「できないことが徹底的にできない」と言う、澤円氏

澤円氏:「オンラインの仕事環境に悩むあなたへ」ということで「COVID-19時代を生き抜くマインドセット」についてお話していきたいと思います。僕は株式会社圓窓という会社で、ぼっち社長をやっておりまして。

ルーツとしては、もともとは日本マイクロソフトという会社で働いておりました。そして、琉球大学の客員教授をやったり、ビズリーチの顧問をやったり、いろんな会社の顧問をやらせていただいたり。あるいは「Voicy」というインターネットの音声メディアで毎日配信をしていたりするんですけども。

27年間と5ヶ月、サラリーマンをやっていたんですね。マイクロソフトだけで22年と11ヶ月なんですが、その前に日本企業でしばらく働いていたので、トータルで28年近くサラリーマンをやっていたんです。見た目はこんななので、どうしてもミュージシャンとよく間違われるんですけども、正体はずっとサラリーマンなんですね。

そして、2020年の9月に独立をしました。去年の8月にマイクロソフトを退職しまして、法人は一昨年にもう立ち上げていたんですけれども。その法人に完全にシフトするかたちで、独立をすることになりました。

そして、こちらが僕の大好きなホームページなんですが、これは友人のデザイナーさんに作ってもらったもので。基本的にはこのホームページ、もしくはSNSでお仕事をいただくといった日々を過ごしております。

本当におかげさまでめちゃくちゃたくさんの仕事をいただいているんですけれども、ただ極めて深刻な問題というものがあるんですね。ぼっち社長で自分の得意な分野を選んで、能力を発揮してお仕事をしているんですけれども、極めて深刻な問題が、とにかく僕はポンコツなんですね。もうとにかく「できないことが徹底的にできない」という、ポンコツ野郎でございまして。

ちなみに、かみさんが右側の人なんですけど。これはかみさんが作ってくれた衣装なんです。こういった撮影会なんかで……絵とこのポンコツであるということはあんまり関係ないですが。とにかく僕はスケジュール管理とかがぜんぜんできないんですね。スケジュール管理とか本当に超無理で、何回も何回も本当にミスをしまして。

それこそ幸いなことにすっぽかしたりはまだないんですけども、いろいろと自分でかなり無理がかかっちゃったということがあるんですね。そして、数字の管理もぜんぜんだめなんですね。僕はもともと文系SEという奴で、経済学部出身でプログラマーになった人間なんですけれども、経済学部のくせに数字が苦手で。簿記の授業で結局、卒業をするまでのあいだ、左右の計算が一度も合ったことがなかった。それぐらいひどいんですけれども。

そう考えると、会社というところは本当に素晴らしいんですよね。何が素晴らしいか? というと、これはなんといっても仕組みになっていますから。だから会社って素晴らしい。僕も1人で会社をやっていますけども、いわゆる会社組織。特に大企業になってくると、困ったら助けてもらえる仕組みがある場合が多いわけですね。

これが中小企業とか零細企業とか、僕のようなぼっち社長だと違いますけれども。中堅よりも大きいところになると役割分担が行われているので、困ったらだれかが助けてくれたり、苦手分野はだれか別の人がやってくれるという仕組みがある場合が多いんです。でも僕の場合にはそれがない。1人でやっているんですから、そんなわけにはいかないということなんですけれども。

「おはようございます」と挨拶をすることで入る、スイッチ

でもこんな状況から僕を救ってくれる存在が現れまして、それが「CASTER BIZ」さんというサービスになります。これは、Slackさんの事例にもなっているというか、Slackさんのユーザーでもあるんですけれども。

「CASTER BIZ」(​​株式会社キャスター)というのは、オンラインアシスタントをやっているベンチャー企業なんですね。社長さんも非常に仲良しなんですが、この「CASTER BIZ」さんが、オンラインで全部、僕のスケジュール管理だったり数字管理とかをしてくれるようになりました。

そしてオンライン秘書ですから、すべてのやり取りはネット経由。ネット上で行われています。そして実際に僕の担当してくれているフロント担当、要するにお客さんとのやり取りをしてくれる人と。バックオフィス担当、僕のスケジュール管理といったものをやってくれる人と。バーチャルに2人いる状態なんですが、会ったこともなければ会うこともないんですね。

そもそも、存在しているかどうかよくわからないぐらいなんですけれども、それでも仕事をしてくれる。もう仕事さえしてくれれば僕は満足なので、そのやり取りで僕はSlackを使わせてもらっているんですね。そして実はいくつかのツールを使っています。

スケジュール管理とかそういったものは、Microsoft 365を使っています。これは僕がもともと古巣で使い慣れているというもので、それを使っていますし。あるいはオンラインのミーティングであれば、Teamsを使ったりZoomを使ったりしているんですが、業務連絡とか信頼関係の構築に関しては全部Slackで行っています。

例えば、その信頼関係の構築という意味でいうと欠かせないのは、これなんですね。朝の定例行事で「おはようございます!」と挨拶をする時です。「おはようございます!」の挨拶そのものは、BOTで毎朝出てくるんですけども。見ていただくとわかるように、これにマークが付いているのがわかりますかね? ニコニコマーク。

必ず反応してくれるんですよ。僕が「おはようございます」とこうやって返すと、ちゃんと反応してくれるので、挨拶をし合えると。そして僕はここでしか、仕事仲間と挨拶をしないんですね。「おはようございます」と挨拶をする。これってけっこう僕にとっては大事な話で、スイッチが入るということなんですね。

こういうやり取りをしているわけなんですが、考えてみるとオフィスという場所は、この「おはよう」が気楽に言える場所だったんですね。もう朝に行ったら「おはよう」と言うことができる場所。そしてオフィスの役割というのは、そういう挨拶をしたりちょっとした会話や雑談をすることによって心理的安全性が得られる、そういう場所だったんじゃないかと思うんです。

なので、オフィスに行くということはちょっとした安心が得られるから「やっぱり出勤したいな」と。そして「COVID-19よりも前の状態に戻りたいな」と思っている人も一定数いるでしょうし、もちろんそれは部分的には非常に重要なマインドでもあるんですが、元に戻すという意識が強すぎるかどうかというのは、これは考えどころだなと思うんですね。

2020年、世界中で押された“リセットボタン”

なぜかというと、2020年に起きたこと、つまりCOVID-19というのは世界をリセットしてしまったんですね。これは本当にお感じになっている方も多いと思うんですけれども、もう起きていることは、ただ単に「ウイルスが発生しました」ということではなくて「世界中でリセットボタンが押された」と僕は定義をしているんです。

それも「25年ぶりのリセットボタン」という意味です。2020年の25年前、つまり、1995年に何があったでしょうか? やっぱりこれですよね。別にこれは僕がマイクロソフトで長らく社長をやっていたから、この話をしたいわけではございません。

Windows 95というのはインターネット元年を象徴する存在なので、持ってきただけの話です。1995年を境に、インターネットというものが世界でどんどん浸透し始めたんですね。そして、考えてみてください。インターネットが登場する前後の世界は完全に別世界ですよね。

例えばコミュニケーションを考えると、電話やFAXや手紙でやっていたやり取りというのがメールや、あるいはもうちょっと時間が経ってくるとチャットや、そして最近だとSNS。そういったものに置き変わったんです。

そしてCOVID-19の前後がまったく変わったわけですね。今までだったら移動や対面というものが大いに役に立っていたというか、当たり前でした。通勤とか出勤が当たり前だったのが、今やオンラインのほうが主体になりつつある。元に戻るのか?

例えば、インターネットを前後にしてコミュニケーション手段って、もう元に戻るということはなかったですよね。それぐらいの、インターネットの登場ぐらいの衝撃が起きていて、今さらもう比較する人はいないはずなんですよ。メールやチャットをFAXと比較する人はいない。リセットがかかったあとは、オンラインというものも1つの選択肢としてもう定着をしているわけですね。

「リモートワークだと社員がサボる」って本当?

ですので、移動やタイミングと比較をするのは、僕はあまり意味がないと思っています。働き方には選択肢があるということに多くの方が気付いていますので、これを盛り込まなきゃいけない。

「でもなあ、オンラインやリモートワークというのはどうしてもなあ」という管理職の悩みがあるのも、重々承知でおります。これが一番多いと思うんですけれども「リモートワークや在宅勤務やオンラインだと、社員がサボるんじゃないか?」「仕事をしないんじゃないか?」、そういう心配をされる方が特にマネジメント層の方に多いんじゃないかなと思うんですが、僕は常にそういった方にはこう言っています。

「心配しないでください。前からそういう人たちはサボっていました。サボり方がより安心安全にサボれるようになっただけの話です」。出勤しているからってサボってない保障はないわけですよね。

そもそもサボっているかサボっていないかというものを判断する材料って、何なんでしょう? そっちのほうが問題なんですね。そして「目の前にいないとマネジメントができない」というのは、正直、マネージャー失格だと僕は思っています。もっと言うと「目の前にいるからマネジメントができる」というのは、大きな勘違いだということなんですね。

大事なことは何かというと、必要条件はまず定量評価ができること。「その人がどのようにしたら、何をもって仕事をなしたとみなすか」ということが、定量的に測れるかどうかというのがポイントになってくる。その上で、十分条件としてもっと上振れをさせるのだったら定性評価と。

要するに「数字で表れないけれどもさらなるがんばりは認められる」。これが十分条件になっていく。何を基準に評価するのかは、これが非常に重要なポイントになるわけですね。

ですので、リモートワークの中においてマインドを高めていかなければいけないのは、なんといってもマネジメント。これは管理ではなくて、いかにして応援していくことができるか。そんなマネジメントが求められる時代になっているんじゃないかと考えています。

マネージャーはチームメンバーを助けるために存在する

そしてマネージャーの仕事というのは何かというと、これは助けることです。マネージャーというのは管理するのが仕事ではありません。マネージャーはチームメンバーを助けるために存在すると考えています。このあたりは先ほど「CASTER BIZさんに助けられている」と話をしましたけれども。

これは株式会社キャスターのCOOである石倉さんという方が、つい最近に出版された本なんです。これは非常に良い本なのでよかったら読んでみてください。このマネジメントの考え方で、キャスターさんというのは全社員がリモートワークなんですね。そして数百人の社員の方が十分にマネージされた状態で安心して働いている、そういった事例になりますので、ぜひお読みになってはいかがでしょうか。

とにかくマインドセットをトランスフォームしていくのが大事なんですね。デジタルトランスフォーム、デジタルトランスフォーメーション(DX)とよく言われますけれども、最もトランスフォームしなきゃいけないのは、マネジメントの意識。これは別に管理職といわれている人たちだけではなくて「すべてのメンバーの人たちが、どのようにマネジメントというものが行われるか?」というのを考えるのが、これからの職場環境で非常に重要な考え方になります。

そのためにはプロであることが求められるはずです。プロというのは、しっかりと数値化された目標が達成できる人のことを指すんじゃないかと思います。でもそれを安心してできるようにするためには帰属意識、そのチームに帰属しているというのがすごく大事かなと思います。

これは「Clubhouse」の写真を後ろに貼っていますけれども、「Clubhouse」は、クラブという雑談の部屋でお互いがわちゃわちゃして、なんとなくの帰属意識を緩やかに醸成する場だと僕は思っているんですね。それを言葉だけでやっているわけですね。「Clubhouse」というのは音声だけでやると。その言葉によって帰属意識を生む時代なんです。

例えば、今までだったら帰属意識を生むためには「やっぱ飲み会だよね」と思う方もいるかもしれないんですけれども、なんといっても飲み会というのは全員が行けるわけでもなければ、これがポイントなんですが、全員が行きたいわけでもないんですね。

そして、今やCOVID-19によって「自粛をしましょう」とか「飲食店を早く閉めましょう」という流れになることによって、飲みに物理的に行けない環境が出てきています。それによって、すごく場合によって喜んでいる人がいたりするんですね。

あるいはこれによって「フェアな状態になった」と安心している人もいます。つまり、どうしても家の都合とかさまざまな理由で行けないという人もいるし、あるいはこういった場が非常に苦手だという人もいたわけですね。そして「なんでこの場(飲み会)で仕事と関係するようなことが起きるんだ」と思っている人がいるのも事実なんです。

ということで、とにかく勤務時間に雑談する努力をしてください。雑談ってけっこう努力が必要なんですよね。もちろん時間を確保するというのもそうだし、トピックを決めるというのもそうだし、場合によっては会話を回していくというところもそうです。

評価のためでなく、心理的安全性や帰属意識を生むための雑談

けっこうこれは腕の見せどころなんですね。勤務時間にいかにして雑談していくのか? というのが、これから非常に重要かなと思います。そのためにはもう、ツールを使うのは大いにけっこうだということなんですね。そして、これも非常に重要です。1on1の雑談。昨日かな? 日本企業の社内勉強会で数百人の方がほとんどオンラインでしたけども、プレゼンテーションをさせていただいて、たくさんのマネージャーの方も参加いただいていたんですが。

「1on1を定期的にやっている人?」と質問したら、残念ながらほとんど反応がなかったんです。ごくごく一部の人しかやっていませんでした。まだまだカルチャーとして定着していないかな? というのが実情じゃないかと思うんですよね。もし「1on1を定期的にやっていないよ」という方であれば、ぜひやってください。これは効果絶大です。

そして決して評価のためにやるのではなくて、心理的安全性や帰属意識を生むための雑談をしていただきたいんですね。その雑談のきっかけは、例えば音声だけで難しいんだったらSlackで、チャットで、あらかじめトピックを決めておいたりして話しやすい環境を整えたあとで、実際にTeamsやZoomなどオンラインで顔を見ながらミーティングをするというやり方でもいいんじゃないかなと思います。

ちなみに、オンラインで最も不安なのは何かというと「正しく評価されないかもしれないというが、評価の中で一番怖い」と調査結果がついこのあいだ出て、これは日経新聞にも載っていたんですけれども。フェアな評価や、それがちゃんとKPI化されている状態が非常に重要かなと思うんですね。

もう1つがポジティブなコミュニケーション。安心して働けるような環境を作っていくためには、ポジティブなコミュニケーションが欠かせませんから。ぜひここを意識していただきたいなと思うんですね。

そういうことを意識しつつ、環境としては今後はハイブリッド。先ほど言ったように、COVID-19によって世界はもう本当にリセットがかかってしまい、移動や対面を前提としたコミュニケーションから、オンラインも含めたハイブリッドが今後の主流になってくるだろう、というのはみなさんもお感じになっていると思うんですよね。

このハイブリッドな働き方をしていくためには何が必要か? というと、もう意識を変えていくこと。そしてなんといっても「仕事というのは何のためにするの?」と、ここまで立ち返ってみましょうか。仕事って何のためにするんでしょうか?

ハッピーになるためなんですね。「自分がハッピーになるためにはどんな働き方がいいんだっけ?」というのを自問自答しながら、とにかくハッピーに向かって仕事ができるといいな。というのを最後の言葉にして、僕のプレゼンテーションは終了とさせていただきます。ありがとうございました。