2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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金亨哲氏:続きまして、本年(2021年)2月3日にエイミー・C・エドモンドソン先生の『恐れのない組織』を出版された英治出版より、英治出版代表取締役 原田英治さんです。よろしくお願いいたします。
原田英治氏(以下、原田):よろしくお願いします。
石井(遼介)さんのプレゼンに感動しちゃって、濃い10分間のプレゼンで僕自身が大満足で、自分はなにをしゃべろうという感じなんですけど。今日の司会の金くんも石井さんも、若い頃から知り合いだったので、今日はおじさん的立場で参加しておりましたが、石井さんの専門家ぶりに感動しました。
石井さんのまだ見ぬ147枚のスライドの内、これから何枚めくれるのかが僕の今日の使命なんじゃないかと思っております。僕の話はさっさと終わりにして、石井さんとの対談で何枚のスライドをめくれるか挑戦してみたいと思います。
英治出版をご存じない方もいるかと思いますので説明しますと、『恐れのない組織』の出版社であり、『ティール組織』とか『学習する組織』、そういった組織開発の本を多く出しております。一番売れたのは『イシューからはじめよ』という本で、累計40万部ぐらいの書籍となっております。
「誰かの夢を応援すると、自分の夢が前進する。」という経営理念を掲げて、22年間出版業をやってまいりました。これは「パワーかラブ」でいうと、ラブに近い表現かなと思います。誰かの夢を応援するパワーが、ギブアンドテイクで自分の夢を前進させるという話ではなくて、社会の中に信頼が貯金されていくようなかたちで、いつかそれが神輿を担がれるように夢が実現したり、もしくは自分で振り返ってみると夢が前進していたなと気づくような考え方です。
社会を繋ぎ合わせていくラブの力。英治出版の中でも「応援する」という言葉がキーワードになっています。
原田:僕自身は1966年生まれで、今で言うアクセンチュアを経て1999年に英治出版を創業しました。2018年には親子島留学という制度で、島根県沖の日本海に浮かぶ「海士町(あまちょう)」という町で、次男と妻と3人で1年半ぐらい暮らしました。
そこでもいろいろな気づきがありました。長い関係性を人と築く時には、等価で物を交換するよりも、不等価というか1回の取引では釣り合いが悪いんですけど、長い期間を経て収支が合うようなやり方のほうが関係性が持続していくなということとか。いろんな発見がありました。
今日お話ししたいのは、一人ひとりの想像力(イマジネーション)とか、創造力(クリエイティビティ)が発揮される組織についてと、「シェアド・リーダーシップ」という考え方と、「シェアド・リーダーシップ」と「心理的安全性」の関係について、簡単に触れたいと思います。
「一人ひとりの創造力が発揮される組織を作りたいな」というのは、創業の時の思いだったんですね。
僕がアクセンチュアをやめた後、祖父が起業した印刷会社に入ったんですけれども、そこではどうも社員の人たちの夢が広くなっていくとか、大きくなっていくことがない。長く続くためにはいい部分もあると思うんですけれども、「ワクワクする組織じゃないな」という思いもあって。そこを飛び出して、33歳の時に英治出版を起業します。
その時に思い描いていたのが、どうにかみんなのクリエイティビティとかイマジネーションが広く深くなり、新しいものをワクワクして生み出せる組織を作れないかということ。出版業でなくてもよかったんですけど、縁あって出版業を営むことになりました。だから、本当は組織のマネジメントに非常に関心があったというのが創業のきっかけです。
原田:英治出版の組織のあり方のベースになっているのは『企業創造力』という本で、これは英治出版を創業する前に出版した本です。その後も大切な本として、英治出版でもう一回版権を取り直し復刊しました。
著者のサム・スターンさんは教育学の先生なんですよね。「クリエイティビティを教えることはできるのだろうか?」という問いから始まっています。「クリエイティビティ自体を教えたら、クリエイティビティじゃないじゃないか」ということで、「じゃあクリエイティビティを教えるとはどういうことか」と考えたんです。
そして「クリエイティビティが発揮しやすい『環境』をつくることができるんじゃないか」ということで、いろいろな事業・組織を研究して6つの要素を導き出したという本ですね。これをもとに英治出版は組織づくりをしてきました。
とはいっても、一人ひとりがクリエイティビティを発揮するのは、結局のところ一人ひとりなんですよね。誰がどのような創造力を発揮するかわからないという前提で環境を高めていって、誰かがクリエイティビティを発揮したらいいんですけれども、それだけではなくて。チームとしてのクリエイティビティを上げたいなといった時に、僕は「サーバントリーダーシップ」に出会うんですね。
「サーバントリーダーシップ」というのはグリーンリーフさんという方が提唱した概念なんですが、「奉仕型のリーダーシップ」と言われていますけれども、僕の理解ではシチュエーショナルなリーダー、その場その場のリーダーを何人作れるのかが、サーバントリーダーの役割として非常に重要なポイントなんじゃないかなと思っています。
なので英治出版では、なるたけ多くのシチュエーショナルリーダーを作りたいなと思いました。「出版プロデューサー制度」という、1人のプロデューサーが著者と1対1で向き合ってプロジェクトをマネジメントしていくかたちであったりとか、それを支援するチームというかたちの中で、チームメンバーはタスク毎のシチュエーショナルリーダーになったり、自分自身はサーバントリーダーとして貢献したいなと思ってきたんです。
原田:もうちょっと後、『ティール組織』を出版したあたりに「シェアド・リーダーシップ」という概念に出会います。ある目的に向かって、みんなでリーダーシップをシェアするというチームの考え方です。結局それぞれに強みがあるわけで、その強みを活かして、目的に向かってみんなで自分の持っているリーダーシップをシェアしようという感じですかね。
「サーバントリーダー」との違いはなにかなと思った時に、シチュエーショナルリーダーは起こしたいこととか目的ありきで、それを担当するリーダーなんですよね。だからどうしてもプロジェクトマネジメントとして、目的を達成するために、そのシチュエーショナルリーダーがトップとなってリーダーシップを発揮しなければいけないんです。
「シェアド・リーダーシップ」の場合は、チームでリーダーシップをシェアしてみんなで目的に向かっていますから、自分らしいオーセンティックなリーダーシップをみんなでシェアすることができる。
そういう組織と考えると、「このシチュエーショナルリーダーにあなたがなってくれたらいいな」という思いのもと、自分がサーバントリーダーとしてフォローしていったり。「支援をしていくから」というだけではなく、目的をみんなで共有した上で、みんなでリーダーシップをシェアして、みんなで目的に向かっていく。
このシェアド・リーダーシップ型の組織がより美しいというか、よりクリエイティビティが発揮されやすいんじゃないかなと考えるようになりました。
原田:先ほどの石井さんのプレゼンで、「心理的安全性」とは、ぬるま湯ではなく、目的を達成するために対立もいとわない率直さだ、という話が出てきました。後で石井さんにもいろいろお聞きしたいと思っているんですけど、僕自身は結局、目的志向の組織だけじゃなくて、クリエイティビティが発揮される組織には「余白」があるというか、セレンディピティ(偶然の発見)が起こりやすい環境が必要だと思うんです。
つまり本来目的としていないことが起こったり、そこから本来目的としていないことをやったりしているから、そこからの洞察でクリエイティビティが発揮されることもあると思うんですね。
なので「心理的安全性」という環境下では、生産性が上がるといった目的に集中した言い方だけではなく、ニュアンスをもうちょっと緩めることによって、よりクリエイティビティの高いワクワクした組織が作れるんじゃないのかなと。そういうことを今モヤモヤと考えているところで、その辺を後で議論させていただけたらと思います。
僕としては「自分らしさ」、『ティール組織』でいう「全体性」を発揮できることによって、みんなでリーダーシップをシェアしている時、みんなが一生懸命目的に向かって「これが得意」「あれが得意」「私にはこれができる」「あれができる」と言う目的指向のリーダーシップをシェアするだけでなく、「ちょっと休憩してケーキでも食べない?」と言うのも、僕はリーダーシップのシェアだと思うんですよね。
目的に向かう時に全体として根を詰めてやるだけじゃなくて、ちょっとスピードを緩めるとか休憩するだとか、そういったことも実は効率的になることもあるし、もしくはそういった「余白」にクリエイティビティが生まれることもある。そう考えると、多様な全体性を発揮できる環境が「心理的安全性」の高い環境であり、オーセンティックなリーダーシップをシェアする「シェアド・リーダーシップ」の組織なんじゃないかと考えています。
以上です、ありがとうございます。
金:ありがとうございました。
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