2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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伊藤力氏(以下、伊藤):さて、ここまで伊達さんのテニスプレイヤーとしての挑戦についてうかがってきました。私自身も、アスリートとしてテコンドーに取り組んでますので、本当に気持ちが熱くなるお話をお聞きすることができました。
いよいよ本セッションも終盤ですが、伊達さんが現在取り組まれていること、これからの夢、挑戦についてお聞かせいただければと思います。2回目の現役後、まったく畑違いのパン屋に携わったりですとか、これからの時代を担う選手の育成、アカデミーの樹立など、本当に多くの分野に力を注がれていらっしゃいます。なにか新しいチャレンジを始める時、意識されていることはありますか?
伊達公子氏(以下、伊達):セカンドキャリアをスタートした時に、自分自身に自問自答して、やっぱり年齢のことを考えてしまったりとかしてきたんですけれども。でも結局、1歩踏み出したことによって、これだけ大きな違う世界が待ち受けていたっていうことを、実体験として経験したので。
私も外国の記者の方に言っていただいて気がついたことなんですけども「本当に年齢はただの数字にしかすぎない」。それはなにか夢を持っていたり……小さな夢でも目標でもいいと思うんですけれども、いつもと違うことをやりたいという気持ちがあったら、1歩踏み出す勇気を持つことで、やっぱり未来は切り開けていくっていうこと。やっぱりそこに尽きるんですかね。
伊藤:ちなみになんですけど、これから挑戦したいこととか、目標とかはあったりしますか?
伊達:今は、女子の12歳から16、17歳くらいまでの女の子を育成するプロジェクトを立ち上げて、テニスをやっているんですけれども。それを2年やっていく中で、私自身は今、自分のベースとなるアカデミーっていうものを作りたいと強く思い始めていまして。
いずれ、そのアカデミーを日本の中に作ることが、今の一番大きな目標で。それは何のためか? といったら、とにかく次世代の日本女子が育ってきてくれることを望んでいて。そのためにやらなきゃいけないことは、ベースとなる環境整備をすることで。これから少子化になっていくとはいえ、やっぱりできるだけ多くの子どもたちが、テニスと触れ合ってほしい。
それは私がテニスを通じてたくさんのことを学ぶことができたし、テニスを通して私自身の人生が大きく切り開いていけて、たくさんの経験ができたので。同じ思いをこれからの子どもたちにも感じてほしいし、そういうことと触れ合ってほしいので。そういう環境整備にも力を入れながらやっていきたいというのが、私の大きな夢です。
伊藤:なるほど、ありがとうございます。伊達さん、これからの目標や挑戦についてもお話しいただきありがとうございます。本当にあっという間の30分が経ってしまいました。ここからは、視聴者のみなさまから寄せられた質問にお答えいただきます。
「孤独を感じていた時、一番支えになったものはなんですか?」。
伊達:うーん……孤独。先ほどもお話の中で出てたんですけど、ファーストキャリアの時っていうのは、本当に孤独感いっぱいの中で、そこに頼れるものが本当になかったので。孤独を孤独と感じないように、できるだけ捉えるようにしてましたね。
時々、やっぱり孤独なんだけど、1人の時間でいることのほうが頭が冴えて。自分のモヤモヤと悩んでいることの答えが見つけやすい時間って、やっぱり1人になっている時だったりするっていうことを、自分でも思っていたので。だからこそ、孤独を孤独と思わず、ポジティブに考えられるための時間だと思うようにしてました。
伊藤:ありがとうございます。それでは次の質問へ移りたいと思います。
「試合中、怒りのコントロールはどのようにしていましたか?」。
伊達:(笑)。これは選手によってそれぞれ、スポーツ選手じゃなくても同じだと思うんですけれども、いろんなタイプがいると思うんですよね。ストレスっていうものを抱えた時に、どのように消化させていくのか? っていうのは。
私の場合は、なにかの形で外に吐き出して消化していかないと、なかなかうまくコントロールができなくなってしまうので。まずは自分の性質、パーソナリティ的なところを知るっていうことが大事だし。私の場合、それを溜め込むことはあまり自分に向いていないので、それをうまくコートの中で吐き出して。自分の平常心が保てるところっていうものを、そのために吐き出すことをちゃんと計算した上でやるってことですかね(笑)。
伊藤:僕の話になってしまうんですけど、僕らはコンタクトスポーツなので、もう思いっきり蹴ります。
伊達:思いっきり蹴る!?
伊藤:本当に思いっきり蹴ります(笑)。けっこう蹴られてストレスにもなるんですけど、そういう時は1発、点になってもなんなくてもいいから「蹴ってやろう」っていう感じで。蹴っても反則にならないスポーツなので。
伊達:そうですよね。
伊藤:そこはいいかなとは思います、僕もテコンドーやってて。
伊達:そうですね。テニスはね、本当にこう……吐き出すところっていうのが「審判に向かって」とか、限られているので(笑)。そのギリギリの中でコントロールしながら。自分を見失わない中で吐き出す術を見つける、っていう感じですかね。
伊藤:なるほど、ありがとうございます。それでは次の質問へ移りたいと思います。
「学生ですがやりたい仕事や先が見えません! 知らない世界に飛び込む勇気もありません! どのようなマインドでいるべきですか?」。
どうでしょうか?
伊達:「好きなものを見つける」って、言うことは簡単なんですけど。「好きなことが見つからない」っていう話もよくうかがうんですけれども。まずはいろいろトライをしてみないと、自分が好きなものってやっぱり見つからないので。アンテナを張って、とりあえずちょっと知る、なにかトライをする経験をしてみるとか。なにかやらないと、やっぱり見つかりにくいと思うんですよね。ということが、1つと。
あとは「失敗を恐れない」っていうことが、やっぱりすごく大事なんじゃないかなって思って。私も結局、いろんな怪我をしたりとか、勝てない時期があったりとか。そういうアップダウンっていうのは当然、経験してきたんですけど。その時にも、失敗した後のほうがジャンプアップしてるんですよね。
いったん落ちることを恐れないで、失敗したり結果が出ないっていうことを恐れずに、知らない世界にとりあえず踏み込む。すると先が見えてきて、それがもしかしたらやりたい(こと)。やりたくないってなれば、そこではある程度耐える。すぐに決断をするわけではなくて、やっぱり1つのことをやった時には、少し我慢をしなきゃいけない時間っていうのは、当然、絶対に必要だと私は思っているので。
どんどん「違うから次、次、次」っていくよりは、少しは耐える時間を持った中で決断をしていく、ってことは必要だと思うんですけれども。とにかくいろんなことにトライはしてほしい、ということは統一して言えることだと思います。
伊藤:今のお話の中で、一度落ちた時っていうのは必ず、考える時間ができてくるのかなと思ってて。考える時間っていうのは、一番大事な時間かなと。それこそ考えた中で飛躍的に伸びたりですとか、もちろんスランプであれば脱出するきっかけにするのかな? って思いますね。
伊達:あとは、人と比べないっていうことも大事かなと。競争心を持つことは、勝負の世界、スポーツの世界ではもちろん必要なんですけれども。でも「あの人はこれができていて、自分はできない」とか、常に人と比べるっていうことじゃなく。自分がどうありたい、やりたいのかやりたくないのか。自分っていうことをしっかりと見極めるっていうことも、必要だと思います。
伊藤:なるほど、ありがとうございます。では、次の質問へ移ります。けっこうクリティカルな感じですけど。
「今のテニス界をどう見ていらっしゃいますか」。
伊達:今は女子でいえば大坂なおみ選手がいて、男子でいえば錦織圭選手がいて。スーパースターがテニス界には、男女1人ずついるんですけれども。テニスという競技がグローバルなスポーツでありますし、なにかすごくいい時代のように見えると思うんですけど、私は実はちょっと危機感を感じていまして。
1990年代、私がファーストキャリアをやっている時にも、女子はトップ100に(日本人が)10人ぐらいいた時代もありましたし。男子でいえば、松岡修造さんがいた時代があったんですけれども。結局、松岡修造さんも引退した、私も引退した後っていうのは、やっぱりいったん落ち込んでいるんですよね。
日本のテニス界っていうのは一度それを経験しているので、今、この錦織圭選手と大坂なおみ選手っていう2人がいたあと。ここからもう5年10年後どうする? っていった時に、次に育ってきてる選手がいるか? っていったら、現実、世界の本当のトップのトップで戦える選手っていうのは、私は見えていないので。ここを育てていかなきゃいけないっていう危機感を、私はやっぱり感じているので。今、2人がいるからといって安心してはいられないかなって思ってます。
伊藤:なるほど。ちなみになんですけども、伊達さんが現役の頃だったり、2回目の現役の時と比べると、テニスの下の世代っていうんですかね。ユースだったりジュニアの世代っていうのは、増えてきたりはしてるんですか?
伊達:テニス人口というものは、極端に増えてるわけでもないですし、減ってきてるってことでもないですし。テニスという競技性っていうところで、常にご両親が「子どもたちにやらせたい習いごと」のトップ5には入っている競技である状態は、ずっと維持してると思うんですけれども。
ただ当然、少子化っていうこともありますし。錦織圭選手が全米オープンで決勝にいった時に比べると、テニスを習っている子どもたちの数っていうのは当然、少し減ってきているので。そのへんをしっかりと「今」っていうことでなく「中期、長期」っていうところの目線で考えていく必要はあるのかな、とは思ってます。
伊藤:なるほど、ありがとうございます。それでは最後の質問ですね。
「子どもたちがこれから人生を歩むために、テニスから何を学んでほしいですか?」。
伊達:たくさんあります!(笑)。私はテニスっていう競技は、本当に人生の縮図って大げさかもしれないんですけど、思っていて。コートに入るとテニスって個人スポーツなので、やっぱり自分で考えて自分で決断していかなければならない競技であって。常に決断の連続なんですよね。
テニスで今、子どもたちに「将来の夢は何ですか?」って聞くと、大抵の子どもたちは「ナンバー1になります!」「グランドスラムで優勝します!」「大坂なおみ選手を超える選手になります!」って言うんですけれども。やっぱり、どの世界ででもトップになるっていうことは、本当に相当な覚悟と、当然、努力も必要だし。そこに行動が伴わないと、私はなかなかそういうことは実現することは難しいって思っているので。
ただテニスが強くなる、うまくなるっていうことよりも、やっぱりすばらしい人間に(なってほしい)。これは私自身にも言えることなんですけど。ただテニスで世界に行ったってことだけではなく、今でも「じゃあどうやったらいい人間になれるのかな。どういうことがまだ足りないのかな?」っていうことを追求する気持ちを忘れないように、日々過ごしているんですけれども。
子どもたちにとっても、テニスプレイヤーである以前に、1人の人間として、1人の女性として、すばらしい人間をテニスを通して学んでいってほしいっていうのが、第一にあります。その中で、競技にこだわる、必死になってこだわって、上に這い上がりたいという強い思いを持つ子どもたちが増えてほしいなと思います。
伊藤:なるほど、ありがとうございます。まだまだたくさんの質問はいただいておりますが、ここでお時間となってしまいました。最後に、今まさに画面の向こうでなにかを乗り越えようとしている3万名の参加者へ、メッセージをお願いいたします。
伊達:はい。本当に私自身も感じてきたことなんですけれども「なにかにチャレンジすることは楽しいことだ」ということを、まずみなさんに理解していただきたいことと。そしてそのチャレンジをするっていうのは、すごく大変でタフなことであることには間違いないんですけれども。
やっぱり乗り越えるためには、乗り越えるための力、エネルギーっていうものを持ち続ける。まずはそこを思い続けることと、それをやり続けること。そこをやらない限りは、あきらめないっていう思いを持ち続けない限りは、乗り越えることはできないって思うけれども。
でもその先には必ず、チャレンジして楽しかったと思える時が来ると思うので、ぜひみなさんもそういうものを見つけていってほしいなと思います。
伊藤:伊達さん、ありがとうございました。
伊達:ありがとうございました。
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