伝説的お笑い番組でディレクターデビューを果たした「深夜のカリスマ」

井上彩子氏(以下、井上):みなさん、こんにちは。ワクセルオンライン講演会へようこそ。本日ホストを務めさせていただきます井上です。よろしくお願いします。はじめに私の自己紹介をさせていただいてもいいですか?

マッコイ斉藤氏(以下、マッコイ):(雰囲気が)硬くない?(笑)。

(一同笑)

井上:硬いですかね?

マッコイ:びっくりした。

井上:なんで私がこの場にいるのかとびっくりするぐらいにMCをしたことがないんですけれども。私は今YouTuber『あやぱいちゃんねる』やライター『ラナンミイロ』として活動させていただいています。

さっそくですが、ここにマッコイさんのプロフィールがあるので、読ませていただきます。

マッコイ:僕のプロフィールですか? やばいですよ?(笑)。 よろしくお願いします。

井上:では本日のゲストのマッコイ斉藤さんのご紹介です。1970年2月9日生まれ山形県出身、株式会社笑軍の代表取締役を務めていらっしゃいます。ビートたけしさんに憧れてTV業界に入り、伝説的お笑い番組『天才たけしの元気が出るテレビ』でディレクターデビュー。

以降、極楽とんぼさんやガレッジセールさんの人気番組や、『おねがい!マスカット』ほか、数々の人気深夜番組を手掛け「深夜のカリスマ」と呼ばれていらっしゃいます。近年ではYouTubeでも話題の動画を作り続けていらっしゃっていますが、今回はまさに「バライティ界最後の獄門鬼」と呼ばれるマッコイさんに、たくさんお話を伺いたいと思います。

マッコイ:「獄門鬼」って誰が言ったんですかね。

井上:誰ですかね(笑)。よろしくお願いいたします。

マッコイ:こちらこそよろしくお願いします。こんな僕みたいな……。

井上:いや、光栄です。

自分と同じ悩みを持つ人に向けた井上氏のYouTubeチャンネル

マッコイ:「火の玉ストレート」が出ていたんですよ。

井上:どういうことですか?

マッコイ:この講演会の前にワクセルで掲載されたのが、「火の玉ストレート」の藤川球児さんのインタビューなんですよ。その後に僕みたいな、悪玉コレステロールみたいなやつが来て大丈夫なんですか?

井上:大丈夫だと思いますけど。

マッコイ:来た仕事は全部受けるのが僕のやり方ですから、とりあえず来ましたけど。こんなアウェイ感が漂っているとは思わなかったです。今日はよろしくお願いします、井上さん。

井上:よろしくお願いします。私自身、今YouTubeをやっていまして。

マッコイ:どうですか?

井上:楽しんでいますけど難しいですね。

マッコイ:(YouTubeチャンネルの)タイトルはなんでしたっけ?

井上:『あやぱいちゃんねる』です。

マッコイ:僕、昨日観てきましたよ。

井上:本当ですか! 何の動画を観てくださいましたか?

マッコイ:下着を着て、2人でぎゅうぎゅう詰めていましたよね。

井上:実際にランジェリーメーカーに行って試着するという、なかなかTVでは見れないところを公開させていただいていますね。

マッコイ:流石ですよね。

井上:ディレクター目線から見てどうですか?

マッコイ:いいんじゃないですか。やはり目線を1個にしているのがいいですよね。「あやぱい」というと、やはり「ぱい」を強調した動画にしているじゃないですか。

井上:胸が大きいのが自分の悩みなんです。コンセプトとしては、同じ悩みを持つ子に向けて発信をしているところです。

マッコイ:だからガチャガチャしていなく、すごく見やすいのでいいと思います。

井上:本当ですか? だいたい1人でしゃべっていますよ。

マッコイ:いいと思います。1人だから見やすいんですよね。

ヒットを作る上での秘訣

井上:ありがとうございます。では、マッコイさんにいくつか質問があるのでお答えいただきたいと思います。まずマッコイさんは大ヒットをたくさん打ち出していますが、ヒットを作る上での秘訣はありますか?

マッコイ:僕のヒットなんて、井上さんはわからないでしょう。

井上:でも、とんねるずさんの番組とかは小さい頃に観ていました。

マッコイ:本当ですか? 『とんねるずのみなさんのおかげでした』の時は、けっこうお若いでしょう。高校生とか大学生?

井上:小、中学生ですね。でも、家族で見ていました。

マッコイ:自分の中で「これはヒットを飛ばしたかな」と思ったり、どこ行っても言われたりするのは『男気ジャンケン』ですかね。どこに行っても、いまだに「やってくれ」と言われますから。

この間も福岡で『男気ジャンケン』をやってくれと言って5人ぐらいのグループが来たので、僕は1周してもう飽きているんですけどやったら、本当に僕が払う羽目になって、本当に嫌だなと思いました。

TVの規制から生まれた『男気ジャンケン』のアイデア

井上:『男気ジャンケン』のアイデアはどうやってできたんですか?

マッコイ:『男気ジャンケン』は簡単に言いますと、いつも仲間同士で、演者さんも含めて撮影終わりにご飯を食べに行くわけですよ。ゴールデン番組ですから、スタッフも今とは違って贅沢できたので、ステーキとかいいところに食べに行っていたんです。その時に必ず「じゃんけんするぞ」って言うものですから。

井上:それはマッコイさんの案ですか?

マッコイ:いやいや、ボス、親方ですよね。ボスと言えばだいたい察しますよね。「だいたいさぁ〜」と言うようなボスですよ。

井上:なるほど(笑)。

マッコイ:東京のお笑い界のボスが「じゃんけんしようぜ」と言うわけですよ。その場に10人ぐらいいて、「負けたやつが払おうぜ」となりますよね。ドキドキしながらジャンケンをやると、本当に僕が負けたりしていたので、悔しくて。「これはTVでやり返してやろうかな」と思ったんです。

井上:そういうことだったんですね。

マッコイ:ただその時に、すごくTVの規制が激しくて。「負けた人が払うのはいじめに見えるからだめだ」とフジテレビに言われたんですよね。そこで諦めないで「だったら勝ったやつが『払いたい』と言って払うのはいいんだろ」と言ったわけですね。

そうしたら「払いたい意識がその人にあるんだったらいい」となって、だったらそれは「男気」だなと思って、『男気ジャンケン』にしたんですよ。そしたらこんなに、いまだに愛されるとは思わなかったです。

アイデアは「無心」の中から生まれる

マッコイ:あとヒットした企画と言えば、は『2億4千万のモノマネメドレー選手権』とかですね。郷ひろみさんの『2億4千万の瞳』の音楽に乗せて、その1曲縛りでモノマネをやらせるとか。あとはきたなくても美味い店という『きたなトラン』とかですかね。

井上:そういったアイデアは、生活の中で常に考えてばっかりなんですか?

マッコイ:考えてばっかりです。車に乗っているときとか、一番思い浮かぶのは寝る前ですね。メモ帳を持って寝たほうがいいですよ。目を閉じている時に、その日1日のフラッシュバックみたいことが見える時があるじゃないですか。

その時に「ああやったり、こうやっていたらおもしろいのかな」といったことが、実はすごくおもしろかったりするので、絶対に寝る前にメモをする癖をつけたほうがいいです。僕はずっとこれでメモっていますから。

井上:1日を振り返って、「ここがこうだったほうがよかったな」で、次に活かすんですか?

マッコイ:そうです。寝る前と、車に乗っている時と、あとはバイクに乗っている時。

井上:「無心」なのがいいんですかね?

マッコイ:「無心」、欲をかかない。いいですね。ファッと頭に浮かぶ時はそうかもしれないです。

ただおもしろいこと。そこでお金とか考えずに、ただ「おもしろいんじゃないか」と、パッと浮かんだアイデアをメモったほうがいいですよね。バイクに乗ってヘルメットを被って信号待ちをしている時とか、車で高速に乗っている時とか、あとは寝る前に。

おもしろさを追求するのは、「笑う門には福来たる」という祖母の教えから

井上:マッコイさんはなんで「おもしろさ」にフォーカスしたんですか?

マッコイ:僕は山形県の鮭川村という、人口4,000人ぐらいの小さな村に生まれまして、婆ちゃんから「笑う門には福来たる」と言われて、ずっと笑っていなさいと育てられたんですよ。「辛い時でもあんたは笑っていなさい」と。

田舎のほうだと、トイレの座るところの前に、農協でもらったようなカレンダーとかがよくあるじゃないですか。あそこに婆ちゃんが、ちゃんと「笑う門には福来たる」ってずっと書いているんですよ。

井上:毎月ですか?

マッコイ:毎月というか、毎回書いているので。ずっと笑っていなさいというので、だからうちの会社は「笑軍」と、「将」の字が「笑」なんですよ。「笑う」を門に持ってくれば、というのは婆ちゃんの教えからなんですね。死んだ婆ちゃんがとにかく笑いが好きな人で、そこで小学校の時からずっと一発ギャグを考えて生きてきたんです。

井上:私一発ギャグがないんですよ。

マッコイ:一発ギャグなんていらないじゃないですか。一発ギャグがほしいってどういう人ですか(笑)。

井上:いやいや、いりますよ。そういう機会がちょこちょこあるんです。

マッコイ:一発ギャグって、自分でほしいと思って作るものじゃないです。人に「これやったほうがいいよ」と言われたりするほうがいいですよ。自分で作るとどこかカッコつけたり(してしまうので)。

井上:ちょっと方向性が求められているものと違うということですか。

マッコイ:人に「これやったら?」と言われて「やだ!」と言ったものが、実は良かったりするんですよ。

自分が作った番組は、配信前に10回は見返す

井上:そうなんですね。さっき『あやぱいちゃんねる』を見てくださったとおっしゃてましたが、今ってYouTubeも含め、いろんな番組が観やすい環境にいるじゃないですか。その中でおもしろいなと思うものってありますか?

マッコイ:僕はふだんバライティで、お笑いのことばっかり考えているから、YouTubeとかを観る時は逆にお笑い番組とかを一切観ないで、釣りとかバイクとか僕の趣味の番組しか観ないんですよね。

秦拓馬さんがやっている『俺達。』という釣り番組で、バス釣りの動画をひたすら観ていたり、キャンプの炎ばっかり映しているやつを大画面でずっと流していたり。

井上:ちょっと癒やされますよね。

マッコイ:癒やされます。バライティでずっとお笑いのことを編集したり観ていたりしていると、自分で観る時はちょっと落ち着きたくなっちゃうんですよ。

井上:それこそご自身が作られた番組を見返すじゃないですか。

マッコイ:ほぼ見返しますね。10回は観ますね。

井上:10回観るのは、なんでですか?

マッコイ:まず本編集してアップする前に、僕のアシスタントのディレクターさんが「オフライン編集」と言って仮編集をして、「こんなのどうでしょう」と言うのを見て、「こうしないとおもしろくないんじゃない」とやり直しして、その過程を経て配信するわけじゃないですか。それで配信するという時に、配信前の1時間ぐらい前にはまた絶対に観ますね。「大丈夫かな本当に」って、なんか心配で。

サムネイルを変えると、再生回数がおもしろいぐらい伸びることも

井上:でも、その1時間前に気づいても何も変えられないですよね?

マッコイ:いやいや、その時は配信を遅らせますよ。「これはだめじゃないの」「やっぱりこれはやめよう」と言って、例えばサムネイルを変えようとか。僕は配信してから1時間で1万回以上いかなかったら必ずサムネを変えるんですよ。サムネは1枚貼ったら終わりじゃなくてずっと変えられるので、いわゆる手法として3日に1回変えるとか。

井上:ちょっと聞きたいんですけど、どういうサムネが惹きつけられるのか教えて欲しいです。いいサムネイルのポイントを押さえているから変えられるわけじゃないですか。

マッコイ:僕の場合は「悲惨」とか「強烈」とか、字を強調してわかりやすいようにはしていますけど。

井上:1時間以内で1万回再生いきませんでしたという時、それでサムネイルを変えたら再生回数も変わるものなんですか?

マッコイ:変わりますね。おもしろいぐらい伸びたりするので、僕はサムネイルは多い時で3回変える時があります。

井上:私は変えたことない……。

マッコイ:内容は一緒でもサムネイルだけ、表紙だけ変える。タイトルも変えないですね。

井上:私の勉強会みたいになっているんですけど(笑)。

YouTubeのショート動画は、TVで言う番宣だと思え

マッコイ:あと僕は清原和博さんの『清ちゃんスポーツ』をやっているんですけど、YouTubeショート(60秒以内の縦型動画)がありますよね。清原さんはスポーツ選手なので、バッティングとかキャッチボールの様子とか、バッティング理論をしゃべっているだけといったわかりやすい動画が撮りやすいんですよ。

ショート動画は30秒とかで見やすいので、TVで言う番宣だと思ってどんどん上げていくと、レギュラーのYouTube配信の再生回数は明らかに上がっていきます。

絶対ショート動画はやったほうがいいです。ボクシングでいうジャブだと思って、1日1回ぐらいのペースでどんどん上げていけば伸びると思います。

井上:それは今日上げる通常の動画の内容と絡めなくてもいいんですか?

マッコイ:絡める必要は一切ないです。「自分のYouTubeショートはこれ」と決めてバーッと上げるといい。例えば『あやぱいチャンネル』だったら、「ぱい」という言葉の引きが強いから、「ぱい」に結びつけてショート動画をドーッと上げていったほうがいいですよ。

「天気予ぱい」とかよくわからないことを作ってもいいんじゃないですか。「ドライブぱい」とか、「お買い物ぱい」とか……。

井上:イメージが湧かない分、「なんだこれ」となりませんか?(笑)。

マッコイ:「お風呂に入るぱい」とか、よくわからないけどおもしろそうだなって。

井上:でも今1個浮かんだのは「街中で見るおっぱい」とか。こういう照明とかも(胸に)見えるじゃないですか、そういうのはどうですか?

マッコイ:やってみたらいいですよ。

井上:やってみます(笑)。

短所と長所は同じだからこそ、コンプレックスは思い切りだしていい

マッコイ:たぶん才能が反応しているんでしょうね。井上さんは「おっぱい」という才能がある人なんですよ。

井上:でも、もともと大きい胸がすごくコンプレックスで、出したくなかったんですよ。

マッコイ:短所は長所と一緒ですから、コンプレックスは思いきり出していいんですよ。自分が短所と思っているものが、人から見たら羨ましいと思われている可能性もあるんですから。

井上:ありがとうございます。

マッコイ:いいんですか? おっぱいの話で15分も話しているんですけど。スタッフが誰も笑っていないですよ。

(一同笑)

井上:どうしましょう(笑)。