近所にある「超有名パティシエのお店」との差別化戦略

司会者:では、次のテーマに移ろうと思います「私のアプローチ」なんですが。この私のアプローチの中で、どうしても競合・ライバルって気になるじゃないですか。私が聞いたところによると、門傳さんのお店の近くにはけっこうなライバルさんがいらっしゃったと。

門傳智彦氏(以下、門傳):超有名店があって。東京ならたぶんどの地域でもいると思うんですけど、「超有名パティシエのお店」があるので、じゃあそこにどうやってつけ入るかっていうのはよく考えましたね。

司会者:そことの差別化とか、そういった部分はどうやって見つけましたか?

門傳:まずは、アイテムの差別化。つまり商品ですね。商品を違うアイテムで展開していく。ただこれは、同じ似たようなお店を作るという戦略はあると思うんですよね。そこに似たようなお客さまがいるんだったら、奪えるっていうか、自分の店に客足を流せるとは思うんですけど。

私の場合だと、まったく逆な方向に舵をきって。あくまでも「有名店の取りこぼしているお客さまはこういうところだろうな」っていう仮説を立てて、そのお客さまに対して、だったらこういうケーキがいいかな、って考えた上でアイテムを作っていきました。

あとは店の雰囲気とか。当時本屋さんで「世界の『ファサード』」っていう本があって買ったんです。世界中のかっこいいお店の入口部分(ファザード)だけの写真集があったんですよね。そういうのを見ながら、「この店かっこいいな」「自分の店の時はここを真似しようかな」っていう感じで。確かそれを業者さんに見せて「こんな感じにしてください」って言ったような覚えがありますね。

マーケット自体を変えると、有名店とも戦える

司会者:それも1つの学びになりますかね? 情報をなんとなく入れているので、学習って意味で読んではいないんだと思うんですけど。

門傳:もう完全に「好き」で読んでましたね。

司会者:ですよね。でも自然と頭の中に入ってきて、それをもとにお店のこと考えたりとか。そういう時はワクワクされますか?

門傳:そうですね。たぶんこれからお店を出す人とかもいると思うんですけど、やっぱり新しいことをやろうとすると、想像するのが楽しいと思うんですよね。そういった情報を集めていくといいかなとは思いますね。

司会者:とりあえず集めた情報を、自分のお店の中にうまく取り入れてワクワクしてみる。そうやって楽しむことも必要ですよね。ありがとうございます。

私たちの印象なんですが、私たちが門傳さんのビジネスを拝見していると、店舗運営プラスネット販売とかデリバリーとか、いろんな形を取っていて。いわゆるWebをうまく活用されているなという印象が非常に強いんですね。Webを活用する方法とか、Webってなんのために使ってるのかとか。そこに関しては、どう考えていらっしゃいますか?

門傳:簡単に言えば、店舗は私たちのお店の物件です。そんな大きいお店じゃなくて小さめのお店なんですけど、じゃあその店舗で最大限製造をするためにはどうすればいいかを考えて。周りには超有名が何軒かあるとなると、じゃあ「マーケット自体を変えたところで戦えるんじゃないかな」と思って。

「店舗=製造工場」と捉えて活用したWebマーケティング

例えばデリバリーだと、今だとUberさんとか出前館さんとかいろいろあると思うんですけど。オープンした当時はなかったので、自分たちでデリバリー用のチラシを作ってまいて、自分たちでデリバリーしていました。デリバリーは、ちょっと近いんだけど店に来るほどでもないなっていう、中間距離というか。そこのへんを獲得できると実感していて。

あとは、高齢者の方ですかね。足が悪くて来店できないけど、でもケーキ食べたいっていう人が注文してくれたりとか。「来店はできないんだけどケーキはほしい」っていう人がいるんだなってわかって。そこをまず攻めていきました。他の近所の有名店はやってないサービスでしたし。

あとはインターネット、オンラインショップですね。それを立ち上げるといつもは豊島区、新宿区あたりがマーケットになるわけなんですけど、そこから一気に日本全国に市場を獲得できるんです。そのスタートラインには立てると思うんですよね。

なので、自分たちのお店をただのケーキ屋と捉えるんじゃなくて、「製造工場」としての役割を担っていきたいなって考えて、オンラインショップを始めたっていう感じですね。

司会者:店舗は店舗としてだけではなくて工場でもあるということですね。そこで最大限に作ったものを、いろんな形で届けていく。その他にも、ネットモールでもかなり積極的に出されているんですかね?

門傳:これは失敗談になるんですけど、オープン当時、オンラインショップを立ち上げたんです。自社サイトを作って、かっこつけて(笑)。月々何千円かの管理費を払って立ち上げたのはいいんですけど、注文が入らないっていう状況が何ヶ月も続いたんです。

注文入らない、でも固定費はかかる。その状態が続いたのでまずいなって思いまして。当時は楽天のケーキ販売モールに出店をして。手数料は取られるんですけども、その代わり楽天で集客されてるところに出店できる。簡単に言えば、駅前にお店を出すみたいな感覚だと思うんですけど。

「こっちのほうがぜんぜんいいな」と思って。自社サイトは閉鎖して、ショッピングモールだけにして、今はAmazonでオンラインショップをやっています。

次に挑戦したいのは、お客さんと会話ができるライブ配信

司会者:そういったすべてを含めて、次のテーマが「SNSマーケティング」になりますけれども。門傳さんがこれからSNSマーケティングを考えた時に、今後どうやって活用していきたいと思われます?

門傳:そうですね、せっかくYouTubeである程度のところまでチャンネル登録してくれる方が集まってるので、まだやってみたいけどやってない分野としてはライブ配信ですね。今日もライブ配信で見ていただいてますが、ライブ配信をしてみたいです。

先ほどのロールケーキの動画もそうなんですけど、動画はテレビショッピング的な役割もある。でもあれ(YouTube)って一方通行の動画を見てもらうだけなので、ライブ配信することによってコメントを受け付けられるし、質問とか来ますよね。それに対して、「ここはこういう食材使ってます」とか「これだからおいしいと思います」とか。

自分たちの言いたいことプラスお客さまの質問に答えることによって、YouTubeのような見てもらうだけのコンテンツじゃなくて、ビジネスにもオンラインショップにもつなげられると思うので。

テレビショッピングの真似事っていうか、気軽な交流を含めてお客さまから質問を受けてみたいなと思いながら。いずれやってみたいなとは思ってます。

司会者:ライブですね。ぜひ楽しみにしております。実際にやられる時は私たちも参加しちゃいますので、お声がけください(笑)。

門傳:買ってくださいね(笑)。

キャリアイノベーションに必要なのは「まずやってみる」こと

司会者:さて、あっという間に時間が過ぎてまいりました。ここでですね、実は我々J Career Schoolは、これからキャリアイノベーションを展開していくみなさんが学んでいくにあたって「必要な力」をある程度設定をさせていただいています。私たちが考える力をみなさんに見ていただこうかなと思います。

ここに「観察力」「分析力」「洞察力」、そして「調整力」「指導力」「IT活用力」などとあげています。こういった力を基にして、私たちはいろいろな講座をみなさんに提供させていただいてるわけなんです。

今回、ぜひ門傳さんが考える「キャリアイノベーションに必要な力」はどんなのものなのかと事前にお願いをしておきました。それを映したいと思います。

まず「親近感を大切に」。それから、「ブランディング力」「分析力」「アンテナ力」「まずはやってみる」、それと「お客さまとのコミュニケーションを大切に」という、6つの力をあげていただきました。この中で、特にこれを大切にしたいもの1つってありますか? 選ぶのも大変かもしれませんけど。

門傳:そうですね、「まずはやってみる」ですかね。アクションを起こさないと始まらないので。

司会者:なるほど、「まずはやってみる」。そうですよね、門傳さんはやってみて、その結果を分析もされるし、記録も取ってらっしゃいますもんね。そういったところがすごく大切なんでしょうね。ありがとうございます。

みなさんは、これがそのままということでは決してありません。みなさんはこういった実際に経験をされてる方を参考にして、これをヒントに自分なりにどんなところを伸ばしていけるかなということを考えていただけるといいかなと思います。

ニーズを保つために必要なのは、よさを伝えていく「発信力」

司会者:ここまでずっとやってきましたけれども。最後のまとめにいく前に、質問も寄せられていて、ちょっとそれに対してご紹介をさせていただきたいと思います。

まず「お話を聞いて、ブームはニーズなのかなと感じました。そのニーズを保つためには、発想力など何が必要だと考えますか?」というご質問が来ています。

「お店の不動産情報は非常に参考になりました。ちなみに、次のお店を開くのであればどのあたりを考えていますか? 参考にさせていただきたい」ということです。もしからしたらライバルかもしれないんですけど(笑)。

まずは、このニーズを保っていくために必要なこと。たぶん「残存者」だとしたとしても、そのニーズはどうしても保っていかなきゃいけない。そのためにどんな力が必要だと思いますか?

門傳:やっぱり自分たちから発信していく力は必要ですね。

司会者:「発信力」ですね。

門傳:誰にも知られてないとよさは伝わらないので、発信力ですかね。

司会者:なるほど、ありがとうございます。ちなみに、次のお店を開くのであればどのあたりでしょう。これは企業秘密にもなるのかなと考えるんですけど、探し方は先ほどおっしゃいましたね。

門傳:そうですね。ぜんぜん予定はないんですけど、不動産の物件を見るのが好きなのでよく見てるんです。高さのある住宅街がそばにあって、今こういう時代で、繁華街に以前のような人出はないですよね。

ただ、繁華街は値下げしていないので家賃が高いじゃないですか。となると、住宅街の割安な物件を確保しながら、人口の多いところを確保して、店舗の来店客、プラスデリバリーのプラットフォームを使って、自分たちが行けない近所のところ。高いところに人がいっぱいいると思いますんで、そういったところに出店しようかなと自分だったら思うかもしれないですね。

司会者:ということです(笑)。

世界中の人に見てもらうために、動画はあえてしゃべらない

司会者:では、もう1つのご質問です。「自分も店舗を運営しているのですが、YouTubeで30万人以上の登録者数とは驚きです。なにか秘訣があれば教えていただきたい。コメントに英語もたくさん来てるんですけど、海外にもお客さんがいらっしゃるんですか?」。

門傳:そうですね。コロナ前は韓国とかオーストラリアからわざわざ「YouTubeを見て来ました」って、日本語が話せないような海外の方も来ましたし。コツっていうわけじゃないんですけど、「どっちに振れるか」になります。

日本人のお客さんでファンを増やしたいんだったら、しゃべればいいと思うんですよね。でも私たちのビルソンローラーズのチャンネルは、しゃべらない動画もけっこうあるんですよ。それはあえて、世界の人に見てもらうためにしゃべらないんです。

変な知らない言葉を話されると見づらいと思うんです。しゃべる場合もあるんですけど、それは日本人の方向けに見せてるっていう目的があって。そのバランスをうまくとってやってるっていう感じですかね。

司会者:なるほど。確かYouTubeにも必要があれば字幕も入れていますよね?

門傳:しています。

司会者:そういうのを見てお店にいらっしゃる方もいるんですね。やっぱりそのちょっとしたひと手間がいいのかもしれないですね。

門傳:そうですね、ちょっと手間なんですけど、YouTubeをやってる他のライバルの方がやってないことをやると伸びるかもしれないですね。

司会者:わかりました、ありがとうございます。

あえて苦手なところに挑戦すると必ず成長できる

司会者:では最後に、「門傳さんにとってのキャリアイノベーション」ですね。これをするために必要なこととか、やってほしいことがもしありましたら、最後にひと言いただきたいんですが。

門傳:今回こうやってお呼びいただいて、多くの方の前でしゃべるっていうのは、自分にとっては緊張するし苦手分野なんです。でも、居心地の悪い場所にあえて行くことで必ず成長できると思うんですよね。

例えばケーキ屋さんだと接客もしなきゃいけないわけなんですけど。そういうのも当時はそんなに得意ではなかったんですけど、やることによってどんどんわかってきましたし。

そういう苦手なところに行くと成長するなって実感してるので、あえて「ちょっと嫌だな」「苦手だな」っていうところにどんどん進んで経験を積むと、強制的に成長すると思います。

司会者:苦手なところに行ってみる、挑戦をしていくという感じですか?

門傳:はい。

司会者:なるほど、わかりました。みなさん、苦手な部分を見ないようにするんじゃなくて、挑戦していくことも1つ、キャリアイノベーションとして大切です。ということで、本当に長い時間ありがとうございます。

門傳:こちらこそありがとうございます。

司会者:こうやって生のお話というか、実際にご自身がこれで繰り広げられてきたことを聞けて、視聴者のみなさんにとってもプラスになっているかなと思います。

門傳:今回話した内容をより詳しく解説したのが、J Career Schoolさんでやってるオンラインスクールになりますので、よかったらそちらも購入していただいて見てください。

司会者:またこれからのご活躍を心からお祈りしております。

門傳:がんばります。