2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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ーーどうしても、怒りっぽい人と付き合わなきゃいけない場面もあるとは思うんですが、そういう時は最低限の付き合いにするとか、付き合い方を考えたほうが良かったりしますか?
安藤:僕が常々言っているのは、「とっとと逃げなさい」なんですよね。日本人って「逃げる」をあんまり良しとしないんですよ。アメリカでアンガーマネジメントを習う時に最初に言われる言葉が「run」です。「run」の意味は「逃げろ」なんですね。要するに、その場にいて問題があるんだったらさっさと逃げろ、なんですね。
だけど日本人って伝統的に、第2次世界大戦中も「撤退」とは言わずに「転進」と言ったりとか、とにかく逃げることを嫌がるんですよね。どうも僕たちは、文化的に逃げることを恥だと思ってるんですよね。なので、それがなかなかみんなできないんですが。
検索すれば出てくるんですが、2016年の産経新聞に中学生の女の子が「動物は逃げるのに、なんで人間は逃げちゃだめなのか?」っていう投書をして。さっき「怒りは防衛感情」だと言いましたが、もっと専門用語でいうと、「闘争・逃走反応」とも言えるんですね。
要するに、怒りの感情って「闘う」か「逃げる」を体にさせるための命令なんですね。動物が怒りを感じた時にやることって2つしかなくて、闘うか逃げるかなんですよ。
ーーどっちかのとうそう(闘争・逃走)ってことですね。
安藤:どっちかなんです。だけど、日本人は1つの選択肢を消しちゃっているんですよね。なぜか闘おうとしちゃうんです。
安藤:だから今、世間のSNSやいろんなニュースを見ていても、なんでみんなが攻撃的になるかっていうと、「見ずに逃げる」という選択ができないんですよね。逃げりゃいいじゃん、見なきゃいいじゃん、なんですよ。
ーーでもきっと見ちゃうんでしょうね。
安藤:なぜかというと、闘いたいからなんですよ。「闘いたい」しかなくなっちゃってるんです。子どもの頃から「嫌だったらやめていいよ」とはあんまり言われないんですよね。
ーー逆に、日本人の「嫌だったらやめていいよ」は、「続けろ」というニュアンスがあったりしますよね。
安藤:ちょっと話がずれるかもしれませんが、結婚とかもそうなんですよね。離婚を良しとしない。
ーー離婚は逃げっていうイメージなんですかね?
安藤:要するに、うまくいかないんだったらさっさと別れたほうがいいよ、っていうのが僕の考えなんですね。
例えば(離婚しない理由で)よくあるのが、「子どもがいるから離婚できないんです」。でも、僕に言わせれば、いがみ合う姿を毎日子どもに見せるぐらいだったら、別れて自由に生きたほうがよっぽど良いよっていう。だけど、そういうのにすごく囚われるんですよね。だから「もっと逃げれば(良いのに)」って思います。
ーー周りの目を気にする、日本人の気質も関係あったりするんですかね?
安藤:例えば、第2次世界大戦中にルース・ベネディクトが、「西欧人の罪の文化に対して、日本人は恥の文化だ」というのを論じてるんですね。僕ら(にとって)は何が罪かというと、「恥ずかしい」が罪なんですよ。
だから、子どもの頃にどうやって怒られるかっていうと、「恥ずかしいからやめなさい」なんです。「神さまが見てるからやめなさい」とは言われないんですよ。でも、西欧人は神に対して行いが罪になるかどうか。
だけど、僕ら日本人ってどっちかというと、恥ずかしいが罪なんですよね。だから、逃げるのも1つの「恥ずかしい」になっちゃうので、どうもみんな逃げない。
ーー恥ずかしいから「逃げちゃだめだ」って自分に言い聞かせるところは、日本人ならではの部分かもしれないですね。
安藤:でも、『逃げ恥』(『逃げるは恥だが役に立つ』)は、ハンガリーのことわざなので、必ずしも日本人だけがその文化ではなくて。どうも世界中には、逃げても平気な民族と、逃げることがだめな民族がいるみたいです。ハンガリー人は「逃げるは恥だが役に立つ」って言ってるので。
ーー日本人だけではなくて、文化的な背景とかもあるかもしれないですね。「怒り」と「文化」でいうと、最近は炎上文化も生まれていますよね。なぜそうなっているんでしょうか?
安藤:なんで今、ネットとかいろんなものが燃えちゃうかというと、お金がないから出掛けられないんですし、実は時間も大してないんですよ。でも、スマホだったら誰でも持ってるじゃないですか。
しかも今、(緊急事態宣言下で)行動制限されているので、誰も外に出られないじゃないですか。そうすると怒りって、「安・近・短」なエンターテインメントです。一番手軽ですもん。
ーー盛り上がりますよね。
安藤:盛り上がります。怒ってる間はすっきりするし、例えばヤフコメでも、どんなに極端なことを言っても「いいね」がもらえるんですよ。あそこでコメントしてる人って、だいたいふだん承認されていないので、ネットの世界だと自分が少なからずヒーローになれちゃうんですよね。そうすると、余計にエスカレートします。
ーーふだん繊細な人や弱い立場の人ほど、エスカレートしてしまう傾向もあるんですか?
安藤:繊細な人っていったい何かというと、「自分の話をされていないのに、自分が攻撃されたと思っている人」なんですよ。
例えば、ネットでも何でも、自分のことを言われてると思うから攻撃するんですよね。怒りは防衛感情だと言いましたが、要するに、先制攻撃じゃなくて防衛なんですよ。だから怒ってる人たちって、少なからず先に誰かに攻撃されてるんですね。
ーー攻撃された上で、自分を守るために過激なコメントを書いたりする。
安藤:要するに、当たり屋なんです。自分から当たりに行って、「攻撃された」なんですよ。
ーー怒りは防衛本能だけど、攻撃になっちゃってるんですかね?
安藤:もう、本当に紙一重なんですよね。「自分なんて」って溜め込んでしまう人と、その攻撃性を外に出しちゃう人。攻撃性って行く方向が3つしかなくて、「他人」か「自分」か「物」なんですよ。「人に当たるタイプ」「自分の中に溜め込んじゃうタイプ」「物に行くタイプ」です。
スポーツ選手なんかはけっこう物に行くんですよね。大坂なおみ選手とか、ラケットを壊している姿は何度もありましたよね。彼女も今、すごくメンタルが難しいところにいますけれども。人も責められないので、自分の中に溜め込み、その表現の1つとしてラケットを壊すんですよね。
ーー自分に当たっちゃうとか、他人じゃなくて物に当たっちゃうこともそうかもしれないんですが、自己肯定感ってやっぱり関係ありますか?
安藤:自己肯定感が低い人は、怒りっぽくもなるし、怒れなくもなるんですよ。どっちかに出ちゃうんですよね。
ーー二極化するんですね。
安藤:そうなんですよ。
安藤:だから僕、「世の中の怒れない人は自己肯定感が低いです」っていう本を、まさに今書き終わったところで。先週ぐらいから書き始めた本が、「自己肯定感が低いから怒りっぽいです」っていう、一見真逆の本を書いてますからね(笑)。結局、どっちもなんですよね。
どんなに成功しようがしまいが、結局、自己肯定感の低さは関係ないんですよね。それこそ、大坂なおみ選手がハフポストで、自分がいかに自己肯定感が低いかってことをコメントしてるんですよ。何かイライラがあると、「なんで私に(取材依頼が)来るんだろう」みたいな。
ーー「なんで私なんかに?」みたいな。
安藤:いや、だってあなた、女性のアスリートで今世界1位だからっていう。そこまでいっても、自分のことが認められないんですよね。それは生い立ちにも関係してきますし、そこの問題を自分でクリアしないと、なかなか難しいですね。
ーー自己肯定感って自分で上げられるものなんですか?
安藤:上げられますよ。難しいことはぜんぜんなくて、例えば、まず自分の感情に気づくっていうのが1つ。マイナスな感情とか、自分がネガティブな気持ちを持ってはいけないと思ってる人って、けっこういるので。
それから、毎日自分がうまくいっている幸せなことを見つけようっていうのがあるんですよ。幸せって「なるもの」か「あるもの」かっていうのは、けっこう議論があって。幸せな人って、なるのが上手い人じゃなくて、あるものを探すのが上手い人なんですよ。
例えば、「今日はご飯がおいしかった」でも幸せ(の1つ)だし。そういう、毎日の中にあるちょっとした幸せが見つけられるかどうかが1つ。あとは、減点主義じゃなく加点主義でものを見られるかとか、いろいろあるんですよね。
ただ、それは一般論であって、その人の何が一番自己肯定感を低くしてるかなんですよ。それが補えると、ぜんぜん平気になっちゃいますけどね。
ーー過去の出来事が、自己肯定感の低さの原因になっている人が多い気はしています。
安藤:基本的には、親からどう怒られてたかなんですよ。あとは、親が何を怒ってたか。
ーーどう怒られていた人が自己肯定感が低くなりやすいんですか?
安藤:実は自己肯定感が高い人ってあんまりいないので、基本的にはみんな低くなるんですけど。問題は「何によって低くなるか」なんですよ。
例えば、僕の場合だと、まず貧乏だから自己肯定感が低いっていうのがあったんですね。父親と母親が喧嘩する時に、「お金がない」っていうのですごい喧嘩するわけです。だから「お金がない=価値がない」ってすごく刷り込まれるんですよ。
自分がお金を持っていないとか、自分よりお金持ちな人がいて、「俺はぜんぜんだめなんだな」「もっと上にいかなきゃいけないんだ」ってすごく思ってたんですけど。でも実際、自分がお金持ちになっちゃうと、その問題ってクリアできちゃうんですよね。
ただ、問題は1つあって。どんなにお金持ちになっても、スーパーお金持ちがいっぱいいるので、上を見ないことなんですけどね。
ーー上を見たらキリがないですよね(笑)。
安藤:キリがないです。あるいは、僕は田舎者っていうのもコンプレックスだったんですが。でも、東京で暮らしていく中で、「別に俺、田舎者であってもいいのかな」って思えるとか。これ、気がつかないとなかなかクリアできないんですよね。
自分の何が自分を卑下しているかに気づくと、同じことをしていても(自己肯定感が)上がる・上がらないって、けっこう変わっちゃうんですよね。
ーーちなみに、今は「どう怒られてきたか」というお話だったと思うんですが、「何で怒られてきたか」という部分はどうですか?
安藤:例えば、一番簡単な話ではきょうだいで比較されるとか。「お姉ちゃんはできてるのに、あなたはできない」。そうすると、お姉ちゃんに対するコンプレックスになったり、お姉ちゃん以外の人にも置き換えられちゃうので。だから、「誰ちゃんはできるのに、自分はできない」になっちゃうんですよね。
ーー自己肯定感の話だと、客観的に見つめ直すことってけっこう難しいことだなとは思っていて。自分を見つめ直すポイントってありますか?
安藤:僕がすごくおすすめしている方法があって。何かっていうと、別にこの上着やイヤホンでも何でもいいんですが、あらゆるもので各ジャンル1つしか物を持ってはだめと決めるんですよ。
ーーミニマリストみたいな感じですか?
安藤:ミニマリストになる必要はないんですが、要は「ぜんぶ捨てろ」じゃなくて、「捨てられてない物を1個決めろ」なんです。そうすると何が起きるかというと、「自分が本当に大切にするものって何?」なんですよ。
自己肯定感の高い・低いが何で決まるかっていうと、人からの評価をあてにするかどうかなんですよ。だから、人から「いいよ」とか「だめだよ」って言われるものではなくて、自分がその中で1つだけ、どうやっても捨てられない物を決めていくと、自分にとって本当に価値があるものとないものが見分けられるようになるんですよね。それができてないと、世間のいろんな声に惑わされる。
安藤:基本的に世間っていうのは、僕たちの自己肯定感を低くするんですよ。なんでかっていうと、みんな自己肯定感が高かったら、誰も物を買わないから。
「あなたの今の歳だったら、こういうものを持っていないと足りないんですよ」「今のあなたのキャリアだったら、こういうふうになっていないとおかしいんですよ」って、みんな言ってくるわけですよ。そう思われると、「ああ、じゃあ自分は足りないんだ」って思うわけじゃないですか。
その声を聞かなくなるためにはどうすればいいかというと、「そう言われても俺には関係ない」って思えるようになることです。なので、自分にとって本当に大切なものってなんだろう?(と問うこと)です。
ーー例えば、服などの身につけるアイテムとか、小さいところから始めてもぜんぜんいいんですか?
安藤:むしろ逆に、「じゃあTシャツでぜったい捨てられない1枚はどれ?」です。
ーー身近なものから選んでいったほうがいいってことですね。安藤さんのお話をうかがって、やはり機嫌よく生きることがすごく大事なのかなと思いました。今日いただいたメソッドを使えば、繊細すぎる人が少しは生きやすくなると思います。
安藤:結局、繊細な人って気を遣いすぎてるので。気を遣いすぎてうまくいってないんだったら、使わないってことです。要するに、悪いパターンにはまっててうまくいかないんだったら、そのパターンを壊しなさいっていう話なので。
ーー間違った方向に努力しちゃってる可能性があるんですね。
安藤:そうなんですよね。人に気を遣ってうまくいかない人って、うまくいかないからさらに人に気を遣うっていう。もっと悪いほうに行っちゃうんですよね。思い切って(気を)遣わなかったらうまくいくかもしれないですよ。
ーー本日はお忙しい中ありがとうございました。
安藤:ありがとうございます。
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