“自分は要領が良くない”という思い込み

司会者:それではさっそく、F太さんと小鳥遊さん、よろしくお願いします。

F太氏(以下、F太):「ひらめきメモ」と「F太」というアカウントでTwitterをしております、F太と申します。よろしくお願いします。

小鳥遊氏(以下、小鳥遊):小鳥遊と申します。よろしくお願いいたします。

F太:「実はすごく要領良く見えるんだけどな」「しっかりタスク管理ができているように見えるけどな」という方が、我々のイベントにはけっこう来てくれたり、本を買ってくださったりしていて。要領が良い・悪いとかは、本当に主観的なんだなというのは、我々が思うところなんですね。なので『要領が良くないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』という本の名前にしたんです。

要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑 (サンクチュアリ出版)

実際に我々の思いとしても、「要領が良くない」というのは思い込みかもしれないなとか、テレワークに関してもだいぶ思い込みがあるなというのを、問題意識として強く思っています。短い時間ですが、そういったところを少しでもお伝えできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

小鳥遊:よろしくお願いいたします。

「料理上手は仕事上手」?

F太:我々2人が半分ずつお話をしたいと思うんですが、最初に小鳥遊さんからお願いしたいと思います。

小鳥遊:では、始めさせていただきたいと思います。「要領が良くない人でも、テレワークで仕事と家事をうまく回すコツ」ということで、まず一番最初に「料理上手は仕事上手」というお話をさせていただこうかと思います。

「思い込み」というキーワードが出ましたが、「家事と仕事は別物だ」「ぜんぜん別のスキルが必要だ」と考えている方はいらっしゃると思うんです。でも、私はもしかしたら共通点があるんじゃないかと思っています。そこでたどり着いた結論が「料理上手は仕事上手」なんですね。

例えば、いっぺんにいくつもの品数を作る料理ができるのであれば、仕事もその考え方でうまくいくんじゃないか、ということなんですね。

目の前にたくさんの仕事があって、どれからやればいいのかわからない。いっぺんになにもできなくて頭がパンクしてしまう方って、いらっしゃるかと思います。そういう方がお家に帰ってなにをしているかというと、けっこう普通に料理をしていたりするんですよね。一度にいくつもの品数を作っていたりするんですが、「あれ、それって(仕事と一緒じゃないか)」と思ったわけなんですね。

料理も仕事も「待ちの時間」の使い方がポイント

小鳥遊:例えば、茹で鶏を作るとします。自分が鶏肉をレンジに入れて、解凍してもらうわけですよね。そうすると、レンジがそのぶんアクションをしてくれます。そして解凍が終わった鶏肉を自分で切って、鍋に入れます。鶏肉が茹で上がりタレをかけて食べるという、一連の「茹で鶏を作る」という流れがあったとします。

これは「レンジで解凍する」のと「鶏肉を茹でる」のは、それぞれレンジと鍋がやってくれることなんですね。つまり、この時に私はなにをしていたかというと、別に茹で鶏を作ることに関しては、なにか作業をしていたわけではなく「待ち」の状態になるわけですよ。

それで考えていただきたいのが、いくつもの品数を作る場合は、レンジに解凍を任せている時に他の料理の食材を切ったり、皮を剥いていたりとか、他の料理を作ることにうまく「待ち」の時間を使っていると思うんですよね。

これは、仕事でも流用できるんじゃないかと思うんです。鍋やレンジに仕事をさせているうちに、自分が他の作業を済ませることができていれば、実は仕事の「マルチタスク状態」が怖くないなと思うわけなんです。

例えば、売上実績報告書を部長に提出するという仕事があったとします。実績資料を出してもらうため、経理に数字を教えてもらえるようにお願いをして、そして経理からその資料をもらいます。報告書の案を作って、一旦先輩に「この報告書の案でいいですか」と確認して、先輩から「これでいいよ」という返答をもらい、報告書を部長へ提出するという一連の流れがあったとします。

それぞれ先ほどの「自分とレンジ」とか「自分と鍋」というのと同じようにすると、これは「自分と相手」ですよね。相手が経理や先輩だったりしますが、この時でも「待ち」の状態が発生するわけですよね。

待ちの状態が発生している時に他の仕事をやれば、同時に複数の品数を作る料理と同じような感じで、仕事もマルチにこなせていけるようになる。……厳密にはマルチではないんですが、周りからはほぼ同時に仕事を進めているように見られるわけですよね。

こういうふうに、(仕事と家事も)効率的に進められるんじゃないかというのが、私の感想です。なので、料理の品数をたくさんにいっぺんに作れる方は、仕事もすごくよくできるんじゃないかなと。つまり、仕事と家事をうまく回すコツは、実は共通しているんじゃないかなと思います。

パートナーと円満に過ごす秘訣は、“軽率に褒める”こと

小鳥遊:こうして、仕事と家事を同じようなコツでうまく回すことができるようになるとしても、家で仕事をする時には、家事に費やす時間と仕事に費やす時間は、けっこうツッコミが入ったりもすると思うんですよ。

パートナーから「仕事ばっかりしてないで、もうちょっと家事を手伝ってよ」なんて言われたりすることも、あるんじゃないかなと思うんですね。私は妻のおかげで、そこらへんはうまくやれているなという実感はあるんです。ただ、私からもパートナーとのコミュニケーションで心がけていることがあるので、お伝えしようかなと思っております。

『要領図鑑』を読んでいただいた方は、例えばつらい状態のことを「しびれるなあ」と言い換えるという内容が本にあったのを覚えているかもしれませんが、そんなちょっとしたライフハック程度に考えていただければと思うんですね。

ということで2つ目は、パートナーとのコミュニケーションですね。こちらは自分のがんばりとかではなくて、ちょっとした工夫を4つ出させていただきました。

言葉の出だしで「いや」と出てくる人がいると思うんですが、それを「うん」で始めると、かなり違うんですね。あとは「完璧」「最高」という言葉を軽率に使うのはいいと思います。「今日の料理最高だったよ、完璧だったよ」みたいなことを軽率に使う。嘘は言っていないんですが、自分の気持ちを最大限に表現するのがいいのかなと思います。

あとは「それ良いね」と言うとちょっと上から目線なので、「それ好きだな」と言うと、「アイメッセージ」という自分の気持ちのメッセージになります。自分が「良いね」と評価するんじゃなくて「好きだな」と思っていることをお話しすると、相手にはその気持ちがすごくストレートに伝わって、いいんじゃないかなという実感があります。

一番最後は「すきあらば感謝、褒める」ということで、ちょっとお説教みたいな感じで気が引けるんですが。これらを工夫の1つとしてやっていただくことで、仕事と家事、テレワークをやりながら、家のこともよりうまく回る潤滑油になるんじゃないかなと思います。

「やったほうがいいか」ではなく、「やれる状態かどうか」で決める

小鳥遊:最後に「やったほうがいい」をやらない考え方。こちらは実際に「評価や周りからの目が気になって、『本当はやらなくてもいいんだけど、やったほうがいいかな』と思ってやってしまうんです。どうしたらいいでしょうか」という質問をいただいたんですが。

「やったほうがいい」というのは、できるんだったらもちろんやったほうがいいなというのは、大前提にあります。なので「周りに対してやってあげたい」という気持ちや、評価が気になるのはとても大事なんですが、ただ「やれる状態かどうか」を冷静になって考えたほうがいいかなと思います。

「やれる状態かどうか」は、自分の頭の中だけで考えていると「うん、やれる」と簡単に結論付けちゃうので、そうではなくて「今、自分がどれだけの仕事をいつまでにやらなきゃいけないのか」を書き出してみて、それでもやれる状態だったらやったほうがいいわけです。

それだと自分がもともとやらなきゃいけない、優先順位の高いものができなくなってしまうのが明らかであれば、「これはやったほうがいいかもしれないけど、ちょっと今はできないな」と考えられるんじゃないかなと思います。

ご質問に対しては「やれる状態かやれない状態かを冷静に判断できるようにそれぞれ手順書を作って判断してください」というお答えになります。ここまでで、私のパートといたします。