「人の好き嫌いが激しいマネージャー」にどう対処する?

斉藤知明氏(以下、斉藤):次の質問にも行かせてください。Tさんからのご質問なんですけれども。

「集合知性を発揮する要素を見て、非常に納得感があります。ただ、自分自身というよりも、チームのマネージャーはけっこう人の好き嫌いが激しく、この説と真逆のことをやっているように見えます。そもそも人間力や考え方が不足しているとは感じますが、先生はどのように改善を図りますか?」

これ、けっこう難しい問いかなと思うんですけど。自分自身がメンバーだった場合、役割として権限として、どういうふうにアプローチしていくといいでしょうか? という問いなんですけれど、いかがでしょう。

岩崎一郎氏(以下、岩崎):自分がこの方のメンバーになっている場合に、という想定ですかね。

斉藤:そうです。自分がこのチームのメンバーであり、マネージャーの方がこの考え方と真逆のことをしてるように見えますと。

岩崎:わかりました。集合知性を発揮するリーダーになる人って、役職と関係ないんですよね。極端な例が、ある研修させていただいた会社さんでは、パートの中高年の女性の方が役職上はリーダーじゃないんですけど、「集合知性を発揮する、みんなをまとめる」という意味で、すごい力を発揮されてたんですよ。

そういう意味で「自分がリーダーじゃない」とか「役職についていない」ということをあまり気にせず、この(「集合知性を発揮するための」)3つの要素をいかに他の人たちと満たしていけるか? っていうところに意識を向けられるといいと思います。

相手の言動の背景にあるものを読み解く

岩崎:その上で、人の好き嫌いが激しかったり、愚痴を言ってたり、他の人を信頼できないっていうのは、チームマネージャーの人にも何かあるんですよね。

もちろん日々の生活の中でも、例えば奥さんと仲が悪いのもあるかもしれませんし、もしくは子どもの時に親御さんによくしてもらえなかったとか、信頼してもらえなかったとか、何か背景があると思うんですよね。

マネージャーの方を深く理解してあげられるところまで踏み込んでいかれると、何か変化が見られるかもしれません。……そのくらいのつもりでおられたほうが、たぶん状況改善にはつながっていくと思います。難しいと言えば難しいんですけど。

斉藤:僕としても、「このマネージャーの方自身が好き嫌いが激しいのって、なんでなんだろうな?」っていうのは気になりました。

今の岩崎さんのお話だと、そこを理解するところから、逆に自分自身がリーダーになる。こういう場所におけるリーダーシップを発揮することができるという話だと思っていて。だからこそ、そこを知ることへの率先者になっていくところもあるのかなと思いました。

「部下に雑談を持ちかけてもウザがられる」上司の悩み

斉藤:今度は逆にリーダーの方、マネジメントの役割を持っている方の問いなんですけれども。

「部下が2人いますが、両方とも寡黙なタイプです。雑談を持ちかけてもなかなか話してくれなくて、積極的に自己開示して話してみましたが、ウザがられちゃいました。こういう相手とも、信頼関係って構築できるもんなんでしょうか?」という問いなんですが、いかがでしょう。

岩崎:難しいと言えば難しいですが。「脳の使い方診断」という言葉で検索をしていただくと、弊社の「脳の使い方診断(簡易版)」というのが一番上に来るはずです。

そこでもって、まずご自分で試してみてください。4タイプにざっくりと分けられているんですが、ご自分の脳の使い方がどれに当たるのか? そして、その寡黙なタイプの人たちがどこに当たりそうなのか? というのを、調べてみるといいと思います。

その中で「知性タイプ」というのがあるんですが、部下のお2人が「Cタイプ(知性タイプ)」だとすると、あんまり積極的に話をするタイプではないので、「雑談しましょう!」と持ちかけると、逆効果になる可能性があります。

そうではなくて、他のタイプなんだけど話をしてくれないという場合は、どこかで信頼関係を崩してしまうようなことをされた可能性もあります。相手の方の特性を見るという意味で、活用されてみてはいかがでしょうか。

信頼関係を築くために「共感タイプ」の人を頼ってみる

斉藤:タイプ別に信頼関係を築いていく方法がある。きっかけだったり方法論という、「これをやりゃあ、絶対そうなる」っていう話ではないと思うんです。

僕も少し気になっちゃったんですけど、寡黙な人との信頼関係が損なわれていなくて、まだ(プラスでもマイナスでもなく)0の状態であると。「Day1」の状態と仮定した時に、そういう人との信頼関係の築き方、築くための方法論ってあったりするんですか?

岩崎:実は僕自身「Cタイプ(知性タイプ)」なんですよね。だから、ちょっと気難しいタイプになります(笑)。

斉藤:(笑)。

岩崎:言い方を変えると、職人気質というか。専門的なことはよく知ってるんだけど、それ以外のことに関してはよく知らない。人と話するのもそんな好きじゃない、得意じゃないっていう僕みたいなタイプの人は、診断の中で「Bタイプ(共感タイプ)」という脳の使い方をする人たちに助けてもらうといいと思います。

「Bタイプ(共感タイプ)」の人は共感するのが得意なので、「Cタイプ(知性タイプ)」の言動を理解してくれやすいです。もしご自身が「共感タイプ」であって、信頼関係を崩してなければうまくアプローチできると思います。そうでないのであれば「共感タイプ」の人を見つけてきて、協力してもらうのも1つの手だと思います。

雑談が苦手な、職人気質の「知性タイプ」

斉藤:寡黙タイプの方が何らかのアウトプットを出した時に、そこに対して共感をすると信頼関係が築かれやすい、ということなんですか?

岩崎:仕事自体というよりは、些細なことなんですが。職人気質であるがゆえに、自分の仕事のこだわりに共感してくれるというよりは、ちょっと言い方が悪くなるかもしれませんが「褒めてもらえる」というか。

「うまくそこを見てもらえる」というところで、「共感タイプ」の方は「知性タイプ」の職人気質の人に響きやすいアプローチができるんですよね。

全部で4タイプなので他に2タイプありますが、部下の2人を「知性タイプ」と想定して話をしちゃっていますが。「知性タイプ」の人は雑談がけっこう苦手なので、もしこの状態になってるのであれば、直にアプローチしないで「共感タイプ」の人の力を借りたほうがうまく行くと思います。

斉藤:そのあたりも含めて、研修の中でやられることなのかなと思いました。一朝一夕ではないと思いながらも、一つひとつ対話を繰り返していくきっかけっていうのは生まれそうだなと思いました。

岩崎:1つだけ付け足していいですか? 今、「アプローチは簡単ではない(一朝一夕ではない)」と言われましたが、そこも含めて集合知性なんですよ。

1人のリーダーがチームを率いて、集合知性を発揮する状態を目指すというよりは、「それぞれのメンバーが特性を活かすことで、日々信頼関係を築いていくところから、メンバー全員が力を合わせて、集合知性を発揮するようにするにはどうしたらいいか?」みたいに考えられたほうが、うまくいくかもしれません。

斉藤:そうすると「自分で全部やらなきゃ」って思わないほうがいいですね。

岩崎:そういうことですね。

集合知性を発揮する2つのポイント

斉藤:あらためて、岩崎さんのお話、すごくたくさんの示唆があったなと思うので、僕なりに今日のお話を再整理してみます。いわゆる個人の突出した才能よりも、集合知性が発揮されている組織のほうがパフォーマンスが高くなりますと。

「集合知性って何ぞや?」というと、みんなで同じ目的に対して向かっていく。目的としては、ある意味で画一である。同じ方向を目指している、同じ社会課題解決を目指している、同じビジョンを掲げている。

それに対して、一人ひとりの多様な強み。まったく同じ適正を持った人たちが足し合わさっても、大きな量にはならないけれども、多様な強みを持った人たちが、互いの強みを活かし合えている状態。これが集合知性が発揮されている状態である、と定義できるのではないかと。

ただ、その集合知性を発揮するためには、パフォーマンスからコントロールするのではなくって、大きくは2つの入口が必要です。

1つには「互いのことを理解し合う、認め合うことによる信頼関係の構築」。またそれを通して、事前であれ事後であれ、「共感している仲間で集まって、互いを理解し合う」なのか、「同じ目的に対して共感し合った後に、目的に対して理解・共感・共振するという状態を作る」なのか。

どちらにせよ「目的への高い共感」と「互いへの理解による信頼関係」の2つ。「なんでも言っていいんだ」というように、結果的に全員が対等に発言できる場が生まれて、集合知性が発揮される状態が生まれていくのであると。

「こうすればうまくいく」という絶対的な方法はない

斉藤:理解の仕方や信頼関係構築の仕方には、画一的に「こういうことをすれば全員うまくいくよ」という方法論があるわけではなく、一人ひとりのタイプやチームのあり方だったり、作られ方によって変わるもの。

だからこそ、そのタイミングで「自分自身で全部変えないといけない」って思うんじゃなくって、一人ひとりの力を活かしながら集合知性が発揮できる環境を作っていく。これがまさにリーダーに求められている仕事だし、必要なことなんだろうなと感じました。

今の僕の再解釈といいますか、捉え直してみたんですけど。岩崎さん、こちらでどうでしょう?

岩崎:すごくうまくまとめていただきました。ありがとうございます。

斉藤:「Unipos」自体は、4年目ぐらいの生まれたてのサービスで、さまざまなみなさんにやっと使っていただけ始めたな、というタイミングだからこそ、僕自信もすごく悩んでいて。「こっちに行くぞ」というところを話しつつも、けっこうみんなを置き去りにしている感が、時々拭えないなと思っております。

そこは、この「信頼関係を理解し合う」っていうところに、もうちょっと踏み込んだほうがいいのかな? ということを自分自身も内省しながら、この時間をいただいておりました。

集合知性のある組織は、ストレスがたまりにくい

斉藤:岩崎さん、最後に今日のセッションを通してみなさんにお伝えしたいことはありますか?

岩崎:はい。信頼関係を築いて、それを深めていく・1つになっていく。そういったことをすると集合知性が発揮できて、天才知性を超えるパフォーマンスが発揮できるというのは、今日お伝えしたとおりです。

実はそういう組織って、心が癒やされる、あるいはストレスがたまりにくいっていう特長もあってですね。みんなが生きがいを感じて、イキイキとしてる状態が作られるんですよ。

ぜひともそういう会社さんが、1社でも多く世の中に生まれてくださることを、もしくは今ある会社さんがそんなふうに変化していかれることに、僕たちは少しでも貢献していきたいなと思います。もしそういうところでみなさが悩んでおられたら、よろこんでご相談に乗りたいと思います。

みんなで生きがいが感じられる、しかも会社全体としてはすごく高いパフォーマンスが発揮できて、世界に大きな貢献ができる。そんな会社さんを日本に1社でも増やしていきたいなと思いますので、みなさんどうぞよろしくお願いします。また、今日はお話聞いていただきましたこと、心より感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。

斉藤:最後まで320名のみなさんが残っていただきましたけれども。共通の目的ができましたね、岩崎さん。

岩崎:はい、本当に(笑)。社員さんを幸せにしながら、高い目標・目的を達成していけるというか、そこに向かっていける会社が1社でも増えていったらいいなと思いますので、どうぞみなさんよろしくお願いいたします。

斉藤:聴講者のみなさん、視聴者のみなさんもたくさんありがとうございました。では、本日こちらで以上とさせていただければと思います。ありがとうございました!

岩崎:ありがとうございました。