2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:グロース・キャピタル株式会社
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野村広之進氏(以下、野村):日本の環境の悪さだけを嘆いていてもしょうがないというか、嘆きたい気持ちはグッとこらえて(笑)。次のテーマに行きましょう。課題はあるけれども、どうやってこれを乗り切るのかについて、少し聞かせていただきたいと思います。
今度は早川さんから話をうかがいたいと思います。先ほどいただいたヒントとしては、やっぱり資金調達のやり方のところですよね。その手法で、例えば「デットもあります」という話がありました。たぶんデットと絡むところだと、使途みたいなところに工夫できる余地があるんじゃないかと思います。
その他のポイントでも構わないです。先ほどよく出ていた話題としては、コミュニケーションをどうやるかというのもありました。なかなか万能薬はないなとは思うんですけども。
特に投資先行型だからならではのつらいところも、さらにあります。「日本だから」と「投資先行型だから」ですね。その中でどうやって困難を乗り越えてこられたのか。ちょっとヒントをいただけないでしょうか。
早川研介氏(以下、早川):資金調達で言うと、やはり最初に考えていたところは「何に資金を使うのか」。それを「どれぐらい使うのか」というのは、社内でしっかり検討していました。例えば我々の場合だと、単純に製造業なので事業が伸びてくればそのぶん仕入をしないといけない。単純に運転資金がどんどん増えていくっていうところがあったりします。
あとは今後、機体開発みたいなところでどうしてもハードウェアに投資をしなきゃいけないとか、もしかしたら海外展開で投資が必要かもしれない。そういった「何にどれぐらいお金を使うのか」は、常に全社の戦略として考えています。その中で、じゃあファイナンスがどのぐらい必要なのかっていうのは検討していました。
早川:その中での資金使途で言うと、どこから持ってくるのか。それはデットがいいのか、それともエクイティがいいのか。それともオプションとしては、お客さんと一緒に共同開発をやって、そこからお金をもらうのがいいのか。そこはコストもありますし、規模もあると思うんですけど、そこのバランスをしっかり考えるというところですね。
やっぱりベンチャーだとエクイティが主流にはなると思うんですけど、そのエクイティを取る時にも、どこに割り当てると一番目線が合うのか。我々この6月に日本郵便さん、日本郵政キャピタルさんと資本業務提携をして、7月に日本郵政キャピタルさんから30億のお金をいただきました。そこでは、より中長期的な開発を進めていくというお互いの目線が合っていました。
その時一緒に考えていたのは、それこそ海外投資家にABB(Accelerated Book Building:事前に公募株式を購入する投資家を見出した上で、公募増資実施の公表とほぼ同時に証券取引所での取引を開始する方法)でお願いできないかだとか。
当然ワラント(新株予約権)についても考えていく中で、今回の資金調達の使途であれば、やっぱり事業会社さんで一緒にやってくれるところが一番自然なかたちなのかなと思っていて。そこは、どこにどう持っていただくかというのは常に検討しています。
最後、ポイントになるのかわからないですけど、やっぱり常にどれだけ準備しているかにあるかなと思っていて。準備っておそらく2つあって、社外へのコミュニケーションと、あと自社内でどういう判断基準を持っておくか。
社外については、「今後、資金調達が必要なのか」っていう質問が投資家からあった時に、「海外展開する時にお金が必要かもしれない」「開発を加速させる時に必要かもしれない」「運転資本についてはエクイティでは必要ない」など、どのポイントでどのぐらいのお金が必要になるかについて常にコミュニケーションして、あんまりサプライズにはならないように常に気をつけていたっていうところが対外的なところとしてあります。
自社内で言うと、どのタイミングだったらどんな業績が出て、海外の人たちがちゃんと投資するに十分値する情報が出せるのか。そこで「この資金調達手法でいこう」なのか、それともデットだったら外には出ないので、とにかく早くやっていこうだとかは、自社内のリソースと外に出ていく情報も含めて「いつまでにこの情報が出て、こういう業績が出せて、かつ株価が我々が納得できる水準だったら、こういうディシジョンをしよう」と常に、社内で取締役会も含めて合意を取っています。
今回はその結果として調達ができたところが非常に良かったのかなと振り返っていますね。
野村:なるほど、非常に納得感のあるお話です。まず誰にどういうかたちで当てはめるのか。その選択肢は投資家の中でもあるし、先ほどのキャピタルさんも広義では投資家ですけれども、そういったところもありますという話ですね。
あと、クライテリア(判断基準)を明確にしておく。これ、僕は聞いていて今初めて大事だなと思ったんですが、それをどういう段階で、どのぐらいかを言えるかはわからないですけど、「どういう段階で必要になる可能性があります」という話を投資家とふだんからしておく。ジェネラルなディスカッションの中でっていうことだと思うんですけど、それは非常に大事かなと思いました。
これは我々の会社も含めて、なかなかバイオベンチャーでもできてるところが……(笑)。開発資金は常に必要な段階になってしまっているので。でも、非常に良い視点だなと思った次第です。
野村:同じテーマでのポイントについて、今度は岡島社長にお話をうかがいたいんですけども。
岡島正恒氏(以下、岡島):我々の会社が早川さんのところと違うのは、基本的にデットで資金調達っていうのが開発段階では難しいっていうところを考えると、やっぱりエクイティに限定されているということで。
エクイティは「タイミング命」みたいなところがありますから、いろんな調達手法は常に手元で検討してカードとして持っておいて、どういうタイミングでそのカードを切るかを常に考えていくことだと思うんですよね。
たまたま今、私の会社には100億近いキャッシュがあって、6年分以上の開発資金があるので、今すぐ何かしなくていいっていうのはもちろんあるんですけども。とはいっても、常に最新の情報を仕入れて動ける時は動かなくちゃいけない。冬の時代が来た時に何年間耐えられるんだろう、みたいなところを常に頭に置きながらやっています。
野村さんの会社がされた資金調達も、いろんな投資銀行が「こういうのありましたよ」って話をしにきた時に、常に聞いて新しい情報をアップデートしておくっていうことではないんでしょうかね。
野村:まさに備えあればというか。お話としては「必要じゃない時もちゃんとアンテナを張って、より良い方法を考えろ」という自分に対する戒めと、そのとおりだなと思うところがあるんですけれども(笑)。そういうようなところは大変ポイントになりますよね。
野村:小林さんはいかがですか?
小林直樹氏(以下、小林):研究開発型企業にとって「望ましい投資家」って言ったら失礼なんですけども、一番バイオテックのことを理解しているし、長期的視点もあるし、成功パターンを知っているといった観点で言うと、これはもう間違いなく海外の機関投資家さんですね。そこの層を株主に増やしていかなくちゃいけないっていうことは意識しています。
どうすればそれができるのかということで、MediciNovaさんみたいにアメリカの会社であればもちろんダイレクトにできるんでしょうけども、じゃあ日本の東京証券取引所に上場してる会社として何ができるのか。私が今考えているのが、例えば我々は「CRISPR-Cas9」という、世界基準でノーベル賞も昨年取ったゲノム編集や遺伝子治療薬という、わりとホットな領域です。
NASDAQにこれをやってるコンプス(類似会社の比較)として、「CRISPR-Cas9コンプス」みたいな会社も3社ぐらいいたり、その応用型の類似会社も1社、2社あります。その会社を徹底的にベンチマークして、どういう投資家がそこに投資してるんだろうとか、どういうIRをしてるんだろうとか、できる限りの情報を集めて正しいアプローチの方法を模索しています。
要は「我々の会社って、この会社と同じようなビジネスモデルなんですよ」と。「同じようなサイエンスの仕組みの中でも、ここだけ新しいオリジナルを作ってやってるんですよ」と。ですので、比較できれば誰もがわかる。海外の機関投資家にとってわかるモデルと、自分たちの会社のモデルにどれだけ類似性があるか、比較検討できるのか。そういうところを具体的に訴求していくことも、戦い方としてはあるのかなと思っています。
小林:野村さんがお辞めになったみずほ証券さんが発行されるバイオマンスリーでも、実は都築さんにしっかりとその辺りをレポートにしていただいています(笑)。
先行しているNASDAQのゲノム編集系の会社とモダリスとを比較して、もちろん乖離もあるんですね。マーケットキャップのギャップです。でもその乖離が一体何なのかっていうのを、「本当だったら同じぐらいになっても不思議ではないですよ」とちゃんと我々も説明できるようにしておく。その3社のうち2社は、マーケットキャップがもう1兆円を超えてますからね。
野村:はい(笑)。もう10倍ぐらいの値段がついてますよね。
小林:そうですよね。なのでそれが「まったく同じです」と言いたいわけじゃなくて、「ビジネスモデルとしては同じなんですよ」と。だから自分たちも積極的にその違いを解消するためにコミュニケーションしています、Zoomならばすぐにつなげられますので。
そういったところできっちりと、自分たちはちゃんとここにいて、こういうことをやっていて、NASDAQの会社との違いは何かをきっちり説明していって、それを地道に繰り返していくことも、それはそれで必要だと思います。今は一生懸命それをやってるっていうところですね。
野村:まさに最初にディスカッションをさせていただいたコミュニケーションのところですよね。一番ベースになっていると。その中で小林さんが最初におっしゃった「難解で最前線だ」って、たぶん技術をどんどん詰めて話していくと難解・最前線になるんですけど、ちゃんと適切なコンプスがいたり、完璧に比べられないまでもその差分だけ解説してればよければ、「ここはこのぐらいです」とわかる。
詳しいことはちょっと置いておくとしても「うちはこのぐらいです、この差分なんです。これはおかしいよね」という説明は、とっても納得感があるコミュニケーションの取り方なのかなと思います。ここはやはり工夫のしがいがあるところですよね。
野村:ちょっと台本から脱線して申し訳ないんですけど、早川さんに1個だけやっぱり聞きたかったことがあって(笑)。先ほどの「いろんな手段を検討する」って、これはすごく大事だと思うんですが、その見せ方について。
これは例えばですけど、「銀行さんの融資に関しては、使途とか使い方についてこういうふうに言える。でもこっちに対してはやっぱりこう説明したほうがいい」とか、それぞれ手段があるかと思います。
「選択肢をいっぱい持つことが大事です、そこにメリット・デメリットあります、考えて選びましょう」という話の中で、なにか具体的にヒントになることがもしあれば、いただけないかなと思ったんですが。
早川:そうですね。どの相手にどこを強調して伝えるかっていうところで、全部のストーリーを伝えるっていうのは常に意識しています。将来海外展開もあり得ます、開発を加速させることもあり得ます、運転資金でこういう悪いケースだったらこのぐらい資金を使うケースもありますっていう中で、やっぱり各プレイヤーによって見てるところが変わってくるかなと思っていて。
銀行さんであれば、やっぱり「潰れないよね、この会社」っていうところがあるので(笑)。けっこう強調させてもらったところで言うと、「いやいや、我々は2年前に黒字化してます」「去年はあえて投資を加速させてるんで赤字になってます」、「売上がこのぐらい立てば、最悪絞れば」……「絞る」っていうのは人の部分じゃなくて、外注の部分だとか。「そういったところをちゃんと絞れば黒字にできますよ」っていうところを、かなり強調したりするようにしています。
早川:あとエクイティで取る際は、やっぱり「将来どれだけ伸びるか」が大事になってきます。海外の投資家も含めて、ふだんのIRで意識してるのは、良くも悪くも直近の業績をすごい細かく聞いてくるということ。
先ほどもありましたけど、四半期でなにか大きく変わるわけではないので、将来的なところを伝える。「マクロトレンドとしては変わってないですよ、こういうふうになってます」っていうところは、常にコミュニケーションするように意識していました。
今回の事業会社さんっていうところのポイントで1つ言うと、ここはもう会社さんによると思うんですけど、我々の実績として「将来ちゃんと伸びますよ」っていうところじゃなくて、一緒にこれまでやってきて「こういう実績ありますよね」って伝えることがやっぱり大事かなと思っていて。
我々は日本郵便さんと4月からお話しさせてもらってるんですけど、付き合い自体は実は3年以上前からあります。そこのコミュニケーションがしっかりあるからこそ、このすごく短い期間でも意思決定いただいたので。先ほどのお話にも重なりますけど、本当に地道にコミュニケーションをしておいて、最後の調達の時には「どこに力点を置いてお話しすると納得していただきやすいか」を優先順位づけしていったかということです。
野村:なるほど、ありがとうございます。確かにデットで銀行が求めることと、エクイティでアップサイドを狙っていく方々が求めることに、すごく違うところはあるなというのはそのとおりですよね。個人的にもとても思います。
野村:お時間もだんだん迫ってきて、残り10分ちょっとなんですけれども。今日ご用意したテーマの3つ目がこちらです。
今日のテーマでもあるんですけど、ファイナンスだけ見ているという、ここだけを切り取ってなにかを語るって、僕は少し違うところもあるんじゃないかなと思っていて。やっぱり全体の中でどうファイナンスを位置づけるかっていうのはあると思っています。
もうお話に出てるんですよね。ふだんからコミュニケーションしておいて、タイミングを計ってっていう。その一連の流れがまずあるなというところで、その一連の流れがたぶん戦略とか、全体の事業計画と紐づいてるところがあるなと思うんですけれども。
もう1つ、個人的に最近思ってることで、ファイナンスってみなさん「今回のファイナンスは成功でした」って言うんですけども(笑)。みんな「成功」なんですよね。「失敗しました」って言わないと思っていて。そういう意味でも、どういうところを成功・失敗と呼ぶのか。それはこのテーマにあるように、企業全体戦略と紐づいた成功・失敗であればきれいかなとも思うんですが。
そうじゃなかったとしても、たぶん別の視点もあると思うので、ちょっとその成功・失敗の話も含めて、どう全体とのバランスでファイナンスを考えてらっしゃるのかについてコメントをいただきたいなと思っています。岡島社長からよろしくお願いします。
岡島:まず、「誰から見ての成功・失敗か」というのがあって。企業からしてみると、やっぱり上場している会社であれば、株価が高いところで資金調達できるのはダイリューションの面でも、あらゆる面でたぶん有利なタイミングなんですよね。ただ投資家から見ると「えらい高値で株を買わされたな」ということになる。
今もやってるかはどうか知らないですけども、よく日経ヴェリタスで「ベストディール・ワーストディール」みたいな特集があります。あれって、投資家から見たベストディール・ワーストディールで、実はワーストディールが企業にとってみるとベストディールだったりするケースもあると思うんです。
そういった意味で何が成功かっていうと、我々のようにやっぱり資金が必要な会社は、資金調達ができたってことは基本的に成功と考えていいんだと思うんですよね。もちろん目標としてる金額が取れたか取れなかったかで、成功・失敗っていうのはもちろんあるんですけれども。
あとこのテーマの話でいくと、やっぱり全体戦略ってことを考えると、もちろん開発というものがあって「ファイナンスが後手後手に回っちゃいけない」というのは常に考えています。要は追い込まれてからのファイナンスは足元を見られますし、非常に不利なファイナンスしかできない。本当に必要な時に取ろうと思ったら、環境が悪くて取れないこともあります。
ファイナンスっていうのは、開発先行型じゃなしに本当に安定してる企業が設備投資でお金を取るっていうのとは、ちょっと違っていて。我々のファイナンスは常に先回りして動いていかないといけないものだと思ってます。だから、後手に絶対回っちゃいけないと常に意識してるという感じでしょうかね。
野村:なるほど、確かにそうですね。後手に回ってファイナンス取れなくて、成長に対する投資ができないのは一番の失敗なので、っていうことですよね。ありがとうございます。
野村:小林さんはいかがでしょうか。
小林:私も岡島さんと同時期に、“日本のバイオベンチャー暗黒時代”を生き抜いた者としてはですね(笑)……正直「資金が取れれば万々歳でしょ」っていうのが、第一義的にはあるんですね。資金が取りたくても取れない時期って、リーマンショック後とか続きましたので。それでバタバタ倒れてしまった仲間もいます、ということを考えればそうなんですが。
今のご時世でいろいろ条件も変わっていく中で何があるかなと思った時に、私は非常に僭越なんですけども「どういう株主から調達したの?」ということがあります。先ほどの話ですと、例えば海外の機関投資家とか、あるいは海外の有力なファンドから調達したのか、あるいは製薬会社と資本提携して調達したとか、やはり株主の特性によってもいろいろあります。特に研究開発型の場合は、誰が後ろ支えしてるのか、どれだけしっかり安定した投資家か、事業を理解した投資家が入ってるのかっていうところが重要です。
これが「マーケットでばらまきました」ってなってしまうと……研究開発型の場合は個人投資家の方があまり増えていくと、やはりボラティリティが高くなる問題ですとか、当然発生しますので。株主構成を意識することは、研究開発型の場合には避けられないテーマだと思います。
研究開発型という今日のテーマなのであえて言わせていただくと、それを本当に理解して支える、あるいはいろんなアナウンス効果があるような投資家さんに入っていただけたのかどうかっていうところは、やっぱり会社の事業を伸ばしていくっていう部分でも、レピュテーションという部分でも、いろんな部分でプラスの要素が多いのかなと思います。そのあたりがちょっとポイントかなと思いました。
野村:なるほど。ともすると我々は、目先の金額とかちょっとした条件……それは数パーセント以下の違いだったりしますけど、そういった条件とかに惑わされます。でも、確かにそうですよね。誰がついているのか。そこはもう、非常によくわかりますというか、そうですよね。ここの視点は、私も欠けてる時があるんですけれども(笑)。非常にありがたいです。
早川さんはいかがですかね。ポイントと、全体戦略を見据えてということなんですが。
早川:お二方がおっしゃったとおり、まずはファイナンスなので、お金を集めるところが第一義的な目的としてあって、それをいかに達成できるかっていうところかなと思っていて。
全体戦略で言うと、岡島さんからもありましたけど、後手後手にならないように。「後手後手に回ったな」って見られることは、やっぱりマーケットで多少そういう影響もあるかなと思います。
あらかじめ決めていた計画としてちゃんとそれが実行できてるのか、それに対してなんらかズレがあったのかっていうところで、自分たちの思い描いてたものと実際のファイナンスがどれぐらい離れていたのか。時期なり金額なり、それこそ持っていただく株主の方であったりをあらかじめ想定しておくと、あとで振り返った時に「あれは成功だったね」って思える。
周りからどんなことが言われても「いやいや、あれは我々狙いどおりだったね」って言えるのかなっていう、精神衛生上のメリットは1つあるかなと。そこで自分たちで基準を持っておくのは、周りから言われてもちゃんと安心できるっていうところでは1つポイントなのかなと思いましたね。
野村:なるほど、ありがとうございます。
野村:これでテーマとしては最後まできたんですけれども、実はQ&Aを事前にいただいておりました。3問いただいているのですが、本当におもしろいぐらい同じような内容だったので、ここでまとめて質問させていただきます。時間もないので、一言ずつかと思うんですが。
まず「スケジュールが見えにくいでしょ」っていう議論があります。研究開発型ベンチャーなので、予測が立てにくいですと。一部、ヒントはもういただいてるんですよね、例えば「コンプスでやって説明しましょう」とか。個別の議論に持ち込まず、っていうところもあると思うんですが。
このなかなか見えにくいスケジュール、特にバイオベンチャーは顕著だと思うんですけれども、ここをどういうふうに説明していくのか。時間も少ないので、岡島さんと小林さんにおうかがいしたいんですが。
岡島:なかなか難しいですよね。今みたいに競合他社があるというのはすごくわかりやすいんですけども、まったく世の中にないものを出そうとすると、やっぱりそれを本当に投資家に理解してもらえるかっていうところは……。さっき小林さんも言ってたとおり、例えば共同研究とかライセンスしてる先が自分たちの会社のパイプラインというか、導出したものをどう評価してるかを、「大手の製薬会社がこう評価してんだから、これは価値があるでしょ」ということで、それを持ちながらファイナンスをしていくっていうことになるんだと思うんですけれども。
あとはもちろん名の通った機関投資家にお金を出してもらうというのも重要なんですけれども、とはいってもやっぱり日本の市場自体、個人投資家が支えてるという部分があるので。いかに個人にわかりやすいレベルまで降りてきて、個人投資家のファンを増やすか。この流動性を使いながらファイナンスをしていくと、スケジュール的にも流動性を持たせることができるというか、自由度が高まるので。それも合わせながらやっていくしかないのかなと思います。
やっぱり王道でいくと本当に取れないっていうこともあるので、かなりミックスしてやっていくしかないかなと。それによってスケジュールの自由度が高まるということじゃないんでしょうか。
野村:ありがとうございます。確かにそうですね。小林さんはいかがですか?
小林:バイオの場合はサイエンスが難しいってなるんですけども、ビジネスモデルは必ずしも難しくないんですね。ですから、サイエンスのほうにあまりシフトしない。ビジネスモデルっていうのは例えば、どんな薬であっても薬事の申請とか、厚労省になにかを申請して許諾を取るとかって流れは同じなので。
我々がやってるのは、新しい創薬技術(モダリティと言います)だとどれだけ短縮されるのかとか、どれだけ効率的なんですよということを、比較の中できっちりと説明していく。「もちろんこれからの薬なのでわからないけれども、我々はこう思っています」というのを、しっかりと我々としてもガイドラインを出していくことだと思いますね。
野村:なるほど。ベンチマークを持ちつつ、個別の議論ではなくてもうちょっとわかりやすいところにフォーカスするってことですね。ありがとうございます。
野村:みなさん、お付き合いいただいてありがとうございました。最後に早川さんのほうから1人ずつ、一言ずつで構いませんのでコメントをいただけますでしょうか。
早川:はい。研究開発型のファイナンスというところで、業績が見えないだとか、将来的なところを信じてもらうしかないとかっていう、非常に難しいところはあると思います。それがしっかりファイナンスと事業がうまく回った時、社会的に与えるインパクトは非常に大きいと思うんですね。
そこは難しいところがありながらも、やりがいがあるところだと思うので。これをご覧になっている方から、私自身もしっかり勉強させてもらいたいなと思っています。そういったかたちでこの日本からそういった企業がどんどん増えてくると、非常に良いセッションになったのかなと思います。
野村:ありがとうございます。小林さん、いかがでしょうか。
小林:今日はいろんな業種のCFOの方が視聴されてるそうですけども、研究開発型とか、特にバイオとかは「特殊性が強い」とか「つぶしが効かない」とか、いろいろ難しい業種の1つだとは思ってるんですけれども(笑)。やっぱりファイナンスを軸にして、CFOという立場の人たちが本当に活躍できるセクターが、研究開発型と思っています。
大変だからこそやりがいもあるし、やり遂げれば実績もついていくと思います。ぜひ研究開発型もよろしくお願いします、というか、このセクターをぜひお願いしたいと思います(笑)。
野村:むしろ、こちらこそいろいろご指導ください、よろしくお願いします(笑)。岡島さん、いかがでしょうか。
岡島:さっきはあんまり話ができなかったんですが、やっぱりリーマンショックを経験してる中で、これは今もそうなんですけれども。もともと「キャッシュ・イズ・キング」と言われてたのが、当時は「キャッシュ・イズ・ゴッド」までいっていて。当時いたのは研究開発型は創薬ベンチャーなんですが、やっぱりキャッシュを持っていて、キャッシュフローを見ながら経営していくことがすごく重要です。
そういった意味で、やっぱり研究開発を先行するビジネスモデルですと、手持ちのキャッシュをいかにコントロールして追い込まれないようにやっていくかが、CFOの手腕じゃないかなと考えております。CFOの方々、みなさんがんばってください(笑)。
野村:(笑)。ありがとうございました。
野村:私が最後にまとめるのは僭越ですけど、たくさんの気づきがいろんなところに散りばめられた、良いセッションだったと思っています。本当にありがとうございました。
いろいろな中で選択肢をたくさん持つこと、あるいはアンテナを持つことの大切さ。最後にも岡島さんからありましたが、後手後手にならないこと。研究開発型ベンチャーって、上を目指していくというか、世の中をなんとか良くしたいといいますか、そこに対して投資してがんばっていく。それを枯らさないようにするのが、たぶんCFOの非常に重要な役目なんじゃないかなと再認識した次第です。
そんな中で考えていかなきゃいけないのは、どういう株主からどういうような条件で協力してもらうか。「どういう株主から」って選ぶのは僭越ながら、と小林さんおっしゃってましたけれども、やっぱり「誰と一緒に成長したいか」っていうところだとは思うんですよね。株主もステークホルダーの1人だと当然思ってますし、一体だというところも含めて、そういうことなのかなと思います。
それを作るのが研究開発型ベンチャーっていいますと、非常に上目線で、華やかな世界に見える時もあるんですが、実際は何度もみなさんから出てたように、地道なコミュニケーションが必要。「ずっと3年やっていて、それがついに実りました」みたいなコミュニケーションが、本当にそれを支えるところなんじゃないかなと。私の所感で恐縮ですけれども、参考になるところではございました。
時間を少しオーバーして大変申し訳ございませんでした。これでこのセッション、終わらせていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。
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