2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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樹林伸氏(以下、樹林):本日はよろしく願いします。僕にとってはわりとみなさんは知った顔で、初めてかなと思った赤川さんも、実はDeNA時代に3回ぐらい一緒に仕事をしていたことがありまして。
赤川隼一氏(以下、赤川):はい。
樹林:そういうことなので、ざっくばらんに話を進めさせていただきたいと思います。最初に「コロナ・5G時代に進化する、コンテンツ・配信ビジネス」という大テーマなんですが、なんでコロナと5Gがセットになっているかは、僕もよくわからない(笑)。
ただ、コロナのせいでいろんなことが遅れて、本当だったら5Gが一番に体験できるはずだったオリンピックが、そんなにたくさんの客が集まる話じゃなくなっていることを考えると、それなりに影響があったのかなと思うんですけどね。
でも、一般の人が5Gで何が変わるかって、あんまり変わらないんじゃないかなと言う人も多いと思うんですね。実際は大きく変わってくるはずなんですが、そのへんに対して……じゃあ、一番詳しそうな里見さんに話をうかがおう(笑)。
里見治紀氏(以下、里見):はい(笑)。じゃあ私から。今、樹林さんがちょっと触れたと思うんですが、たぶんみんな「5Gって何だろう?」って思っていると思うんです。本来、一番体感できたろうなと思うのは、たぶん(オリンピックで)スタジアムとかに何万人とか集まると、携帯ってすごくつながりにくいじゃないですか。
樹林:そうですね。
里見:あれが5Gになると、アンテナあたりの人の携帯許容量が増えるので、スタジアムでも携帯がサクサクつながるなとか。それこそ動画を送ったり配信したりを、本来オリンピックで見たりできたんだろうと期待していたら、こんな感じですから(笑)。
iPhoneの最新機種とかを持っている人で、「5Gのほうがつながりが悪い」と思っている人のほうが、今は多いんじゃないかなと思うんですよね(笑)。
樹林:そうですよね。たぶん、五輪の会場なんかは集中的にアンテナを作っただろうし、そうするとお客さんがカメラを持って、会場から自分のパーソナルな放送とかをできちゃったりして。実況するおもしろさが出てきて、「これおもしろいな」と思う体験ができたと思うんですけどね。
それがなくなって、一応僕らプロのコンテンツを作る側としては、あんまり大きなことじゃないようにも思えてきちゃってるんですけどね。
樹林:でもたぶん、そうじゃないですよね。それも含めて、まさにスマホのゲームの配信とかをすごくがんばっている赤川さんに(笑)。
赤川:ありがとうございます(笑)。
樹林:本当に久しぶりにお会いできて(笑)。
赤川:そうですね。スマホのゲーム実況をやっている赤川です。4Gの時も「4Gだから」というよりも、YouTubeが普及してどこでも見られるようになって、ギガ放題も含めて「4G便利だったよね」って感じたと思っていて。同じように5Gもコンテンツとかが付いてきて、みんな実感するんだろうなと思っています。
今だとまだ、ライブ配信みたいなものって「気合いがいるもの」って感じなんですが。実際、僕らのユーザーって10代とかが多くて、もう「スマホゲームをやっている時にライブ配信をしないのってあり得ないでしょ」みたいな人たちがいっぱいいるんですよね。その感覚がもっと広い世代に広がっていくとか。
Clubhouseとかもそうですが、今までは気合いのいるものとか、「転送量が多い」「レイテンシ(データ通信の遅延時間)が大きい」というのが気楽になっていくのが、5Gで起こる流れなのかなと思って、僕らはゲーム配信をやっている感じですね。
樹林:レイテンシ・遅延が少なくなるから、やっぱりそれによって(距離が)近い感じというかね。遅延があると、例えば昔だったら海外の放送とかで、「海外からの実況がすごく時間が遅れて感じるなぁ」と思うこともあったし。あれが僕らが「遅延ってあるんだな」と感じた一番古い記憶かなとも思うんですが。
Clubhouseも(そうですが)、今はどんどん、そこらへんでしゃべっているのと変わらないようなアプリケーションができるようになってきていて。5Gはそこがすごく大きいだろうと思うんですよね。
樹林:だからユーザー目線から考えると、快適になっていくのは良くわかるんですよね。でもそれがどうコンテンツに関わってくるのかって……じゃあグリーの田中さんに(笑)。田中さん、どうですか?
田中良和氏(以下、田中):僕も「5Gだから何だ」ということじゃなくて。最近、コロナでまさにこのビデオ会議が進むのが一番すごいなと思っているんですよね。
テレビでも、最近コメンテーターとかがモニター越しにログインしていて、それでも別にテレビが成立するのがもう普通になってきているんですが、1年前は「すごく違和感あるな」と思っていたけど、あっという間に当たり前になりましたよね。
樹林:あれはぜんぜん当たり前になっちゃったよね。そういう田中さん、今、通信のあれ(回線不良)でたぶん移動中なんだよね?
田中:すいません。今、着きました。
樹林:着いたの(笑)。
里見:これがね、5Gだともうちょっとスムーズな田中さんの顔が見られると思うんですけど。今は移動中で4Gですので。
樹林:あはは(笑)。でも5Gだと、これはまた直進性が高いからというので、急に切れたりってこともないんですかね。
里見:それを技術的に回避しようと思っているのは、ローカル5Gってやつですかね。5G自体、葉っぱ1枚で妨害されちゃうらしいので。
樹林:そんななんだ(笑)。
里見:壁なんかは通りにくいんですよね。
里見:それをローカル5Gといって、Wi-Fiと5Gの合いの子みたいな感じで、この地域だけ・このビルだけとか、中距離を高速で飛ぶようなものを……。
樹林:そのためにローカル5Gって開発されているんですか?
里見:「ローカル5G」とかで括っちゃえば、スタジアムとか、例えば今はサッカーなんかで固定の視点からしか見れないですが、あっちこっちにカメラがあって、ユーザーが自分で選ぶという。酔っ払うかもしれないですけど、ゴール裏のキーパー目線とか、審判にカメラが付いていて審判目線とか(笑)。5Gになると、そういうのが選べる時代がたぶん来るんじゃないですかね。
樹林:打ち合わせの時にちょっと話したけど、これは新しいOculusのQuestですよね。これをかけて5Gの立体でVRを経験すると、その場にいるような感じになって。
一人ひとりが全部つながって、この中にモバイル通信が入ってくるようになると、また中の世界にはまって出られなくなる人間が出てきちゃうようなぐらい、SNSを超えるすごくリアルなコミュニケーションが生まれてきそうな気はしますね。
樹林:もともと僕の後輩の講談社上がりで、コンテンツのど真ん中で仕事をずっとやってきている、佐渡島くんに何か話を……。
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):昔はPCやカメラや照明が扱えたり、音が使えたりが動画を作るのにすごくマストなものだったのが、TikTokで一気にもう「スマホさえあれば人気者になれる」という感じになってきていて、大きく変化してますよね。
樹林:ありますね。
佐渡島:僕らが作っている漫画や小説とかは、頭の中で構築するにしても、けっこう何らかのスキルが必要で。スキルがないと、自分の考えを漫画とか小説にできない時代だったのが、下手をするとバーチャルリアリティのものを被って演技をして、動画を作ったものが漫画っぽくなったりだとか、さまざまなツールの支援がスマホ上で起きていくと思っていて。
僕が持っているスキルや認められているものが、たぶんスキルがなくてもできることになっていって。培ってきたスキルが一瞬で無効化されそうだなという。
樹林:やばいじゃん(笑)。俺が一番やばいんじゃないの?
佐渡島:あはは(笑)。樹林さんの場合は原作を書いているじゃないですか。だから僕が持っていた、出版社の編集者のスキルがかなり変容すると思っていて。どう変容するのかをすごく考えていますし、コミュニケーションとコンテンツの垣根が限りなくなくなってくると思ってます。
コミュニケーションでありながら、長期的に残るコンテンツとは何なのか? というかたちで、コンテンツ制作する時の問いが大きく変わってきていると考えていて。最近は、そういう問いのことばっかり考えて過ごしています。
樹林:確かに。コミュニケーションを抜きにコンテンツを考えることって、僕らでさえもなくなってきていますね。僕は漫画だけでなくていろんなゲームに関わったりとか、ドラマだとかアニメとかいろんなものに関わっているし。
樹林:コミュニケーションのツールとして、自分のコンテンツをうまく使ってもらうことを考えないと生き残れないなという感じがすごくあって。ものを作る時、最近は常にそれを意識してやるようになった。
じゃあ、そういうコミュニケーションの舞台を誰が用意してくれるのかが、どんどんこれからも変わっていって。本当にあと3年もすると、“地図”が変わってしまうようなイメージがあって。その時に、5Gをうまく使っているところが上に出てくる。
でも逆に、世界的に言ったらすごいチャンスです。日本が少し出遅れてしまったところを取り戻す、失地回復のすごいチャンスが来ているのは確かですよね。
里見:やっぱり、コンテンツが足を引っ張るんだと思いますよ。今、5Gの便利さを誰も感じていないのは、コンテンツがないからですよね。
樹林:まだ(コンテンツが)ないからですね。そこは確かですよ。
里見:よく言うのが、やっぱりこのネットワークの世代が変わった時に、イノベーションが起きているんですよね。
2Gの時にiモードができて、3Gでまさにグリーさんなりモバゲーさんのソーシャルゲームがバーッと人気が出て。4Gで動画とスマホゲームがワーッと来て、じゃあ、5Gは何なの? というのを早く提供できた人が、次のコンテンツの勝者になれるチャンスがあるんじゃないか、みたいな。
樹林:それは間違いないでしょう。
赤川:そこで僕も最近、よくメンバーとかにも「エンタメが混ざってきている」という話をしていて。例えば、去年一番大きかった音楽ライブって『フォートナイト』の中で行われたライブだし、『どうぶつの森』はゲームとSNSの居場所みたいになっていたし。Netflixも、途中でお話が分岐する映画を作っていたりするんですよね。
そんな感じで、エンターテインメントが領域を超えて混ざっていて。その中心に、まさにゲーム的なインタラクティブ性やクラウドとか、5Gによる高速化みたいなものがキーになっているな、というのをすごく感じていますね。
樹林:5Gと4Gの大きな違いになってくるのは、スマホ側から局に送るスピードが俄然速くなるわけですよね。ダウンロードじゃなくて、アップロードのほう。
赤川:上りと下りですね。
樹林:ユーザーがここを活用するようになってくるんでしょうね。何が起こるのか、すごく楽しみですね。
里見:やっぱり今まではコンテンツって消費財だったので、一方通行だったんですよね(笑)。
樹林:そうそう。
里見:それが5G後半ぐらいからインタラクティブになってきているというのは、おっしゃるとおり新しいエンタメの部分ですよね。
樹林:投げ銭なんかもそうですよね。
里見:投げ銭なんかも、ある意味でインタラクティブですよね。
樹林:まさにそう。5Gだともっと加速して、どんどん参加できるようになってくるだろう、とみんな考えていると思うんですよね。そこでコンテンツをどういうふうに作り上げていくのかを、田中くんなんかもまさに、スマホゲームでどんどん会社がでかくなっていくところを見ていて。4Gの世界で、また1つ仕事がやりやすくなったというか。
いわゆる家庭用ゲームみたいなところから、いろんなことを奪い取ることができたんですが、今度は5Gが出てくると、奪い取られないようにしなきゃいけないし、そこにいち早く参加しないといけないという意味では、今は何を仕込んでいたりしますか?
田中:すみません。僕は今、Wi-Fi環境がやっと戻ってきたんですけれども。
樹林:あはは(笑)。
田中:今はiPadなんですが、iPadは4Gなので、5Gにならないとこのビデオカンファレンスがやりにくいな、というのはすごくわかりましたね(笑)。
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