2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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小柳津誠氏(以下、小柳津):先生。ここで少しだけいいですか?
西田千尋氏(以下、西田):お願いします。
小柳津:ありがとうございます。まさに変な話ですが、命懸けという(自衛隊のような)リアリティのある組織は、日本の中でもそんなにあるわけじゃないので。自衛隊のお話はおもしろいし、ある意味で参考にもなるし、ふだんの我々のいる会社や組織とは違うなと思ったりするんですが。
実際に防衛大学校に入られて、卒業してから現場に配属されて、最初から幹部として入られて。人の上に立っていろんなことをやって学ぶ中で、一番違和感を感じた部分ってどういうところがあるんですか?
西田:そうですね。一番違和感を感じた部分は、やはり周りの求めるリーダー像と女性性(自分の在り方)です。のちほどお話ししますが、リーダー像と女性性の葛藤は「こういう対処をしてました」というのがあるんですが。
一方で、これはすごくおもしろいなと思っているんですが、女性幹部自衛官に「部隊経験で命令して困ったこととかありますか? 女性であることで困ったことはありますか?」と聞いたら、実は意外にみんな「それはない」と言ったんですね。
全国転勤だとか、唯一無二の存在になっていく中で、(困ったことが)あるのはワークライフバランスくらいだと明るく言います。これはたぶん企業のみなさんもそうだと思うんですが、子どもを産み育てるというところでの葛藤だけで、役職に求められている責任に対して生じる困りごとに男女差はないんです。
特に、(自衛隊は)肩に階級章を付けてわかりやすいのもあってか、それを含めて役割と権限が明確です。メンバーである隊員は敬礼したり、言うことは聞いてくれるんですが、ただそこにあぐらをかいていたら今度は崩壊するわけですね。
そこから自己開示をして、「自分がこの部隊を作っていくんだ」という気概を持てない人は、男女関係なく指揮官として認めてもらえないので、うまくいかないのはあります。葛藤があるのは、やはりリーダー像と女性性ですかね。
小柳津:なるほどね。
小柳津:それって、多くの女性の方がビジネスをやる場合の共通な課題に近いような感じもするんですが、今日ご参加の方でも女性の方が何人かいらっしゃるので、今のようなことをお感じなるところってありますかね?
参加者1:私が思うのは、今はリーダー像って必ずしもジャンヌ・ダルク的な「ワー!」という感じじゃなくて、もうちょっとサーバント・リーダーというか、多様性を活かす感じになってきていると思います。
むしろ今は、女性とリーダーってけっこう相性がよかったりすると思うんですが、自衛官はそうじゃないのかなって思うところがあって。企業と(自衛隊の)リーダー像がちょっと違うのかなというのは、どうですか?
西田:だいたい15年くらいし始めたら、「おかしいな」って、まさにそこに気付くんですよ。究極のリーダー像って、男女じゃなくて品格と人格でしかないと思っていて。部隊のメンバーを見ていても、男性だから・女性だからというふうにみんな捉えていなくて、この人に本当に付いていきたいか、付いて行きたくないか。
付いて行きたいか、付いて行きたくないかの基準は、責任を果たしてくれる人かどうかだけです。ただ、なんで陥るかというと、やはり意志の強制の命令をしないといけないという組織だと、みんな最初は「男言葉遣いのほうがいいのかな」みたいに陥るんです。
西田:しかも、周りに同じような人がいないわけです。男性指揮官しかいないから、自分の部隊に行くと女性指揮官1人で。周りの人は厳しい言い方をしないですが、なんとなく男性っぽいから自分はどうしたらいいんだろう? という感じになったり。
一方で、防衛大学校は上下の関係がすごく明確なんですが、女の子も下級生に対して「○○しろ!」って、男言葉で言うんですね。「してください」とか言わなくて、「○○しろ!」という感じのまま育っちゃうと、今度は逆に浮いちゃうというのがあって。
キラキラしたロールモデルはいらないんですが、振る舞いとしてどういう言葉や態度、生き方がいいのか……ということを、組織の中で同じ性別で幹部で比較する対象が存在しないわけですよ。そこにみんな最初は陥ります。
小柳津:今おっしゃった「キラキラしたロールモデルはいらない」というのは、とても大事なキーワードかもしれないですね。最近、キラキラワードがなんでも優先する風潮もあったりするので。実態を考えていくと、それだけで済まないことが多いですから、そこはいろいろまたお話しを聞きたいと思うんですが。
小柳津:もうお一方だけ。西田さんがおっしゃったように、肩に襟章を付けて歩いているのは非常にわかりやすい自衛隊だなと思ったんですが、それも含めてリーダーシップについて、男性の方にも聞きたいと思います。男性にとってのリーダーシップのあり方の中で、今の西田さんのお話しの中でとても参考にできそうな部分って、どこかありますかね?
参加者2:今日はお話ありがとうございます。私は普通の会社員なんですが、トップに立つ方の人柄は非常に大事だと思うところはあります。「この人のためだったら、ちょっとがんばって残業しちゃう」「この人のためだったら叱られにいってあげよう」とか、そういう人柄をめちゃくちゃ感じることはあります。
小柳津:でも、男性って意外と襟章に弱くありませんか?
参加者2:我々でいうと、役職ですよね。
小柳津:そうですね。有り体に言うと、地位や立場にけっこう弱かったりしませんか?
参加者2:弱いというか、パワハラじゃないですが、そういう世界ですからね。上司が言うことは聞かないといけないような社会になっているので、それが襟章といえば襟章かもしれないですね。
小柳津:この際、一回聞いてみたいなと思うことがある方がいたら、ぜひ声を挙げていただいてご質問いただければいいかなと思うんですが、どなたかありませんか?
参加者1:聞いていいですか?
小柳津:どうぞ。
参加者1:今、ちょうど出ていたスライドで聞きたかったんです。西田さんのマネジメントってたぶんユニークというか、独特だと思うんですが、どういう経緯でこれを思いつかれているのかをすごく知りたいなと思いました。
西田:なるほど。自衛隊って食堂も運営しているんですが、事務所の人と現場で調理している人と大きく2つに分かれていて。私が29歳くらいで約30人の部下を持った時に、なんとなく事務所と現場の意思疎通が円滑ではなかったですよね。
事務所のオーダーで現場は作らされるところがあって、「こんな面倒くさい献立作るんじゃねぇ」みたいなところも含めて、なんとなくですよ。
西田:私はとにかく、絶対に一日のうちで1人と一言しゃべると決めていて。シフトもあったので、だいたい20人くらいとしか出てきていなかったですけれども。
毎日一言話そうと継続し、事務所と現場のメンバーと対峙すると、いろんな課題感が浮き彫りになってきて。みんなそれぞれいろいろ(な課題が)あり、それをしかるべき時に相談していくと、みんなで考えれば解決できるという。
とはいえ、やはり苦手な人っていて。意地悪なわけでもないんですが、自分がしゃべりやすい人としゃべりにくい人がいるので、「あの人を使って聞いたほうがいい」ということも、けっこうわかるようになってきたんです。人の心情を聞き取るって、指揮系統でなくて、人間の相性の側面でのアプローチが大事だなと。
その次に行った部隊で80人の部下が来た時に、「これは1人一言、一日一言は難しいな」というところもあったんですが、それもなるべく努めていって。それでもやはり相性はありましたが、この点を重視するように隊務運営にも反映しました。
もう1つ、女性の部下に初めて女性の上司(西田氏)が付いて、「初めて話せることがあります。今までだと上司に話せませんでした」ということがあったんですね。その時に、性別と相性って大事にしなきゃいけないなというのがあって。
「誰と誰をバディに」とかはしなかったですが、自分が歩き回る時に得てきたことで、話せることと話せないことありましたが、ある程度はみんなで御前会議で共有していたんです。以前はほとんどどういう状況であっても、絶対に図の左側の役職階層で(身上を)把握したがるんですね。
なので、最初に右側でやろうとしたら、一回係長に「隊長。私、そんなこと知らないのに、隊長が勝手に動き回らないでください」と言われたことがあって、「ちょっと待て」と言った。「それは、役職、階級、階層で判断するべきことか?」ということで、部隊1つをみんなで作り上げるんだったら、人との相性は絶対に外せないから、みんなで網の目で張ればいいって。その時に「逆に私を使えばいい」ということを話したんですね。
西田:私はけっこう自然にやっていたんですが、左側の人が圧倒的に多くて、最初はけっこうギャンギャン言われたんです。結果的に「あなたはそういう立場ですが、みんなといろんな話できる?」と言ったら、「それは難しい人がいるでしょ。私がフォローするから」ということをやっていくと、けっこううまくいきました。
「隠れメンタルダウン者」を浮き彫りにできて、病院に一緒に行けたり休ませるとか、配置換えをさせることができたのが、成果の1つだなと思っています。
なので、逆に言うとこれは本当にユニークで、今ある自衛隊のいろんな心情把握制度はどっちかというと全部左側です。人事評価も付いて回ると思うので、それだとみんな(上司に)相談しに行かないです。
小柳津:ありがとうございました。ひょっとしたら男性の方も多いですが、やはり今のことは大事で。自分の片腕になるような、信頼できる女性のサポーターがいないと、本当の意味で女性のメンバーをうまくコミュニケートするのは、意外に難しいのかもしれないですね。そういうことができるといいのかもしれないなと、今のお話を聞いてて感じました。
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