2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
LinkedIn村上臣の直接指南『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』(全1記事)
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村上臣氏:LinkedIn 日本代表の村上臣と申します。みなさまよろしくお願いします。私はもともと学生ベンチャーの出身でして、学生時代に仲間と共に電脳隊という会社を起業しました。これは、モバイルインターネットの先駆けのようなベンチャーだったんですが、iモードやezwebとか、まさに日本のインターネットが始まる時から、エンジニアとしてキャリアを積んできました。
その後ヤフー、ソフトバンクと働いて、LinkedInという働き方改革真っ只中のグローバル企業の日本法人の代表をしております。
今、自宅の一角なんですが、弊社は2020年の2月の末から全社員100パーセントリモート必須で、誰もオフィスに来てはならないということで、完全にリモートでやっている状況になります。
『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』という本を、2021年4月に刊行させていただきました。これ、どういうものかというと、キャリア本も転職本も、これまでたくさんあると思うんですね。みなさまも目にしたことがあると思うんですけれども。
私の目から見ると、成功した人が「同じようにすれば成功するよ」とか、もしくは精神論的な「こうやってがんばれば大丈夫だ」というかたちで、読んだ後に実際に何をすればいいのかが、イマイチ伝わりにくい印象がありました。
先ほど申し上げたとおり、私もコロナでリモートワークをしていて、さまざまな方からいろんな相談、学生の方からもLinkedInのダイレクトメールで相談をもらっていました。「キャリアについて困っている」「このコロナの状況の中で、どうやって就活をすればいいのか」とか。
いろんな悩みを聞いている中でふと思ったのが、たとえ大学生の方であっても、私が20数年前に就活をしてきた時と、考え方が変わらないんですね。
何が変わらないかというと、ご両親の影響なのかわからないですが、旧来の終身雇用の考え方そのままで、「いい会社に入らなくちゃいけない」「新卒でがんばっていい会社に入れば一生安泰だ」と思っている方が、いかに多いかに気付いたんですね。
(著書を)『日本人のキャリアの新・ルール』というタイトルにしたのは、まさにそこでして、もうルールが大きく変わっているんですね。新卒で入ったとしても、3年以内に転職される方は半分近くになっています。これは図らずも、それだけミスマッチが多いということでもあるんですね。
中途のマーケットも、かなり大きい市場がある中で言うと、これからは個人がそれぞれの役割をきっちり果たしていく。「ジョブ型雇用」と言われる、決められた期間、会社の中で活躍して、手段として転職を利用してキャリアアップをしていく。こういう考え方が主流になってきています。
『転職2.0』の中では5つのルールを挙げていまして、「目的」「行動」「考え方」「価値基準」「人間関係」。この5つのルールが大きく変わっている。特にこの「目的」の部分ですね。今、申し上げたように、転職は目的ではなくて単なる手段なんですね。
ですので、自分の市場価値を比較した時に、自分が今どういう立ち位置にいて、次はどうすると市場価値が上がっていくのか。
これを実現するための手段が転職であって、こういった自由な転職を身につけることで、キャリアをどんどん積み重ねることに、我慢することが少なくなっていって、より楽しい自分らしいキャリアを歩めると。こういった本が『転職2.0』でございます。
今までの終身雇用に縛られている方、特に大企業に勤められている方。転職したいんだけど、やはり動くのが怖いなとか。もしくは、このまま(今の会社に)いたほうがいいんじゃないかと悶々しているけれども、アクションが具体的に起こせていない方。こういった方にはぜひ一度読んでいただきたいですし、経営者とか企業の採用担当者の方にも読んでほしいですね。
実はもう、採用に関しては市場が変わっていますので、どんどんみなさん終身雇用の呪縛から解けていって、新しい働き方を望んでいる。これはコロナ禍だけではないですが、多様な働き方・価値観の中で、どういう人が企業で活躍してもらえるのか。こういったことを知るためにも、ぜひ経営者・採用担当者の方にも手に取ってほしいなと思います。
これを執筆した背景は、もともと自分はプロとして、いかにその場その場でバリューを出すかにこだわって、個人的に働いていたんですね。これは原体験でいうと、学生の時にスタートアップを(起業)したという話をしましたが、その前に私、個人事業主として勤労学生をしていたわけですね。
これはもともとはバイトから始まって、秋葉原のパソコン屋でパソコンを売っていたんですが、お店に来た方に「実はホームページを作りたいんだけど、作り方がわからないから誰かいないかな?」みたいな相談を受けて。
「私できますよ」というかたちで、個人のプログラマーとして受託して、いろんな仕事をやらせていただいた時に、1人で物を作って納めてお金をいただく中で「いかにプロフェッショナルな仕事をするか」に非常にこだわっていたわけですね。
これが私のキャリアの考え方の根底にあって、これまでヤフーやソフトバンクと大企業で働きましたし、ヤフーを一度辞めて、またフリーで今度受託で働いていた時期もあります。その場その場で自分が出せるバリューをしっかりと出して、その対価として報酬をいただくことにこだわっている。
そのためにはやはり、自分の意識もそういうふうにしないといけないですし、定期的に外に触れて、自分の今の現在地点の実力というか「時価」です。 お寿司屋さんに行くと、「時価」と書いてありますよね。真鯛やヒラメだとかありますが、その時々の天気によっても変わるじゃないですか。人材市場も一緒だと思うんですね。
必要なスキルもどんどん変わっていますし、特にこのテック業界は流れが速い。ですので、どんどん新しい知識を身につけていかないと、自分がどんどん劣化しちゃうわけですね。例えば去年できていたことを、同じように今年できていた。これをマルとするかバツとするか、というところなんですね。
私はこれ、バツだと思うんですよ。つまり、市場は伸びているわけですね。特にIT業界はどんどん右肩上がりで伸びている中でいうと、この伸び率と自分の能力の伸び率が同じで、初めてトントンなんですよね。そこを上回ってバリューを出そうとすれば、その伸び率以上に自分を成長させていかないと、相対的な話で伸びたとは言えないわけですね。
なので少なくとも、昨日の自分よりかは今日の自分、明日の自分のほうがバリューがより出せているという考え方をベースに、じゃあどうすればいいんだろう? といろいろ考えた中で、体系的にどなたでもアクションが取れるようなかたちでまとめてみようと思ったのが『転職2.0』なんですね。
私が最も伝えたいことは、動けば動くほど成果が出るということ。つまり、どんどん転職した人が、すべてを手にできる時代が来ているということなんですね。
冒頭で「転職は手段だ」と申し上げましたが、例えば「やりがい」「年収」「人間関係」「会社の将来性」「働き方の自由度を高めたい」。いろんな要望があると思うんですが、これは今の位置にいる限りは、基本的には会社の言う通りになるんですね。自ら動いて行かない限りは、大きな変化は望めない。その手段として転職があると思います。
今まで、キャリアのオーナーシップを会社に預けていたんですよね。終身雇用は、新卒で採用されたあとに会社がいろんな機会を提供してくれて、その中には教育もあるんでしょうし、OJTというかたちで現場で学ぶこともある。もしくは転勤や異動というかたちで、いろんなキャリアを会社の中で積ませてくれる。
これはこれで非常に素晴らしいことですし、これまでは非常によく機能していたんですね。ただ、会社がそれができていたのは、終身雇用で20〜30年、長くこの会社にいることがわかっているから、そのような投資ができていた。
今、会社のほうが「終身雇用が難しい」とギブアップしていますよね。ただ、慣習としてずっと終身雇用があって、「会社に尽くす」「会社の言うことを聞く」というのが残っちゃっているんですよね。
前提が変わっているので、キャリアのオーナーシップを会社じゃなくて自分に取り戻す作業。これがまさに『転職2.0』の肝でして、自分を主体に考えた時に、キャリアをどういうふうに積めばいいのかと、そのために手段として転職がありますし。
もちろん転職をしなくても、自分から動いていくことによって、自分が望むキャリアをつかめるようになる。これが、私がこの本の中で一番伝えたかったことですね。
これを読んだあとに私が期待している行動の変化は、まずはマインドセットですね。冒頭に言った5つの考え方、行動様式の中でいうと一番意識していただきたいことは、自身を徐々に外に出していく作業ですね。
例えば転職活動したことがない方であれば、今のお給料が相場と比べて高いのか安いのか、わからないですよね。こういうことは比べてみて初めてわかるわけですね。なので、これは転職活動をする気がなくても、別に転職サイトに登録するのもいいでしょうし。
もしくは、キャリコンサルタントの方と会話をするでもいいでしょうし、なんなら昔の同級生とか同業で働いている方がいれば、お互いに言える範囲でなんとなく「どれくらいもらっているの?」みたいな感じで言うことによって、初めて外の目で自分の正しい立ち位置がわかるんですね。
この目を持つのがとても大事で、私は本の中では「自分の時価総額を意識しなさい」と言っているんですが、“株式会社自分”というものがあるんだとすると、その時価総額を知ること。
そして外にアピールしていく作業は、上場企業であればIRみたいなものです。要は、自分という商品をより広く知ってもらうことで、時価総額を上げていく作業に他ならないわけですよね。そのためには、自分という商品を“株式会社俺”が売るのであれば、どういったものであれば引きが強いのか? ということですね。
自分に対してどういうタグを付けるのか。みなさんもインターネットのサービスで「ハッシュタグ」というのを聞いたことがあると思うんですね。ハッシュタグを自分に3つ付けてみましょう。
昔であれば(私は)「モバイル」というタグが付いていたわけですよ。ただ今は、このタグを外しちゃってるんですよね。もう世の中モバイルが当たり前になりましたし、珍しさもないので。僕は市場と比べて「このタグは2軍に落とそう」とか「1軍に上げよう」ということを頻繁に行っています。
今は「働き方のオピニオンリーダー」という立ち位置を取りに行こうとしていますし、またはグローバル企業の日本のヘッドということで、「海外の事情に詳しい」みたいなタグも新しく付けているわけです。
なので、まずご自身がやられていることにタグを付けて、それを周りに染み出していく。SNSで発信するのが怖ければ、まずは身の回りの人に言ってみましょう。そういう場合、「お前はそう言っているけど、こんなタグがあるんじゃない?」「こんな内容もあるんじゃない?」というのを、他の人に他己紹介をしてもらうと一番いいんですね。
「俺のことを紹介するならば、どういうふうに説明する?」と言うと、自分では思いもよらなかったようなものが見つかることがあります。「人ってそういうふうに思っているんだ。それって気付かなかったけれど、自分の強みかもしれない」。そういったことを、このような作業を通じて見つけ出していただきたいと思っています。
実はこの本、フルリモートで出版しているんですよね。しかも今まで会ったこともない、面識のない編集者の方からの飛び込み企画がオンラインで来て、そこから始まったという意味では、非常に珍しいのかなと思います。
これ、ある日LinkedIn経由で、企画書を添付してメッセージをもらったんですよ。ちょうど1年前の4月の終わりぐらいだと思うんですが、1回目の緊急事態宣言が出たくらいの時に、「こういったアングルで、ぜひご一緒できませんか?」と言って。
企画書を見たら、けっこう僕のことを調べてあっていいアングルだったので、「これ、おもしろいんじゃないか」と思って。対面できないのでオンラインで会議をして、「初めまして」と言って始めたんですよ。そこから2人で企画を練っていって。
しかも本を作るのに、我々はロジックツリーみたいな感じで、非常に理系っぽいアプローチで「こういうアングルがいいんじゃないか」と作った上で、実際に言語化してくださる方も入れて。数カ月間、毎週のようにミーティングをして、実際に本が出るまで対面で会ったことがないという、新しい様式での出版にチャレンジしたという、ちょっとした裏話なんですが。
この本、(装丁が)非常にきれいなグラデーションになっているんですが、これもけっこう珍しいというか、やはり自分の思いの中で、働き方に関して今までの固定化した価値観がすごく根強いんですよね。「いい会社に入ってナンチャラ」というのが。そうじゃなくて、今っていろいろ十人十色じゃないですか。
価値観が多様化しているならば、それぞれグラデーションだよね。働き方に関しても、それぞれのキャリア、何がいいと思うのも個人のものなので、これを表すにはやはりいろんな色があっていいんじゃないかということで。白ベースに黒字のキャリア・ビジネス本が多い中で、あえてカラフルな働き方をみなさんにしてほしいという思いも込めて、こういった色とりどりの本にしました。
最後に私のメッセージとして、「みなさん。今、働いていて楽しいですか?」という問いかけをしたいんですね。私はずっと働いていて楽しくて、非常にワーカホリックと言われているんですが、やはり働いていて楽しいほうがいいじゃないですか。
人生100年あるとしたら、少なくとも70〜80年働くわけですよね。日本の会社の平均寿命って、だいたい25年と言われているんですよ。ですので自分の社会人人生よりも、会社の平均寿命のほうが短いんですよね。
だとしたら、会社が潰れたら職を変わらなきゃいけないじゃないですか。強制的にでも、2~3回は必ず転職する時代になってしまっている。この現状を把握した上で、自分で決めたほうがいいじゃないですか。
「明日、会社が潰れます」と言われて「あぁ〜……」となるよりかは、自分で望む働き方を探して、自分から動いたほうが気持ちいいし働きやすいですし、何より楽しいじゃないですか。
今までもいろいろ申し上げましたが、最終的には日本において、楽しく生き生きと働ける人が1人でも多くなったら、この社会はもっと良くなりますし、ひいては日本企業の元気が出てGDPも爆増する。こういった未来を望んでいるわけですので、みなさんも今日から行動に移してもらえたらうれしいなと思います。ありがとうございました。
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