10年前に話題になった『Second Life』が再燃中

田中良和氏(以下、田中):その中で僕が思っているのは、僕らもREALITYというバーチャルワールドというか、メタバース(インターネット上の仮想空間)といわれるものを作っているんですが、やっぱり次に流行るのは、ライブ配信やメタバースやアバターコミュニティとか。

10年前とかに「『Second Life』(インターネット上にある仮想世界)がすごい」みたいなのが言われていましたが、あれ、どこに行ったんだろう? と思っている人も多いと思うんです。『Second Life』が3回転ぐらいして、ますます『Second Life』自体も若干成功しつつあるんですが。

樹林伸氏(以下、樹林):あれ、まだやっているんですか?

田中:そうなんですよ。もはや『Second Life』さえも……。

里見治紀氏(以下、里見):地味に盛り返しているんです(笑)。

樹林:ええ! ぜんぜん知らなかった(笑)。

田中:そういう意味では、よく言うけど、Googleが世界で初めての検索エンジン全部を持っていったように、『Second Life』が指し示したこの可能性を、全員が「今、これじゃん」というのを拾おうとしているところがあって。

樹林:それはあるな。

田中:5Gだから今これが来ている、というのはあると思いますね。

自分のCGがオンライン会議に参加する日も近い?

田中:それこそ変な話、こうやってZoomとかで話す機会が多くなるって言うじゃないですか。だから今まで以上に、メタバースとかアバターで話し合うとか、チャットに抵抗感があったものが、すごい勢いで抵抗感がなくなっていますよね。

樹林:抵抗はなくなった(笑)。

田中:だって今、ここでZoom会議をしていても、全員背景がバーチャルじゃないですか。背景をリアルで出す必要自体が、もはや相当珍しいじゃないですか。

里見:部屋がぐちゃぐちゃだから嫌なんだもん(笑)。

樹林:そう。もしかしたらトイレとかで使っている人がいるかもしれないですもんね(笑)。

田中:そうそう(笑)。だからこれ、次は自分の顔もアバターにしたら、もはや実物なんか1つもないですよね。ちょうど今週、NVIDIAかどっかがやっていたのが、自分のCGを起こして、自分のCGがしゃべっているふうにZoomでミーティングするテクノロジーを発表していて。

樹林:気持ち悪いけどおもしろい。

里見:確かにね(笑)。

田中:だから髪型がボサボサであっても、「自分と同じアバターがやってくれるから問題ない」みたいな。

樹林:ちょっと美化したりとかしてね(笑)。

(一同笑)

樹林:もうみんないない(笑)。アプリでも別人、みたいな。

田中:だからもうすでに、総アバター社会化しているんです。

里見:もう自動的にやってくれると。

田中:Zoomは背景が違う、インスタは本人を加工している。逆に、本人の背景と名前も顔も見られるITツールって、最近減っているんですよ。

樹林:確かに。本当だ。これはきっと本人だけどね。

里見:ゲームで木村拓哉を作るの、すごく大変なんですけどね。

(一同笑)

里見:あっという間にできるのかな。

樹林:大変だろうな。

里見:みなさん、(ゲームが)9月に出ます!

5Gの発達で、オンラインはより自然なものになる

赤川隼一氏(以下、赤川):「ARが来る」「VRが来る」とかって言っていたけど、世間が一番使っているAR的なものって、まさに『ポケモン GO』とか「SNOW」とか、Instagramと一緒で。

「VRが来る」ってずっと言っているけど、実は業界人が思っているVRの来方じゃなくて、すごく自然なかたちでVR的なものに溶けていくというのが、たぶん実態になるんだろうなとは思いますよね。

里見:「VR元年」って2016年ですからね。もう5年経っているけど。当時思い描いていたものは出てないですが、gumiを引退される國光(宏尚)さんが壮行会でおっしゃっていましたが、「イーロン・マスクの倒し方がわかった」と。

(一同笑)

田中:(笑)。

赤川:やっとね。

里見:8年ぐらい前に、「孫正義の倒し方がわかった」って言っていたような気がしますが(笑)。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):(笑)。

里見:「ついにイーロン・マスクの倒し方がわかった」「奴は全部リアルな世界を攻めていってる」と。

樹林:なるほど。

里見:「俺はバーチャルの世界を攻めていくんだ」と(笑)。まさにThirdverse(gumiを退任した國光氏が、代表取締役CEO/Founderに就任したVRゲーム開発会社)はVRとか使っていて。「絶対バーチャルの世界のほうがリアルより大きくなるから、俺は倒せる」っておっしゃっていましたけどね(笑)。

樹林:でもデザインの世界も、やっぱり今、VRでやっているんでしょ? けっこうリアルにやっているみたいじゃないですか。そういうビジネスに活用するのを、どうやってやればいいだろう? というのを、VRって何か1つ突破できないものがあったんだけども。

5Gになってくると、遠隔でリアルタイムでいろいろやる時に……このVRのゴーグル、もう少し軽いものがいいんですが。それを着けてやることによって、時間とか距離の壁が全部飛ばせるような環境が一人ひとりに来ると思うと、ちょっとワクワクしますよね。

前、グリーでもお願いしたことあるし、セガサミーでも伺って、いろいろVRの体験をしたんだけど。あの頃の不細工な感じは、もう本当にこの3年ぐらいでなくなってしまうのかなと感じていますね。

里見:もうそろそろですよね。やっぱり画像もそんなにきれいじゃないし、先ほど言ったレイテンシ(が大きいことは)、やっぱり自然じゃないですよね。ナチュラルじゃないので、それがだいぶスムーズになってくると思うですよね。

樹林:5Gが発達してくると、すぐに同時に似たような話でボンと入れるような感じになってくる、すごいことが起こるかもしれない。

「会わなきゃ絶対にできないこと」が減りつつある

田中:あとコロナ問題だと、僕が一番びっくりしたのが、ちょうど1年ぐらいロックダウンしたじゃないですか。会社に行かなくても会社の決算が締まって、普通に決算ができちゃうのを見て、「会社ってオフィスに行かなくても回っちゃうんだ」って。

今まで自分が一生懸命会社を作り上げてきたのに、会社に行かなくていいという皮肉な現実に衝撃を受けたんですが(笑)。

樹林:高い家賃を払って、光熱費を払って、交通費を払って。

田中:そう。この界隈もそうじゃないですか。だからたぶん今、世の中で会わなきゃ絶対にできないことって、実は本当に少ないんじゃないかと思いました。よほどできないであろう、会社の決算まで締まるわけなので。請求書とかどうしてるんだろう、とか思っていたわけですが(笑)。それでも上がるんだ、みたいな。あれは衝撃でしたね。

樹林:クリエイティブの現場でいうと、例えば漫画の絵コンテとかは、会ってやったほうが確かにいいんですよ。だけど、なかなかできない相手がいるじゃない? 

例えば今、進めている作品は、地方に住んでいる人と打ち合わせしているんだけれども、それをまさにZoomでパソコンを2台使って、上からカメラを置いてネームを映して、直しをしていくところをリアルタイムにやると、なんとかギリギリ成立しちゃっているんですよね。

こうなってきたんだなと思うと、それぞれ工夫の仕方だと思うんですが、これから何かまだまだおもしろいことが起こるかなと思って。佐渡島くんにちょっとそのへんを(笑)。

佐渡島:僕は福岡に移住しちゃったから、作家との打ち合わせ、Zoomでしかしていないんですよ。

樹林:今、福岡なの?

佐渡島:そうなんです。逆にZoomでやると、4~5人の作家と同時に打ち合わせができるんですよ。今までほぼ全部1対1でやってたのを4~5人でやって、さらにやりながらそれをSlackに残したり、他の漫画家も見れるようにして、学び合いが起きるようにしていっているんですよ。

田中:なるほどね。

会議中の表情を分析するサービスも

佐渡島:さらに、動画で(会議を)やっている時の僕や他の作家の顔も全部、どれぐらい笑っていて、どの会話の時に最も盛り上がったとかが分析されて、レポートが来るサービスを頼んでやっているんですよ。

樹林:そんなのあるの? 

佐渡島:はい。

樹林:それは、何がおもしろかったとかがわかる、みたいな話?

佐渡島:わかります。どの時に一番盛り上がったかで、誰と誰の会話が波長が合っているかとか、かなりおもしろいフィードバックが来るんですよ。

今までは、どうやったら作家との打ち合わせがうまくなるかとか、磨き方があまりなかったんですが、表情カメラで捉えて感情分析してもらうと、むちゃくちゃ打ち合わせがうまくなっていくフィードバックがもらえるんですよ。

樹林:リアルタイムで会ってやることが良さであった時代が長かったんだけど、それがこうやって、リモートでもできるようになってきている。

佐渡島:それがすごくおもしろいですね。

里見:ハリウッドは脚本でそれをやっていますけどね。脚本でAIを入れて、この脚本で何回笑いが起きるかとか、感情がどうやって動いているかを分析して、「ヒット確率何パーセント」みたいなのが出るやつ。

樹林:それ、ちょっと不気味なんだけど(笑)。でもおもしろいね。

里見:過去の脚本と実際に当たったものを、バーッとAIにビックデータを解析させて、そんなことやっていますよね。

佐渡島:『ドラゴン桜』の校舎のモデルが、横浜の聖光学院というところなんですが、聖光学院の生徒が直にハーバードに行って、そこでベンチャーを作って。何人かあっちの人たちと一緒に作ったベンチャーです。

今、里見さんが言った「分析を漫画に対してやるソフトを作って、ベンチャーを作った」と言って、僕のところに相談に来て。今、それにうちの漫画サンプルで出したりとかしていますよ。

里見:怖いな。

日本の武器は「編集力」と「原作を生む力」

里見:ちょっと脱線するかもしれないですが、今、Webtoon(スマートフォンに適した縦読みスクロール型が特徴のデジタルコミック)が流行っているので、中国と韓国の会社がめちゃくちゃ日本の原作とか、アメリカ、海外含めてデジタル漫画をバンバン買収しているんです。なんで来るんだろうと思って。

彼らにないものって、原作者と編集者なんですよね。「日本の編集力ってとんでもないな」と言うんです。作家さんだけだったら、絵はうまいけどストーリーがつまんないという人を、編集者の方がおもしろい人に変えていくとか。逆にアシスタントにいい人を付けて、絵がうまくなっていくとかね。『鬼滅の刃』とか、最初はだいぶ違いますよね。

樹林:ぜんぜん違うね。

里見:樹林さん。それを両方自分でやれちゃう、スーパーマンもいらっしゃいますが。

樹林:両方やっているんだけど(笑)。本当にいろんな話があって。

里見:原作を生むのと、それを編集しておもしろくするプロデューサーですよね。そこって、中国・韓国にないんですよね。

樹林:おそらくそこは、少し欠けているんですよ。

里見:それがAIに取って変わられちゃうと、ちょっと日本の強みが。

田中:(笑)。

樹林:AIが一番怖いけど、前、リモートで向こうの漫画家と日本の原作サイドとか、編集サイドの仕事とかつなぐようなことを、講談社で1回やったことがあったんですね。それに僕、ちょっと引っ張り込まれて関わったんだけれども、そういうのってどうしても、基本的に機材も含めて大ごとなんですよ。

だけど5Gになってくると、何から何までそれに近いものでやれるようになって、現実的に見えてくるなとちょっと思っているんですよね。そういう感じで言うと、佐渡島が狙っているのもおそらくそのへんでしょ?

佐渡島:そうです。やはり日本って編集者がいいと言われるじゃないですか。そのせいで、逆にそういうツールによるサポートが遅れて、より後進国になるんじゃないかという。自分の能力が、そういう変化を邪魔する能力じゃないかと思って、そういう人たちに会いに行っているんですよ。

樹林:それはわからないけど、とりあえずITが苦手なやつも多いからね。編集者とかね(笑)。

漫画家を複数人集めてフィードバック

赤川:ちなみに、すごく興味があるので佐渡島さんに聞きたいんですが、漫画家4~5人と同時に打ち合わせというのは、どういうやり方なんですか?

佐渡島:課題が違う人間を複数人集めるんですよ。けっこう今まで、1対1で直しを言ったりしていると、毎回みんな傷ついて、それを受け入れるのにすごく時間がかかるんですが。

田中:(笑)。

佐渡島:他人が言われているのを聞くと、「それ、俺もマジそうだわ」みたいな感じで、けっこうみんなスッと修正はできるんですよ。だから課題感が似ているんだけど、ちょっとずつずれている作家を集めて打ち合わせをする。

その後全員で振り返りさせると、キツいと言われたことが、他の人が「役立ったわ。俺、あれやろうと思う」「じゃあ俺もやろうかな」みたいな感じになるので。

田中:へえ〜。

佐渡島:打ち合わせとその後の振り返りをみんなでやってもらって、それをさらにSlackで書いて、客観性・メタ認知がより起こる仕組みです。打ち合わせの途中と振り返りの時とSlackと、さっき言ったデータとみたいな感じで、違うタイプのフィードバックが入ってくるように、今、設計しているんですよ。

田中:おもしろい。

「自分のアイデアをわざとボツに」編集者の気遣い

樹林:編集者っていろいろで、クリエイティブの能力が高かったりする人がいて、そうじゃない人もいて。でもうまくバランスを取って、漫画とかを傷つけないで話せるやつがうまいんだけど。そうすると、その部分がちょっと欠けていても、クリエイティブが高い人間がけっこうやれるようになるかもしれないね。

佐渡島:そうです。

樹林:本当は両方持っていなきゃいけないんだ。普通は傷つけちゃいけないんだよ。

佐渡島:(笑)。

樹林:俺はそれはすごく気を遣ってやっているんだよね。クリエイティブでも仕事しているし、編集者としても働くわけなんだけれども。そういう場合でも、かなり一番気を遣ってやっていて。

自分の出したアイデアをわざわざ自分でボツにしたりとか、そういうふうにやりながら、公平性をあえて見せる気の遣い方をやったりはしているわけなんですが。でも、もうちょっとドライにやってもそういうシナジーがあって、みんなが見て納得できるような場があるんだったら、ちょっと変わってくるかもしれませんね。

コミュニケーションミスが起きる原因

里見:まさに『具体と抽象』という本がありますが、人間のコミュニケーションミスのほとんどが、同じことを言っているけど抽象的に捉えている人と、具体的に捉えている人でぜんぜん理解度は違う。経営層と現場で違うのも、まさに課題は同じことを見ているのに、理解度が違うという。

まさにそれを、佐度島さんがグルグル回している絵が目に浮かびましたね。スピーチがうまい人がするたとえ話は、話が「なるほどね」と落ちてくるという。まさにそのメンバーの中で、グルグルそれが回っているんでしょうね。抽象的な話になって、自分にとっては抽象的だったのが、逆に理解度が上がるという。

佐度島:まさにこの仕組みを作るために、今、里見さんがおっしゃった『抽象と具体』の本の細谷(功)さんとかに会いに行って。

里見:細谷功さん、おもしろいですよね。

佐度島:いろいろ議論して、それで今、僕の言った打ち合わせの仕組みを作っていきました。

里見:やはりそういうことですね。

佐度島:聞いたときの様子を、「『具体と抽象』実践編」みたいな感じで、対談本を作っているんですよ(笑)。

里見:それ、ぜひ買いたい。