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『オンライン採用』×『対話型OJT』本音で語る採用と育成(全3記事)

オンライン派と対面派の違いは、「言語化」を重視しているか リモートワークで浮かび上がる採用・育成の課題

企業の将来にとって生命線となる「採用」と「育成」。コロナにより、そのオンライン化が急速に進みました。様々な課題がある中で、今後の「採用」「育成」はどのようになっていくのでしょうか。そこで今回は、採用の専門家である『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』の著者・伊達洋駆と、育成の専門家である『対話型OJT 主体的に動ける部下を育てる知識とスキル』関根雅泰氏・林博之氏によるトークイベントの模様をお届けします。本記事では、採用・育成それぞれの視点から、オンライン化のメリットと今後の課題について語られました。

コロナ禍で採用がストップした2020年

司会者:それではご登壇の先生方をご紹介いたします。まず採用サイドからは『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』の著者である伊達洋駆先生です。伊達先生、本日はよろしくお願いいたします。

伊達洋駆氏(以下、伊達):みなさん、こんにちは。ビジネスリサーチラボの伊達と申します。よろしくお願いします。

司会者:ありがとうございます。続きまして、育成サイドからは『対話型OJT 主体的に動ける部下を育てる知識とスキル』の著者の1人である関根雅泰先生です。関根先生、どうぞよろしくお願いいたします。

関根雅泰氏(以下、関根):『対話型OJT』の著者の関根です。今日はよろしくお願いします。

司会者:ありがとうございます。同じく育成サイドから『対話型OJT』のもう1人の著者、林博之先生にお越しいただきました。先生もどうぞよろしくお願いいたします。

林博之氏(以下、林):ありがとうございます。『対話型OJT』共著者の、林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

司会者:ありがとうございます。それではさっそくですけれども、第1部に入っていきたいと思います。「採用」と「育成」について著者の対談に入っていこうかと思います。

新型コロナウイルス感染症への対策として、これまでテレワークや対面の営業活動はかなり制限されていたんですけれども、ちょうどワクチン接種も始まってきたことで、新たな局面を迎えそうだなと思います。まずは伊達先生、オンラインでの採用活動の最新の状況はいかがでしょうか?

伊達:そうですね。最新の情報に入る前に、(比較することで)今年の状況がどうなっているのかがわかりやすいので、昨年のことを振り返っておければと思います。2020年3月にWHOがパンデミック宣言を行って、世界的にコロナが広まっているという状況になりました。その中で、日本も4月に緊急事態宣言を発令したんですよね。

この4月は採用において面接などが進みつつあった時期でして、採用のプロセスの途中だったんです。そこで急に変更を余儀なくされたのが、昨年の4月以降になっています。一時停止というか、採用がいったんストップせざるを得なかったんですね。

そのストップしている間、企業からの連絡がない学生は不安を感じていました。「今、こんな状況なので後々こうなります」ときちんと説明ができた企業は問題なかったのですが、そうではない企業は軒並み志望度を低下させてしまいました。

2021年の採用の課題は「オンラインと対面の組み合わせ」

伊達:それに対して、今年はどうかという話です。昨年と比べると今年はオンラインで行うことが半ば前提というか、1つの選択肢としては定着してきたかなと思います。実際にIndeedさんの調査によると、6割以上の企業で「なんらかのかたちで採用活動のオンライン化を行っている」という回答が得られています。

すべての企業ではないのですが、多くの企業でオンライン化をなにかしらのかたちで取り入れています。最新の状況としては、オンライン化を多く経験していく中で、利便性と「ここはうまくいかないな」といった限界が、少しずつわかり始めている。しかし、手探り感は拭えないのが今の状況です。

ちなみに今、今おそらく採用担当の方が悩んでいる現在進行形のトピックとしては、「オンラインと対面をどう組み合わせていけばいいのか」というところですね。

司会者:ありがとうございました。一方で育成のほうなんですけれども、こちらもいわゆる社員教育をオンラインでやるというお話になったりしている思うんですけど、関根先生はいかがでしょうか?

関根:ありがとうございます。今回はテーマが採用ですので、育成も絞って新卒とか若手の方の育成でお話ししたいんですけれども。事前にみなさんからいただいたご質問の中でも、OJT教育の最近の状況であったり、オンライン時代になってOJTの現場で変化した点、社内に育成する環境文化を作るにはどんな資格が必要なのかという問いもいただいております。それとも絡めてお話ししていくと、若い方の育成に関して、今3つトピックスがあるのかなと。

リモートでのOJTでは、「教わり方」も課題に

関根:1つ目は、いわゆる「ネットワーク型OJT」と呼ばれるものです。1人で教えず周囲のメンバーを巻き込むというOJTの仕方が有効ではないかと、各社で捉えられているのかなと思います。今までOJTというと、前提はマンツーマン型で、知識・技術・情報を持っている上司や先輩が、部下や後輩に教えることだったんですけれども。

なかなかそれだと回らないという中で、例えばメンターとかOJTトレーナーは任命するけれども、その人1人ではなくてほかのメンバーを巻き込みながら行うというOJTのやり方が、比較的浸透しはじめているのかなと現場でやっていて感じることです。

2つ目の側面として、社内の育成する環境・文化とも関係するんですけども、今まではどちらかといえば、教える側に対する教育が中心になったんですね。教える側がどんな働きかけをすれば新卒の方が組織に適応していくのかとか、辞めずにがんばってくれるのかということが多かったんです。

入ってくる側、つまり新入社員に対しては、導入教育でマナーなどはやると思うんですけれども、そういった育成に関する教育はされていなかった。教わる側にも、当たり前かもしれないんですが、教わり方とか学び方を学んでもらう必要があるんじゃないかという動き出ているのかなと感じます。

特に3つ目ともつながるんですけれども、先ほど伊達先生のお話でもあったように人事も模索していますが、現場でOJTをしている先輩や上司も、リモートになってやり方を模索しています。その中で、その先輩方からどう有効に情報を得るのかとか、タイミングを見て質問したりとか。その教わり方や学び方を、今、新人側が学んでいるというのが2つ目なのかなと思います。

オンラインで配慮すべき、非言語コミュニケーションの疲れ

関根:3つ目が「リモート」というところ。オンライン時代になってOJTの現場で変化した点で言うと、今もそうですけど、すぐそばにいないので、やり方を見てもらったり、こっち(教える側)が見てあげることができません。教育手法で言う「ティーチング」のように、1から10まで丁寧に教えるのは、なかなかしづらいと。

かといって「コーチング」で教える側が質問したとしても、経験が浅い若い方ですと教わる側から答えが返ってこない。その中で、今回の本の中でも提示したことなんですけれども、Scaffolding(スキャフォールディング)ということで足場をかけていく。全部は教えられないのだけども、例えば目的とゴールだけは合意した上で、じゃああとは任せるよと。

全部を任せるわけじゃないんですけど握るところだけは握っておくというやり方が、特にオンラインになって必要になってきていますし、去年から今年にかけて新人教育がうまくいっているところは、その手法が取れているのかなと感じますね。林さんは法則とかありますか?

:私は『対話型OJT』の中で、「非言語コミュニケーションとオンライン」という章を担当させていただいています。ご存知の方もいるかもしれませんが、私は昔10年ほど俳優をやっていました。その俳優時代のトレーニングで(得た)非言語コミュニケーションを専門で、今やらせていただいています。

今日は26名の方が参加されているということなんですが、この(オンラインの)小っちゃい画面の中でも非言語情報を読み取ろうとして、すごく疲れてしまう。そんなことを非常にみなさんもお感じになられていると思うんですね。この疲れの軽減を工夫されているような会社さんですと、このオンラインでもうまくいくよと。

だけどそうじゃなく、リアルのままで、この小さい画面の中でいかに非言語情報を読み取るかって脳が勝手に動いてしまうので、その時の疲れを考慮していないと、もしかするとうまくいっていないのかなというのが、非言語コミュニケーションの観点ではあるのかなと感じています。

アフターコロナの採用は、部分的にオンラインが残る?

司会者:ありがとうございます。採用も育成もお話を聞いている限りだと、非常に柔軟に対応するようにはなってきたところではあると思うんですけれども。将来的にワクチンがみんなに行き渡って、マスクもしなくてよくなりそうな雰囲気になった時に、揺り戻しというか、旧来のやり方に戻ろうという動きが、今後採用や育成などで起こりそうでしょうか? 伊達先生はいかがでしょうか。

伊達:もちろん未来のことなので、予測するのはなかなか難しいと思うんですね。おそらく育成の話は、後ほど関根さんと林さんからしていただけるはずですが、採用は育成とはちょっと違っているかなとも認識しています。

採用ですと、オンラインの状態が部分的に残っていくんじゃないのかなと予測していますし、そういったデータなども出ていますね。実際にオンラインで採用をやってみて、「これ、けっこう便利じゃないか?」ということに気づいてしまったというか。

例えば、地方の学生と面接する時、今までは採用担当者がわざわざ地方まで行ったり、あるいは逆にわざわざ学生が本社まで来たりということを、一次面接からやっていたんですよね。それをオンラインに切り替えた瞬間に、みんな心の中で「今までなんだったんだろう」と思ったはずです。

オンラインを経験したことで、そういったプラスの側面も出てきているので、そこは残るだろうと思います。ただ、採用のすべてをオンラインで完結させる企業は少ないんですよね。やはり対面が必要でもある。

先ほど少し申し上げましたが、今後の採用の行方としては、やはりオンラインと対面をどう組み合わせていくのか。その組み合わせ方の妙を競っていくような、採用上の競争が起こってくるのではないかと予想しています。

研修でも課題となるオンラインと対面の「組み合わせ」

司会者:ありがとうございます。関根先生、育成の分野ではいかがでしょうか?

関根:育成を仮に「研修」と「現場でのOJT」の2つにわけた時に、研修に関しては去年はほぼオンラインだったんですね。今年は揺り戻しという意味で言うと、やはり「4月の新人研修は集めてやりたい」という企業さんも多かったんですよ。

やはり新人同士の連携とか、同期意識の醸成のようなかたちで計画していたのだけれども、緊急事態宣言で急きょオンラインになったりとか。そういう意味で言うと、若い方や新しく入ってくる人たちに対しては、対面でやってあげたいというのが育成側の声としてよく聞かれます。

それに対して、先輩や上司に対する研修は、オンラインだと彼らも参加しやすいですし、短い時間で複数回開催できたりとか、まさに先ほど伊達先生がおっしゃった採用側が移動するのと同じように、従業員側も移動しなくて済む。そういう意味ですと、上の層に関しての育成はオンラインが比較的残っていくんじゃないかなと思っています。

現場でのOJTに関して言うと、(新しく入った)若い方は職場に行けていない状況でオンラインになってしまったのが去年の状況です。それですとやはり馴染むのに難しさを感じたりとかがありますので、できれば対面で、少しでも信頼関係や人間関係ができた上でのリモートだったらやりやすいねというのが、先輩や上司からの声でもあります。

(対面とオンラインの)どちらかに振れることはないと思うけれども、伊達先生がおっしゃるように(オンラインの)良いところもあるので、それを残しつつ、でも人として教える・教わる関係だとやはり会いたいという声があるのかなと。林さん、その辺はどうですか?

:まさにそこで言うと、先ほど伊達先生におっしゃっていただいた「組み合わせ」になってくるというのは、私も同意見です。

オンライン派と対面派の違いは「言語化」の重視度

司会者:どうもありがとうございます。採用も育成も、オンラインの要素は残りつつ、今後は柔軟にうまく組み合わせていくことが必要になってきそうだというお話でした。ちなみに、採用と育成のお話を交互にうかがってきているんですけども、やはり採用と育成で少し似て非なるというか、性質が違うところもあって。

採用側から見て育成のこの行動は気になるとか、逆に育成側から見て採用担当者に気になることとか、先生方が日頃行っているコンサルティングや研究の中で何かありますでしょうか。

伊達:私から少し。純粋な疑問というか、採用側にも育成側にも両方に関係することではあるので、ぜひ2人にうかがいたいなと思っている点があって。それは何かというと、対面とオンラインの位置付けがどうなっているのか。

少し言い方を変えると、「対面は良いもの」と捉えられているのか、それとも「オンラインは良いもの」、もしくは「足りないもの」みたいに捉えられているのか。そうした「意味付け」がけっこう気になるところかなと。

とりわけ、組み合わせ方を考えた時に、例えば「対面は良くて、オンラインはだめ」と考えた上での組み合わせと、そうじゃない場合の組み合わせは違ってくるじゃないですか。対面とオンラインの関係性って、育成の文脈ではどう捉えられているんだろうかというのが気になるところです。

関根:ありがとうございます。さすが、鋭い質問ですね。正直に言うと答えになってないかもしれないですけど、会社さんとか教える側の姿勢によるんですけども。

オンラインが良いと思っている人は、そのぶん言語化します。逆に言うと、対面のほうがいいよねって人はどちらかというと言語化をそんなに重視しない。やっぱり勘や感覚は(教わる側が)現場にいてもらえないとわからないんだとか、そう思っている人から見ると、やっぱりオンラインとは足りないものとして見られやすいです。

それに対して、今回のイベントで言えばチャットであるとか、「文章や動画で残しおけば同じことを説明しなくて済むよね」と考える人であると、自分の時間と労力もそんなに取られないと見るので、オンラインって良いものなんです。

オンライン化で感じた「アドリブが効かない研修」の難しさ

関根:それで言うと、もともとこの本を書いた時のきっかけも、緊急事態宣言下で会社に人が入ってくる時に感じた、「自分も出社しないと教えられないのか?」という疑問からだったんですね。

それに対して、「別にオンラインでも教えられますよ」という手法として、先ほどご紹介したScaffolding(スキャフォールディング)を述べていますので。すいません、伊達さんの質問に関しては、教える側の方によってオンラインを良いものと捉えているのか、足りないものと捉えているのかわかれる気がします。林さんはどうですか?

:ありがとうございます。答えとは違うかもしれませんけども、我々がいわゆるOff-JTとしての研修をやる時にこの1年で思い知らされたのが、いかに研修が職人芸だったのかというか。悪い言い方をすると、今まで非常に楽をしてやってきたんだなと感じたんですね。

事前準備がある程度できていれば、その現場の感覚。まさに先ほど私で言うと、非言語コミュニケーションということなんですけども。「あ、この感じだからこうやっとけばいいな」という、その場のアドリブが効いたんですが、オンラインってアドリブが効かないんですね。

みなさんにも中原淳先生のブログとか見ていたりする方が多いと思うんですけども、いかに設計をしっかりしていくかが大切で、この1年、特にオンラインで鍛えられた部分があるなと思っています。

私はよく関根さんと一緒に研修をやらせていただいているんですけど、この間、久しぶりにリアルで研修をやらせていただいたんですね。誤解を恐れずに言えば、「なんてリアルは楽なのだろう」と思うところがありました。ですからオンライン研修をしっかり設計し、組み立てて運営できるということは、育成側としても成長につながるんだなっておこがましくも思いましたね。

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