350年間調べてもわからない「周期ゼミ」が長く地下で暮らす理由

マイケル・アランダ氏:セミの大音量の鳴き声は、一度でも聴いたら間違えようがありませんよね。春先に騒々しく登場するセミには、あの大合唱以外にも、実は驚くべき秘密があるのです。

セミは、ライフサイクルのほとんどを地下で過ごします。孵化後は地中で過ごし、成虫になる頃に地上に出ます。

ほとんどの種のセミは、2年から5年周期で羽化します。しかし、この周期が極端に長い「周期ゼミ」というセミがいます。北米には、Magicicada属に属する7種がいます。幼虫として地下で13年もしくは17年を過ごした後は、集団で羽化して交尾し、産卵するとすぐに死んでしまいます。

周期ゼミは、羽化する年や場所が同じグループ「年次集団」に分けられます。1万平方メートル、つまりフットボールフィールド2個分に相当する地域に出て来る、何百万匹ものセミの成虫です。

幼虫として地下で十数年間を過ごした後、成虫として地上で過ごすのは、死ぬまでのわずか数週間です。

周期ゼミがなぜこれほどまでにも長い幼虫期を過ごすよう進化したのか、そしてどのように過ごしているのかは、約350年も調べられてきましたが、よくわかっていません。幼虫期の地中での競争を経て進化した結果だとか、昆虫に寄生する、長生きの寄生虫に対抗するためなどと言われています。

周期ゼミのライフサイクルと、捕食者への影響

長い幼虫期には、更新世の氷河期が関係してくると考える研究者もいます。更新世の気候は理想的とはまったく言えず、成虫は個体数が極めて少数だったことでしょう。周期ゼミの羽化する期間が短く、まれであれば、まとまって発生しても個体が捕食される可能性を低下させることができます。また、これには13年から17年周期のライフサイクルが特に役に立ってきます。

この周期はどちらも素数です。素数とは、1と自分自身のみで割り切れる数です。捕食者は、数年周期で大量発生する傾向がありますが、その周期は、だいたい1年から10年ほどです。そのため、周期ゼミのライフサイクルを司る素数と重なることは、ほぼありません。

周期ゼミのライフサイクルは、捕食者にとって不利に働くことも考えられます。昆虫を捕食する鳥類の個体数は、周期ゼミが羽化する年には減少することが、研究によりわかっています。エサが大量にあるはずなので、これは不思議なことです。

大量羽化のあった年の翌年に、鳥の個体数は増加することは、容易に想像ができますね。充分に栄養を摂取できた鳥は、次の年にたくさん子孫を残します。ところが、13年セミと17年セミの周期を完全に網羅した期間の、15種の鳥の個体数推移を調査した研究によりますと、鳥の個体数は、何年かにわたって上下の推移を繰り返した挙句、周期ゼミの羽化のタイミングで急減することがわかったのです。

このようなことがなぜ起こるかは、まだわかっていませんが、これは鳥以外の事情からなるものかもしれません。セミは、鳥のエサになると同時に、死んだ後も何年にもわたって環境に影響を残します。死骸は養分となり、草木がよく成長することにより、小動物もまた多く繁殖します。

こうした生物の個体数の変化が、互いに影響を与えあっている可能性があると研究者たちは考えています。しかし、セミが羽化する段階で鳥が急減する理由については、まだ調査の途上です。セミについては、わかっていることより不明な点の方が多いのです。出現するのを13年や17年間、待たなくてはいけない生物を調査するのがとても難しいことは、想像に難くないでしょう。

しかし周期ゼミの生息地域に住んでいるみなさんは、つがいを求めて鳴く耳をつんざくような、大音量のセミの声を楽しもうではありませんか。