すべてのおもちゃは「時代を映す鏡」

大澤孝氏:あと2個ですね。「エクスタグ」の説明をします。

だんだん最近になりまして、2019年ですね。これ、なぜか作ったか? というと、銃の形をしていますが、当時の時代の背景に……おもちゃって全部、時代を映す鏡なんですよね。

僕、資料を作っていて思いましたけど、ほとんど時代の話をしています。だから「今、流行っているものをおもちゃにする」というのも、1つのパターンとしてあって。この当時、今でも流行っているんですけど「荒野行動」とか「PUBG」とか、バトロワゲーがめちゃめちゃ流行っていまして。「これってすごいよね」という話をしていました。 

昔に「サバイバーショット」というトミーのおもちゃがあって。僕、子どもの頃やってたんですけど、これを「今、リバイバルしたら売れるんじゃないかな?」と思いまして。先ほどのバトロワゲーの流れと「サバイバーショット」をくっつけて売ろう、ということで。スマホに銃をくっつけて遊ぶような感じの、光線銃というのを考えました。

これ、試作を作ったらすごいおもしろかったです。スマホが付いている光線銃なんですけど、リアルのマップがGPSと連動していまして。それを見ながら歩くと、街中にアイテムが落っこちてて。いろいろ弾があったりして、それを拾っていきながらバトルを実際の銃でこうやってやる。相手のいる場所がわかったりとか、あとチャットしたりとか、本当にいろんなことができるので。ゲームがリアルで遊べるような感じで、めちゃめちゃおもしろいです。

なんですが、開発にめちゃめちゃお金がかかるということがわかりまして、会社的に「GO」が出なかったんですよ。「こんなに試作を作っておもしろいし、やらせてください」と言ったら「お金がかかるからダメだ」と。じゃあ、しょうがないのでクラウドファンディングでやろうと。「もうお金を集めるからやらせてください」という話をして。

たぶんタカラトミーで初めてクラウドファンディングをやったんですが「一万部売ったらやらせてあげるよ」という感じでやらせてもらいまして。僕、自らあちこち出版社に行って売り込みました。

結論としては、けっこう集まったんですけど全額は集まらなかったので、残念ながらこれはお蔵入りしてしまったということで。各所ですごく話題になって、かなり反響はあったんですけど、残念ながら。売ったら売れたんじゃないか? と思っているんですけど、会社との約束なのでね。クラウドファンディングが達成しなかった、ということで失敗しました。

原因としては、クラウドファンディングに対するノウハウが、まだ当時はまったくなくて。どうするとクラウドファンディングがうまくいくのかな? というのがなかったので、売れなかった(発売できなかった)です。

この時の失敗があとにつながっていくんですけど、当時、これは価格面のハードルがあって。対戦するのに1台5千円なので、(2人で遊ぶために)2個で1万円って高いんですよね。

さっきの「荒野行動」とかって無料で遊べていたので、それがすごくハードルになったんじゃないかな? とも思っています。ということで、残念ながらこれは売れなかったというところです。

国内最大級のアイデア募集サイト「アイデアステーション」

最後、10個目「ミャウエバー」なんですが。

これ、現在に話は戻ってきますが。今(イベント開催時)、だいたい1,900万円くらいなので、締め切り時には2,000万円までいくかな? というところなんですが。とにかく(商品化できるかの)目標金額は56万円で、私の中の目標が1,000万だったので、これは大成功だなと思っています。

2021年の4月22日にスタートして、2時間で目標を達成をしました。本物の猫を再現したような商品なんですが、なんでこんなものが生まれたか? という話をさせていただきたいと思います。

その話をする前に、この商品と切っても切り離せない「アイデアステーション」というサービスなんですが。これが何なのか? という話をさせていただきたいと思います。

私が代表をやっています「アイデアステーション」ですが、これはアイデアの募集サイトになっていまして。今、5,700人くらいの会員さんから、5,000を超えるアイデアが集まっています。結果、2万人のユーザーがいるようなサイトになっていて、国内最大級のアイデア募集サイトなんですが。

何でこんなのをやっているか? ということを説明しますと「売れるもの」というのが、なかなか難しくて。人の欲しいものって、本人も自覚していないところがあります。

例えば、スポーツジムに行く男性がいます。顕在化しているのは「スポーツジムに行きたい」というところなんですが、スポーツジムに行くこと自体は、じつは彼の目的ではないんですよね。何か理由があります。

自分でわかっている場合もあるし、わかってない場合もあるんですが、(スライドを指して)氷山の下のところには、だいたい若い男性の潜在意識の9割が「モテたい」とか「健康がちょっと心配だから」とか「マッチョになって、痩せて自信を付けたい」とかがあると思うんですが。

こういう“沈んだニーズ”って、アンケートしてもなかなか出てこないんですよね。これをどうやって集めるか? というところが、各メーカーのすごく課題になっているところなんですが、アイデアステーションは本当にたくさんの企画が来ます。

直でいい企画が来ればいうことないんですが、消費者が潜在的に思っている「こんなものが欲しい」ということは潜んでいるので、出てくる企画の中から潜んでいるニーズを探そう、ということでやっています。

その他、いろんな方との「共創」ということを、先ほども言いましたがやっておりまして。企業さんとかクリエーターさんと一緒に、アイデアステーションという名前で一緒にものづくりするようなことをやっています。共創によって、潜在的なニーズ・インサイトを探るということを目的にしています。

日本最大級の猫コミュニティとの共創で生まれた「ミャウエバー」

ということでやっているんですが、今回「ミャウエバー」でいうと、昨年の1月の段階で「コロナ禍ですごく人の心が荒んできたので、癒やされるものを作ろう」ということで。

これは私自身も子どもの頃に猫を飼っていて。「癒やしってなんだろう?」と考えた時に、仕事をしながら「今、ここに猫がいたらすごく癒やされるのにな」と思ったのがきっかけで。コンセプトはこうだったんですよ。

ただ、じゃあ「猫らしさ」とか「猫の癒し」って何なのか? っていうところが、自分だけだとわからないので。先ほどの、潜在ニーズのインサイトを得ようということが課題になりまして。そこで当時、私が考えたのが「猫のことを一番知ってる人に聞こう」ということ。

フェリシモ猫部さんというのがあるんですが、すごいですね。8.4万人フォロワーがいるSNSを持ってらっしゃるような、日本最大級の“猫コミュニティ”なんですが。こちらと一緒に共同開発・共創することによって、多くの猫ファンの潜在的なニーズを探っていこうということで、プロジェクトがスタートしました。

普通、メーカーって作ってる途中は、(他社に)マネされちゃうから情報を出さないんですが、これはすべてTwitter上に情報を出しまして。「こんなの作ってます、どうですか?」みたいなことを聞いて、アンケートを取りましたし。あと、Twitterの文章も全部読んでいますが「こんなものになったらいいのに」とか、いろいろ書いてくれる人がいるので。そういったのも見ながら、インサイトをいろいろ探っていきました。

「猫らしさ」「猫らしいクッションに求めるもの」って何なのか? みたいなことをいろんな方法で作っていって。しかも、フォロワーさんたちと「一緒に作ってる感」を出していって、応援してもらうということもやりました。なので、こういったことをやりながらインサイトを探っていって、最終的なかたちを求めていきました。

その結果、インサイトをちゃんと汲んだので、今回はクラファンを見て、書いていただいた方がすごくそのへんのところをわかっていただいて「こういうのが欲しかった」と。

ここにあるのは、マンション住まいとかいろんな事情で「猫が飼えないので欲しかった」とか。このへんはペットロスで「猫ちゃんを失ったんだけど、こういうのが欲しかった」とかね。あとは「猫アレルギーなんだけど欲しかった」みたいに。

最初からこのへんは考えてなかったんですが、開発中のインサイトを探る中で見えてきたので。そういったニーズに応えるようなものを作っていったことで、まさにインサイトの吸い上げに成功したということです。

あとやっぱりこのクラファン。さっき失敗もありましたけど、あのへんからやっぱり、ファン作りの必要性。『X-TAG』の時はなにも知らなかったので、すぐにクラファンを立ち上げちゃったんですよ。本当は、立ち上げる前にもっと情報出さなきゃいけなかったんですけど。そうしないで、いきなり「スタート!」ってやったんで集まらなかったので。こちらは1年間かけて準備をしました。あと、コラボも成功みたいなことになって、非常にうまくいきましたということで、これも成功した商品です。

ということで「成功5」と「失敗5」ぐらいだったと思いますが、いろいろありました。ここを見ると、じゃあ何が売れるかわかるか? って話なんですけども、難しいんですよね。

史上初のゲーム「ショートショートnote」

番外編とありますが、来週発売(注:イベント開催時)する「ショートショートnote」っていう商品があります。

これですね。noteさんと一緒に作ってる商品で、来週発売になります。これも共創なんですが、noteさんと、あと僕の友人の高橋晋平さんと、そしてショートショート作家の田丸(雅智)さんという方と共同開発したもので。これは、田丸さんのショートショートを作るノウハウを入れたような商品になります。

「アイデアは組み合わせ」って言いましたが、まさにこれです。2個のカードをランダムで引いて「しゃべる」「バナナ」みたいな単語を作って、この単語を元にショートショートのストーリーを書くというゲームなんですが、ただのゲームではなくて。「しゃべるバナナ」っていう文章を書いてnoteに投稿して、そこで「#ショートショートnote」って書くと、全国の仲間たちがそれに「スキ」を付けるので、勝敗をプレイヤー間だけではなくて全国のプレイヤーがつける、みたいになる。史上初のゲームですね。

しかも直に会わなくても済むんです。完全にオンラインだけで遊べますので、1人がカードを持って「このテーマでやろうね」ってやったら、5人なり10人なり100人なりが遊べますが、みんなで文章を書いたりっていうことで、すごく楽しい商品です。

「神の領域」と「人の領域」

なんですが、じゃあこれが売れるか? っていうと、わからないんですよね。売れるための準備はすごく、今、しゃべってて売れそうに見えると思うんですが(笑)。わからないんですよね、これ本当に。売れる仮説も、売れない仮説もあります。

ということでまとめとしましては、これです。結果は評価するのが簡単です。今回、全部書いて「売れた理由はこれで、売れなかった理由はこれです」って言うのは簡単なんですが、前もって予測するのは本当に難しいんですよね。誰にもわからないです。

さっきの「ショートショートnote」もそうですし。例えば今日、話題になったので言ったんですけど、この「∞プチプチ」の新しいのが出ますっていう情報が(高橋)晋平さんからも出てましたけども。これがじゃあ売れるか? って聞かれたら、わからないんですよ。

例えば僕だったら、売れたとしたらこう言います。「前回よりも格段にプチプチの触感が良くなってるから売れたんだよね」「プチプチらしさが出てるよね」って言えるし。もし売れなかったら、当時(初代の「∞プチプチが出た時代)はスマホってまだなかったんですよ。で、これって手持ち無沙汰の時に使うものなので「今、手持ち無沙汰ならスマホ使うから売れなかったんだね」って言えちゃいますよね。だからどっちの仮説も成り立ちますし、あとから言えるんですが。じゃあ今、未来を予測しろって言ってもできないんですよ。

なので、モノ作りに大切なのは何か? というのをまとめると……「人の領域」というのがありまして。これはこのラインのところまで近づけることができます。で、ここのラインに近づけるのが我々でやれることだし、ここまでいかなかったものは売れないです。ただこれがラインまでいったから、じゃあ100パーセント売れるか? というと、そんなことはなくて。やっぱり「神の領域」というのはあります。

ここから先は神のみぞ知るところなので、最終的には「人事を尽くして天命を待つ」ということで。人がやれることはやります、ただここから先も売れるかどうかは、神さま次第だな、ということですけども。ただここまで(人の領域の途中)までだったら売れないです。なのでここまで(人の領域の限界)は持っていかなきゃいけない。

なので私がやったのは、なるべくここのラインまではもってこようとしていますが、ここ(人の領域の限界)まできたものに関しては「あともう祈るしかないな」と思うし。本当、世の中の偉大な実業家さん、例えばユニクロだって野菜売ったりしてましたから。わかんないんです、本当に。誰だって失敗してますので。失敗してもがっかりしないのは大事ですが、やっぱりここのラインまで持ってくる努力はしなきゃいけないなというのが、モノ作りの自分が考えた目標です。

という感じで一部は終わったんですが、二部はちょっと延長させてください(笑)。一部ほど長くないんですが、二部が一応は本題のほうなので、こちらも話をさせていただきますので。