オンライン採用時代に成果を出すためには?

石倉秀明氏(以下、石倉):みなさん、こんにちは。「採用DX最前線ーオンライン採用時代に成果を出すためにはー」というテーマで、今から50分ほどお話をしていきたいと思います。キャスターの取締役の石倉と申します。よろしくお願いします。

渡邉慎平氏(以下、渡邉)ナイル株式会社の渡邉と申します。よろしくお願いします。

石倉:ということで、今からお話をしたいと思っているんですが、あらためて我々2人の自己紹介や会社の紹介を簡単にさせていただきながら、話に移っていきたいと思っています。

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私からなんですが、今、株式会社キャスターで取締役CRO(Chief Remotework Officer)という役職に就いています。経歴としては、2005年から社会人をずっとやってきて、HRでの事業や人事の経験が多いんですが、COOとして2016年から株式会社キャスターの取締役をやっていました。

この7月から、よりリモートワークを世の中に当たり前にしていく、加速させようということがあって、今はCROという役職に変わっています。それ以外にも個人の活動として、『Live News α』というフジテレビのニュース番組のコメンテーターもさせていただいています。

本社は宮崎県、社員がフルリモートで働く株式会社キャスター

石倉:簡単に会社のご紹介をさせていただければと思っています。弊社キャスターは2014年9月に設立していまして、この9月からちょうど8期目になりました。

本社は宮崎県西都市にありまして、後で出てくるんですが、創業から全員がリモートワークで働いていたので東京にもオフィスはなく、全員がリモートで働いている会社でございます。「労働革命で、人をもっと自由に」というビジョンと、「リモートワークを当たり前にする」というのをミッションにして、ずっと事業運営をしています。

サービスはいっぱいあるんですが、主には「CASTER BIZ」という、みなさんがふだん仕事で使っているであろうチャットサービス上に、専属の秘書やアシスタントを置かせていただいて、アウトソーシングでいろんな業務を受けるオンラインアシスタントをメイン事業にしています。

オンラインアシスタントから始まって、採用や経理や労務、今だとコールセンターやCSにも対応させていただいたり、サービスラインナップとしてはけっこう広げています。リモートワークに特化した人材事業だと思っていただければいいかなと思っています。

(スライドを指しながら)ちょっと図の色が薄いんですが。業務委託も含めているんですけれども、設立7年で47都道府県と22ヶ国に約800名ほどのメンバーがいまして、全員がリモートワークで働いています。

創業当時から雇用形態自由、フルフレックス・コアタイムなしで働いていたり、副業自由にしていたり。あと、当初から同一労働同一賃金でやっていたり、ずっと経営数値や給与を全公開していました。

執行役員以上の社員の6割が女性

石倉:今日は(テーマが)採用に特化していますが、採用以外で言うと、雇用形態による給与の差や役割の差がなかったり。経営としてはずっと、労働時間や雇用形態にあまり関係なく、適任であれば登用してきています。

性別や居住エリア、雇用形態とかは関係なく、会社としてはシンプルに仕事の成果や能力で判断をして組織を作っています。結果として、今は執行役員以上が12名いるんですが、6割ぐらいが女性なので、ちょっと珍しい会社かなと思っています。

こんな感じで、給与に関しても、役割(仕事内容)に紐づいて標準給与を決めたり、評価は結果のみでやったりというかたちで、世の中的な一般常識よりは、「どういうのがベストだろう?」と自分たちで考えながら、会社としては作ってきた感じでございます。

自分たちの採用もそうですし、企業さんの採用活動をアウトソーシングで受けることもずっとやっていますので、今日はそのあたりも踏まえてお話しできればと思っています。ありがとうございます。

自動車産業DXに挑むナイル株式会社

渡邉:では、私も簡単に自己紹介させていただきます。あらためまして、ナイルの渡邉と申します。

新卒でナイルに入社して、6年ほどデジタルマーケティングのコンサルタントとチームマネジメントをしていました。2018年に人事に異動して、全社の採用と広報を担当しています。直近ではオウンドメディアを中心とした採用広報など、主に採用文脈での企業認知度を上げに行く活動をしています。

私が勤めるナイル株式会社は、「デジタル革命で社会を良くする事業家集団」と掲げており、デジタルマーケティングを強みに3つの領域で事業を展開しています。

1つが、クライアント企業さまのデジタルマーケティングの支援をするデジタル支援事業。2つ目が、月間1,000万人以上の方が利用する、アプリを探せるレビューメディア「Appliv」を中心に、複数サービスを運営するメディア事業。

そして最後に、国内最大級、170兆円あると言われている自動車産業のDXに挑戦するモビリティ事業です。今は2018年に始めた「おトクにマイカー 定額カルモくん」というサービスを運営しています。月額1万数千円でマイカーを利用できますよという、車のサブスクリプションサービスとなっています。今年1月に50億円の資金調達をして、採用や組織をどんどん拡大させている状況になっています。

採用活動のさまざまな場面でデジタルを活用

渡邉:後ほど石倉さんともいろいろお話しできたらと思うんですが、弊社の採用の取り組みで言うと、面接が3回と、あとはポジションごとに用意したワークサンプルテスト、求職者が一緒に働いたことのある同僚に推薦状をもらうリファレンスチェックなど、いくつかの選考プロセスを設けています。基本的には全部オンラインでやっているので、今は会わないままに入社する方も多いですが、場合によってはオフラインも併用しています。

採用DXというテーマなので、DXになぞらえてお話をさせていただくと、使えるデジタルツールは全部使っています。今回は採用まわりをメインで書いているんですが、入社後のオペレーションや組織開発とかも含めて、デジタルツールを全力で活用しています。

あとは、うちの特徴としては、人事組織のトップとマネージャーがもともとデジタル領域で事業を作ってきた人間なので、人事が「がんばってデジタル化しましょう」というよりは、事業を当たり前にデジタル領域でやってきた人たちが組織を作っているのが1つの特徴かなと思います。

最後です。具体的にデジタルマーケティングとか、「ツールを入れましょう」という話もあると思うんですが、ちゃんとデータが取れるようになるところが特徴だと思うので、採用のダッシュボードを作って、数値を全部管理していたりとか。

あとはオウンドメディアを活用する時に、記事を出して「読まれたかどうかわからない」ではなく、オウンドメディアから採用サイトに来てくれたのか、求人を見てくれたのか、応募につながったのかというところを、全部データで歩留まりを取って、施策を打っていっているのが特徴になります。

石倉:ありがとうございます。

オンライン採用が当たり前になり、求職者にも変化が

石倉:僕がついさっき、ぎっくり腰をやってしまいまして。やや椅子にもたれかかってちょっと失礼な感じになっていますが、腰が痛いだけなので、みなさんご了承いただければと思います(笑)。さっそく「採用DX最前線」ということで、お話をしていきたいと思っています。

1つ目が「オンライン採用が当たり前になって変化したこと・しないこと」というのをテーマにお話をしたいと思うんですが、さっき渡邉さんは(自社の)採用フローがあったと思うんですけど、あれはオンライン採用が当たり前になってからというか、コロナが来てからですか?

渡邉:もともと、コロナ前から選考プロセス自体はあって。一部、オンラインの選考も使っていたんですが、完全にオンラインベースに変えたのはコロナが来てから、2020年の2月とか3月とかで、わりと早いタイミングだったんです。

石倉:なるほど。カジュアル面談から、1次面接・2次面接・最終面接まである。逆に言うと、オンライン採用になって変わったところってどこなんですか?

渡邉:プロセス自体は変わっていなくて。企業側としては「最終面接では(オフラインで)会いたいよね」「会ってみないと判断できない」みたいなところって、あるあるだと思うんですけど、そういった声はほとんど無くなりましたね。

どちらかと言うと最近は、逆に求職者の方のほうが「会いたいです」「オフィスを見たいです」「会わずに入るのは心配です」みたいな人が一定数いて。私たちから「ぜひ来てください」というよりは、求職者の方が「行ってもいいですか?」というケースが増えたかなというのが違いです。

石倉:それは、最終面接前後ぐらいですか?

渡邉:そうですね。最終面接とか、あとはオファーを出した後とかです。

石倉:なるほど。じゃあ、今のところナイルさんの採用基準だと、リモートワークで働いているけど、基本は(会社に)来られる人が対象なんですか? 別に来なくてもいい?

渡邉:会社は原則はフルリモートOKで、ただ「何かあった時に、オフィスには来られる距離にはいてね」という感じです。

石倉:じゃあ1都3県とかでも、来られれば。

渡邉:今のところはそうですね。あと、部署ごとに一部ルールがあって。週1は出社で、なるべく密にならないようにしようとか、そこは部署ルールでやっていたりする感じです。

石倉:なるほど。

選考から採用までのスピードが圧倒的に早くなっている

石倉:選考プロセスは変えていないという話ですが、他に変えなかったことや、結果変わったこととか、「意外と変わらなかったよね」ということって、どのへんがあるんですか?

渡邉:もともとうちも、選考自体は会ってやっていたので。「会わなきゃわからない」とかは、たぶん石倉さんからすると「そんなことないよね」という話はあると思うんですが。わりと(リモートワークに)切り替わったら、マインドはみんな変わっていったところがあって。

どちらかと言うと、選考の期間は圧倒的に変わったと思っていて。ここは御社のデータも聞きたいんですが、圧倒的にスピード感(が違う)と言うんですか。

転職で「1回面接して、次回来てもらうのが2週間後です」とかが当たり前だったところが、「数日後に面接を組めますよ」と、いかに早く選考をやっていくのかというのは、各社どんどん巻いている印象はあります。

石倉:そうですね。僕らの会社ももちろんなんですが、もともとずっとオンラインで会わずに採用活動をしていて。アウトソーシングの事業部と、それ以外の部署とで選考フローがちょっと違うんですが、アウトソーシングの事業部は人が入らないとお客さまを増やしていけないので、ずっと採用をし続けているんです。

「面接回数が多い=会社とのマッチ率が高い」というわけではない

石倉:なんだかんだ、僕らはずっと一発面接でやっているんです。それは何回か面接をやった結果、そこからのマッチング率や活躍度を見たんだけど、(面接を)何回やっても変わらないという結果になって。「じゃあ1回にしよう」という感じになって、今は1回にしています。

僕ら自身はそうなんですが、僕らが採用を支援するクライアントは、特にスタートアップや中小企業さんが多いんです。うちが採用業務をまるっと請け負って、面接だけ企業さんにやってもらっているんです。過去に350社ぐらいやっているので、年間でたぶん数万人単位で応募者をさばいているんです。

そうすると、実際に入社や内定まで追えるので、どのぐらいの期間なのかなと思ったら、今はだいたい応募から14日以内に内定が出ているか出ていないかで差が出ます。ポイントとしては、承諾率の差が明確に出てきていたりとか。3週間を超えるとガクッと内定承諾率が下がり、途中の辞退率が増えます。たぶん、他社さんが決まっちゃうからだと思うんです。

渡邉:14日というのは、営業日ではなく14日間?

石倉:14日間です。なのでさっきの話じゃないですけど、今まではオフラインで面接に行かないといけないとすると、仕事が終わった後に行くか、営業だったら空アポ入れるみたいになると思うんですが(笑)。

それがないとなると、(一次面接を)今日やって、(二次面接を)明日・明後日できちゃうので。下手すると、1週間とかで3回の面接が終わっちゃう可能性もあるじゃないですか。そういうのもあるので、早くはなっているだろうなと。なので、スピードはすごく差がつくようにはなってきているなというのがあります。

「Zoomに入るのずいぶん苦労しているな」人事が感じるマイナス点

石倉:実際に(オンライン面接を)やってきた中で、面接官の方もそうですが、何か変わったことはあるんですか?

渡邉:大きくはないですが、対面で会う時とオンラインで映像として会う時の印象って違うと思うので、音声がちゃんとクリアに聞こえるかとか、ライトが当たっていて顔が明るくなるかとか。そこの印象値も、「その人の印象=会社の印象」みたいな、一部フィードバックになっているところがあるのかなとか。

石倉:ありますよね。昔だったら、来る時の服装や態度みたいなものが、今だと画面オフで普通に入ってきただとか。「Zoomに入るのずいぶん苦労しているな」とかがあると、ちょっとネガティブになったりとか。

渡邉:そうですね。求職者の方も、コロナになってからそういうのが当たり前に。自分が働いている会社もそうだし、転職活動としても当たり前になっているので、逆にそういうところでしくじっているところがあると、目立っちゃうというか。つまらないところでマイナスにならないように気をつけなきゃいけない、とかはあるかもしれないですね。

石倉:なるほど、そうですよね。

オンライン採用において、いかに早く選考を進められるか

石倉:オファーの出し方ってどうなんですか? けっこうオファーって攻防や駆け引きも含めてあるじゃないですか。

渡邉:基本的には、さっきお話ししたみたいに、うちもなるべく早く選考を終わらせて、他社さん(の選考結果)が出るのを待つよりは、基本的にオファーを出しています。

求職者ごとにオファー資料を作っているので、アラカルトで「あなたにはこういうことを期待しています」「なので、こういう年収条件です」と提示して決めてもらうので、「他社が出ないとうちは出しませんよ」というよりは、オファーした上でいつまでに(決める)という期限を決めて回答してもらうケースは変わっていないです。

石倉:なるほど。でも、(選考の)プロセスを早くしなきゃいけなくなったじゃないですか。その中で、体制的に変えたことってあるんですか?

渡邉:体制が変わったことはないかもしれないです。でも、事前に役員陣のカレンダーを押さえておくとか。

石倉:役員の方は、だいたい忙しいですよね(笑)。

渡邉:そこらへんはあるかもしれないです。あとは、候補者の方に日程を出してもらってという、キャッチボールの回数をなるべく減らしたいので、会社側から候補日をいくつか出して選んでもらうとか。「いかに早く選考を進めるのか」というところは、オペレーションチームががんばってやっています。

石倉:なるほど。

スピード感の速い選考によって、人事担当者が直面する壁

石倉:見ていらっしゃる方の中だと、たぶん人事は(選考を)早くしなきゃいけないとわかっているんだけど、よく聞く話で、現場の方にそれを理解してもらうのが意外と難しいじゃないですか。そういうのって、何か工夫していることってあるんですか?

渡邉:面接を入れまくると、「大変だ」となるんですけど。

石倉:「もういいか」みたいな。

渡邉:とは言え、現場が事業を伸ばすとか、組織を強くするために人を採用したいので。そこはマネージャーはじめ、現場のメンバーや面接に関わる人たちは協力的だし、理解はしてくれていると思います。

あまりにも特定の人だけで、面接を1日に8つぐらい入れてあると、「さすがにきつい」みたいなのはたまにありますけど。基本は、説得して「なんとか……」というのは、あまりないかもしれないです。

石倉:なるほど。事業出身で人事になられているのも大きいんですかね。事業のこともわかっているし。

渡邉:そうですね。そこのコミュニケーションを最初からやれたというよりは、異動してけっこうぶつかりながら、2〜3年かけて当たり前にしていったのはあるかもしれないです。

石倉:ありがとうございます。

採用広報を始めたきっかけは「表面的なイメージギャップを払拭したい」

石倉:今日はテーマが4つあるので、次に行こうかと思っているんですが。

渡邉:いっぱいありますね。

石倉:2つ目は「情報過多の時代に自社のことを知ってもらうにはどうするか」というテーマでお話をしたいと思います。さっき、渡邉さんが今やっているお仕事は、情報発信・採用広報が中心だというお話でしたが、ナイルさんはオウンドメディアの運用をすごくやっているなぁって。

渡邉:めちゃめちゃマンパワーでがんばっています(笑)。

石倉:さっきの話でも、SNSもガンガン使うし。具体的にどういうことをやられていて、なんでやり始めたのかとか。

渡邉:もともとはSEOのコンサルをやっている会社とか、あとは社長が東大出身というところで、パッと見の印象で「SEOの会社で学歴主義なんじゃないか」と会社を捉えられちゃうことがあって。「色んなバックグラウンドの社員が活躍している」「SEO以外にもメディア事業やモビリティ事業が伸びている」といった、実際はそうじゃないんだよというところを出したくて始めたのが2018年です。

石倉:3年前ぐらいですね。

渡邉:それまでは、面接に来ていただいた方に一生懸命「こんな会社です」と説明していたんだけど、その温度感だと選考が終わる頃にナイルへの志望度が上がりきらないんですよね。なので、面接に来る前に正しい理解をしてもらうとか、興味を持った状態で来てもらうことを目的に始めたのが最初です。

そこから2019年には、社員のTwitterアカウントで記事を拡散させるチャネルを作る。2020年には、オウンドメディアの遷移データをちゃんと計測できるようにしてKPI管理していくといったように、徐々にマーケティングっぽい取り組みをしてきました。

2021年に入ってからようやく、いわゆる広報っぽくなってきたというか、「認知をいかに増やしていくのか」というところに変わっていって、徐々にオウンドメディアの位置付けも変わっているかもしれないですね。

石倉:なるほど。確かにそうですよね。

組織フェーズによって異なる、オウンドメディアの運用方法

石倉:でも、今って情報過多の時代というか、採用広報も含めて認知を上げるのも、みんな「やらなきゃいけないね」と思っている中で、なかなか踏み切れなかったりとか。「投資対効果はどうなんだろう?」という話って、たくさん聞くなと思うんですが、そのへんは御社では議論はあったんですか?

渡邉:うちの場合は幸い、オウンドメディアに投資して、中長期的に認知を上げていくとか集客していくことで事業を伸ばしてきた会社なので、経営陣が「メディアをやったほうがいいよね」というのには、むしろ理解があるというか。説得しなくていいのは、非常にやりやすかったところです。

それこそ前回の「Owned Media Recruiting」で、マクドナルドさんやYahoo!さんの話もおうかがいしていて。どっちかと言うと、大企業だと「現場の理解」や「予算をどう取るか」ということで、まずは記事数やPVやわかりやすい目標を追って、徐々にそれを説得していくみたいな話でしたし。

逆に、うちやスタートアップの場合は、「記事がどれだけ跳ねた」というよりは、「承諾率にどれだけヒットしたか」という、「採用数字にどう直結したのか」というところを最初は追った方がいいと思っていて。

なので、「どっちがいいよね」「悪いよね」というよりは、どういう会社の、どのフェーズで、どう始めるかによって、ゴールやKPI設定の仕方が変わってくる気はしています。

採用につなげるためのメディア露出とSNS運用

石倉:確かに。目的設定やKPIの設定を間違うと、「記事をいっぱい出したのに、応募が増えないじゃないか」とかなって。

渡邉:そうそう(笑)。「やっている意味あるんだっけ?」みたいな話になる。

石倉:そう。続かないのはありますよね。だから、情報発信とか採用広報に関しては、KPIや目的の設定を握るって、最初はすごく大事ですよね。

渡邉:そうですね。

石倉:だから、僕らも情報発信はわりと積極的にやっていて。うちはオウンドメディアはないんですが、各々がSNSを使って発信したり。僕はわりとメディアに出たりするほうなんですが、完全に採用のためにやっていたり、というのがけっこうありました。

きっかけで言うと、「『リモートワークで働きたいな』と思った時に、まず社名を第一想起してもらおう」と思ったんです。正直、事業が何をやっているかわからないけれども、名前が想起されたらいったんOKだなと思っていて。そういうのを割り切ってやろうとなった時に、「どうやろうかな」と思ったんですが。

当時、僕がやり始めたのは4年くらい前なので、そんなにリソースもなかったから、勝手に僕が1人でTwitterをやり始めたのがスタートです。

TwitterなどのSNS経由で採用につながることも

石倉:当初KPIに置いていたのは、面接に来た人が、僕のnoteやSNSをフォローしている率がどのくらいあるかを見ていたんです。

渡邉:それ、面接で確認するんですか?

石倉:そう。「何をきっかけに、うちを知っていただいたんですか?」と聞いて、そうすると「Twitterをフォローしていて」とか言ってくださるじゃないですか。そういうのが出てくる率をずっと追っていたんです。それで、1年くらいいろいろ発信していたら、面接をしていると半分くらいはフォローしていただいているなというのがあって。「これはけっこう効果があるかもな」と思いました。

それ以来、正式に決めた戦略ではないんですが、僕らの会社で考えていることとしては、「いろんなメディアに出たり、いろんな発信をするんだけれども、最終的には社員の誰かのSNSアカウントをフォローするところに着地させるのが一番いいんだろう」と思っていて。それ以来、そこはずっと意識しているかもしれないです。

渡邉:確かに。うちも直近、ある編集者に「なんで応募したの?」ってインタビューしたら、(その編集者は)自社サイトから来てくれたんですが、それを知ったきっかけは、うちのメンバーがTwitterで「編集者を募集しています」と書いていたからだという。

石倉:へえ。

渡邉:どうしても採用広報やオウンドメディアというと、ある程度お化粧をしたきれいなコンテンツが出ちゃうので。それも見るんだけれども、どっちかと言うと実際に働いている人の生の声を見て、「この人たちだったら一緒に働いてみたい」「話を聞いてみたいな」と思ってもらえるのは重要ですよね。

石倉:ですね。僕自身もそうだし、すごくシンプルに採用に限らずですが。今って、何かの情報を取る時にGoogleで検索する時もあるけど、SNSやTwitterを見たら「とりあえずトレンドに出てるな」「話題になっていることを検索してみたら、わりとみんなが呟いているからわかるな」ということがあるじゃないですか。要は、人通りが多いところにとりあえずいないといけないんだろうなと思っているところです。

「業務中にTwitterをやってOK」その理由とは?

石倉:逆に言うと僕は経営者なので、自分でリスクを背負いながら、会社の情報もコントロールできる立場だから発信できるんですが、メンバーが採用でSNSを発信するってリスクもあるじゃないですか。

渡邉:そうですね。

石倉:そのへんって、どう管理しているんですか?

渡邉:うちの場合、「Twitter道場」という取り組みをやっていましたね。現場のコンサルタントや編集者がもっとマーケ力を身に付けようということで、社長が「業務中にTwitterをやってOK」というのを出して。それが一時期、社内ブームになりました。全員が全員やっているわけじゃないんですが、個人で発信していようが何しようが、言ってOKというか。人事や広報が検閲しているとかはなく、自由度を持ってやっていますね。

石倉:「この情報だけはだめだよ」というのだけ、決めているみたいな感じですかね?

渡邉:そうですね。広報的に出すタイミングとかはちゃんとしますけれども。日常の発信とかはもう、現場でやりたい人がやっている感じです。

石倉:やりたい人がやるのが一番ですよね。

渡邉:そうですね。

石倉:やりたい人がやっているうちに、そこから経由してきた人って、その人もSNSを使っている人だから気付くと勝手に(フォロワーが)増える。だから、どう作れるかはけっこう大事だなと。

渡邉:確かにそうですね。

オウンドメディアで作ったコンテンツをどう届ける?

渡邉:ただ、やっぱり企業さまによっては、社員が企業名を出してTwitterをやるのが難しい会社もあるとは思うので。社員が発信してくれるとか、コンテンツをシェアしてくれるのはもちろんすごくポジティブなんだけど、一方でオウンドメディアで作ったコンテンツをどう届けるのかという。

石倉:それ、むちゃくちゃ難しいですよね。

渡邉:各社、オウンドメディアはやっていくと思うんですよ。一生懸命がんばって、いいコンテンツは作っているけど。

石倉:そう、発信はしたいですよね。

渡邉:届けたい人にちゃんと届くようなチャネル選定とか、ディストリビューションの方法をどうやって考えるかは、まだ工夫の余地があるかなと。

石倉:確かに。これは各社によって、ベストプラクティスが違うんだろうなと思って。「何を発信すればいいのか」「何を目的に置いたらいいのか、どういうチャネルがいいのか」というのは、掛け算じゃないですか。これを考えるのはすごく大変だなというのはありますが、何かコツとかあるんですか?

どうやって自社を知ってもらうかって、すごく難しい。「何の切り口で発信するか」って、たぶんみんな詰まるところだと思うんですよ。

ターゲットの職種に合わせてSNSのチャネルを選定

渡邉:会社全体で言うと、「ナイル=伸びているベンチャー」というイメージを、社外の方にも持ってもらいたいと思っています。

あとは採用するとなったら、うちの場合はポジションごとに、例えば編集者、エンジニア、デザイナー、SEOマーケターとかって、職種別に分かれます。職種ごとにどういうコミュニティ・クラスターにいるのかで、「Twitterがいいのかな」「Facebookがいいのかな」とか、チャネルをある程度工夫するのはあるかもしれないです。

石倉:なるほど。そこはマーケター集団だからこそなんですね。

(一同笑)

石倉:いよいよ本当に、事業でやっていることをそのままめっちゃやる、みたいな。

渡邉:そうですね。ようやくマーケター時代の経験を活かせているかな、的な(笑)。ただやっぱり、企業全体の採用広報をどうやっていくのか、認知度を高めていくのかという話と、職種ごと・ポジションごとにどういうコミュニケーションを取っていくのかは、やっぱり別で考えないといけないのかなという。難易度が高いかもしれないですけど。

キャスター石倉氏が、取材時には事業の話をしない理由

石倉:ありますよね。僕もいつも「自社のことをどう出すか」「どういう企画を出すのか」「どういう取材を受けるのか」と考えた時に、「ポジションが取れるかどうか」とか、さっきのお話にもあったんですが、「何というワードで想起されるのか」ということをイメージしています。

「どこのポジションを取るか」「誰もいないところはどこなのか」というのを、わりとずっと探しているタイプで。「リモートワークで社員として働きたければうち」と思ってもらうには、どういうメディアに出るのがいいんだろうとか、どういう話がいいんだろう、どういう発信がいいんだろうというのは、ずっとやっている感じです。

なので、うちの会社の発信や取材ってよくよく見てみると、事業の話はほとんど取材を受けていないんですよ。

渡邉:そうなんですね、おもしろいですね。

石倉:まあ、来ないというのもあるんですけれども。

(一同笑)

石倉:ほら。取材って、「リモートワークの働き方」というので受けると、やっぱりそのテーマでずっと取材が連鎖していくとことがけっこうあるので、どうしても偏るんですけれども。あえてあまり事業のことを出さずに、働き方や思想や考え方とか、働いている中の人がどう見えるかということに、わりとずっと(重きを置いて)やっているかもしれないですね。

なので、どんなメッセージを出すのかも、会社によってはみなさん違うのかなと思います。発信することや継続することも大事ですけれども、継続するにも企画が持たないと(大変です)。

渡邉:そうですね(笑)。

石倉:そう。それをどうするかって、やっぱり考えたほうがいいんだろうなと思いますね。

渡邉:確かに。