女性活躍は「支援モード」から「起点モード」へ

小田木朝子氏:では「攻めのダイバーシティ推進」について、いったん、ダイバーシティ推進の中でも「組織の中の男性正社員以外の最大のマイノリティ」と言われている、女性活躍にフォーカスをして、私からお話させていただきます。

まず、私たちは2013年から、女性活躍に関わる企業との取り組みをスタートしています。ここ3~4年で、かなり本質的な女性活躍の目的というか、カラーが激変してきたなと感じております。

それがどう変わったのか? というのが、こちらの図なんです。ひと言でいうと、今までは「女性支援モードの女性活躍」だったところが、今は「女性起点で男性中心の硬直した組織、これまでの仕事のやり方、マネジメントのやり方を変えていく」という「女性起点のモード」にかなり変わってきているなと思っています。

右と左、比較していただくと「そうだよね」と言えると思います。左側の「支援発想」だとどうなるか?「多様な人がいる」ところまでは、支援発想でなんとかなるんです。

弱い存在だったり、通常の働き方では仕事の継続が困難ないろいろな人たちに、なんとかがんばって働き続けてもらうために「手厚く支援していこう」というモードだと、ダイバーシティまでは進むんです。そこからインクルージョンして成果につながるというところは、支援モードだと難しいということが、たぶん気付かれてきたんじゃないかなと思います。

それが「起点モード」に変わるとどうなるか?「多様な人がいて、かつ成果にちゃんと貢献している状態をつくっていこうよ」という、こちらに議論というかイシューがシフトしていきているのが今だとと思っています。

「どう活躍させるか?」ではなくて「何を目指すのか?」

もう一度問い直すと「なんのための女性活躍ですか?」。ここをみんな、本気で考え出してきているんじゃないかなと思っています。これを、ダイバーシティ推進に置き換えて読んでください。

スタートは「どう活躍させるか?」ではなくて、この図でいうと一番右側。「何を目指すのか?」です。「女性活躍で何を目指すのか?」ではなくて「組織はどんな状態を目指していくのか?」ということです。

さっき沢渡さんが話をしてくれた、ビジネスモデル変革。仕事のやり方を変えて、成果の出し方を変えて、これまで以上に勝っていける。さっきどなたかがコメントに「生き残っていけるかどうかの瀬戸際ですよ」というコメントもくださいました。一番右側が、本当に目指す成果なんです。

これ、どういう順番で見るか? というと。最終的に一番右側の「目指す姿」を確認した上で、まず一番左に戻るんです。これが、みなさんが最初に斉藤さんの投げかけで書き込んでくれた「(右側の最終成果に向かうにあたって)今、それを阻むものってなんなのか?」ということです。いわゆる職場の中にどんな問題があって、何を解決しなきゃいけないのか? ここが次にきますよね。

さっきのチャットと、驚くほど重なる内容が多くて「ですよね!」と思いながら拝見していました。さっきの沢渡さんの事例で行くと、アナログベースの仕事のやり方だとか、気合と根性重視のカルチャー、同調圧力。全部、最初の(質問に対する回答の)コメントに出てきたなと思います。

一番右の成果を達成するために、この問題を解決していかなければならない。そこに女性活躍だとかダイバーシティ推進という取り組みを、どのように絡めて相乗効果を出していくのか? というところが、取り組みの本質だと思っています。

「周囲に援助や支援を求める行動」=ヘルプシーキング行動

今日はこの取り組みの成果を上げていくに際して、たぶん根底になるであろうと私たちが考えている「ヘルプシーキング行動」というキーワードを取り上げて、みなさんとディスカッションができればと思っています。

今、初めて出てきた「ヘルプシーキング行動」についてシェアしていきます。平たく言うと「ヘルプをシークする」。ですので「周囲に援助や支援を求める行動」になります。

「対比ワード」を考えていただけるとわかりやすいんですが「1人で抱え込んで、かつコラボレーションしない」。これが「ヘルプシーキング行動」の対比ワードです。

なぜ今、ヘルプシーキング行動にこれほど注目が集まってきているか? 1つは「困っていても頼れない」ということ。この状況が何を生むか? というと、みなさんの関心ワードで行くと「エンゲージメントの低下」だとか「離職」「メンタルヘルス」。いろんなキーワードに関わってくるのではないかなと思います。その根源にあるのが「困っていても頼れない」「1人でなんとかしなきゃいけない」という、心理的・物理的な孤立だと思うんですね。

助けを求めてオープンに開示できるのは、ビジネススキルの1つ

今まで、この「助けを求める」とか「周囲に自己開示する」というのは、わりと“タイプ論”で語られてきたと思います。今、私たちが進める中では「助けを求める」だとか「オープンに開示する」というのは、タイプとか性格というレベルの話ではなくて「知識として体系だってきちんと教えれば、誰でも実践して上達させることのできるビジネススキルである」という定義がスタートになるように思います。

そして「困っている誰かが助けを求める」という発想ではなくて、今日、特にテーマにしたいのは「チームで成果を出すために欠かせない」という観点で、このヘルプシーキング行動をどのように見ていくのか? ここを、みなさんと一緒に考えられたらいいなと思っています。

もしかしたら今、みなさんの頭の中にクエスチョンが浮かんだかもしれないと思うんです。「助け合い?」。このキーワードにどんなイメージを持っていますか?例えば“ほのぼの牧場”が頭に浮かびますか?

確かに助け合うって大事だけれども「この生き馬の目を抜く時代に、そんなぬるいこと言ってられるの?」って、そういうクエスチョンが必ず浮かぶと思いますし「企業は助け合えるチームであることを求めていない」という声も、たまにいただきます。

組織が本当に求めているのって「成果を出すチーム」であって「助け合えるチーム」ではないんです。「助け合えるチームが大事だ」って私たちが発信するためには、まず「助け合えるチームとは、この環境下において『成果を出せるチーム』である」というロジックを、明快に説明しなきゃいけないのかなと思います。

なぜ「助け合い」は業務改善につながる?

今日は時間がないので、めちゃくちゃかいつまんで、ポイントだけ押さえます。さっき沢渡さんが「今ってこういう環境ですよね」と言ってくれたこと、平たくいうと、変化がめちゃくちゃ速くて、誰も答えを持っていなくて、いろんな人がいる。その中で勝っていかなきゃいけない。成長していかなきゃいけない。そういう時代だと思うんですよね。これが上の「環境」の部分です。

この環境下で助け合えるということが、どうして「成果を出す」とつながるのか? それが下側の部分です。「助け合う」「1人で抱えない」ことで、リスク低減を実現し、かつ助け合うためには、業務の標準化だとか、そもそも仕事のやり方を変えなきゃいけないということが、多々出てくると思います。なので、これが業務改善やプロセスの変革につながっていく。

さらにエンゲージメントが向上することで、優秀な人材が定着していく。さらに優秀な人材が「その組織で働きたい」と言いながら集まってきて、最終的に助け合って自律的に成果を上げられるということは、一人ひとりが業務マネジメント力を上げて、仕事の範囲・関心の範囲を広げなければいけないので、結果として、成長が大いに促進されて人材育成につながる。

このサイクル実現させていくのが「成果を出すチーム」。すなわちそれは「助け合えるチーム」である、というロジックなんです。ぜんぜんぬるい話ではなくて、むしろもう1段、仕事のやり方や関係性の築き方をアップデートしていかなきゃいけないというところが、ヘルプシーキングの本質なんです

助け合えるチームづくりの着眼点

最後に、助け合えるチームづくりの着眼点。このあとのトークセッションの部分で、斉藤さん沢渡さんと一緒に深掘っていければと思います。

「助け合って、かつ成果を出せるチーム」をつくっていくためのレイヤーが横軸です。着眼点が3つあります。「情報共有はどのように進めるのか?」「業務プロセスをどうやって改善していくのか?」「助け合いを“是”とする文化を、どうやってつくっていくのか?」。

次に、統制型・ピラミッド型の組織を、助け合いながら成果を出せるチームに変革した弊社の事例を掲載しています。「気合と根性が大好き、残業バリバリの組織」から変換したという、そういった実例です。

理論だけではなくて、実際に自分たちがマネジメントを変えて、仕組みを変えて、取り組んだ結果としてどうなったか。実際に「経営効果が出ました」というところを、小さい組織での実践例としてお話させていただいています。

その手応えと、進める段階でぶつかった壁とその乗り越え方、そういういった情報を今日はオープンに話をしながら、トークセッションにつなげていければと思っています。みなさん、よろしくお願いします。