2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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斉藤知明氏(以下、斉藤):お二方、ご紹介ありがとうございました。ではディスカッションに入らせていただきます。
まずお先に荒川さん。Great Place to Work®さんで刷新された「働きがい」について、僕らは(スライドを指して)左の「旧モデル」の図を参考にしながら、Uniposを考えてたんですけれども(笑)。
荒川陽子氏(以下、荒川):(笑)。
斉藤:旧モデルとして描かれている「個人」「仲間」「仕事」「マネジメント」の信用・尊敬・信頼関係がお互いにあるという状態から、新モデルへ刷新されるにあたって、「人・個人の潜在能力」「個人のパフォーマンスが最大化されている状態」を作り出すということに着目された背景には、どういうものがあるんですか?
荒川:ありがとうございます。中心の「信頼」は今も大事にしているので、これがなくなったわけではないんです。もともとGPTWはアメリカから始まった会社なので、非常に多様性・多様な文化の中にあります。
なので「人種・性別・年齢、さまざまな人たちが働いている中で、ダイバーシティ・多様性をきちんと実現できないと、企業の持続的な成長はない」という考え方だったり、やっぱりイノベーションみたいな「変化に対応すること」こそが、「働きがい」にもインパクトしてくるだろう思います。今は世界中の約60カ国で展開していて、相当数のデータが集まってるんです。
この世界中のデータを、一生懸命にアメリカの本部が分析して「多様性やイノベーションがキーになって業績にインパクトする、新しいチャレンジ・新しいものを生み出すことにインパクトする」ということがわかってきました。
だとしたらやっぱり、それをモデルに入れましょうよと。そういうところを包含したものにすることこそが「働きがい」において重要であると考えた、ということです。
斉藤:そうですよね。新モデルだと右上に「財務的成長」という言葉が入ってますもんね。これはもう、今まで約60カ国の企業で調査をやってきた中で「多様性を受け入れて人の潜在能力が最大化されている企業であればあるほど、財務的な非連続の成長が起こりやすい」ということなんでしょうか。
荒川:そうですね。各国の「働きがいのある会社」ランキングに出ている上場企業の株価の分析を、日本も含めた各国が行っていて、パフォーマンスはかなり高いんですね。
日経平均とかTOPIXに限らず、「働きがいのある会社」ランキングにランクインしている企業の株価のパフォーマンスは高い。もちろん「働きがい」を高める努力をしたことが、イコールそのまま業績につながるわけではなくて、その間にはいろんなことがあります。
でも「働きがい」が高い企業は、清水さんのお話にもあったような「相互の信頼関係・尊重」があったり、その中で新しいチャレンジなどが起きてきたりします。顧客に対する価値が最大化していって、結果として財務的成長につながっているという、そこの関係性はかなり相関が確認されているということですね。
斉藤:この新モデルは、なかなか解釈のしがいのあるモデルだなと思っています。いわゆる旧モデルだと「勤務している会社や経営者を信頼できる」の一言でまとめられていたものから「信用・尊重・公正」といった、ある意味で抽象度を一段上げたモデルなのかな? とも捉えられます。
信用や尊重についてのお話は、荒川さんパートでも清水さんパートでもありました。(スライドを指して)この、やりがいに大きく関係する「経営者への信頼を左右したのは『従業員の尊重』」について。これは「相互尊重」ということもありますし、「自己を尊重できる環境」の要素も内包されてらっしゃるのかなと感じます。
まず荒川さんに伺いたいのは「尊重されている状態」について。いろんな企業を見られてきた中で「こういう企業って、すごくよく尊重されている」という例ってありますか?
荒川:そうですね。やはり「きちんと従業員の声を聞いている」ということ。これがものすごく大事ですね。例えば日本における「働きがいのある会社」ランキングにランクインしている企業で、グロービスの堀(義人)社長の話を伺って、素晴らしいなと思ったことがあります。
コロナでテレワークを始める中で「社員がどう感じているか?」についていち早く声を拾って、「うまくいっていること」と「いってないこと」をリアルな生の声で収集をして。その結果として「我々としては、テレワークのルールはこうだ」「でも出社することの意味もあるから、こういう時には出社しよう」といった「ワークスタイル・ウェイ」をいち早く作られているんですね。
「従業員が今なにを感じているか?」というコンディションを把握した上で、会社としての方針を出していくことが、非常に(従業員を)尊重することにつながると思いますね。
斉藤:コメントで「自分の声が拾われたことないです」って書いてらっしゃる方もいらっしゃいます。清水さんもご自身の経験や今回のお取り組みの中で、従業員を尊重することって、すごく意識していらっしゃいますか?
清水雅理氏(以下、清水):そうですね。尊重するというところでは、本当に荒川さんがおっしゃったように、「聴く」ということがすごく大事だなと思っています。我々はよく、研修で「相手の言っていることを正しく理解する(聴く)練習」をします。でも実際にやってみると、上司・部下関係なく、実は相手の話を聞いてないことに気が付くんですよね。
荒川:(笑)。
清水:相手の話を(自分にとって)都合よく受け止めてしまうことがものすごく多いなと、私自身の反省も込めて感じます。
荒川:うーん、なるほど。
清水:「聴くこと」ってなかなか重要視されないんですけど、いかに相手の言いたいこと・感じていることを正しく受け止められるか? というのは、互いを尊重しあう上で重要なことだなと感じています。
斉藤:「聴く」ってすごく難しいですよね。「プロダクト開発」とか「従業員の向き合い」とかも、最近では共通で語られることが増えてきたかなと思いますが、聞きすぎて最適化しても、成長はしないじゃないですか。
荒川:そうですね。
斉藤:尊重だけしてもだめ。もちろん成果につながらないとだめ。コメントでは「聞きに来ると、上から目線を感じます」なんて声もありました。いやぁ、なかなか耳が痛いですよね、僕らからすると。コメントでは“聴く”と“聞く”の違いだとおっしゃっていただいている方もいますね。
斉藤:「タテ・ヨコ・ナナメの関係値作り」に関していうと、いわゆるフラットにして聞く。かつ経験を持っている人と話をすることができるというのが「ナナメ」だと思うんですよね。「ヨコ」っていうのは、それこそ他部署とか「同じ志を持った組織」ではあるんだけれど、別の業務を持っている人たち同士だからこそ話せること・聞けること、というものが出てくることだと思うんです。
斉藤:この、聞き合う組織・理解し合う組織・尊重し合う組織って、どうすれば作っていけるんでしょうか、荒川さん。
荒川:そうですね。でもまさに(スライドを指して)これだと思うんですよね。この「タテ・ヨコ」。あと、まさに清水さんがおっしゃったんですけど「ナナメ」ですよね。でも自然発生的には「ナナメの関係性」って、なかなかできないんです。
特に「他部署の先輩」とか「他部署のマネージャー」とのコミュニケーションは、ある程度は会社が仕掛けをしてあげないと生まれなかったりしますから。
そういうところでも「コミュニケーションを大事にやっていく」ということを、きちんと(会社が)発信していくことがすごく重要ですし。あと経営者自身も、経営者が部下や会社の人たちを尊重していないのに「尊重が大事だ!」といっても、そんな企業は絶対にうまくいきません。
「自社における尊重とはなにか?」みたいなことを、しっかりと経営者自身が腹落ちしていて、言語化しているということも、すごく大事だと思いますね。
斉藤:(スライドを指して)「言行一致」。
荒川:そうです、そうです。そういうことですよね。
斉藤:なるほど。これを見て僕はもう「いやぁ……」と思ったのが、やりがいを高める要素のうちの4つに「経営・管理者層、経営・管理者層……」って入ってるなーというのは、すごく思うことはありましたね。
荒川:そうなんですよ。
斉藤:あとは、さっきから話として出てきている「聞かれても『聞いてやってるぞ感』が出ると、なかなか話しづらかったり」ですとか。自分の中でも、その解釈って進んでないことってあるなぁと思っています。
清水さんも「心の自律と行動の他律」という表現をされていて。ここってどういうことなんだろう? というのを、もっとたくさん聞きたいなと思っています。
いわゆる「お互いを尊重し合う」という、人と人との関係性ということでもありますが。清水さんやSPSさんの中で「自分自身のことも尊重してあげる」という状態を作っていくための「心の自律が重要だ」って思われた、きっかけはあるんですか?
清水:そうですね。これは私自身の体験談みたいになってしまうんですけれども。女性の25人ぐらいの組織を束ねている時に、私も含めた働く女性たちの気持ちが毎日ものすごく不安定だと実感したことがあります。
「昨日はすごく元気よかったのに、今日はものすごく落ちている」という天気予報のような状態の中で仕事をしていました。「なぜこんなに不安定なのか?」「不安定さを回避するためにどう承認し合うといいのか?」「どうやってみんなで称賛する環境を作ったらいいんだろうか?」ということについて試行錯誤を重ねました。
成功と失敗を繰り返すなかで、見えてきたことがあります。それは「誰かから認められること」と共に「自分で自分のことを認めてあげること」がすごく重要ということです。それがなによりの近道なのかなと感じました。自分の価値を自分で高めて自己承認すること、つまり心を自律させるということです。ただ、行動面においては「他律」という要素も非常に重要だなと考えています。
斉藤:なるほど。チャットの中でも「朝に『また緊急事態宣言が延長になったよ』みたいな、自分が考えていることを発露してからスタートする朝会をやってるんです」といった声もいただいています。
まさに互いに尊重し合うためにも、自分自身の思っていることを発露しやすい環境と、それを言っても問題ない・だめじゃない環境の設定と。さらに、それを持ってお互いに認め合うという環境と、自分で自律的に考えていく環境のすべてが必要になってくるなぁと思います。
まさにそれが先ほどの、(スライドを指して)この5つのモデルになるにあたって、入ってる(必要になってきている)ことなのかな? と思うと、なかなかこれは解釈の違いが増えましたね。
荒川:ありがとうございます。でも本当にそうですよね。この連帯感みたいなところをしっかりとベースに持っておく、というのはすごく大事だと思います。
斉藤:なので、人の潜在化能力が最大化されて、いろんな多様性が生きて、財務的成長にもつながっていく。もちろん組織においては連帯感、信用という自社・他社・経営者との関係性がある中で、個人の尊重・公正性とかに自分自身が誇りを持てている環境が必要になります。
誇りを持てている環境がたぶん欠けていると、自分の中で尊重されていて……言い方が悪いかもしれないですけど「文句を言ったら受け入れてくれる環境」。これって、尊重だけが先行している環境だと思うんです。
一方で「文句は会社・顧客のため」とベクトルがそちらにぐいっと向くのが「誇りのある環境」。ということで、それがお互いに「誰かが一緒になってやってくれる」と思えている状態が「信用・連帯感」だし、それがどんなところからでも発生する状況が「公正」。
この5つの要素が揃うと、確かにこの財務的成長やイノベーションが生まれやすかったり、自分の力が発揮しやすい環境は生まれていくんじゃないかな? と、あらためて解釈をしてみましたので、みなさんもこのモデルについて、ぜひ解釈をしてみていただければと思います。
斉藤:ではここで少し、Uniposの説明をさせていただきます。僕らは「ピアボーナスで働き方を変える」と題して、Uniposを提供しております。
「組織を変える行動を増やす」というのをプロダクトコンセプトとしているんですけれども、これはどういうことか? というと、僕はUniposでなにか生み出すことはできないと思ってるんです。なぜかというと「行動が生まれた結果を称賛するサービス」だからです。
ゼロから生み出されるそれ(「組織を変える行動)は、組織の取り組みだったりマネジメントの中だったり、みんなが誇りを持っている中で生まれた偶発的な行動だったりするでしょう。
でもその偶発的に生まれた行動が、誰にも認められなくて。がんばって社内メールで配信してみたのに一切返信がなかったら、たぶん「もう2度とやってやるもんか!」って思いますよね。それ以外でも、反応がなかったりフォロワーがいなかったりして、発信したことがなににもつながらなかったら、もう2度とやることはないでしょう。
でも、その組織を変える行動のきっかけである“小さな火が灯されたタイミング”で、オープンな場所でポイントをつけて称賛しあう。それをみんなが上乗せして、称賛しあう文化を作るというのが「ピアボーナス」Uniposです。
実は応援とかねぎらいとか共感とか、そういった声もUniposでやり取りされることが多いんです。応援されて「こういう行動おもしろいと思うよ。がんばってみてよ。いいじゃん」という声が届けられると、組織を変えるような行動が生まれた時に、それをどんどん加速させて連鎖するような雰囲気を作っていくことができるのではないか? と思っています。
シンプルで使いやすい投稿機能がございますので、称賛はどんな方でも、例えば店舗で勤務されていらっしゃる方でも内勤の方でも、スマホからでもWebからでもご投稿いただけます。あとは称賛を送った時に返信機能があると「返信しないといけないかも……」という義務感が生じちゃうと、(そもそもの称賛を)なかなか送りづらくなったりするんですよね。
なので、あえて返信機能をなくしてみたりとか。そういう細かい設計によって、気軽に称賛・応援のメッセージを送れる仕組みを用意しておりますし、誰もの貢献がオープンに称賛されるので、みんなが気軽に拍手で上乗せをすることができます。
実際にこうやって67回の拍手がついてたりするんですけれども、「いいね」「いいね」と輪が広がっていくと、1人が起こした小さな火が「やっていいんだ」「やっていいんだ」と、認められている実感と共に広がっていくような、そんな設計になっています。
ぜひチーム作りに困ってらっしゃる方がいらっしゃいましたら、Uniposをご検討いただければと思っておりますし、Uniposウェビナーの実践編も好評開催中です。
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