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孫正義氏 基調講演(全3記事)

合併症が半減、感染症6割減、入院期間は7割短縮 ソフトバンクが投資する、最先端の医療ロボットの成果

今年で10回目となる「SoftBank World 2021」が、9月15日から17日にオンライン形式で開催され、ゲストを交えた基調講演やパネルディスカッションなど60以上のセッションが行われました。本記事では、孫正義氏による基調講演を3回に渡ってお届けします。2記事目の今回は、ソフトバンクが出資する18社の「スマボ企業軍団」のうち、製造業・物流・医療の分野で実用化されている、最先端のスマボ(スマートロボット)の事例を紹介しています。

投資家はお金を作り、資本家は未来を作る

孫正義氏:情報革命の資本家。資本家と投資家とは何が違うかというと、投資家はお金を作るが、資本家は未来を作るということです。

情報革命の最先端がAIです。ここ最近5年間ぐらいの未上場のユニコーンのAI企業に、我々ソフトバンクグループがいったいどのくらい資金調達に参加し、応援したかというと、世界のAI未上場企業の約1割を資本提供者として応援しています。

これはナンバー2・ナンバー3の会社、あるいはファンドと比べて、おそらく何倍も大きいと。世界で圧倒的ナンバー1の規模の、AI企業への資本家としての立ち位置にあるのが、ソフトバンクグループであります。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド1、2、そしてLatAm(ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド)ですね。こちらを含めて301社のAIのユニコーンに、我々ソフトバンクグループが資本を提供しているということであります(投資委員会承認済みで投資完了前の43社を含む)。

AIの起業家とビジョンを共有して一緒に未来を作る。我々は資本の面でリスクテイキングをして、未来を彼らと一緒に作り上げていきたいということであります。

我々ソフトバンクグループのロボットに対する最初の取り組みは、Pepperでした。そのPepperにとどまるのではなくて、現在ソフトバンクロボティクス、Boston Dynamics、Agile Robots、Opentrons、AutoStore……と、18社のスマボ企業軍団を作ったということであります。

プログラミングなしの検知で、風船を割らずに針を刺せるロボット

今日はどんな会社かを少し掘り下げて、みなさまにご紹介したいと思います。

まず製造業についても、AIを使ってデザイン・設計をし、スマボで自動生産すると。単なるプログラミングではなくて、臨機応変に判断しながら。製造ラインが刻々と変わりますので、臨機応変に新しい製造ラインを構築しながら作って、それをスマボで自動輸送すると。そういう製造業の世界にスマボで寄与したいと。

一つの事例として、Agile Robots。最近我々のビジョン・ファンドの投資先の1社になりました。これはスマボを使った、ハイテクの製造業への貢献です。ビデオを見ていただきたいと思います。

【映像再生】

例えば今まで(のロボット)ですと、プログラミングしないでこうやって刺していくと、人間の手の甲にズボッと突き刺さる。(でもスマボであれば)紙ですら(突き破らずに)ポッと止められる。

これはプログラミングしてるのではなくて、接触を探知しながら、感触を得ながら一瞬でその場で判断して止まると。これで衝突しないで済むようになるわけですね、壊れない。風船ですら割らないで、パッと針が止まると。

こういうことは、今までのロボットではできなかったですね。もちろんプログラミングして「あら間違った」と言って、人間にガツンと突き刺さったというのでは、製造業の現場で人間とロボットの共存は非常に危険になるわけですが、このように衝突を探知しながら、パッと判断して止まると。

2週間かかっていた製造ラインの構築が、わずか4時間で可能に

それができると何が良いのかということですが、まずモーション学習を1回させて、例えばiPhoneの製造現場でこうやってシールを貼ったり。あるいはプリント基板を乗っけたりというものが、アタッチするところを精密に感知しながら制御する。製造ラインがどんどん新しく、いちいち細かいプログラミングをしなくて、モーション学習しながらどんどん新しい製造ラインを作っていけるようになります。

スマホやパソコンや自動車、いろんなハイテク製品の製造ライン。精密機械の製造ラインで、今まで人間がやっていたような作業を、このスマボでやっていけるようになる。

今までのガラボに比べて、製造ラインの構築が2週間ぐらいかかっていたのが4時間でできるようになって、生産能力も40パーセントアップして、不良率が半減するということです。まさにスマボだから、しかもハイテク製造用のスマボだからできることです。

いちいち決まった動作をプログラミングするとなると、人間のプログラマーの作業で2週間かかってしまうということですね。それがこのスマボであれば、自分で検知して学習していきますから、1回動作学習したらあとは、微調整は自ら判断して。「痛っ」とか(笑)、「ぶつかった」とか「ネジを差し込み過ぎた」とか、あるいは「ちょっとずれた」とかいうようなことを、自らその場で判断して。

製造ラインで来る時は、ちょっとずつずれて来るのを、正確にパッパッと臨機応変に判断しながらやれる、というわけです。

物流の世界では、ピッキングを効率化するスマボが活躍

物流。これはまた別の意味で、スマボがこれから大いに活躍すると思います。ビジョン・ファンドが投資するAutoStoreが今急成長しています。(映像を)見ていただきたいと思います。

【映像再生】

すごいんですよね、このAutoStore。本当に今、注文がガンガン来ていて。よりコストダウンして、より正確に、そしてよりスペースの活用もできるようになるということであります。

AIで判断しています。二次元の平べったいところを基板のロボットが運んでいくだけではなくて、三次元になっていて。三次元の上からピッキング、ビンを吊り上げていきます。四角い箱の中に入っている在庫をびゅーっと吸い上げてくるんですけれども。より出荷の多いやつをなるべく上の棚に置いておいて。

この上の棚も曜日や時間帯によって変わったりします。AIで全部判断しながら、なるべく上のほうに、なるべく近いほうに、より頻度の高いビンを置いておいて、頻度が落ちてくると下のほう、遠いほうに持ってきて……と、効率を上げながら、ピッキングして持ってくるということです。

形や材質がばらばらでも、ロボットが自己学習していく

このピッキングの数が3倍増になって、出荷の数も倍増して、人件費は半減したというのが実績として出ているので、今もう世界中の企業が続々とAutoStoreを導入するということです。

これをBerkshire Greyが、AIで学習しながら、一つひとつプログラミングするのではなくて「斜めにあるもの」とか「形の違うもの」とか「フニャフニャのビニールでパックしてあるようなもの」まで判断しながら、最後ピッキングして箱に入れ替えると。

こうようなことができるBerkshire Grey、これも我々ビジョン・ファンドが投資している会社です。こちらのビデオを見ていただきたいと思います。

【映像再生】

最後のピッキング、これですね。ビニールのやつ、斜めのやつまで。箱もちょっと斜めになったり、バラバラになってビンの中に入っていますが、それを腕を曲げてキュッと吸い取ったり、こちらにやったりというふうに。

こういうキュウリみたいな(かたちの)ものまで。きれいに整頓して入っているわけではない。こういうようなものがどんどんと、正確にピッキングされて、より素早くできるということです。

AIで搬送物を即時に検知して、この最後のバキュームでキュッと吸い取るのですが、これも多様な形状をグリップするのに適しています。しかも吸い取るものによって、グリップの大きさまで臨機応変に判断して、カップをすげ替えてグリップすると。そういうこともしています。

それぞれピッキングするものの形状をディープラーニングします。それをどんどんデータベース化して、2回目、3回目、4回目になるとより効率よく、より正確にピッキングできるということです。こういうことがおそらく世界で最先端、最も進んでいる会社がBerkshire Greyだと思います。

ですから、先ほどのAutoStoreとBerkshire Greyを両方インテグレーションすれば、世界最強の倉庫システムができると、私は思ってます。荷下ろしの時間が90パーセント減って、人件費が70パーセント減って、倉庫面積が35パーセント減ると。こういうような実績が出ています。

診断に治療計画、アフターサービスまでスマボが対応

次に医療の世界です。これまたスマボが今から大活躍する分野だと思います。AIで診断して治療計画を立てます。さらにアフターケアまで、このスマボで支援していくということであります。こちらをご紹介したいと思います。ビデオを見てください。

【映像再生】

人命に関わりますのでミスをしたら大変なことになります。ロボットアームでより正確に針に糸を通して縫って、というようなところまでできると。カットして、刺して、治療して、縫うという作業までできるということですね。

冒頭で言ったように、スマボというのは必ずしも2本の腕・2本の足である必要はないと思います。場合によっては3本、4本、8本腕があってもいいんではないかということです。

手術の難易度を下げ、より確実で安全な治療が受けられる

従来の手術、例えばお腹を切って開ける切開部分は、どうしても人間がやると大きくなりますし、手術の難易度も難しい。それに対して、これも人間がやってるのですが、腹腔鏡でチョンと穴を開けてやると切開部分が小さい。

手術の難易度は高いけれども、バカ―っと切腹するのではなくて穴をちょっと開けるだけですから、人間に対する負荷が小さくて、術後の回復がより早いと、より安全だと言われます。しかし難易度は、非常に難しいわけですね。

それに対してスマボによる腹腔鏡手術は、切開部分が小さいだけではなくて、手術の難易度が人間にとってより易しく、より確実に(なる)。熟練したドクターでなくても、若いドクターがより確実に、安全に、正確に手術ができるということです。

より安価で、より最先端でということで、今非常に期待されているロボットが、このCMR Surgicalであります。

高齢化が進む日本の医療費問題の解決につながる可能性

小型ですからそんなにどでかい病院じゃなくても、少し中規模、あるいは小規模の病院でも導入できるということで、今大変注目を浴びている会社であります。こちらも我々ビジョン・ファンドが資本家として参加している会社です。

導入の効果として、合併症が半減する、感染症も6割下がる、入院期間が7割下がる。入院期間が下がるということは、患者にとってのコストも減るわけですね。

日本は保険で適用になりますが、保険のコストが下がる。今、日本も国家予算の中でかなり大きな部分が医療費としてかかっています。これから高齢化しますので、ますますこの医療費は日本の国家予算に対して、大変重たくなるという問題があります。

よりコストダウンし、より感染症が減り、合併症が減り。しかもより安全で、患者にとってもより負荷が小さい。国家にとっても負荷が小さいなら、もう今すぐ導入したほうがいいんじゃないかと(笑)。こういうふうになるわけです。

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