問い方で変わる、「自走型組織」のつくりかた

司会者:本日は「~テレワーク時代にも成長を止めない~ “問い方”で変わる『自走型組織』のつくり方」をテーマに、当社代表の宮本よりお話をさせていただきます。それでは宮本さん、よろしくお願いいたします。

宮本寿氏(以下、宮本):クエスチョンサークルの宮本と申します。よろしくお願いいたします。本日は「“問い方”で変わる『自走型組織』のつくり方」というタイトルでご案内しております。実は、クエスチョンサークルとしてはウェビナーの開催は初めてで。

私もふだん、対面のセミナーやワークショップなんかでは、参加者のみなさんとやりとりしながらは慣れているんですが。どうも画面に向かってお話しするのがあまり慣れていなくて。先日、動画を撮る機会があったんですね。

20分くらいの短い動画を3本撮る機会があったんですが、PC画面上でずっと喋り続けるのが慣れていなくて。少し緊張しておりますが、今日は知人も何人か参加してくれていますので、そんな知人を思い浮かべながら進めたいと思います。よろしくお願いします。

人材育成やフリーのコンサルを経て起業

宮本:とは言いましても、今日ははじめましての方も多くいらしていただいていますので、簡単に自己紹介させていただけたらと思っています。

社名はクエスチョンサークルと申しまして、屋号にも入れているんですが、「クエスチョン」が今日のテーマでもあるんですけれども。問いや質問を切り口に、組織づくりやリーダーシップ開発のお手伝いをさせていただいております。

設立したのは一昨年の10月1日で、まもなく2年になります。けっこうどうでもいい話なんですが、10月1日は「問(10)い(1)の日」ということで、4月にはもう設立準備ができていたんですが、10月1日の問いの日に設立にしたくて、半年間待ったり。

あとは、資本金も940万円もぜんぜん必要ないビジネスなんです。私たちは「QC」と呼んでいただいているんですが、何か意味を持ちたくてこんな資本金にしました。会社についてのご紹介はこの程度にさせていただきます。

私の簡単な自己紹介です。先ほど申し上げましたが、この2年間はクエスチョンサークルという会社で、まだ小さなチームなんですが、数名の仲間と活動しております。

実はそれ以前に、私が個人で活動していた会社になるんですが、メロスパートナーズでフリーのコンサルとして12年間活動していました。それ以前は、グロービスやリンクアンドモチベーションといった、いずれも人材育成や組織開発をやっている会社になるんですが、その領域で今に至っています。

「仕事を頼みにくい」……リモートワークあるある

宮本:自己紹介はこの程度にさせていただいて、今日の本題に入っていきたいと思うんですが、まずはこんなクエスチョンをご用意してみました。

「昨今のテレワーク環境において、本日ご参加いただいている経営者、または事業を推進する立場のみなさまにとって、どのような問題意識がありますでしょうか?」また、「職場のマネジメント層の方々は、チームやメンバーのマネジメントにおいて、どのような問題意識をお持ちでしょうか」という、そんな問いから始めていきたいなと思っております。

きっと今日のテーマにご興味をお持ちいただいていらしている方々は、テレワーク環境という今の大きな社会変化の中に、何か問題意識をお持ちでいらっしゃるのかなと思います。対面のやりとりができれば、みなさんに生の声もうかがいながら進められると良いのですが、今日はそれができないのでこういったレポートを探してみました。

これはパーソル総合研究所のレポートからの引用になるんですが、テレワーク環境における上司の不安や疑念感ということで、こんな結果が出ておりました。

もうこれは、きっとみなさんにとっては「あるある」かなと思うんですが。大きいところから読み上げると、「業務の進捗状況がわかりにくく、不安に思うことがある」ということですね。あと、「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」と。

続いて、「相談しにくいと思うことがある」とか「仕事を頼みにくいと思うことがある」ということで、きっとリモート環境においては、誰しもが「あるある」なんだなと思っています。

「画面オフ」「振らないと誰も発言をしない」リモート会議

宮本:あともう1つ、こんな簡易的なチェック項目もご用意してみました。読み上げますので、何か思い当たるところがあれば指を折りながらチェックをしていってください。

まず1つ目は、「会議では自分から振らないと誰も発言しない」ですね。これはもともとテレワークの前からもあった状況かもしれませんが。テレワークになって、画面オフのまんまでさらにエスカレートしているかもしれません。

あとは「自分以外のメンバーから会議の議題が挙がってこない」ですね。逆に、「現場の小さなことでも、自分にすべての相談が来てしまう」。なかなか現場で自分で判断して行動してくれない、とかですね。

一方で、「期限を過ぎても部下からは逆に何の連絡もない」というのも、テレワーク環境下でより助長しているかもしれません。先ほどもありましたが、「リモートワーク中、メンバーが何をやっているのかわからない」。

それから「自分が言ったことに対して肯定しかされない。意見や反論がない」、そんな方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。きっと、おそらく1つや2つは、みなさんあるのかなと思っています。

これも本当によく言われるお話ですが、今、VUCAの時代になって先が読めなくなっている社会の中で、どんな組織・どんなリーダーシップが本当に求められているのかが、今日のセミナーのテーマの1つになります。

リモート下で「自走型組織」が特に求められる理由

宮本:これも書籍からの引用になるんですが、唐澤(俊輔)さんという方が書かれている書籍(『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』)の中で、こんなふうに組織のあり方やリーダーシップスタイルを4つの類型に分けていらっしゃいまして。

ざっとご説明すると、縦軸は中央集権的な組織マネジメントです。一方で、分権型、現場でどんどん自走するような、そういった軸。横軸は変化志向に向いた組織マネジメントと、安定志向に合った組織マネジメント、そんな軸で4つの類型に分けられているんですけれども。

この本を読んでおもしろかったのが、以前の時代はそれぞれの業種やカルチャーによって、それにフィットした組織のあり方、リーダーシップのあり方があったんですが、今はリモート環境が進む中で、結果的には(スライドを指しながら)この左下の組織がつくれないと、ビジネスとしては前に進めて行けなくなってきた、そんな見方ができそうです。

リモート環境になって、中央集権的に指示・命令するのではなく、分権的に現場でどんどん自走していく必要があります。そもそもVUCAの時代の中で、なかなか安定的なマネジメントができるわけではないので、自走型の組織が求められているのかなと思っています。このあたりのお話は容易に想像ができるところかと思います。

指示待ち組織が生まれる理由

宮本:私たちクエスチョンサークルでは、「自走」という言葉をよく使っていまして。「自立」「主体性」「自発性」とか、そういった言葉と近しい意味で使っているんですが、あらためて自走型組織とはどんな組織なのかなというのを、このセミナーをきっかけにいろいろ考えてみました。

自走型組織を考えようと思うと、指示待ち組織と対比しながら考えてみるとわかりやすいかなと思いまして。私なりの結論としては、つまるところ、この違いなのかなと思っています。答えの在処(ありか)がどこにあるのかというところです。

指示待ち組織の場合は上司が答えを持っていたり、経営が答えを描いていて、それを現場・部下が実行する。「What」を考えるのは上司や経営で、「How」を実行するのが部下や現場という、そんな構図なのかなと思います。

そうすると当然メンバーの意識としては、上司の中に答えを探すなど、上司に判断をあおぐ意識になります。また、上司との関係というと、やはり上司からの指示を待つ、待たざるを得ない、悪く言えば顔色をうかがってしまうので、そういう関係になりやすいのかなと思います。

現場が自走するために、上司に求められることとは

宮本:一方で、先ほどの図で言うと左下にあるような分権型の組織・自走型組織の場合は、違いはやはり「部下の中に答えがある」ですね。部下が最適解の一番近くにいて、答えが現場にある風景ですね。そこが、この指示待ち組織との大きな違いなのかなと思っています。

答えが現場や部下の中にあると、メンバーの意識としては当然、現場の中から自分で答えを探すようになります。上司との関係も、上司に答えを聞くのではなくて、自分が答えを探すために、ないしは答えに対して実行するために上司を頼るという関係に変わっていくのかなと思っています。

指示待ち組織の場合は、良い意味でも悪い意味でもリーダーが統率していかないと、なかなか現場が動いていかない。そんなリーダーシップが求められると思います。

一方、私たちはよく「支援型リーダーシップ」と言っていますが、自走型組織の場合は、逆に現場を支援していくリーダーシップ。「サーバントリーダーシップ」なんていうふうにもよく言われますが、現場が自走できるためには、上司のリーダーシップスタイルは大きく変えていく必要があるんじゃないかと思います。

結果的に、支援型リーダーシップが発揮されている組織の中では、こういった自己成長傾向の強い組織がカルチャーとして育まれます。逆に統率型のリーダーシップが行き過ぎると、組織のカルチャーとしては他者依存や他責傾向になってしまいかねないと。そんなふうに見ております。

部下に「問い」を行うことで、組織に起こる変化

宮本:通常は、ぐいぐいと引っ張っていくリーダーシップがイメージしやすいんですが、私たちは「支援型リーダーシップ」を推奨しております。

「統率型リーダーシップ」と「支援型リーダーシップ」、何が違うのかというと、ここはいろいろと思うところがありまして。平たく言うと、一番の違いはこれなんだろうなと思っております。

統率型リーダーシップの場合は指示を出さないと現場は動けないので、やはり「指示を出す」と。一方、支援型リーダーシップの場合は指示を出すんじゃなくて「問いかける」。こんな点が大きな違いとして挙げられるのかなと思っています。

私たちはこの「問い」や「質問」というクエスチョンを切り口に、支援型リーダーシップのお手伝いをしているんですけれども、私たちはコミュニケーションの中でよく質問します。また、誰かに対してではなくて、実は自分自身にもいろんな問いかけをしています。

これは上司と部下の関係を想定しているんですが、上司が部下に対して質問をすれば、部下はそれに対して回答するわけですが、実際は部下が回答する間に「考える」というプロセスが入ります。

ここが「指示・命令」だと、「考える」というプロセスが生まれなくて、理解はできるんだけれども、行動には変わらないということがよくあります。一方、質問や問いかけをしていただくと、メンバーの中に「考える」というプロセスが生まれます。

そんな中で、ご自身が気づいたこと、思ったこと、やろうと思ったことは自発的な行動に変わりやすい。簡単なお話ではありますが、そんなメカニズムがあるのかなと思っています。

部下に対して有効な「問い」とは?

宮本:こういった問いの効果・効能はきっと大きいだろうと思っておりまして、どんな問いが有効なのかを、みなさんと考えていきたいなと思っております。

(スライドを指しながら)簡単な1枚なんですが、「どちらが望ましい問いでしょうか」という、そんな問いからです。左側は「5足す5はいくつですか?」、右側は「何と何を足せば10になりますか?」ということです。こんなふうに言えるのかなと思っています。

実は、左側の「5足す5はいくつですか?」という質問も、すでに1つの正解があって、その答えを導くのには有効な問いだなと思うんですね。

例えば、新人が新しい仕事について覚えなくちゃいけないことがたくさんあったりとか。ないしは、ある程度成功のパターンが決まっていて、それどおりにやればうまくいくのがわかっているような状況においては、むしろ右側のような問いではなくて、左側のような問いのほうがよっぽど近道なわけです。

良い答えを導き出すためには、良い問いが必要

宮本:ただ、肝心な場面で求められる問いは、どちらかというと右側の問いなのかなと思っています。

何が正解かやってみないとわからない。ないしは、正解と言われるようなものはもうすでに誰かが手をつけていて、その中で新しいことをトライしていく必要があるんですが、そんな時には少し遠回りですが、答えにリーチするためのさまざまな視点を得られるような問いが有効なのかなと思っています。

(スライドを指しながら)これも簡単なことを言っている1枚なんですが、私たちはついつい答えをすぐ探してしまうんですが、実際はいきなり答えがあるわけではなくて、問いがあって答えがあるという構図ですね。

算数であれば設問があって解答があるのと同じように、いきなり答えとか解答、正解があるわけではなくて。やはり問いがあって、それに呼応して答えがある。私たちは、良い答えを探したければ、良い問いを持つことが大事だなと思っています。

特に今の時代は、すでにネットやAIも進化して、ある意味正しく問うことができれば、しかるべき情報は得られるような時代になっていると思うんですね。