2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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鈴木裕介氏(以下、鈴木):僕が感じるのは、それこそ今、特に若い子たちに「ゲームのつながりがちょうどいい」という感覚を持ってらっしゃる人が多くて。リアルのつながりはやっぱり濃すぎる、疲れる、というところのバランサーに(ゲームが)なっているのは、すごくあるんだろうなと思います。
おそらく、このコロナがあって拍車がかかった部分があるかなと思います。「リアルで会うこと自体が、実はすごく疲れることだったね」と言い出す人がいて。僕はもともと「でもリアルのほうが好き」と思うタイプの人間なので。
ただ、自分の周りに(そのタイプの人が多くて)、たまたまそういうライトなつながりを好む人との関わりを多く経験してるから、なんとなく想像はできるようにはなったんですけど。僕自身はやっぱり、本質的にはわからないというか、自分の肌感としてはわからないところがある。でも、たぶんそれがわからないのが自然というか。
言ったらそれぞれの痛みがあり、それぞれが感じる安心感があって。「理想とするつながりの濃さ」がぜんぜん違う人たちの中で生きないといけない時代の中で、それぞれが感じる安心のレベル感を保証したり尊重することが、すごく大事なポイントになってくるんだろうなと思います。
生田美和氏(以下、生田):そうですね。人とのつながりでずっと積み重なってきた「自分」があるので、自分を脱ぎ捨てることができないですよね。「あなたはこういうおとなしい子だよね」とか「こういう時に意見を言ってみんなを引っ張ってくれる人だよね」と、1回ついてしまった自分のキャラクターを変えることが、ちょっと難しいことがいっぱいあって。
職業や部活に(キャラクターが)くっついていたり、最初はそう(自分のキャラクターを)選択してきたとしても、周りの人からの目線で見られる自分が、いつの間にか当たり前になってしまって、自分をお休みできないところがあるんだと思うんですよね。
リアルでどんなに仲の良い子であっても、やっぱりこれまでの歴史は見えてしまうというか、そうしてきたという属性が見えてしまう。ゲームの中だとそれは全部隠れてしまうものなので。
生田:私もギルド(オンラインゲーム内でのプレイヤー同士のグループ)で仲良くなった子が、もう1年ぐらい一緒に遊んでいて。ある日「実は……」と。「自分は今、病院からゲームを遊んでるんだ」ってポロっと教えてくれた。
その子はみんなが大好きな元気な子で、明るくてムードメーカーで。でもその子はリアルではいっぱい手術して、病室から出られなかったりとか、看護師さんの目を盗んでソーシャルゲームに入っていたりとか。
そのリアルを考えた時に、たぶんお見舞いに来てくれるお友だちと話すことは、やっぱり口に出さなくてもそういうもの(病気であること)をまとってしまう。でも、ゲームの中だとまったくまとわないので、「あのモンスターがきつい」「今度のイベントはちょっとおもしろくない」とか(笑)、はっきり違うものに熱中できるんですよね。
鈴木:ある意味ハンデも背負っていないし、本当にまっさらな状態で人間関係が築けるっていう。
生田:そこがたぶん、すごく楽ができるところだと思います。
鈴木:1年経ってポロッと言うのが、実際の臨床の中でもわりとありまして。最初はちょっと「胃が痛いんです」ということで来ていた方が、半年くらい経った時に、「実は生きるのがけっこう限界で」という話をしてくれたり、向こうから1段階踏み込んでくれることがあるんですね。
これがすごく臨床家として大事にしたいところで、こっちが踏み込んでいくと、たぶん逃げてしまうようなセンシティブさを持っている。でも、お互いにとって安心できる距離感を保ちながら、少しずつおびやかされない関係を積み重ねていったときに、1段階ゴロッと山が動くというか。生田さんの病院の子のお話って、まさに信頼関係が1段階濃くなる話だなと。
鈴木:リアルでは対人関係で深刻な悩みとか他人に一切しないタイプの人が、それでもなにかの拍子に本当のことをポロッと言ってくれる時がある。これってすごく貴重なことで、そこからきっかけに人間関係が動くわけですよね。
もともと、人間関係が親密に動いていくこと自体を嫌がっていたとも思うんですが、「この人なら」ということで、ちょっと関係性が動いていくことがある。これは先ほどから言っている、いわゆる「親密性の回避」の問題と向き合っている人にとって、かなり本質的な変化というか、けっこう大きなターニングポイントになるんじゃないかなと思っていて。
実際にゲームの中にリアルな世界があって、リアルな人間関係があるから、その方の中でも診療の中であるようなことが起こったという。
生田:そうですね。
鈴木:非常に興味深いというか、ある意味リアルなつながりでは、たぶんそこが1段階動くことがなかったかもしれない。
生田:たぶんそうだと思いますね。
生田:長い時を一緒に過ごすということがあった上での、告白や踏み込み方だと思うんですが、大人になってしまうと、長い時を一緒に過ごすことがより難しくなってしまうと思うんですね。
鈴木:難しい。
生田:そこがゲームだと、まあまあやりやすくなっている。特にソーシャルゲームは手軽に遊べるようにしてあるので、テレビゲームの流れを汲んで遊び慣れた人たちもたくさんいて、そういう先輩たちを頼りながら遊んでいくやり方もあるので、わりと(場が)開かれている。
その中で気が合う人とかを探すのも、いきなりじゃなくて、「まずこのボスを倒したい」とか、目先の問題を解決するために「仲間になりましょう」というところ。
鈴木:そもそも、関係を作るきっかけがいっぱいあるわけですよね。
生田:たくさんある。
鈴木:口実がいっぱいあるわけですよね。
生田:そうですね。経験を一緒にしていけるところが、昔の学生時代や子ども時代に近い遊び方になっているんじゃないかなと。
鈴木:ちょっとこれ、本当にMMORPGをやりたくなってきました(笑)。なんかできないですか?(笑)。
生田:そうですね。私が担当しているのはまだオープンにできないので、ちょっとお知らせできないんですけど(笑)。
鈴木:そうなんですね。
生田:終了はしてしまったんですが、『アヴァロンΩ(オメガ)』『禍つヴァールハイト』『オーディナルストラータ』とか、いろんなソーシャルゲームのMMORPGをやってきて。あそこでできた仲間たちがまだつながっていたりすると、一つの「青春」というのとはまた違うかもしれないですが、遊び場を作るのは成功していたんじゃないかなと思います。
鈴木:この話を聞いて、どんどん(MMORPGを)やりたくなっているんですが。
生田:次に出るのがあるので、そちらにぜひ(笑)。
鈴木:シナリオとかも、本当に読ませてもらいたいなと思うんですけど。
生田:そうですね。ぜひぜひ。
鈴木:今は見れるものがないということで、お預けを食らっているような。
生田:シナリオを開発でまだ回しているだけなので。
鈴木:めちゃくちゃ楽しみにしています。
生田:はい(笑)。
鈴木:ちょっと話が一段落したので、テーマを変えたりしたいなと思うんですが。(ゲームの中では)「私をやめることができる」ということで、たぶんこれから先、仮想空間の中にリアリティのある世界ができて、違う人生を過ごすことができるというのは、変な呼び方をすると“人生自体にポートフォリオが効いている”というか。
違う人格を生きながらやっていく感じになっていくのかなと。ちょっと振り返って見てみると、今の若い子はみんな、SNSで複数アカウントを運用していて。
生田:すごいですよね。
鈴木:これがたぶん、この人たち(若者)のスタンダードなんだろうなと思う。うちはゲームでも癒やされている人が多いんですが、コスプレとか好きな人も多いんですよ。(診療所が)秋葉原だからというのもあって。
今の自分がいいか・悪いかは置いといて、やはり「違う自分を生きてみたい」という欲求って少なからずあるし、今とは違う自分の人生が展開されることで、癒やしを得たり、安心を得たり、豊かさを得たりというふうになっていくんでしょうね。
生田:いくつもアカウントがあるのも、新しい自分の持ち方というか。「よくあれを管理できるな」と思うんですが。
鈴木:そうですよね。
生田:それだけ自分を多面的に見ることはできていて、それぞれにチャンネルを持って出し方を変えているところが、自然なものなのか、それともその面でしか付き合えないところもあるのかは、両方あるのかなと思っていて。
“ここまでしかできない友だち”であるとか、「家族(の中)ではいい子にならなきゃいけない」という時に、そうじゃない自分を置いていく場所みたいなものが、いくつかできちゃっていることもあるのかなと思うと、丸ごと受け止められる場所があればいいなと思います。
鈴木:そうですよね。
鈴木:よく(人間関係において)「どんなあなたでも受け止めます」というようなことを、言葉では言えるけども。
生田:言葉では、ですよね。
鈴木:実際にそれをできる胆力ができ上がるには、なかなか年月がいるというか、鍛錬が必要だなと。
生田:たぶん、「受け止める」ということのイメージが違うのかなと思っていて。私の中では「言い合える」だったりするんですね。喧嘩したり、「どうしたらいいんだろう?」と落としどころを探るような、どっちかが勝ち・どっちかが負けではない関係性を、よりよく組むために、「今回はこのへんで」というゴールではなくて、中間地点みたいなものを置く。
長期的に付き合っていく上で、「この人とはこうやっていけばやれそう」みたいな見通しを持つことを、もうちょっと前向きに捉えていく。自分も開放していくし、相手も開放していく。本音のつかみ合いというか、そういうところも含めての「いい距離の持ち方」みたいなものを。
鈴木:フェアであるって、まさにそういうことですよね。
生田:そういうやり取りが難しいのかなと思ったりして。
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