元キーエンストップセールスが掲げる3つのTips

今井晶也氏(以下、今井):次は岩田さんに3つのTipsを聞きたいなと思います。どんな3つが挙がりますか?

岩田圭弘氏(以下、岩田):じゃあ僕も3つ、プラスアルファでご紹介させていただきます(笑)。

今井:ほら、すぐ競争したくなる(笑)。

(一同笑)

岩田:ちょっと画面共有をさせていただきます。「与えられた目標の2倍を掲げる」「因数分解して達成への道筋を作る」「顧客志向を持ち続ける」。この3つが大事だと思っています。

今井:やっぱり太谷さんと似てますね。

太谷成秀氏(以下、太谷):思いました。おもしろいなと思って。

岩田:僕も聞きながら、めっちゃ似てるなと思っていました。

今井:ただちょっと具体的な数字が出てきましたね。「与えられた目標の2倍を掲げる」と。

岩田:そうですね、これはやっぱり非常に大事かなと。やっぱり「Passion×Logic」だと僕は思っていまして。「与えられた目標の2倍を掲げる」って、これは完全に「Passion」の領域なんですよね(笑)。

僕は、2倍とか3倍の時もあったんですけど、まずは「ちょっとこれは無理だろ」みたいな、いわゆるムーンショットみたいな目標を自分で設定する。それを紙などに書いて、本気で思い込むことをまずやっていました。

「目標の2倍」を達成するために必要なのは、面接数を上げること

今井:ここ、ちょっと聞いてもいいですか。2倍にするってけっこうストレスをかけることだと思うんですよ。ある意味負荷をかけるわけじゃないですか。

この時に、ポイントになるのがスライドの下にある「単価×1.3」「面談数×1.2」という計算だと思うんですけど。目標を2倍にするために、営業プロセスのどこにどういう負荷をかけるかは、どう決めていくんですか?

岩田:今井さんの本、私も読ませてもらったんですけど。これに関しては、まずはやっぱり、面談数、ボリュームですね。これをいかに上げられるか、まず考えますね。ボリュームを上げないと、成功率をあり得ないほど上げないといけなくなっちゃうので。まずはやっぱりボリュームを何パーセントまで上げ切れるか、とことん考えるのが大事かなと思っています。

今井:そもそもキーエンスさんって、最初からボリューム多いイメージがあるんですよ。平均して、月にだいたい何件ぐらい訪問するんですか?

岩田:コロナ禍の前で言うと、月50~60件ぐらい。

今井:多いですよね(笑)。岩田さんは何件ぐらい行くんですか?

岩田:僕はだいたい70件ぐらいですけど。人より多少多くやらせてもらってました。

今井:いやいや、それを人は多少と呼びませんよ(笑)。

岩田:(笑)。

今井:月70件訪問はすごいですよ。アベンジャーズの領域ですけど(笑)。

岩田:今の会社だと先月、120件面談しましたけど。

今井:120件!? 120件って、20営業日で考えたら、1日6アポとかってことですよね。

岩田:そうです、そうです。

今井:震えとか起きませんか。大丈夫ですか(笑)。

岩田:たまに喉が潰れるんですけど、のど飴舐めて、ケアしながらがんばってます(笑)。

迷う暇があったら電話をかけたほうがいい

太谷:これ、インバウンドとアウトバウンドの比率はどのくらいなんですか?

岩田:今の会社もそうなんですけど、8割ぐらいはアウトバウンドですね。

太谷:それでその数なんですね。

今井:アウトバウンドで(笑)。アポ取ってるのも、ご自分なんですか?

岩田:そうですね。キーエンスの時はけっこう自分でアポ取って、自分で面談していましたが、今はもうインサイドセールスがいるので。

今井:自分でアポ取って、それから60~70件商談するって、当時も1日に4~5件ぐらいは商談してるわけじゃないですか。それって物理的な時間確保にすごく工夫が必要だと思うんですけど。どんな時間の使い方をすると、電話もかけられて、アポイントにも行けるんですか?

岩田:ショートカットするのは、もう本当に地道な積み重ねですね(笑)。

今井:作業効率。

岩田:そうですね。作業効率を上げることはやっていました。あとは、迷う暇があったら電話かけるほうがいいかなと思っています。コンタクトして、担当者につながる確率ってだいたい3割ぐらいなので。とりあえず、電話は常に離さないようにしていました。

「一番以外はビリだ」のマインドが作る、一番になり続ける習慣

今井:その強い心って、どうやってセットするんですか?

岩田:これはやっぱり「一番以外はビリだ」というマインドになってからですね(笑)。そこしか目指さなくなるともう、他が見えなくなりますね。

今井:パワーワードですね、これ(笑)。

(一同笑)

岩田:僕も永守重信会長の本で、「靴箱も一番に入れるし、店に行く時も一番に並ぶ」っていうのを読んで、すべて一番を意識してやっているので。

今井:そうやってなんでも一番を、意識から習慣にしていくんですね。

岩田:そうです、そうです。そうなると、なんかもう一番じゃないことが気持ち悪くなってくるんで。

今井:達成している人って、その習慣ありますよね。外したりしたら、絶対にプライドが許さないし、気持ち悪さを感じますね。

岩田:そうですね。自分の順位が下のほうだと、なんかちょっとイヤですよね。「うわー」ってなる。

今井:筋トレに似ているのかもしれないですね。筋トレって、最初やる時はものすごくめんどくさいんですけど、習慣になっちゃうと、やらなかった自分を信じられないぐらい責めたりして。そういうのあるじゃないですか。僕は最近やれてないんですけど(笑)。

岩田:いやいや、めっちゃわかります(笑)。僕もやっぱり今ジムに行っていて、食事も気にするようになりますし。そのあたりは習慣ですよね。

太谷:いや本当に、習慣化って本当に大事だと思いますね。よく私も言ってますね。

「お客様の状況の変化」がわかるのは、営業しかいない

今井:2つ目の因数分解のところは、スライドに図解がありますね。

岩田:今井さんから、先ほどご質問いただいたとおりです。どこの質をどれくらい上げるか、ちゃんと分解するんですね。

今井:これが因数分解ということだったんですね。なるほど。

岩田:そうです。最後が「顧客志向」です。マーケティングでも言われますけど、「Who」と「What」みたいな、「誰にどういう提供価値があるか」っていうのは、営業がブラッシュアップしていくべき一番大事な役割だと思ってまして。

このスライドは僕が新規事業を立ち上げた時の一事例なんです。どういうお客さまだと提供価値が最大化されるかっていうのは、セグメントを分けてターゲティングをしていくのが、一般的だと思うんですけども。

やっぱりこの軸(顧客の機器所有状況など)も、どんどん変えていくべきだと思ってるんですね。なので、初期に設定した軸から、最終軸のC案になると、縦軸(顧客の機器所有状況など)も横軸(商品の状況)も両方変わっているんですよ。やっぱりこれを変えていくのは営業の役割だと思ってます。

今井:縦軸に書いてあるのって、商品の関係ですか? この「三次元測定機所有」って。

岩田:そうですね。「3Dスキャナ」っていう商品の時の、実際のセグメントの変遷を書かせていただいたんですけども。

今井:なるほど。「顧客志向」を信じられないぐらい学問にしているのかと思った。

岩田:(笑)。

今井:「なるほど三次元からアプローチ……三次元からアプローチってどういうことだ?」みたいな(笑)。

岩田:すみません、ちょっと混乱させてしまいまして(笑)。

今井:いえいえ(笑)。なるほど。

岩田:お客さまのことを考えているとやっぱり、どんどんここ(セグメント)って変わっていくものだと思いますし、それがわかるのって本当に営業しかいないと思っているので。これは、相思相愛になるための、すごく大事なポイントだと思ってますね。

全体研修では、弱点の克服のためのトレーニングが出来ない

今井:なるほど。松田さん、これまでのお話を聞かれて、何か思うことはありますか。

松田しゅう平氏(以下、松田):特に印象的だったのが、目標の2倍を設定して、因数分解をされるというお話ですね。岩田さんがされていることって、単価、面談、商談化率、獲得率などのコンバージョンレートを上げていくってことですけども。

組織全体の営業力を上げることを考えた時に、多くの企業が今やっているのは、ざっくり営業研修とか(笑)。クロージングの仕方とか、そういうことでざっくりやるんですけど。

実はそれぞれセールスの人は苦手分野があって、例えば値引き交渉にすごく弱い人とか、リードタイム(契約までの時間)が異常に長い人とか。例えばリードタイムはすごく長いんだけど、ちゃんと定価を取ってくる人に対して、値引き交渉のトレーニングをするのはもったいないんです。

でも多くの企業は全体でやってしまうんですよね。岩田さんみたいに、自分で弱点を認識した上で、トレーニングすることが一番重要だと思うので。

ちょっとだけ画面共有させていただきます。多くの企業が、クラスルームトレーニングのような、一般的な標準トレーニングを行っているんです。でも私たちはAIを使って、本当に個別化された学習ができるようにしています。

「UMU」

宣伝するわけではないんですけど、実際我々がどんなことをやっているかというと、例えばプレゼンテーションスキルが弱い人には、個別に「あなたはこれを学習しましょう」みたいなものを持ってくるんですね。

組織全体の営業力向上に必要なのは「個別化した学び」

松田:例えば「このプレゼンテーションデッキを、すごく上手に説明できるようにしましょう」という課題を与えて、実際AIを使ってロールプレイングをさせます。人がやると、ものすごいお金と時間がかかってしまうので、AIにある程度やらせるんです。

例えばこの人が、製品のプレゼンテーションをしましたと。それに対してAIが、ジェスチャーがあったとか、声はどうだったかとか、ある程度反応してくれるんです。併せて重要なキーワードを言えているか、NGワードを言っていないかチェックしてくれる。また、しゃべったスクリプトも全部テキスト化されるんですね。

こうするとマネージャーだけではなくて、非常にご自身の振り返りになります。例えばこの人は18回ぐらい練習しています。さすがに18回、自社の製品のプレゼン練習をしたら伸びるというか、流暢にしゃべれるようになりますよね。個別化した学習だと、このようなことが提供できるんですよ。

だから、岩田さんがされているようなトレーニングを、いろんな方ができるようになる。トップの人はどんどん自分で切磋琢磨されますので、組織全体も、個別化された学びに変えられるといいなと思いました。

今井:ついに太谷さんの「ストロングゼロ一気飲み」がAIによって科学される時がきたんですね。「これだと3だな」とか(笑)。

太谷:ドーピングがバレちゃうかもしれないですね。

(一同笑)

優秀な営業パーソンになれるかどうか、大企業の「配属ガチャ」問題

今井:判断軸を合わせるって大事ですよね。これリクルートさんかどっかの研究で判明したことだったかな? あとセレブリックス自体でも研究してわかったんですけど、「優秀な営業パーソンはどうやったら育つか」いろいろ調査すると、「優秀なマネージャーの下についた人が優秀になる」傾向があるらしくて。

つまり優秀な人の判断軸で判断されないと、教育されないと、伸びてこないわけですよね。なので誰に付いたかによって成果が変わっちゃう。これ、最近だと就活とかでよく言われている就職ガチャみたいな(笑)。

太谷:大企業だと「配属ガチャ」ですね。どこに配属されるか。

今井:配属ガチャだ、配属ガチャ。まさにそれですよね。だからそれがなくなるように、トレーニングの判断基準をああいったAIシステムによって、誰がやっても同じ評価にすることはけっこう大事ですよね。メンバーが迷わないように。

岩田:僕も、教育のリソースをなかなか割けないなと思っていたので、AIである程度のレベルまでやってくれて、最終確認を現物でやらせてもらえれば、めちゃくちゃいいですね。

目標は「作りっぱなし」にしない

今井:ちなみに1個質問がきてまして。さっきの目標設定なんですけど、KGIの目標を置くじゃないですか。で、その受注目標なのか売上目標なのかちょっとわからないですけど、「そこを達成するための中間の目標やマイルストーンは、どうやって設定されていたんですか?」

岩田:僕らだと半年ベースでまず目標を立てて、そこから月に割り振ってやるんです。あとはどの施策をやったらどれくらい上がるか。これも本当に綿密にやる場合は設定しないといけないので。

例えば商談の獲得率を上げるために、上司からの代打の電話をしてもらう施策を考えたとする。じゃあそれをするのとしないのでは、どれくらい獲得率が違うのか、ということをベースにします。これをやった時にどれぐらい上がるかも、けっこうそこは細かく、KPIをいじりながら調整していきますね。

今井:最初に目標を作って、作りっぱなしの人ってけっこういますよね。ただ実際やってみると確率が違ったり、思ったより数字が伸びないところも出てくるから、軌道修正みたいなことをしないといけないですよね。

岩田:そうですね、おっしゃるとおり。よく目論見と言われますが、自分の2倍に設定したゴールの予測というか行動目標に対して、今どうなっているかっていうのは、遅くとも週ベースぐらいでは確認してましたね。

今井:なるほど、週ベースでメンテナンスですね。ありがとうございます。今チャットで、「松田さんの紹介されたAI学習ツールの詳しい情報は、どこで入手できますか」といただきました。まさにユームさんの商品だと思いますので、アンケートにお答えいただけると資料がたぶん、いくのかなと思います。今リンクも貼っていただきましたね。

松田:すみません、ありがとうございます(笑)。