2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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村瀬龍馬氏(以下、村瀬):そうやって(出社前提ではなく、オンライン前提でキャリアを組むと)なってくると、みんなが転職を考えた時に「基本フルリモートの会社じゃないと転職しない」という意思表示でもありそうじゃないですか(笑)。ということは、各社絶対にフルリモートでの採用は続けなきゃいけない気がするんですけど。
地方の採用もそうかもしれないんですけど、フルリモートの採用は今後強化されていくのか、それとももとから強化している勢なのか。あんちぽさん(栗林氏)のところはどうですか?
栗林健太郎氏(以下、栗林):GMOペパボの場合は去年からフルリモートの採用をやっていて、今後も続けていきますね。ただ当然ですけど、集まってなにかをする機会は季節ごとのポイントポイントで設けたいと思っているので、そこは参加してもらう前提の中です。一定の制約というか前提条件がある中でのフルリモートは、今後も進めていくことになるのかなと思います。
村瀬:出社指示がたまにあるかもしれないということですか?
栗林:いきなり指示というよりは四半期の報告会とか、年末の納会みたいなものには基本出ましょうという感じですね。
村瀬:集まってワイワイしたいということですね(笑)。
村瀬:長瀬さんのところはどうですか?
長瀬慶重氏(以下、長瀬):サイバーエージェントは、昨年3月に東京都より外出自粛要請が出て、全社員に対しリモートワークが推奨され、その後緊急事態宣言が解除された5月に代表取締役社長の藤田がブログに「これからの働き方について」というテーマで投稿したんですけど。
基本的には「リアルでコラボレーションして一緒に仕事をすること」が会社の競争力であると捉えているので、週に2回(月・木)はリモートでそれ以外は基本出社というハイブリッドでいきたいというのを会社の考え方にしています。基本それに則って、賛同してくれる方を採用したい考え方でいますね。
村瀬:それは「ハイブリッドのほうがきっといいだろう」という仮説のもとなんですか?
長瀬:はい。結局、今までの人間関係の資産ですべてが成立しているということが、今回わかったことなんじゃないかと僕らの中では感じています。そこで新しい社員とかメンバーが入ってきた時に、どうチームワークを成立させるかがけっこう大事かなと思っています。そういう部分で、「余白」とか「コミュニケーション」の大事さは会社の根幹かなという話をよくしていますね。
村瀬:いい話ですね、余白。余裕もあってみんなが入りやすい会社にもなりますしね。ネコカクさん(小林氏)のところはどうですか?
小林篤氏(以下、小林):フルリモート前提での採用は実はまだやっていなくて、基本的に業務上どうしても集まらなきゃいけないとか、そういうのがあれば必ず会社に来てくださいねという前提のもと地方の方を採用するケースはあるのかなと思っています。
やはりエンジニアの採用市場は東京で寡占している状況もありますし、地方でも優秀な方が多くいらっしゃるので、そういった方たちが活躍できて、かつ、例えばDeNAでやっている事業に対してすごく興味を持って、そこにコミットしたいという方がいらっしゃるのであれば、その方がどういう働き方ができるのかを含めて、個別に事案も含めて調整しながらやっていく感じですかね。
村瀬:ちなみに各社さんでこのフルリモート体制採用とか、「出社してくださいね」も含めてどこに情報をオープンにしているものなんですか? 単純な興味なんですけど、長瀬さんのところはどうですか?
長瀬:社員に出しているものですか?
村瀬:社員とか、あとは転職活動したい人とか、採用されたい人からすると「この会社はどのぐらいリモートオッケーなんだろう?」みたいなことはどこで開示をしているんだろうと思って。
長瀬:確かにオフィシャルなところには出ていなくて、基本的には「フルリモートじゃないと嫌だ」というエンジニアの人たちにそんなに出会ったことがないので、採用プロセスの中できちんと説明させていただいていますね。
村瀬:なるほど。nekokakさんのところはどうですか?
小林:まったく同じですね。開示するというよりは、コミュニケーションの中でどういった働き方を望まれているのかとか、それを会社として受け入れられるのかを話をして決めていきますね。
村瀬:あんちぽさんのところもそんな感じですか?
栗林:メディアでけっこう出していたり、GMOペパボの場合はリクルーティングのサイトで出していたりします。そこは「そのフルリモートの条件で」と来る人もいれば、そうではなくて「会社に行く時があれば行きますよ」という人もいれば、いろいろですね。ただGMOインターネットグループ全体としては、どこの会社も完全にフルリモートで採用しているというわけじゃないので、そこは会社によるのかなと思いますね。
村瀬:地方に引っ越しちゃった人が転職活動をしようとすると、とりあえずそれっぽい会社を探して、面接で「こんな働き方をしたいんだけど」とか、「月1回だったら出社してもいいけど」とかを話してくれると思うんですけど、会社側はそれを聞いて調整しながらやるということなんですね。
ただ基本的に「何の成果を残すか」もけっこう重要だったりするんですよね。リモートになってからは、ほぼすべてオンライン面接になったと思うんですけど、応募者のどこを見てますか? 新しく見るポイントは何かできましたか? nekokakさんのところはどうですか?
小林:基本、エンジニアの新卒と中途の最終面接は全部僕がやっているんですけど、あまり見るところは変わらないかなと。むしろ、より「ちゃんとコミュニケーションが取れるのか」というところと、Zoomで面接するんですけど、ごく稀に「チャットでやりましょうか」みたいな感じで、「テキストコミュニケーションがスムーズにいくか」を見たりすることはあります。
やっぱりオフラインで会っている時に「チャットでやりましょう」となかなかできないので、そういうのは面接の手法としてやりやすくなりましたね。
村瀬:あんちぽさんのところはどうですか?
栗林:見るところはあまり変わらないなと思うんですけど、ネコカクさんがおっしゃったように、コミュニケーションのところはより着目をしています。変わったというよりは、そこをより深く見るという話だと思うんですけど。
栗林:僕が重視しているのは、例えば技術的なスキルはしっかり学べば身につくものだと思いますし、コミュニケーションスキルと言うと「コミュ力」みたいになってちょっとよくないんですけど。もうちょっと分解して、「なにかを論理的に説明できる」とか、「情熱を持っているものがある」とか。あるいはベタな話だけじゃなくて「コンセプトから理解できて説明できる」とか。
そういう系の話をまとめて「コミュ力」と言っていると思うんですけど、けっこうそこを深堀りしています。そういう質問をガッと掘ってみて、「ちゃんと受け答えできるな」というのはかなり見ていると思いますね。
村瀬:なるほど。オンラインでもオフラインでも、うちの会社もそこが重要だなと思いながら採用活動をやっていますね。長瀬さんのところはどうですか?
長瀬:僕らは会社のエンジニアの評価制度の中に、いわゆる技術的な習熟度以外に、「オーナーシップ(主体性)」と「フォロワーシップ」を明確に定義しています。その内容を各グレードごとに、明示的に高さを設定しているようなイメージなんですけど。
なので「オーナーシップを持って取り組む姿勢があるか」とか、周りをサポートしたり応援するような「人間的なコンピテンシーを持っているかどうか」というところを、よりZoomで面と向かって話すようにはなりましたね。
村瀬:なるほど。面接は各社大変そうですね。
長瀬:増えましたよね。
村瀬:うちにも今まで「調べる力があります」とか「なにかあったら調べます」みたいなアピールポイントの人がいたんですけど、「ちょっと今ググってみて」ということができるようになったので良かったです(笑)。あとは録画前提でしゃべるとか。もともと悪いことは言っていないんですけど。
面接中に周りに人がいて協力されていても、途中でググられていてもチャットしても、でも普段の仕事はそもそもそうじゃないですか。だからオンラインだからオフラインだからは関係ない。ただオンラインの場合は僕もいろいろ手助けができちゃうので、そういうのを踏まえて面接をやっています。けっこう「オンライン面接楽しいな」と思っていますね。
村瀬:あとは働き方的な話で言うと、健康面とか労働管理とか、そういうお堅いところを見ていこうかなと思います。コロナ禍になって、健康面とかのサポートって各社なにかやっていたりしますか? うちは産業医を強化してみたんですけど、今までと変わらずですか?
小林:例えばDeNAの場合はCMO(チーフ・メディカル・オフィサー)という役割の人とかCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)という役割の人がいて、従業員の健康のために「医学的な観点からこうだ」とか、「リモートワークが多くなっている中でこういう事例がありますよ、なのでこういうところに気をつけましょう」とか。
あとはコミュニケーションが必然的にオフラインと比べて減ってくるので、雑談のコミュニケーションとか、「そういうケアをちゃんとやったほうがいいですよね」とか、「定期的にメンバーと話していますか?」とか、「世の中がこうなっているから、こういうことを気をつけましょう」とか。そういう声がけをしています。
最近だとコロナ太りと言われているような体型の変化があるんですけど、そういう「心身ともにいろんな悪影響が出てくるので気をつけましょう」ということを社内で告知をしたり、マネージャー向けに発信をしたり、そういうことをやっていますね。
村瀬:すごく徹底している。そこまではうちもやっていないかもしれない。
長瀬:CHOが「はじめちゃん」というんですけど、すごく元気よくて。例えば勤務時間が規定より超過していると、該当社員の上司に対して「ちゃんと改善するように」というメッセージが送られるとか。
あとは「GEPPO」という、全社員が月に1回回答する「コンディションのアンケート」があります。そこで個別の問題をキャッチアップして潰すというのをやっています。案外コンディションの問題はブラックボックスになるので、そのブラックボックスをとにかく透明にするという取り組みに力を入れていますね。
村瀬:あんちぽさんのところはなにかやっています?
栗林:前提として、コロナ前から一貫して、エンゲージメントとか「健康についてどうですか」とか、そういうものをクラウドサービスを使ってずっと定点で取っているんですね。なのでそこでの健康についてのパラメーターもあるので、そこを見ながらどうなのかなというのを測っていますね。
リモートになってからも変化がないかを時系列で確認できます、という前提で。それに加えて、運動不足になるので「運動タイム」を作って、30分時間を取って運動をしましょうとか、スラックのチャンネルにみんなで集まって「じゃあストレッチするか」とか、そういう細々した制度面と実際の運用面とで、けっこうおもしろくやっています。
村瀬:出社前のラジオ体操みたいなものですかね、おもしろい。時代がどうなっているのかわからないですが(笑)。
そういえばうちも週1でオンラインで実施している全社朝会のときに筋肉体操みたいな動画を流していますね。人事とクリエイティブのメンバーで制作した動画を流していますけど、みんな運動が必要なんでしょうね。なるほど、各社めちゃくちゃやっているな。
そういう意味では、労務管理はそういうコンディションの部分を見ているんですか? もちろん「成果」は別の話だと思うんですけど、「労働の時間」なのか「健康面」なのか、さっきのエンゲージメントみたいに、コロナ以前・以後で数値的に大きく変わったことってあります? あんちぽさんとか。
栗林:健康を損なったら生産性に響いてくると思うので、健康面だけじゃなくて生産性の指標みたいなところもあるとは思うんですけど、GMOペパボの場合だと、例えばGitHubでいろんな人が活動しているんですね。それはエンジニアだけじゃなくてデザイナーもディレクターもCSの人もGitHubでイシューを立てて、みたいにやっているんですね。
なのでそのマージ数とかコメント数とか、いろんな指標をバーっと見ていって、定点でコロナ前と去年と今とで比較したんですよ。かつ各サービスとか各職種、あとはパートナーの等級別に見ていったらサービスとかだとあまり変わらないなとか、職種でいったら変化があるなとか、そういうところで見たりして、結果的に生産性のところがどうなるのかなという指標を追ったりもしていますね。
村瀬:すごい。そこまで見ているとは思わなかったです。
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