デジタル技術の浸透による産業構造の変化

冨山和彦氏:みなさん、こんにちは。経営共創基盤IGPIグループ会長の冨山と申します。最近は、日本共創プラットフォーム・JPiXという会社の社長に就任しました。今日はDXの話ということになってるんですけど、自分自身はITコンサルタントみたいなことはやったこともないし、プログラミングもやりません。

この30年間ぐらい、いろんな会社の企業再生とか会社の大改造をやっています。その過程で「なんでこれだけ大変な会社改造をしなきゃいけないのかな」「リストラもしなきゃいけないのかな」「どうして再生(しなきゃいけない状況)になっちゃったのかな」とさかのぼっていくと、実はまさに今日のテーマにたどり着きます。

要は、デジタル技術がいろんなところに浸透しています。昔は「IT化」って言ってましたよね。今流行の「FAXをメールに変えます」とか、「ハンコやめます」というレベルの話だったら、それをやらないからといって、そこまで会社が追い込まれることにはならないんです。

実はその過程で、かなり重大な産業構造の変化が起きてしまいます。例えば、自分は今、某大手電機メーカーの社外取でもありますが、今この瞬間、巣ごもり需要で液晶テレビがけっこう売れてるんです。

かつて「テレビ」は日本の電機メーカーみんなの金城湯池でした。圧倒的収益源だったんですね。じゃあ今、テレビが売れてるからといって……一応、五輪も無観客だからテレビで見るんでしょうね、だからといってテレビがもう1回、また五輪を観るために高価な商品になるかというと、これはならない。実はテレビの市場価値としての値段はあまり上がっていないんです。

テレビが売れてる理由は、圧倒的に巣ごもり需要です。要はみんなAmazonプライムとかNetflixとかで、ドラマとか『鬼滅の刃』とか、そういうものを観るために、ディスプレイとして買ってるわけです。

ですからお客さまのお金を払う優先順位は、まず第一に有料サブスクにいっちゃうわけですよね。だから今、動画配信サービスの企業価値がすごく上がって、成長してますよね。そこでディスプレイをもうちょっと見やすいものに変えようと言って、テレビを買うわけです。だからお金はそっち(製造メーカー)にいかないんですよ。

「ウォークマン」VS「iPod」からわかる、DXの本当の怖さ

例えば昔の「ソニーのウォークマン」対「AppleのiPod」も、実は同じような戦いだったんです。要するにソニーが提示していた「ハードウェアの大量生産・大量販売」でウォークマンが一世を風靡しました。そしてAppleが提示したのはApple Music。当時はiTunesと言いましたけど、要はソフトウェア上・クラウド上のサービスと、ハードウェアが一体になったビジネスモデル。まさにデジタル型のビジネスモデルを提示してきたわけです。

これが実は決定的な意味を持つことに、当時のソニーで気がついた人はほとんどいなかった。たぶん出井伸之さんは気がついていたので、「デジタル・ドリーム・キッズの時代がくる」って言ってたんだけども。もともとハードウェアの大量生産、アナログ大量生産でやってきた人がソニーの中の圧倒的多数だったので、それに気づかないというか、気づきたくないというか。それで対応がなかなかできなかったという時代がありました。

実はそういうことがいろんなところで起きてきたのが、「DX」と言われている現象の本当の怖さであり、重要性なんですね。ですから、さっき言ったような、今目の前にある「ハンコなくす」とか「FAXやめる」とか、それはそれでやればいいんです。しかし今や産業構造まで変わりそうな領域がどんどん広がってくる。自動車とか、医療にも広がると言われていますからね。

すべての産業に関わってくるので、みなさんが考えるべきは、「DX」によって、これから自分たちのところでどういうことが起きるのか。普通の業務改善レベルで、それ以上の大きなインパクトはないのか。それとも実はものすごく大きな影響が産業構造全体に与えられて、それが自分たちにとって有利に働くのか、すごく不利に働くのか。

DX時代は、モノ作り中心のヒエラルキー構造から多層構造へ

あるいは、この後の西山圭太さんの話に出てくると思うんですけど、産業構造がどのような形に変化するのか。例えば「自動車業界」「電機業界」の三角形のヒエラルキーな構造から、多層構造になっていくんですね。

ウォークマンの話もそうですよね。ウォークマンを作ってるソニーがあって、下請けの部品メーカーがあるっていう三角形構造の時代から、ここにボンと「iTunesというサービスがあります」という時代になりました。Appleは基本的にハードウェアは外に作らせていますから、このサービスの下にiPhone・iPodを作ってる会社がいるというような、ある種のレイヤー構造になるわけです。

その中でどうビジネスをデザインしていくかという時代になってくると、一生懸命にこの三角形構造の「モノ作り」のところだけを、大量生産だけでがんばっていても報われないような産業になってしまうこともあるわけです。

今のところ、まだ自動車はこの三角形モデルでメシが食えているのですが、これも5年、10年後はわからない。先はどうも怪しくなるんじゃないかということで、レイヤー構造のビジネスモデルを提示しているテスラの株価が高くなっているわけですね。

そういった意味で、エネルギーもそうですが、すべての産業でどうもこういうことが起きかかっているので、それをどう認識して、どう構え、どう行動するかが、実はDX時代の本当に求められている「経営のリーダーシップ」の能力であり、課題なのだと思います。

GAFAMとは違うレイヤーに、新たなビジネスがある

実は「DX」というと、これまた1つの大きな誤解があって。「世の中全部GAFAMの時代になっちゃって、みんなそういうところに搾取されちゃって、みんないなくなっちゃうんじゃないか」みたいなことを言う人がいるんですね。わりと日本人に多いのですが。

おそらくシリコンバレーでそんなことを思っている人はほとんどいませんね。むしろビジネスの構造がレイヤー構造になっていくということは、GAFAやマイクロソフトが席巻してるレイヤーもありますけれど、違うレイヤーに、いっぱいメシを食うところがあるわけです。GAFAMの中でも、FacebookとかはGoogleのプラットフォームを利用しているビジネスモデルになってるので。要はレイヤーを変えてしまえば関係ないんですよ。共存共栄ができるわけです。

逆にある人がすごく大きなレイヤーを形成すると、アメリカでは「これ(例えばGoogle)はもうコモンキャリアなのだから公益企業として規制しろ」という話が出てきています。日本の昔の電話と一緒ですよね。そういう共通インフラとして、むしろそれを上手に安く使い倒して、違う付加価値を生むというサービスモデルを考えていくケースが、当然まだまだ出てきます。

特に「産業用」って言うのかな。まさにSansanさんみたいなモデルはBtoBで、あらゆる産業のその上にまた上手にレイヤー作ってるわけですよね。だから、実は色々な可能性が広がっています。かつ、その参入障壁がけっこう下がっていて。というのは、すごいお金のかかるレイヤーは誰かがもうすでにやってくれているので、けっこう身軽に、発想力で違うレイヤーの価値創造ができるようになっているんですね。

お客さんを直接捕まえる「地上戦レイヤー」の本質的な価値

それからハードサイド、あるいは「地上戦」のレイヤーですよね。「地上戦的レイヤー」で言うと、例えば我々IGPIグループはバス会社を経営しているのですが、これは超ベタな地上戦です。「モビリティ」って言うとみんなナイスなことを思い浮かべるのですが、モビリティは究極的には、「どこでもドア」が発明されない限りリアルなんです(笑)。人やモノを実際に、フィジカルに運ばなきゃいけないので、質量がある世界なんです。

ここに本質的な価値があるので、例えばUber Taxiが出てきたからといって、本質的な価値を生んでいるのは実はUberではなくて、Uberを利用している運転手なんですね。この人たちが実際にお客さんを運ぶことによって価値を生んでいて、実はUberが提供しているプラットフォームサービスのほうが、コモディティに近いんですよ。

だからいろんな人が参入して、今は競争過多になっていてそんなに儲からないレイヤーになっています。あと国によってウィナー(勝者)が違うんですね。

そう考えると、バス会社はまさにモビリティ(サービスを)やっているのですが、モビリティをやる上で一番大事なことは、その地域において「A地点からB地点にお客さんを安全・確実に運ぶ」ということが本質的な経済価値だと言うことです。そうすると、「空中」のレイヤーから色々なサービスが出てきたときに、地上戦プレーヤーからみた関係性を的確にとらえることが大事になります。

この色々なサービスが出てきた時に、要するに「空中戦の彼らが地上に降りてきて、自分たちを駆逐して席巻する」ということはないし、あの人たちになにか付加価値を取られてしまう感じもしない。だって僕らが直接お客さんを捕まえているから。そうすると大事なことは、この人たちのサービスをどれだけ安く上手に使い倒して、自分たちの生産性や付加価値にできるかということを考えたほうがたぶんいいです。

小さな旅館でも簡単にできるようになったグローバルマーケティング

実際すでにみなさんの多くが、旅行の予約とかはネットを使っていますよね。旅館とかホテルの予約にしても、あるいはレストランの予約なんかもネットを使っているはずなんですよ。これで世界中から予約が入るんですね。今はコロナ禍で止まってますけど、コロナ禍が終わればきっとまたけっこうな旅行ブームがやってきます。みんなすごい我慢しているので。今のユーロのサッカーの試合の様子を見たら、いかにみんな溜まっていたかがよくわかります(笑)。たぶん逆に、旅行は猛烈なブームになります。

そうすると、日本はものすごく魅力的な場所なので、きっとまた世界中から「日本に行きたい」となるんです。例えば昔だと、家族経営の知る人ぞ知る旅館さんとか、プチホテルがありますよね。そういったホテルがフランスから集客しようと思ったら……私の出身地の和歌山って、実はフランスからのお客さんが多いんです。熊野古道があるから、みんな巡礼が好きなので来るのですけど。

昔だったらその集客方法はおそらく、大きな旅行代理店にお願いしてツアー組んでもらって、そこからの送客をぼーっと待っているしかなかったんですよ。それかもう1つは、フランスにもホテルがあるような、それこそマリオットとかヒルトンとか大きなグローバルチェーンに入るしかなかったんです。

今はそんなこと必要ないんですよ。要は、誰かネットのインフルエンサーがやってきて、泊まって「ここいいよ!」っていう情報を「トリップアドバイザー」に上げてくれれば(笑)。それで予約が入っちゃうんですよ。

昔だったらものすごいスケールでお金も必要だったグローバルマーケティングは、今はもういとも簡単にできちゃうわけです。個別の旅館やレストランからすれば、中途半端な規模の経済性を追求してデカくなって、チェーンになってクオリティを落とすくらいだったら、むしろ店数を絞って、すごく高品質で高単価が取れる生産性の高い業態で、そのままお金のあるお客さんをグローバルで持って来られるわけですね。

これからは「地上戦」の産業群が「空中戦」を使いこなすフェーズに

これを裏返して言っちゃうと、「DX」の仕組みを会社として上手に利用して、本来自分たちが持っているリアルな地上戦の価値を実現していくことが可能になっています。たぶんこのあと出てくるサービスは、ますますその手のものが増えてきます。

なんとなく「DX」って言うとすべてがGAFAMのところにいっちゃうと思いがちなんですが、おそらくGAFA的空間においてはかなりネタ切れになってきていて(笑)。僕はNetflixとかあの一連で、ひょっとするともう限界効用逓減になる感じがしています。

モビリティであれ医療であれ旅行であれライブエンターテイメントであれ、あとBtoBの物流もエネルギーもそうですけど、これからの主戦場はむしろ「リアル」なので。そういった本質的に「地上戦」に価値がある産業群が、「空中戦」の新しいイノベーションや新しい技術を上手に使い倒して、使いこなして、生産性を上げてくフェーズに移っていくと思います。

我々のバス会社では、最近、運行経路が自動的に更新される「ダイナミックルーティング」を始めています。実はAIのシミュレーションの中では、「ルート決め問題」って一番難しいシミュレーションなんです。昔だったらスーパーコンピューターを使わないと最適なルートって組めなかったんですけど、今はこのための、最先端のものすごく賢いAIを、世界中で開発してるわけですね。

なので東北地方の田舎のバス会社でも、「(ダイナミックルーティングを)やりたい」って発信をすると、世界のトップレベルのいろんな人からオファーがくるんです。すでにクラウド上にサービスがありますから、すごくリーズナブルなコストでそういうものを使える時代になっているんです。

「大量生産的な地上戦」に縛られてきた日本的経営

そう考えると、ちょっとモードが変わってきているって言ったらいいのかな。むしろこれから、ものすごくいろんな人、いろんな産業、いろんな事業をやっている、昔は考えられなかったような人たちがこの「DX」の果実をテコにして、ものすごいイノべーションを起こせる。そのチャンスが出てきているんです。

今まではどちらかというと、DXでGAFAが出てきて富の集中が起きてしまったというモードでしたが、皆が「DX」をうまく活用することで「民主化モード」になってくるわけです。むしろこれからは、主戦場がより「リアル」で、より「地上戦」が絡む領域に変わってきます。

そうなると実は日本企業の多くは、もともと地上戦が得意なんですね。でも、ちょっと地上戦一本足打法でやり過ぎちゃったんです(笑)。要はさっき言った、典型的なアナログ型のハードウェアの大量生産・大量販売とか、集団戦、改善・改良、日本的経営でやってきて、これが30年、40年うまくいき過ぎちゃったがゆえに、特にそういう「大量生産的な地上戦」に頭が縛られているところがあるんです。

日本の経営者や大企業の経営者も、だいぶ頭の中が切り替わってきて、さすがにちょっとこれはもう一本足打法では無理だろうとわかってきています。もちろん、こうやって培ってきた地上戦的な組織能力、オぺレーションを、すごく上手にやっていくことは可能だし大事なんです。旅館の場合、「おもてなし」がまさにその典型です。いろんな日本の産業も企業も、社会全体で「地上戦でものすごく確実に丁寧な仕事をする」能力を持っているわけです。

そういったものを武器、コアにしながら、今度は「DX」で空中戦的な力を上手に利用して、取り込んで、いろんな意味でのビジネスイノベーションをやっていくチャンスが、今一気に広がろうとしています。

求められる能力と質が変わる中で課題になる「新しい戦力」

ただそのためには、やっぱり一本足打法じゃダメなんですよね。会社の持っている経営者の能力、それから組織の能力。両方の意味で地上戦一本足はダメだとすると、当然空中戦を使える能力や、自分の空中戦力を持つことが必要になります。どっちにしても、会社のかたちを相当変えていかないと難しいです。

例えば軍隊のアナロジーでいうと、陸軍は大量の正規軍が、集団でものすごく秩序の保たれた行動をして作戦を遂行するんですよね。海軍も船単位ではそういうことをやっているわけです。一方、空中戦力。例えば戦闘機とか爆撃機のパイロットって、たぶん1人で何百億円もするものを操縦しているわけですよね。戦いの時に、相当な裁量権を持って決めているわけですから、陸軍や海軍とは人のタイプがだいぶ違うんですね。

たぶん陸軍が野球に近い感じです。打順も決まっていて、攻める・守るもちゃんと交互に変わっていて、1球1球インターバルがあるからサインが出るわけですよね。空中戦はむしろサッカーに近くて、ワールドカップのチャンピオンを決めるような、「ここでシュートを蹴るか、蹴らないか」という判断が、最前線で瞬間的に行われているわけです。

求められる能力も質も変わってくるので、そうすると次の問いは、そういった「新しい戦力」。新しい戦い方ができるようなメンバー、それから意思決定の仕組み、これを導入していかないといけない。これはいわゆる伝統的な大企業であろうが、中堅・中小企業であろうが、共通の課題です。

日本経済復活のカギは、終身年功制・同質的・非流動的な会社の“変容”

例えばバス会社で言うと、バスロケの仕組みであったり、あるいはICカードの仕組み。実はいろんな仕組みをうちの会社は入れて、それで生産性を上げています。コロナ禍の時は別として、東北地方という人口減少が非常に早く進んでいる一番不利な地域で、平時においては大変高収益の会社になっています。

それをやっていこうと思うと、当然従来のバス会社の人間だけでは無理なんです。あるいは従来のような経営スタイルでは無理なので、当然経営のかたちを変えて、それを私たちは「コーポレート・トランスフォーメーション」、会社の改造と呼んでいますが、経営のかたちを変容させることによって、新しい人材が入ってきて持続的に活躍してくれます。従来の人材と併存も可能になる。

当然バスの運転者のみなさんと、こういったITやデジタルテクノロジーを活用して事業を移植する人とは、働き方も給与体系も違います。そういうもっと複線的な、多元的な、多様な構成メンバーの組織に変えていかなきゃいけないわけです。

日本の場合、どちらかというとみんな終身年功制でやっていますから、40年間で1回しか人が入れ替わらないわけです。すごく同質的で流動性のない、固定的メンバーでやっている会社のかたちを、変えなければならないんです。こういったことをどんどんやっていくことが、おそらく日本企業、日本経済全体が復活していくための、最大のカギになってきます。

多くの人たちの生き方や人生は、実は20世紀型・昭和型の大量生産・大量販売、終身年功制型になってしまっているんですよ。教育も、あるいは個人の生き方も。これは見直していかないとダメです。個々の会社が多様性や流動性を持つことで、社会全体がより多様で流動的になっていくわけですから。

1人の人間の一生は、おそらくビジネスの寿命より長いです。寿命は長くなる一方で、ビジネスの寿命は短いので、ひょっとすると、一生の中で野球やる時期があってサッカーやる時期があって、途中からテニスみたいな個人種目もやって、ある時はリズム&ブルースダンスもやれ、みたいなことになってくる(笑)。自分自身がどんどん変容することに慣れていかないと、あるいはそれに備えておかないとダメということになります。

すべての人が自問自答するべき「“お役立ち”をしているか」

こういう時こそ、ぜひとも仕事や事業の原点を考えてもらいたい。「事業」というのは「業」をもって「事」を成す。「仕事」は「事」に「仕える」って書くんです。もともと「事」なんですよ。じゃあどんな「事」で僕らはご飯を食べているかというと、人さまのため、世のために役に立った、その対価をお金でいただいて、メシを食っているんですね。だから「人の役に立つ」ってことが、実は全ての仕事や事業の原点なんです。

そうするとみなさんが自分自身を振り返って考えた時に、この1時間、今日の1日、この1週間、この1ヶ月、この1年間で、自分の給料のぶん、ちゃんと人の役に立ってますかと。お金を払ってもらうということは、大変なことですよ。だってみんな一生懸命稼いだ大事なお金を、誰かの「自分のために役に立ってくれたこと」に対して払ってくれる。それも原価以上のものを払ってくれるから、そこから給料がもらえるわけですよね。

ということは、「自分自身はそれだけの“お役立ち”をしているんですか」ということを、すべての人が自問自答しなきゃいけない。その時に、こういう時代だからこそ、実は役立つ可能性がすごく広がっています。だって自分でプログラミングしなくたって、今はそれこそUI・UXのツールがすごく発達しているのでデジタルツールは簡単に使えるんです。自分自身が人さまの役に立つ、世の中の役に立つための選択肢は、実はみなさんが思っているよりもすごく広がっています。これは会社としてもそうです。

世の中にあるいろんなツール、いろんな道具。それから自分自身が持っている今の能力。そこで今、欠けているものは何か。それを見直した時に、実はいろんな人にいろんな可能性が出てきているんです。

大企業の中間管理職が中小企業に行けば、活躍できるチャンスが広がっている

実は、うちのバス会社のグループの最前線でバリバリやってるのは、元銀行員だったり元大手メーカーの人だったりするわけです。彼らがなにか特殊なすごい人なのか、ハーバードやスタンフォードのMBAなのかといったら、それはノーです。そういうわけじゃない。むしろ大きな会社で、ある意味若い時に鍛えられましたという人です。

例えばメーカーだったら、トヨタ生産システムみたいな改善・改良ですごく鍛えられたので、そういう能力をすごく持っています。でも場所を変えた時には、それさえできてない会社のほうがはるかに多い。だって日本の中小企業は400万社あるんですから。いっぱいあるんですよ。あるいはモノ作りのいろんなノウハウが、サービス産業に使われるケースもあります。

そこでちょっとしたDX、ちょっとしたITみたいなものを上手に使うことによって、それがもっとやりやすくなってくる。これからは、そこを担っていけばいいのです。

実は今、大企業の中間管理職にとってはすごく冬の時代です。それこそAIが入ってくると、中間管理職の仕事がどんどんなくなるんですよ。ここにいっぱい人が溜まっているので、みんな「どうしよう」って思っているはずです。

でもそういった人たちが、例えば400万社の中堅・中小企業に行ったら、めちゃめちゃ活躍できる領域が増えているし、これからますます活躍できるチャンスが多いんです。こういった中堅・中小企業群はまだ生産性が低いので、オリンピックで言えば100メートルを30秒で走るようなものですね。これを20秒にしたら、生産性は1.5倍で、給料も1.5倍ですよ。本当に人の役に立てる。

そういったチャンスが、このDXの時代、今まさに広がっていくので。たぶんコロナ禍でこの流れは加速します。もっとそういう機会が増えるはずです。この先、コロナはそろそろ明けてきますから、このコロナをテコにして、みなさん一人ひとりの個人、すべての会社・経営者が、それぞれのレベルで本気でトランスフォーメーションに乗り出せば、私はすごく多くの人にとって良い時代がやってくると思います。

みなさん、ぜひとも一緒に、そのチャンスを手にしましょう。