2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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垣畑光哉氏(以下、垣畑):安藤さんは石原さんの会社や石原さん自身を身近に見て、どういうふうに映っているんですか?
安藤広大氏(以下、安藤):どういうふうに映っている?(笑)
垣畑:傍から見て、Surpassさんの女性活躍における価値をどう見ていますか?
安藤:初めて出会ったのは、2~3年前なんですが、その時は、すごい苦労しているなと感じていました。石原さんの場合は、他の選択肢が取れない会社のコンセプトだから「女性に活躍してもらわないといけない」という環境の中で、その分いろいろ苦労されてきている。だからこそ、本当に組み上がってきたものがあると思う。
それが僕らじゃ気づけない、細かいところに配慮された組織運営。これを実践されている、日本の中でもけっこう稀有な存在なんじゃないかと思っています。
垣畑:2~3年前、そんなに苦労して見えたんですか?
安藤:だって、石原さんの感覚だけで作っていた会社だと思うので。今はその感覚が、だいぶ言語化されてきているんじゃないかなと思うんですけど(笑)。
石原亮子氏(以下、石原):再現性ゼロの組織だった(笑)。
垣畑:「察しろよ」というやつですか?
石原:そうそうそう。忍者みたいなね(笑)。
垣畑:それで「なんでわかってくれないの?」みたいになるみたいな(笑)。
石原:そう。
安藤:社員100人の組織とか絶対無理ですよね。あの状態だったら。
石原:そう。本当に当時80人から100人になかなかいかなかったんです。識学と出会う2~3年前から苦労してて「これが自分の限界なんだな」と。だったら自分に依存しない何か法則を作って、それを持って拡大しようと思って、識学をその“踏み絵”にさせていただいたんです。“踏み絵”というと言葉はアレですけど(笑)。1つのカルチャーに統一するためのルールとして、識学を入れたら一気に100人を超えました。そういう意味では、自己流ではもうけっこう限界だったなと思いますね。
安藤:識学もそうなんですけど、今回この女性活躍の研修プログラムを作るっていう時にも、ここまでの苦労を言語化することを、がんばってこられた。それがすんなりプログラムができあがった要因なんじゃないかなと思う。
「140名の組織で7割が女性」っていうところを回してるノウハウが、本当にちゃんと詰まってるなっていうのは、すごい。僕らじゃわかんないです。勉強してない経営者じゃわかんないと思います。だから世の中のほとんどの人がわかってないんじゃないですかね。
垣畑:石原さんは逆に言うと、そういう組織から逃れられないというか。そういうのが大前提で会社を立ち上げた?
石原:そうそう(笑)。良かれと思って立てたコンセプトが、意外と自分をどんどん縛っていくというか。まぁ、でもこれは私の役割なのかなと思います。弊社は日本を代表する大企業というか、男性の中年以上の方が多い企業に女性の営業チームを送り込んで営業を改善していくビジネスなので、「その方々との共存」ということをプロジェクトマネジメントの中でしなきゃいけなかった。
常に両方の目線・意見を大事にしながら、仕事を推進していく必要があったからこそ、常に客観性を持ちながら社員を育成できたっていうのはあると思います。だからたぶん、(女性活躍推進総研は)このビジネスモデルだからこそできたんです。客観性を活かした独自の育成プログラムになっている、今回のプログラムは……ちょっと手前味噌ですけど「立ち位置がそうした」という感じはあるかなと思います。
垣畑:いやでも本当に、取って付けた教育プログラムじゃなくて、自分たちが3年苦しんで、もがいて、そこで生まれたノウハウだったりすると思うので、現時点の集大成みたいな感じですよね。
石原:3年というか、10年以上やってるんですよね。本当に地雷を踏みまくって、失敗したのとかも全部集約して(笑)。本当に「理論ありき」じゃなくて「現場ありき」から、良いものだけとか、改善したほうがいいことを拾って集約したっていう感じですね。
垣畑:識学さんを入れて3年で成長もして、ストーリーとして美しいですね(笑)。じゃあそれをインストールしてもらえるプログラム、みたいなイメージですよね。
石原:そうです、そうです。でも識学があってもなくても、使える内容にはなっていると思います。
安藤:そうですね。
垣畑:ありがとうございます。ではテーマを、あともう少し進めまして。実際に企業はどういうふうに取り組むべきか? というところ。
企業が対応すべきことって何だろう? という、具体的なところ。今まで話してきていただいたことと被るところもあると思うんですけれども、この辺りに関して議論をしていきたいと思います。
安藤さんはさっき「4つの気付き・間違いがありました」って話がありましたけども。実際、ほかの社長に女性活躍でなにか助言をするとしたら、どんなことがありますか?
安藤:一番のテーマはやっぱり「線引き」だと思います。要は「どこまで配慮して、どこまで配慮しないのか?」という線引きが1つ。
あと、最近よくある論調で「男性が育休取るべき」だとか、そういう社会における男性の役割・女性の役割も変えていこう、っていうところがあると思うんですけど。僕は企業側は、それができるような座組さえ作っておけばよくて、それを変えていくのは企業側の役割ではないと思うんですよ。それを変えていくのは、企業側だけじゃ無理だと思うので。「そこはまた違う」という線引きも必要なんじゃないかなと思ってます。
変わりゆく社会の常識の中で、社員が困らないような制度設計をしていくことは重要なんですけども。「社会を変えていく」というところまで働きかけることが、企業の役割となってくると、ちょっとtoo muchというか。結果的にそこまで影響を与えられないはずなので。だから、そのあたりの線引きをしっかり経営者が理解することは、非常に重要なんじゃないかなって思います。
垣畑:ありがとうございます。僕もそこが一番悩ましいところって、さっきも言ったとおりなので共感しますね。石原さん、いかがですか。
石原:ちょっとこちら、スライドでまとめていてですね。
今まで特に大企業では「人事制度とか福利厚生とか研修をすごい充実させたけど、女性活躍ができてない」って、多かったと思うんですね。でも、これからのあるべき姿っていうところで言うと、これ、識学もそうだなと思ってるんですけど。
やっぱりちゃんとトップが理解して、方向性を示してどう推進するか? っていうこと。ここから始まる。これが過去にはなかったことなんですよね。
なので大事なのはトップのコミットメント。あと幹部・管理職もそれを引き続き、理解・推進する。で、風土ができてきた時に初めて、必要な福利厚生、人事制度改定だったり、研修ということを実施して、こうして会社全体で取り組むことでようやく女性活躍が進むと考えています。
同じようなことを書いてますけど、まったく似て非なること。大企業でもトップがコミットしてるっていうと、すぐに思いつくのがリクシルさんとか、ダイキンさんとか。大和証券さんとかもそうですけど、やっぱりトップがコミットしてる会社というのは、女性の幹部の顔が見えてきてるんですよね。トップがコミットしてるようでも、顔が見えてない、それを言ってるのは見たことがない会社というのは、やっぱり引き続き悩んでいる。
だからやっぱりここから始めるというのが、あるべき姿だと思います。今までより本気でやっていくために、すごく重要なんじゃないかな、と。この、ひと手間がポイントです。KPIを決めて期限を決めてしっかりやるというところは、識学も同じですが、不可欠なんじゃないかなと思います。
垣畑:それがそもそものあり方、考え方ですよね。安藤社長も「考え方が改まった」って言うぐらいですからね。
安藤:そうですね、はい(笑)。
石原:「トップが理解する」っていっても、理解する方法がなかったり、推進していくにもどうやって、何をもとに推進していくんだろう? っていうのが、なかなかない。「どうやったらいいか」とか「正しい情報は誰に聞いたらいいのか?」とか。
安藤:そうですね。あとは期限設定と数値目標っていうのも、数値を増やすこと自体は「手段の目的化」になってしまいますが、今回、僕も女性社員の比率とかを初めて調べました(笑)。そういうのすら把握してない経営者って、けっこう多いと思う。
垣畑:Facebookの投稿とかを見てると、安藤さんがもう完全無敵の経営者なのかなってイメージがありますけど。やっぱり日々改善なんですね。
安藤:それはそうです(笑)。
垣畑:なるほど。石原さん、もうちょっと具体的にダイバーシティの話ってありますか? 具体的に企業さんがどういうふうにこのあと取り組んでいったらいい、とか。なにかヒントになるようなことがあれば、補足いただければと思うんですけど。
石原:企業規模等によって、アプローチは異なりますが、中小・ベンチャーであれば、今言ったようにトップから変わっていくというのがまず第一歩。大企業さん、もう本当に何万人とか何千人いる会社とかだと、すでに取り組んでる中でも「まだ足りない」っていう会社とかもあると……まだ足りないというか「まだそうは言えない」っていう会社もあると思うんですけど。
ここはまだ私たちのサービスにはなってないんですけど「ダイバーシティ・ネイティブを社内に作る」っていう取り組みがすごくいい、と言われてます。
垣畑:「ダイバーシティ・ネイティブ」?
石原:そう。ある大手製薬会社さんの取り組みなんですが、男性社員が朝6時半にママさん社員の家に行って、1日ママさんの生活を疑似体験するということで。どれだけお迎えが大変かとか、ご飯も作ってとか。それを全部、育児もやってるママさんの体験に1日付き添うみたいなのがあるらしいんですね。付き添うというか見る、疑似体験する。
そうすると、考えてた以上にさっきの「傾斜」があることに気づくんだそうです。女性が性別的な役割分担でかなり負担が大きかったということに気づくんですね。頭だけじゃなくて実際に実感して理解をした人たちが、ポジティブにどうやったら女性も働きやすくなるのか……というか「過剰に」じゃなくて「必要なルール」とか、そういうものを作っていくか? っていうのを、当事者意識をより持って取り組むようになった。そういう人が増えることで女性が働きやすくなった、と伺っています。
垣畑:やっぱりロールモデルがほしいですね。
石原:理解者とかね。
垣畑:エバンジェリストみたいな人がね。確かにそれは経営者のにわか勉強よりも、一番説得力あるかもしれないですね。
石原:あともう1つは、今はコロナで「在宅で働く」ということが1つの大きな選択肢になったので、これを機に在宅で基本はできるお仕事・職種を作っていくことも大切。管理体制もしかりです。今までって在宅は「特別扱い」みたいな感じだったんですけど、変わってきた。
そうすることで育休復帰もしやすくなる。当社とか育休復帰率100パーセントなんですけど。「テックウーマン」という在宅でもITのツールを使って働ける職種を作ったら、育休復帰できる職場が本当に実現されてきたっていうことで、今は育休復帰率が100パーセント。
やっぱり「会社が好き」って言っても、結局は自分の居場所がなければ辞めてしまう。活躍できるというか、きちんと貢献できる場所を準備するという意味では、せっかく社会がこれだけひっくり返ったぐらい、いろんな変化が起きてるタイミングなので。だからこそできる新しい施策として、在宅でできる仕事というのを積極的に作っていくということは、いい施策になると思う。
垣畑:テレワークも進んで、時代も「風の時代」なんて言われてますけども。考え方もだいぶ変化してるんだから、今がチャンスということもあるってことですね。
石原:それはそう思いますね。
垣畑:確かに、受け入れられやすいですね。そうこうしてる間に時間もどんどん経って、もう少しなんですけども。今回、お題が「リーダーの仮面~女性活躍推進編~」ということなんですけども。「リーダーの仮面」「女性も活躍できる」については安藤さん。どうお思いでしょうか?
安藤:これはね、タイトルが無理矢理「リーダーの仮面」ってついてるので(笑)。
(一同笑)
垣畑:無理やり、ぶっこみました(笑)。
安藤:結論みたいな話だと思うんですけど、「リーダーの仮面」に無理矢理つなげるとするなら。今まで話したとおりではありますが、多少の不平等感を感じることがあったとしても、生物学的なところと、あとは家庭内の役割分担で配慮すべき点を会社として決めたのであれば……その「枠が設定されることがある種の平等である」ということを会社内にしっかり宣言して、それを徹底することが、…無理矢理「リーダーの仮面」につなげるなら「リーダーの仮面」ですと(笑)。
もう1つは、これはSurpass社の力とかも借りながらだとは思うんですけど。「女性だから」っていうことで……僕も実はサラリーマンで管理職だった時とかはすごくやってたんですけど、過剰に優しくしたりとか。それこそ、おやつ買っていったりとかしてしまうと、女性からすると「優しくしてもらってうれしい」と感じてくれるとは思うのですが、それがあるということは、女性を平等に見てないってこと。
つまりチャンスも平等になくなってくる、っていうことでもあることに気づかないといけない。男性側も、女性の可能性を逆に奪ってしまう行為だっていうことをしっかり理解することが大切だと思います。女性だから特別扱い、男性と違う扱いをするっていうことは、いち男性としてはやりたい気持ちもすごくわかるんですけど、それはやらないようにしないといけないよ、というところが1つ。こっちは完全に「リーダーの仮面」かなと思うんですけど、この2つが挙げられるんじゃないかなと思います。
垣畑:こんなに言葉を選んでしゃべってる安藤さん、初めて見た……。
(一同笑)
安藤:いや、他社のセミナーだからね(笑)。
垣畑:白組として共感しました(笑)。ありがとうございます。では紅組代表の石原さん、締めくくりをお願いします。
石原:(笑)。女性活躍とかダイバーシティ推進とかは、もう好きとか嫌いとかっていう次元ではなくて「やっていかなければならないこと」。労働力の確保という面もありますが、やっぱり企業がどんどん進化していくにあたっても、視点が偏りすぎている。日本の企業はですね。
ですので、当社もそうですけれども、やっぱり多様な人材が必要です。だからこそ、ルールもしっかりと制定しながらやっていくことも必要。もうこれは、好き嫌いとか選べるような次元ではなくて。これから年を追うごとに「やらなくてはならない・やってて当たり前」になっていく。なかったことにするんじゃなくて、自ら前向きに向き合っていって、女性も働きやすい組織を作ったほうがいいと思います。
わからないことがたくさんあっても、今はいくらでも書物も記事もあるので知ることもできること。そういう意味では、企業は数字を上げて利益を上げるという役割にプラスして、そういった社会的な意義を創出していく役割も必要な時代になってきている。
最初は、自分で腹落ちしてないままにやる場合もあるかもしれないんですけど、やっていくうちにその本質に気づいて、それが当たり前なリーダーが増えていくと思う。ただやっぱり、年数をかけなければならないことなので、1日も早く始めることが重要かなと思います。
垣畑:なるほど、ありがとうございます。じゃあどうにかしたいと思った時に、Surpassさんはどうしてくれるんでしょうか?
石原:ありがとうございます。じゃあ最後なので、ちょっと。こんな感じに偏った社会を、誰もが働きやすくできる社会にしていくということで、私どもで「女性活躍推進総研」というのを設立いたします。
これは女性も活躍できる社会を作る、男性経営者・幹部・管理職の方々に向けたコンサルサービスです。「組織全体を変える」とかそんな大きなことじゃなくても、いちマネージャーの方々とかが女性のマネジメントに困ってるとか、そういったことでもご相談いただければ。いろんなプランを準備してますので、ぜひ気軽にご相談をいただければなと思っております。
垣畑:ありがとうございます。企業はもう世の中からどう見られるとかじゃなくて、会社の成長性とか永続性のためには必須っていう認識を持たないとっていうことですね。“本丸”ですね、もう。
石原:そうですね。今まではサイドに置いてましたけど、今はもうど真ん中。今日もセミナーに学生の方も入ってくださってて、やっぱり新卒の方とかそういうところをすごく見てるので。優秀な人材を獲得していくっていうところでは、本当に絶対取り組んでいったほうがいい課題だと思います。
垣畑:ということで、今日は安藤社長、石原社長、どうもありがとうございました。
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