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市場視点で今の自分を BREAK & THROUGH(全6記事)

同じスキルを持っているのに「給料の差」が生まれるワケ スペシャリストとゼネラリストで考える、キャリアの6パターン

大阪府が運営する「OSAKAしごとフィールド」は、「働きたい」と思うすべての人が利用できる就業支援拠点です。今回は、ルクア大阪協力のもと開催されたトークイベント「はたらく学校夏やすみ Career Break&through」より、トライバルメディアハウス池田紀行氏の講演の模様をお届けします。マーケティング歴20年以上、多くの大手企業の支援実績を持つ池田氏。本記事では、池田氏が考える「自立」と「自律」の違いについて、スペシャリストとゼネラリストで考えるキャリアの6パターンについて語られました。

キャリアを築く上ですべきは「全額自己投資」

池田紀行氏:ちょっと毛色の違うお話に移ります。みなさんにはこれから、自分の将来に対してお金や時間を使っていってもらいたいわけですけれども。世の中には「費用」と「投資」という言葉があります。言葉が違うから意味も違うわけですけれども、(スライドでは)会計用語でまとめちゃってるのでわかりにくいですね。

イメージとしては、例えば本を読むとか、映画を見る、美術館に行く、人に会う、セミナーに行く、なんでもいいです。お金と時間を使いますね。今年お金を使ってなにかをやり、今年使ったお金や吸収した知識が、そのまま仕事のパフォーマンスを上げることに跳ね返ってくるのか。今年使って今年中に回収ができるものは、どちらかというと「費用」的なお金の使い方ですね。

一方「投資」というのは、今年使ったけれども今年なにかがすごくよかったわけではない。でもこの使った時間とお金が、必ず人生・私の人生をプラスにしてくれる。投資回収期間は1年ではなくて、3年から5年か10年か、一生かもしれないけれども、今年使ったこのお金と時間の使い方は確実に自分の人生を豊かにする。これって「投資」の考え方なんですね。

やっぱりキャリアっていうのはすごく長いものなので、どうしても「投資」で考えなきゃいけないわけです。転職に有利だからホニャララみたいなものでは、どっちかと言うとちょっと「費用」的なお金と時間の使い方でして。やっぱり僕は、時間とお金は全額自己投資をするべきだと思っています。

いくら貯金があっても、生涯で稼げる賃金の総量には限界がある

ちょっと会計用語で恐縮ですが、別に覚えなくてもいいです。何が言いたいかというと、「可処分所得」という、お給料から税金が引かれて、みなさんの銀行口座に振り込まれるお金があるわけです。

僕も20代の時にしていましたけど、1万円とか2万円とかを貯金するわけですね。僕は3~5万円貯金をしながら、実家に3万円入れていました。手取りは16万円とか18万円だった頃の話です。

でもこのゼロ金利時代は、月3万円を貯めて年間で36万円、10年で360万円貯金をするよりも、僕は月3万円のお金を全額自分に投資をして、生涯で稼ぐ生涯所得を3,000万円でも5,000万円でも増やすことに使ったほうが絶対にいいと思うんです。

「これからAIに奪われる仕事と奪われない仕事」みたいなこともよくニュースに出ますけれども、誰がやってもできる仕事、単純労働に向いてる仕事は、これからどんどんシステムとかロボットとかAIに代替されていく。これは残念ながらもう間違いない事実なわけですね。

「じゃあAIでできないことって何?」って言ったら、やっぱり「人にしかできないこと」なわけです。その人にしかできないことの中で、隣のこの人じゃなくて、私にしかできないことを考えていくことをしていかないと、貯金が300万円あっても500万円あっても、生涯で稼げる賃金の総量は、かなり限界があると思っているんですね。

そうならないように、やっぱり今の3万円、5万円を、とにかく将来の自分にきっちりと投資をしていく。何に投資をするのかというと、自分の人間性を磨くためにいろんな映画を観るだとか、漫画を読む、美術館に行くでもぜんぜんいいです。直接的に仕事に役に立つような資格を取ったり、本を読む、セミナーに行くというのも、すごくいいですよね。

どっちかと言うと、美意識を鍛えるためのものは、転職やキャリアにはあまり関係がないけれども、豊かな人生を送れるかどうかには直接的に影響しますし、クリエイティブ職の場合は直接影響があるわけです。そうではない場合は、やっぱりビジネススキルをどれだけ他の人よりも磨けているかというところが、すごく重要になってくると思います。

世の中にたくさんいる「他律」で「自立」している人

その投資をしていくにあたって大事になるのが、またここに2つの似通った言葉がありますが、「自立」と「自律」ですね。うちの会社でとても重視しているのは「自律」です。自己を律するですね。逆の言葉が「他律」です。他律ってどういう人かというと、「言われたらやります」。「なんでやってないの」と言われたら「指示されてないからです」と言う人です。

「他律」で「自立」している人って、世の中にすごくいっぱいいます。要は自分1人で立って、自分でできるけど、言われないとやらないという。他律的な自立をしている人が世の中にいっぱいいて、イケてないなって思うんですね。

やっぱり両方ともある、自律的な自立をしている人が世の中で最強なわけです。自己を律する、自分から動くって、モチベーションの話に通ずるところがあって。

世の中の若いサラリーマンの人たちの会話でもよくありますけれども、お酒とか飲みながら「最近すげーだるくて、ぜんぜんモチベ上がんねえわ」とか「部長からあんな言われ方するとモチベ下がるよね」みたいなことを言っている人が少なくないわけです。

厳しい言い方ですけれど、モチベーションって人に上げてもらったり下げられるものではなくて、自分で上げるものだし、自分で維持するものなのになって思うんですね。モチベーションを誰かが上げてくれると上がるし、なにかやっちゃうと下がるというのは、それってめちゃくちゃ普通の人です。普通の人でよければ、それでいいんですけど。

「あの人っていつも笑ってるよね」だったり、「いつも活動的だよね」という人って、やっぱり自己を律しながら自分でモチベーションを高めて維持しているんですよね。そんな人間でも、人間ですから落ち込むこともあれば、モチベーションが下がることだって当然あるわけです。

一流のプロフェッショナルは、自分のガソリンを自分で入れる

つまりガソリンが切れちゃう時があるわけですね。でも、車でガソリンメーターが空になってきたら、ガソリンスタンドに行ってガソリンを入れるように、人間も同じようにモチベーションというガソリンが減ってきたら、自分の心の中のガソリンのメーターを見て、「あ、モチベーションが下がってきたな」って自覚しようよと。

自覚して、モチベーションが下がってきたら、自分でガソリンスタンドに行って自分好みのガソリンを自分で注入するんですよ。

僕の場合はなにするかというと、だいたい映画を観ますね。モチベーションが下がってきた時に観るDVDリストがあるんですけど。アン・ハサウェイが好きなので、『マイ・インターン』とか『プラダを着た悪魔』とか、あとは『ザ・エージェント』という、トムクルーズがスポーツエージェントビジネスをやっている映画とか。あと『アルマゲドン』とか見ますね。「俺が地球を救うんだ!」って。なんでもいいんですよ。

「仕事って誰かの役に立つから尊いよな。自分はこんなもんじゃないよな。明日からもがんばろう」って自分のスイッチを入れてくれるなにか。ハーゲンダッツでもいいですし、音楽を聴くことでもいいですし。どこかに散歩に行くとか、○○の景色を見るとか、なんでもいいです。

自分のガソリンはなんなのかということを知り、自分のメーターを見ながら、減ってきたらちゃんとガソリンを入れる。そういう自律的にやれる人間が、生涯所得の高い、一流で一目置かれるプロフェッショナルだと思います。

モチベーションは自分で上げる。自分の機嫌は自分でとるということですね。だから、僕は“天気屋さん”が嫌いです。「今日の部長機嫌よさそうだから、稟議持ってくなら今だよ」みたいな話って最低最悪だなって思うわけですよ。部下に気を使わせてどうするんだよという話です。

とにかくひまわりのように、太陽のようにいつも場を明るく照らす人間であれと僕は思っています。それも自律なんでしょうね。

スペシャリストとゼネラリストで考える、キャリアの6パターン

ちょっとマッチョな話が続きましたけれども、ここからチャキチャキいきます。「キャリアの考え方のパターン化をしている」というお話をします。1人の人生の中で、いろんな仕事の仕方、キャリア形成の仕方があります。その勝ちパターンと言いますか、正解はありませんので、いろんな種類があるわけですけれども。

それらを構造化をすると、だいたいこういうパターンがあるよということで、みなさんが自分自身に当てはめた時にキャリア形成を考える1つのヒントになるかなということで、ぜひ紹介させてください。

今からこの6個のパターンでお話を進めます。「お給料を上げるためのベクトル」って直接的な表現ですけれども。軸となるのはさっきの「スペシャリスト」と「ゼネラリスト」ですね。

まず、例えば高校なり大学を卒業して社会人になった時、ないし転職した時でもいいんですけれども。右も左もわかんなくて、なにもできないわけです。

そうすると、スペシャリスト方向もゼネラリスト方向も、まったく戦闘能力がない状態なので、メモリはそれぞれ1:1。面積は1ということですね。すべての人がここから始まるということです。

世の中一般的に、「君はまず新卒ないし転職してきたばっかりで何もできないから、先輩の仕事について、まずは仕事が一人前にできるようになりなさい」となって、ここからキャリアを作るわけですね。(新入社員に)いきなり後輩がつくことってありえないので。まずは自分の面倒を自分で見られるようにしましょうということです。

スペシャリストになるというよりは、一人前に目の前の仕事ができるようになるということを、最初に努力するわけですね。なので、1:1からスペシャリスト方向にメモリが伸びて、3:1になっていくわけです。これもまた一般的です。3:1くらいになってくると、ようやく目の前にある仕事はだいたい1人で、なんとなくできるようになります。

仕事の難易度により投じる期間は違いますが、そこまでに半年・1年・2年くらいの時間が経つわけです。そうすると次の新卒で後輩が入ってきたり、中途で次の人が入ってきたりするわけですね。

面積の広さ=社会に貢献している価値の総量

そうすると、「○○さん、新しい後輩が入ってきたから、この子に仕事教えてあげて」と言われ、教えられる側から教える側になるんですね。そうすると、だいたいの場合はこういう(ゼネラリスト方向にメモリが伸びる)感じになる。人の面倒を見始めるわけです。自分の仕事をちゃんと一人前にやりながら、直属の部下なのか後輩なのかは別として、誰かの面倒を見ることをやり始めるわけですね。

ここで大事なのが、この面積の広さなんですね。最初は1だった。それが3になる。3のスペシャリストのスキルを持った人が、人に教えることもできるようにしておくと、今度は3:3になるので、面積は9になるんですよね。

これが、みなさんが会社を通じて社会に貢献をしている価値の総量だと思っているんです。この面積が広ければ広いほど、会社に貢献をしている。会社を通して社会に貢献している。つまりそれだけの報酬を得る権利ということだと僕は思っています。

形じゃなくて、面積が大事ということですね。ここまでくるのに通常3年から5年ぐらいのケースが一般的だと思いますが、3:3ぐらいのところに来た時に、今度は「さて下にいくか右に広げるか」という選択になっていく。本番はここからかなぁと思います。

まぁ、1:5はありえないですね。さっきの3:3のところから5:3になることがありますが、まず1つ、これは先ほどからお話をしている「スペシャリスト方向に持っていきたいぞ」ということを表しています。

これに関しては、僕は別に否定しないよという話を冒頭にしましたが、とにかくリスクがあるということだけは考える必要があります。今から自分がスペシャリストになっていこうとしているスキルは、何年間、特殊技能として社会の中でありがたがられるものであり続けるのか。その未来をある程度思考しながら、このスキルがどれだけ賞味期限が長いのかを考えながら、どこでゼネラリスト方向に進むのかを決めるということが1つ。

あとは、スキルを磨き終わることは絶対にありえないので。磨きながら市場の環境にフィットさせていくことを絶対に疎かにしてはいけない。マイナーチェンジで対応できるのか、フルモデルチェンジ、つまり違うスペシャリスト方向をもう1個作らなければ対応ができないのかというところも含めて、考えていく必要があると思います。

同じスキルを持っているのに、給料の差が出る理由

スペシャリストとして部下を持たず、ないしは数人しか持たずスペシャリスト方向にいくこともあれば、ある程度のところまで自分でスペシャリスト方向を磨いていくと、だいたいその時点で「いくつかの領域の仕事はできるようになったから、次はチームリーダーになってくれ」って会社から声が掛かることが多いんですよね。

「3人のチームを持ってくれ」「5人のチームを持ってくれ」みたいな話です。その時にチームリーダーになると、スペシャリスト方向が5の状態で、ゼネラリストになるわけですね。3:5イコール15です。

これを会社から見ると、同じスキルを持っているけど面積が5の人と、他のスタッフの面倒を見てくれている面積15のスタッフって、どっちのほうが価値があって、どっちのほうが給料が高いかといったら、後者に決まっているわけですよ。

なぜならば、人の面倒を見てくれていて、全体としてもたらしてくれている、会社に貢献をしてくれている量が多いのは、後者の人間なわけですよね。年齢というよりは、そのキャリアを磨いて仕事ができるようになればなるほど、キャリアというのは放っておいても、必ず横に広がっていくものなので。

なので縦軸にスキルを堀りたいんだったら、勝手に右側(ゼネラリスト方向)に広がっていこうとするものを、自分で明確に拒否をしながら下に掘らないかぎり、必ずキャリアというのは右に広がっていくものであると。職歴が長ければ長いほどですね。部下を持たない一匹狼型みたいなケースもあるんですけれども、先ほど申し上げたとおり、1人で10のパフォーマンスはできるんですけど、部下が1人もいないので、面積としては10の貢献しかできないわけですね。

一方、自分がやれるスキルは5しかないんだけれども、「部下が10人います」とか「30人いる部門のマネージャーをやっています」みたいな話になると、面積が5×10で50です。こうなるともう完全にリーダーじゃなくてマネージャーなわけですよね。そうすると、当然マネージャーですから昇進もしているし昇格もしているし、昇給もするということになるわけです。

究極のゴールは「100×100」の人材

課題は、世の中の多くの方が縦5横10とか縦3横10みたいな、自分で1人で放り出された時に何もできないけれども一応マネージメントはしているという専門管理職であることです。それでは転職がしづらいというところは、否定しません。ちゃんとある一定の縦軸を持った上で横に広げることがキャリア形成の前提だと思います。

ただし、キャリアを広げていくのであればです。縦軸がなくてとにかくマネージメントだけをやっているというと、確かに「なにかができるわけじゃなさそうだね」という話になってしまいがちですが、その会社にいる時は、やっぱり5×10で50をやっている人が尊ばれることは間違いない事実だなと思います。

当然、スペシャリスト方向が10で、そのスペシャリストの人たちを全員束ねているのでゼネラリスト方向も10で、10×10で100であるみたいな人間が最強です。

うちの会社もマーケティング業界なので、やっぱりマーケターとしてスペシャリストの能力を持っていて、かつ部門も20人とかの部門のマネージメントをやっているという人間はいます。本も書いているし、セミナーの講師もやっているし、部門も面倒を見てるしというと、10と10で100になるわけですね。当然、難易度は高いんですけれども、これができたら究極のゴールだよねということです。

世の中で最も代替困難性の高い「スーパーウルトラゼネラリスト」

この「スペシャリストかゼネラリストか」という話のまとめをここでしておくと、今「世の中で最も代替困難性の高いキャリアの人は、スペシャリスト・ゼネラリストのどっちですか」と言われたら、僕は「スーパーウルトラゼネラリストです」といつも言ってるんです。

オーケストラで指揮を執っている方って、2つや3つの楽器を自分も演奏することができるという方もいらっしゃいますけれども。すべての楽器の演奏技術においては、目の前で演奏している方々が、よっぽどうまく楽器を弾くことができるわけですよね。

なんですけど、指揮者が変わることによって、奏でられるオーケストラはまったく違うものになるわけです。このそれぞれのスペシャリストたちをうまく束ね、プロジェクトを推進し成功に導いていく指揮者を、僕は「スーパーウルトラゼネラリスト」と言っているんですね。スペシャリストの人たちを束ねることができるゼネラリストです。

ひとつのことだけを突き詰めているスーパースペシャリストの人がスーパーウルトラゼネラリストになれることって、いなくはないですが、かなり稀だと思います。僕もそうですけど、具体的なサービスの推進スキルはスタッフ(社員)の方が高いかもしれない。でも、そんなスタッフを150人束ねて、会社という組織にして引っ張っていくところに関しては、そういったところは僕にしかできない。結局そういうことなのかなと思っています。

なので、スペシャリストを目指すのもよし、その代わり若干の注意が必要。ゼネラリストになるのであれば、目指すはスーパーウルトラゼネラリスト。かなり高度なスペシャリストの人たちを束ねてプロジェクトを推進できる人間を、ぜひ目指してほしいなと思います。

ゼネラリスト方向を目指すのであればあるほど重要な「EQ」

その時に、ものすごく大事なのが冒頭でお話をした「EQ」だと思っています。どんな指揮者がいいのかというと、(EQの低い指揮者は)論理的に「お前のここが悪い」「こういうふうに改善しろ」みたいな論理攻めでやってしまって、みんなが疲れちゃうんですね。「あんたが言ってることは正しいけど、なんかむかつくな!」って感じになって、言うこと聞いてくれなくなるわけです。

なんですけど、(EQの高い指揮者は)「わかりました!●●さんのためだったら一肌脱ぎますよ!」とか、「ここが頑張りどころですね、やりましょう! 成功させましょう!」って思わせることができる。ゼネラリスト方向を目指すのであればあるほど、やっぱりEQの重要性は高いかなぁと思います。

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