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人事評価の常識・非常識とは~バイアスを超える組織開発~(全5記事)

「納得感のない給与アップ」で逆に下がる、会社への信頼 人事評価の常識・非常識とは~バイアスを超える組織開発~

多様な働き方への適応が求められている中、人事評価制度には「評価基準が曖昧で納得できない」「評価者の価値観や経験によりバラつきがある」など、多くの問題を抱えています。そこで、リクルート人事部ゼネラルマネジャー/ライフネット生命総務部長/オープンハウス組織開発本部長と、さまざまな企業の人事・採用部門の責任者を務め、現在は人事コンサルタントとして活躍される、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏が登壇されたウェビナー「人事評価の常識・非常識とは~バイアスを超える組織開発~」の模様を公開します。

「人事評価の常識・非常識とは~バイアスを超える組織開発~」

斉藤知明氏(以下、斉藤):おはようございます、Uniposの斉藤です。本日は「人事評価の常識・非常識とは~バイアスを超える組織開発~」と題して、ウェビナーをお送りしていきます。

プログラムはこちらです。まず、今回のテーマにもなっています「人事評価」。「人事評価ってどういうものなんだろうか?」について、参加者のみなさま全員と考える時間を持った上で、「人事評価の常識・非常識とは」を曽和さまよりご講演いただき、ディスカッションのパートに入っていくという流れでお送りします。

改めまして、Fringe81株式会社の執行役員CPOの斉藤です。在学時に英単語アプリのスタートアップを起業したり、今の会社に第二新卒として入社してUniposを立ち上げ、その後Uniposを子会社した時には社長を務め、自身のチーム作りをしたり。あとはUniposを通して、500社以上のさまざまな組織をご支援させていただいています。

そういった、いろんな組織に関わらせていただいた経験から、有識者・実践者のみなさまのことを深堀るファシリテーターを務めさせていただいています。本日もよろしくお願いします。

それでは、株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和利光さんをお呼びします。よろしくお願いします!

曽和利光氏(以下、曽和):みなさん、おはようございます。今日は楽しみにして参りました。人材研究所の曽和でございます。私は40才くらいまでは、リクルートやライフネット、オープンハウスなどでずっと人事の実務家をやっていました。そこから10年ぐらい経ち、今は採用から評価制度からマネジメント力の向上から、いろんな領域の人事のコンサルティングをしています。今日はよろしくお願いします。

人事評価が機能していない組織にある、悪影響

斉藤:よろしくお願いします。では、さっそくセッションに入っていきます。まず、最初のセッション「人事評価について参加者全員で考える」。今は405名の方にお聞きいただいています。

斉藤:みなさまと「人事評価って何ぞ?」というところについて、私どもの方から2つ問いかけを用意しておりますので、ぜひチャットでご回答いただければと思います。

ではクエスチョン1です。「人事評価が機能していない組織では、どのような悪影響が組織に対してあると思われますでしょうか?」。いろんな側面・見方があると思いますが、ここではあえてまとめて「人事評価」としております。みなさま、いかがでしょうか?

斉藤:徐々にコメントいただいていますね。「人材が育たず会社の力が落ちる」「自律人材・変革人材から離職していく」。曽和さんも、気になる点ございましたらおっしゃってください。

曽和:「信頼関係が崩壊する」とかも、けっこう根本的な問題ですよね。

斉藤:なるほど。人事評価が機能していないからこそ、信頼関係が崩壊する……。

曽和:「“ゴマすり”が増える」ってコメントも、実は今日の最初の方にお話しするのですが、増えるんじゃないですかね(笑)。

斉藤:「優秀な人ほど、辞めてしまうのではないか。変化への対応力が低下するのではないか」「成長方向性が定まらない」「恣意的な人事が行われた結果による、エンゲージメントの低下が起こるのではないか」。

曽和:「派閥が生まれる」というのもありますね。パワーのある上司の人に付く、ということかと思うんですけれども。

斉藤:「社員のやる気が出ないのでは」「企業の人材に対する思いが届かない」っていう回答もありますね。

曽和:「あってもなくても経営に影響がない」っていう方もいますね。

斉藤:お~、なるほど。

曽和:確かに。問題ある制度があるぐらいだったら、ないほうがいい可能性もありますよね(笑)。

斉藤:いや~。ありますよね、そういうこと(笑)。

曽和:「形だけ作ってる」みたいなやつは、要は「パッケージをそのまま持ってきて」とか「流行ってるから」とかで入れちゃうと、そういうことも起こり得ますよね、確かに。

斉藤:「機能していないんだったら、もうなくても構わないじゃないか?」っていうのは、まさにそういうことですよね。

明文律を作っておかないと、不文律が跋扈してしまう

曽和:あとは規模によって、制度に頼るんじゃなくて、もう上司・部下のサシの勝負で見られてるんだったら……なんていうんですかね「俺、お前のこと見てるけれども、こうだよね?」「はい。そう思います!」ということができればいいんですけどね。

なかなか大きい会社だと、人間には認知限界とかがあって(全員を)見られてはいないので。そこに制度が“必要悪”って言ったらアレですけど、作らないといけないっていうのあるかもしれませんね。

斉藤:どうしても大きくなってしまうと、報酬の最適化とかが難しくなりますよね。

曽和:結局、そうなんですよね。だからいずれにせよ、お金は分けないといけないですね。評価報酬制度って、別にそれが「第一の機能」だとは思わないですけど、マストでやらなきゃいけないのは「じゃあ、どうやってお金分けるの?」っていう話ですよね。

斉藤:そうですよね。

曽和:僕がいたライフネットとかは、僕が入った当初って、2年間ぐらいは評価報酬制度がなかったんですよ。

斉藤:へぇー!

曽和:だから実際、(評価報酬制度なしでも)やれないこともないんですよ。みんなやっぱりモチベーションが高かったりとか、理念に共感して来てたからっていうのもあったりすると思うんですけど、いわゆる「金銭(給与)を決めるための評価報酬制度がないと本当にできないか?」っていうと、そんなことはないですね。

ただ、時限付きでしょうね。ずっとない会社って、あんまり見たことないんで(笑)。ちっちゃい会社は別ですけどね。

斉藤:確かに。3人でスタートアップしてた時はなかったですね、さすがに(笑)。

曽和:ですよね(笑)。もちろんフォーマットとかはあって、それをもとに話し合うとか、そんなのはアリだと思うんですけど。大きな会社にあるような制度は、3人の規模ではいらないですよね。

斉藤:そうですね。コメント、続々といただいてますね。「業務を好き嫌いで選んでしまっている」。確かに評価する基準がないと「やりたいか・やりたくないか」で選んでしまいますね。

曽和:そうですね。不文律は跋扈するんですよね。明文律を作っておかないと不文律が跋扈して、不文律って変えにくいんですよね。「『いやいや、そんなつもりじゃないよ』って言いいつつも『本当はそんなつもり』」みたいなものがですね、明文律を作っておくことによって抑えられる効果もあると思うんです。

斉藤:なるほど。だから「どこまで明文律化して、どこまで不文律化するか?」というところも、腕の見せ所ですね。ありがとうございます。

曽和:そうですね。だから「文化と補完関係にある」というかね。

「なんかわかんないけど給料が上がった」で下がる信頼感

斉藤:次の質問はクエスチョン1と逆の質問になります。今度は人事評価がうまく機能している組織では、どのような良い影響・良い変化・良い事象が起こるでしょうか?

斉藤:「それぞれの成長支援」という観点だったり「ちゃんと評価するんだ」という観点だったり、さまざまなご意見もありましたが。人事評価が機能している組織になってくると、どうなるでしょうか? という問いです。

いいですね。「評価から学ぶことができるようになっている」。

曽和:さっきの「報酬を決める」だけじゃなくて、もちろん育成の観点というか、評価項目自体が「こういう行動をしてほしい」とか「こうなってほしい」っていうものの塊だったりすると思うので。確かに、それが育成につながるってことはあり得るでしょうね。

斉藤:そうですね、さっきの不文律と明文律化されてるところで「ここを自分は伸ばしていけばいいんだ」っていうのがわかりやすい、というのが機能する状態かもしれないですね。

曽和:あと「納得感」みたいなものとか「エンゲージメント」とかのコメントが出てきてるのは、そうだと思いますね。給料が上がったらうれしいですけど「なんかわかんないけど給料が上がった」っていうのは、逆にモチベーションが下がったり、信頼感が下がったりしますからね。

斉藤:らしいですね。「上げすぎてもいけない」というのは、言われたりしますね。

曽和:「自分のどこを見て上げたんですか?」みたいな。なんか不思議なんですけど、上げるほうは「上げてるからいいじゃないか!」とか思ったりすると思うんですけれど。

斉藤:額面の上がり幅が下がったときに、デモチベーション(意欲が下がる状態)になったりするんですよね。

「成長のラインがわかりやすい」「部門を越えての共創も、人事評価の機能している具合によっては起こるんじゃないか」。本当、人事評価って全部の型ですよね。

変な制度を入れると、知らないうちに悪い文化ができてくる

斉藤:「自分の行動が報酬に繋がると実感できることで、充実度が変わるのではないか」「自己肯定感」。なるほど! 評価が機能しているからこそ、極論、人事がいなくても組織が機能することもあるんですね。

曽和:それはあると思いますね。だから結局、人事あるいは経営者とかが直でやらなくても明文律があることによって、ある種の部分は、自動的に組織が改革されていくところはあるのかもしれませんね。逆に言うと、変な制度入れちゃうと、もう知らないうちに、自動的にいろんな悪い文化ができてくるみたいな。だから諸刃の剣ではないかと思うんですけれども。

斉藤:本当に、勝手にできちゃいますよね。

曽和:チームワークとかもありますね。

斉藤:ありがとうございます。

曽和:個人主義に走っちゃうような評価制度もありますし、制度の作り方次第かもしれませんけどね。

斉藤:まさに「明確になる」というところなのかなと思います。ありがとうございます。さまざまなご意見をいただいたんですけども、人事評価って本当に広い言葉だなって思っております。なので私どもも、このテーマ設定にする時に少し悩みました。

人事評価って、どこにフォーカスすべきなんだろうか? いやでも、広く議論した方がみなさまのお悩みのポイントがあるんじゃないか? 悩んだ中で「人事評価」って、まるっとまとめて。人事評価における、今まで「これがいいんじゃないか、悪いんじゃないか?」って思われてた常識。それと、実際の理論に基づいた場合に見えてきた常識・非常識について、ぜひ読み解いていければと思います。

斉藤:では曽和さん。「人事評価の常識・非常識とは」について、よろしくお願いします。

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