組織では、行動が増えなかったら感情を知っても無意味

斉藤知明氏(以下、斉藤):なるほどな。まさにそこの「開示しあう組織」って素敵ですよね。おそらく「勝手に解釈し合おう」とすると、感情って本当に誤解が生まれやすいものだし。特にオンラインになった今のご時世、どうしてもわからないことって本当に増えてきたなぁ、と。勝手に(相手の感情について)考えていると、知らない間に退職しちゃったみたいなこと、正直あったりするじゃないですか。

ここを自己開示しあうことで相手も自分のことを理解しようとするし、相手も自分のことを理解しようとしてくれるし。そういう情報空間ができあがっていくと、お互い頼りあいやすくなってくるし助けあいやすくなるし。

また、さっきこのスライドの「行動を増やすことが、成果につながる唯一の一番重要なKPIだ」とおっしゃっていたのって、まさにだなぁと思って。結局、法人・組織という集合体においては、行動が増えなかったら感情をどれだけ知っても意味ないじゃないですか。なので、まさにそこにみなさん向きあってらっしゃるんだなぁと思いましたね。

池照佳代氏(以下、池照):そうですね。なので、(スライドを指して)このダニエル・ゴールマン先生のところで。左側の自分軸の縦軸というところは、あくまでも自分のストーリーだけなんですよね。さっきお話しした、私が「楽しい」を「楽しむにする」というのは、自分で認識する。「あぁこれ楽しい」って思えるとか「つまんない」っていうのは、左の上だけなんですよ。

それを自己マネジメントで持っていくというのは「今日はこんな素敵な時間・機会をいただいているんだから、楽しむって決めよう」というのが、感情の調整だったりするので、自己マネジメントなんですよ。これはもう、自分で訓練できますよね。

今度、他人と周囲を巻き込む時には、他人の感情があって、最終的にはその黄色いところにある関係性についての働きかけ。これって完全に行動なんですよ。「声をかける」とか「挨拶をする」とか「巻き込む」とか。

あと、発信だけじゃなくて受信もそうですよね。「逆に間を取るというようなマネジメントをする」とか。それも含めてこういった行動がないと、成果創出にはつながらないと思っているので。

おっしゃっていただいたように、思っているだけだと左側で終わっちゃうんですよ。そこを他人が巻き込んだり周囲を巻き込んだりするから、チームで成果が出るんであって。もしチームで成果を出したいと思ったら、やっぱりこの四事象をなんとなく頭の中で考えながら。

そして感情というものに着目しながらやると、チームの状態は非常に変わってくるかなと思っています。

「自分の感情」を言語化することの大切さ

斉藤:あらためて今までのお話を総括すると。「EQ」と呼ばれる感情知性というものは、単なる感情じゃなくてそれをコントロールして自分でマネジメントするもの。それが感情知性。知性的に感情を扱っている状況。これがEQを発揮できている状態。

とした時に。マネジメントで組織の行動の量・成果の量を最大化するためにも、行動の根底にあるインプットに対する感情、ないしそれに関する思考を読み解いて、そこをハックすることが大事で。

なんでこんな思考が生まれているのか? 行動が生まれているのか? を知るためには、感情をコントロールする必要がある、EQを発揮する状態が必要なのではないか。というところなのかなと思います。

チャットでもいただいているのが、EQを発揮できている時に、本当に自分の感情を発見する、ないし相手の感情を発見するというのはものすごく難しいんじゃないか? という声って、まだ残っていると思っていまして。

まさにそこが研修プログラムの中身だとは思いますが。「相手の感情を勝手に読みとる」じゃなくて、ちゃんと発揮してもらって、知るための取り組みってどういうものがあるんだろうなぁ? ってすごい気になるんですよね。

池照:自分の感情ねぇ。けっこう難しいです、自分の感情って。「私は今、どう思っている」とか「感じてる」なんて、いちいち聞いたことがないですもんね。本『感情マネジメント 自分とチームの「気持ち」を知り最高の成果を生みだす』の中にも紹介させてもらったいくつかのやり方はあるんですが、感情に着目するというのがまず1番なんですよ。

なのでさっきのムードメーターを使うというのは、私は一番いいやり方というか簡単なやり方だと思います。アメリカだと本当に、幼稚園生からああいうことをやってるんですよ。

斉藤:えー! 

池照:朝、幼稚園に登園すると、あの2軸はさすがに使わないですが1軸で「今日は1点から10点まで、どんなフィーリングなの?」って先生が聞くと「今日は2。お兄ちゃんと喧嘩したから」とか、本当そういうふうにやってるんですって(笑)。

「今日は10。パパにハグしてもらったから」とか。要は「パパにハグしてもらうとうれしい。逆に弟と喧嘩するとうれしくないんだ」ということを自分でも認識できるし、先生も認識できるという。それに使っているらしいんですよ。

なので、大人も同じだと私は思っているんですよ。朝起きて「あぁ、今日のエネルギーレベルどうかな」とか「ちょっと寝不足だな」とか「ちょっとお腹壊しちゃったなぁ」とか。体力的にだめな人もいます。私みたいに、天気だけで左右されるって人間もいるんですよ。

天気がいいと、文句なしに私はエネルギーレベルが高いんですよ。でも曇り空だと、もうそれだけでエネルギーレベルが低い。このバーって、人によって本当ぜんぜん違うんです。

ある会社でやったら、金曜の夜になるとすごくエネルギーレベルが高いという人がいて。でもその隣に座っている同じ職務をやっている人は、金曜の夜にエネルギーレベルが一番低いんです。

それに本人たちがびっくりしたんですよ。同じ会社で、同じ部署にいて同じ仕事を担当して、同じ職位で、だいたい年齢層も同じぐらいで、性別も一緒だったんです。本当になんで真逆のことを感じてるの? って。すごくびっくりしたりするんですね。

なので、いったん自分でそれを言語化してみるとか、スケール化してみるというのはすごく大事な、できることの1つかなと思っています。

リーダーには「感情的温かさの度合い」が低い人が多い

池照:あともう1つは、このスライドの最後にあるんですが。意外に私たち、口に出してないですよね。嫌だなぁと思ったりしてもあまり口に出さないですし、こういう感情をやっぱり職場に持ち込んじゃいけないって言われているので。それをあえてちょっと口に出すというのは、必要かなと思っています。

斉藤:なるほど。今の幼稚園生のお話をお伺いしていても、どうやったらそれが喜んでテンションが上がっている状態か。テンションが上がっている状態って、発露が多いじゃないですか。エネルギーが高い状態って発露・行動も多いとした時に、それをハックしてその理由を発見できると活用できるよねということで、どんどん感情をマネジメントしていくことが可能になっていきますよね。

あと、チャットでもちょくちょく出てくるなと思うのが「発露したくない人」って、どうしてもいるんじゃないかと。そういう時って、これは何個か回答の種類があるのかなと思うんですけど。そもそもそういう「価値観が重要だ!」ということ(議論)をやるべきだみたいな、そういう“べき論”の話なのか。

それとも自分が発露をしていくと、自然と連鎖していくものなのか。どうですかね? 1,500人のリーダーの方と向きあっていくと、けっこうよく出てくる話題なのかなと思うんですけど。

池照:発露というのは「発言する」ということでいいですか? 

斉藤:そうです。自分の感情を「発言」のほうが正しいですね。

池照:「発言」のほうですよね。「表現」というのは、別に言うだけではないと思うので。文章で書いたりもできますし。あと自分が感じていることを、チャットに入れるとかということも、もちろん発言だけではないと思うんですよね。

ただリーダーの方々に関して、誰かを巻き込んでマネジメントしたいのであれば、なにかしら外にわかるような「表現」をしないと伝わらないというのは1つですよね。伝える・伝わらないというのを選択する。それも選択だと私は思うんですよ。

発露するのももちろん選択だと思うんですが、自分で思っているだけだとなかなか伝わらないです、本当に。私がやっているプログラムの中でも、例えば「感情的温かさを測る」という検査があるんですよ。感情的温かさって、人に対しての温かい思いやりのあるような行動をどれぐらい出しているか? という度合いを測っているんですよね。これは意外と、リーダーの方は少ない人が多いんですよ。

その少ない理由は、あえてさっきのお話みたいに「職場の中で感情的になるなんておかしい」とか「職場の中で温かい感情を見せるなんて、そんなのマネジメントに関係ないよ。だからあえて私はそうしてるんですよ」という人がいるから、そうやって低く出るんですよね。それでもいいんです。だけど、要はそれが伝わっていないということなんですよ。

「弱さを見せると、職場の評価が下がっちゃうんじゃないか?」

斉藤:僕も過去マネジメントしてきた中で、感情をしばらく演じてた時期があったんですよね。すごく高く、常に僕はパッショナブルでエネルギーが100パーセントでやってるんだ。だからお前たちもついてこい! みたいな時期があったんですよ(笑)。それをやってなくても、そう見られるんですよね。

池照:そうですねぇ。

斉藤:「あなたは上司なんだから、リーダーなんだから、そういうもんでしょ」って言われて。「意外と僕、こういう時はエネルギー低かったんだよね」という話をすると「あーそうなんですね。実は私も」って開示してくれたという経験があって。

弱さというのが大事なんじゃないか? っていうチャットの声もありましたけれども。意外とみんな発露する前に「この人に弱さを見せると、職場の評価が下がっちゃうんじゃないか?」とか「エネルギーが弱い状態って自分にマイナスに働くんじゃないか、ネガティブに働くんじゃないか?」って、やっぱりそこは心理的安全性が低い状態。恐れている状態なんだとしたら。

そこを、まずは自分のロー(低さ)もしっかり開示していくということって、本当に大事なんだなと思いますし。まずは自己発見で開示して。そして他者も開示しやすい環境を作って、開示してもらう。そういう順番で、どんどんお互いの感情を理解しあって、起こっている経験ないし知識というものを共有しあうってことなのかなと思いましたね。

職場における「行動の量」に関わる、3つの要因

池照:そうですね。さっきの行動の量のお話じゃないんですが。特に職場の場合の行動の量って、3つ要因があると思っているんですね。

例えば斉藤さんって、すごくたくさん挨拶しますよね。すごくコミュニケーションレベルが高いですよね。といった時に、なぜ斉藤さんがコミュニケーションレベルが高いのか? というと、1つの理由は「そういう役割だと本人が認識しているから」。

例えば「僕はこの会社のトップなんだからそうするべきだ」とか「ジョブ・ディスクリプションにそう書いてあるから」というケースが1つですね。だから「役割をかぶってやってます」というケースです。

2つめは別にその役割とか書いてないんだけど「やっぱりコミュニケーションレベルが高いほうがいいじゃん、楽しいじゃん」ということで、自分の意志でやっているケース。3つめは、ちっちゃい頃からそういう子だったよねという、資質のレベル。

だいたいこの3つがあるので、リーダーとしては自分自身が出している行動の量というのは、どれが一番かかってるのかな? っていうのを考えるきっかけにもなると思うんです。

その奥にある感情。例えば役割をかぶってるんだけど、さっきおっしゃっていただいたように、けっこう不安だったとか恐れを抱いていたというのがあると、ストレスがけっこうかかっていると思いますよ。だから、一貫性がなくなってきたり持続性がなくなってきたり、どこかで挫けてしまったりということがあるんですよね。

だとしたら、自分のその気持ちをきちんと吐露できる場を作るとか、そのギャップを埋めるようななにかしらの行動するということを、セルフマネジメントとしてする。周囲をもし巻き込むんだったら「みんなも不安な時はあるんじゃないかな?」ということをおもんぱかって。

じゃあ例えば「みんなもこういう気持ちだったら、それを吐露するようなセッションをもうけようよ」というかたちで、みんなを巻き込んで感情のマネジメントをする場を作ってから仕事に向かうとか。

そういうことも含めて、実際に成果を出すための下地を作っていく。感情的な下地を作っていくというのが、リーダーができる感情マネジメントかなと思ったりもしています。

斉藤:まさにそうですね。なかなか自分を押し殺すというのは難しいですよね。どうしてもすけて見えちゃうところも出てくるものですからね。いろんな場にさらされるものでもある。まさに今回、リーダーと個人という話にもなりましたけれども、まずは自分の感情を見つけて。

そのEQというものを、僕が正しく捉えられたかどうか? は、若干まだまだ勉強中なところはもちろんあるんですけれども。あらためて自分の感情と離反する行動になってくるとどんどん辛くなってくし、どんどん行動量も減っちゃう。

でも感情に則した行動だと、どんどん行動量が自然と増えていく。だからこそ、その感情をマネジメントする。自分がエネルギーの高い状況で働ける、感情エネルギーが高い状態で働けるようにするにはどうするんだろう? というハックも必要だし。それをマネジメントに活かしていくことができるんじゃないか、というのが今日のEQ・感情マネジメントのお話だったのかなぁ、と受け取っております。

心の原動力になる「意外と、言われるとうれしい」という気持ち

斉藤:ではここで「Unipos」のご紹介をさせてください。Uniposはどんなサービスか? というと、オンライン上で少額のインセンティブになるポイントを自由に送りあうことができ、かつ、オープンな場所で感謝のメッセージで送りあうことができるというサービスです。

例えばツチヤさんがイトウさんに対して「経費精算のシステム化を進めてくれてありがとう。申請すごく楽になってとても助かってます」。というようなイメージです。

今のEQの話を聞きながら「Uniposって、なにに貢献できるサービスなのかな?」ってすごく考えていたんですけれど。このUniposというサービスで、ポイントというきっかけによって、感謝する場所をオンライン上に作ってみなさんにご提供するという“場作り”をしているサービスだと思っています。

よく、導入いただいたみなさんから「(感謝を)あまり口に出してなかったな」というご意見をいただくんですよ。「ありがたい」という気持ち「こういうことをしてくれてありがとう」ってわざわざ言ってないよとか。

いわゆる「やって当たり前だと思ってました」という行動に対して、わざわざ「ありがとう」と言った。すると「意外と、言われるとうれしい」って、みなさん導入していただいた後におっしゃっていただくんですよね。

この「意外と言われるとうれしい」って、すごい心の原動力になるんじゃないかなと思っておりまして。僕自身も、ものすごく不安になりながらやってることってたくさんあって。みんなに発信したりだとか、みんなを巻き込もうとしたりだとか、お客さんにご提案したりだとかを、すごく不安に思っている時に「それいいじゃん」ってポンと背中を押してもらった時に、それが心の原動力になってるなという感覚があるんです。

「日本人」とひとくくりにしても仕方ないかもしれないですけど「ありがたいという感情」って、ある意味、感情の中だと一番言いやすいカテゴリーに入っていると思います。

「あなたのことは嫌いです」よりも「あなたのこれはいいと思います」のほうが伝えやすい。なぜなら自分も気持ちいいから伝えやすい。この感謝・感情をちゃんと相手に対して伝えるという習慣ができていて「あなたも私も認めあっているよね。認められているよね」という感情があってはじめて、自分のもっと別の感情も吐露しあえる。そんな組織を作っていくための、一番の土台になれるのがUniposであるといいなと思っておりますし。

実際にご導入いただいたみなさんからは「ちゃんと『ありがたい』という気持ちを言葉にして伝えあうことって、意外と人の力になるんだな。原動力になるんだな。結果として行動が増えていくんだな」というお声もいただいておりますので。まさにそういう観点で、このEQとも1つ相性のいいものなのかなぁと解釈をしていたんですけれども。

持ってはいるけど伝えていない、部下への感謝の気持ち

斉藤:池照さんは、この解釈どう思われますか? 

池照:ありがとうございます。さっきの行動の量を増やそうというお話で、挨拶という例について話したんですが。やっぱり一番わかりやすいのが、おっしゃっていただいたように「挨拶や感謝の言葉」なんですよ。プログラムの中でも、情緒的な表現性をどうやって高めたらいいか? 表現の力をどう高めたらいいか? というのをやるんですが、部下とかチームのメンバーに対して感謝の気持ちって、みんな持ってるんですよ。

斉藤:そうなんですよね。

池照:「ありがたいなぁ」とか「いつもうれしいな」と思うんだけど、じゃあそれ伝えてますか? っていうと、伝えてないんですよ。だから伝わらないという、当たり前の話なんですが(笑)。

斉藤:もったいないですよね。一番いいのに。

池照:だから「思ってることはある」。でもそれを言葉にして発信することがないと、相手にその気持ちは伝わらないので「なんか仕事しても感謝されないな」になっちゃうんですよ。特にこうやってオンラインで仕事をするとなおさらですよね。

斉藤:本当、そうですね。

池照:「ありがとね!」って、目力で送ってもなかなか伝わらない(笑)。

斉藤:もちろん対面でしっかりねぎらいをするというのも大事だと思うんですけど、こうやってオープンな場にすると「○○さんって、こんなことがんばってるんだ」って。これには「拍手」という機能もあって、パチパチと181個の拍手がついてるんですけど。

そうすると「なんか、みんなから応援されてるな」という気持ちになると、まぁ悪い気はしないですよね。

池照:そうです、そうです。なんかここのところはバーゲンセールじゃないですが、本当にありがとうとかサンキューと思ったものを口に出せるって、その度合いが高いところがとてもすばらしい環境ですよね。

斉藤:ありがとうございます。本当に僕はそれが大事だなと思ってますし、自分自身この5年間やっていく中で、ちょっと苦しいなと思う時も助けられてきたツールでもあるんで。ぜひみなさんも、ご興味お持ちの方はお問い合わせいただけると幸いです。

いろんな大手の企業のみなさまにもご導入いただいている中ではあるんですけれども、こういうエンゲージメントだったり組織風土改革という実践プロセスとなぞらえて、実践編のウェビナーもご開催しておりますので、ぜひお申し込みいただけますと幸いです。