、「雑談」と「相談」の合わせ技で、「ザッソウ」ということをおっしゃっています。雑談がないと相談するのがちょっと難しくなると。例えば、「A社のこんなプロジェクトにおいて、Zという課題が発生したんですけど、どうしたら良いですかね?」など、用件が確定していることは相談しやすいと。

でも、ちょっとたばこ部屋でサクっと話すとか、飲みながら「いや~。ちょっと今娘がこんな感じなんで、どうしたら良いですかね?」みたいな雑談ができていないと、なんとなくモニャモニャしていることは相談しにくい。じゃあ、雑談ってどうやったら良いかということなんですけど。そもそも、雑談って何ですか?

「なんとなく話ができること」っておっしゃる方もいますが、一応定義がありまして。これは法政大学経営学部の長岡(健)先生の受け売りなんですが、雑談とは「非公式かつ内向きなコミュニケーションである」と。会議、商談、目的のある社内イベントなどはここに含まれません。

「雑談してください」と言われた瞬間、それは雑談ではなくなる

広瀬:(スライドを指しながら)図に表すとこんな感じになります。

内部コミュニケーションで、メンバー同士で話すことには「会議」がありますと。「業務に必要なので、〇〇時からこういう話をしましょう」と設定されると、これは公式、フォーマルとかオフィシャルな場になります。

これが外向きになると、「日程を合わせてこの人と商談をしに行きます」とか「コンペに行きます」となる。これが外部コミュニケーションのオフィシャルな形式です。

非公式、インフォーマル、カジュアルになると、内部コミュニケーションにおいては「雑談」というかたちになります。外部だったら、一例としては接待などが挙がります。メンバー同士の、目的がない、インフォーマルな会話が雑談ですが、これは「促進」や「実施」が難しいんです。つまりインフォーマルなのに、「雑談しましょう」と言った瞬間に目的が設定されるんですね。

雑談という目的が設定されてしまうので、実はその瞬間にフォーマルになっちゃうんです。つまり、(雑談の)「命令」や「依頼」はできないんですね。「雑談してください」「目的のない会話をしてください」と言った瞬間に公式になっちゃうので、それは厳密な意味では雑談ではないと。

会社においてだけじゃなく、こういうイベントなどで「雑談してください」と言われても、「この人誰だろう?」「今、何話せば良いの?」「俺ら共通点って何かある?」みたいなところから探っていくと、けっこう時間がかかっちゃって難しいと。

雑談に必要な3つの要素

広瀬:コロナ禍の前から課題にはなっていましたが、じゃあ(雑談って)どうしたら良いのか。これまで、「環境」や「状況」によって雑談を促進することが行われてきました。

例えば、「適度な距離」と「適度な暇」と「自然な理由」、この3つが重なる環境や状況では、初めての人同士でも雑談がしやすくなるんです。こういうのはオフィス設計の人たちがずっとやってきたわけですけれども。これはさっきの、4象限と同じですね。内部コミュニケーションと外部コミュニケーションが縦軸になっていて、横軸に非公式と公式がプロットされています。

(スライドの)左上に「飲み二ケーション」「たばこ部屋」とあって、右上に「会議室」があります。会議室ではもちろん会議をしますよねと。商談室で商談しますと。

「飲み二ケーション」や「たばこ部屋」だけだと、アルコールが好きじゃない方、得意じゃない方もいるし、そもそも喫煙室に行かない人もいます。これだと社員全員が利用できないので、オフィス(設計)の方々は「そういう話しやすい環境をもうちょい拡張しましょう」と、社内カフェや立ち話ができる場所などを作って、環境的に雑談を生むようにしてきました。

「自然な理由」「適度な暇」「適度な距離」が揃う場所とは

広瀬:私は以前、三井不動産の運営していたコワーキングスペースのコミュニティマネージャーをやっていたんですが、このあたり(立ち話ができる場所)にコーヒーサーバーを用意するんですね。これはネスカフェのコーヒーサーバーで、まあまあ時間がかかりますよねと(笑)。

コーヒーを出して、この後に(泡の)クレマを出すわけですけど。「泡もまた時間かかるな」「まだ入れ終わらないな」「もう1回ボタンを押せとかいってるな」と、ぼーっと待っていなきゃいけないわけですよね。

待っていると暇じゃないですか。コミュニティマネージャーをやっていた時に、私はこうやって待っている人のところに、さも「コーヒーを飲みに来ました」という感じでついて行っていました。実際に(コーヒーを)飲みに来てるんですが。

そこで、「今日どこから来たんですか?」とか「何時くらいまでやられるんですか?」というお話をすると、自然と男性でも女性でもちゃんと話を聞いてくれるんです。でも、これが何もないところで、いきなり私が若い女性に話しかけると、まあまあ怪しいというね(笑)。

河合:そうですよね(笑)。コーヒー大事ですね。時間がかかるコーヒーメーカーって、そんな意味があったんですね。

広瀬:めちゃめちゃ意味があります。だから、わざと遅く抽出することが大事なんですよ。

河合:なるほど。確かに、それ大事ですね。

広瀬:そうすると、「自然な理由」で「適度な暇」で、後ろに並ばなきゃいけないから「適度な距離」で、3つの条件が揃いますよね。なので、コワーキングスペースにはこういうコーヒーメーカー(を置く)。あとは「WeWork」(国内6都市に展開するフレキシブルオフィス)なんかではビールサーバーとかがあって、あれもちょっと時間がかかりますと。

河合:確かに。女性だと、お手洗いのメイクルームが同じ役割ですね。例えば、他部署のちょっと怖いお姉様とかと、そこで仲良くなったりするという。すごく大事なコミュニケーションの場だったりするんですよね。

広瀬:すんげえ大事ですね。ただ、男性が入れないっていうね(笑)。

河合:そうですね。女性同士のコミュニケーションだけだ。横からすみません。

広瀬:いえいえ、ありがとうございます。確かに。