ファシリテーター・登坂直矢氏と、石川聡彦氏について

登坂直矢氏(以下、登坂):まず、ファシリテーターの私の自己紹介からさせていただきます。日本ディープラーニング協会の「G検定」という資格を取得しまして、来歴のところに書いてありますが、大学の専門は疫学だったんですけれども、その派生で統計学を学びました。

そのあと、統計とかAIとか機械学習とはまったく関係なく、リクルートで営業・事業企画・カスタマーサクセスなどを経験させていただき、その際に「G検定」とか「E資格」も取得させていただいて。「E資格」の模擬試験とかも、ディレクション業務ですが作成をさせていただいたりしました。そのあと、AI人材育成に、より踏み込みたいなという思いで、アイデミーのコンテンツ部長を6月からさせていただいております。今回、弊社・石川の『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』という本を教材コンテンツにしたいと思って、ディレクションをさせていただきました。

投資対効果を最大化する AI導入7つのルール

ここは、本人に自己紹介をしてもらう予定だったんですけれども、急用でちょっと遅れるという連絡を先ほどもらいまして(笑)。私から代わりに紹介をさせていただきますが、この『AI導入7つのルール』という本の著者でして、ほかにも『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』とか、そういった数学や機械学習分野の本を書いていたりします。

大学時代は機械学習を用いて応用研究とか、以前に聞いたところだと、水道・水系の研究に機械学習を用いていたと。そのような経験もあって、こういったAI人材の育成などの分野の起業をしたと聞いております。のちほど、またセミナーに参加した時に、自己紹介をしてもらおうと思います。

「先端技術を、経済実装する。」を理念とする、株式会社アイデミー

登坂:それで、アイデミーの紹介なんですけれども。会社の理念は「先端技術を、経済実装する。」と言っております。この先端技術というところでも、特に今はAI・機械学習・ディープラーニングという分野が……もうガートナーのハイプ・サイクルという「技術にどのくらいの期待値があって、どのくらい今は世間的には幻滅されているのか?」みたいなところで言うと、もう深層学習は、ほぼ幻滅期に入ってきているような状態ではあるんですけれども。

これから着々と、水面下でAIや深層学習が、産業や日常の生活に、どんどん入り込んでいくようなフェーズになってくると思っています。なので、そういったところでAI・深層学習を取り入れて、お客さまの中でちゃんと利益を出せるような。そういったスキームで提供できるように内製化支援をさせていただくことを、理念として挙げています。

製造業のお客さまを中心に、金融であるとか大学であるとか。あとは製薬会社さんとかも契約させていただきまして、120以上の法人の企業さまにサービスをご提供しています。特に製造業系のお客さまだと、やっぱりスマートファクトリーであるとか「IoT機器を使って、どうやって工場の自動化などを進めるのか?」みたいなところにお悩みなんだなと、日々感じているところです。

「AI導入時における課題」と「AI拡張時における課題」

登坂:ここからは講座の紹介をさせていただければと思っています。「投資対効果を最大化するAI導入」というようなタイトルで、セミナーもさせていただきますので。おそらく参加されている方々はAIであるとかDX、あるいはIoTを会社に導入するであるとか。もしくは、全社に広げていくといったミッションを持たれている。または持っているプロジェクトに入っているとか。そういった方々なんじゃないかなと思っています。

ぜひそういった方々にこの講座、受講していただきたいなと思っていますし。法人向けのコンテンツになるので、法人としての契約がない場合は、ぜひ本を手に取って読んでいただけると、ものすごくためになるんじゃないのかなと思っております。

この1枚のスライドをご覧いただきたいんですけれども。「AI導入時における課題」と「AI拡張時における課題」というのを、グラフで持ってきています。左側が、AI導入時における課題なんですけれども、一番高いのが「リーダーがいない」というところと「組織体制がない」。3番目とかになると「IT環境が複雑」であるとか、4番目「戦略がない」というようなところになってくるんですけども。

やっぱり1つ目、2つ目というところは、AIを導入するために「じゃあ機械学習のプロジェクトをどのように進めればいいのか?」であるとか。今までのソフトウェア開発・システム開発のプロジェクトの進め方だと、どうしても手戻りが発生してしまうので、そこの違いをちゃんとわかってAI導入のプロジェクトをリードできるような、そういったリーダーが本当は必要なんですけれども。そういう人材がいないであるとか。

あとは組織体制ですね。「そもそもどこの部署が管轄として進めるのか?」といったところが、課題として挙げられておりました。やっぱりAI人材の教育研修で解決できる課題が、AI導入時には目立ってまいります。

一方で、AI拡張時における課題については「戦略がない」というところが、一番多い課題として挙げられています。ここは主に経営層のところですね。「エグゼクティブ陣のAIについての戦略立案が求められる」と書きましたが、DXの旗振り役である本部長・役員みたいな方がAI導入を先導して、ある程度の結果が出たところで「じゃあ全社にどうやってDX戦略を作っていこうか?」というところで課題を感じられるようなところが、やっぱり多いと聞いております。

今回は、AI導入時における課題のところですね。そこにフォーカスをして「ターゲット」と書かせていただいたんですけれども、受講していただきたい方を想定しております。

タイトルも「AI導入7つのルール」ということなので、導入する上で機械学習を使ったビジネスの立ち上げに関心のある管理職の方であるとか、テクノロジーを使った新規事業の構築を担当する企画職の方。新規事業じゃなくても、既存事業をDX化するところを企画する方であるとか、そういった方々にとって、非常にためになるようなコンテンツをご用意させていただきました。

講座のゴールと流れ

登坂:本講座のゴールなんですけれども「機械学習の企画づくりの勘所を理解し、データやAIが絡む企画のたたき台を作り込むことができる」。AIとかデータというものが企画に絡んでくると、やっぱり考えなくてはいけないポイントがあるので、そのポイントをしっかりと組み込んだ企画を作れるようになる、というところがゴールになります。

このゴール状態に到達していただくために、このような感じで講義を構成させていただいています。まず本講義のポイントと、議論のベースとなる「機械学習のビジネス活用に関するフレームワーク」を理解していただきます。そのあと、機械学習で解くべき課題の選定ポイントや、投資対効果を検討するためのビジネスインパクト、コストの試算方法についてご理解をいただきます。ここはプランニングのフェーズですね。

プランニングできたら、実際に機械学習のモデルを作っていったり……デプロイですね。運用フェーズまでしっかりと設計した上で、運用のシステム面の構築をしていきます。機械学習独特の性能についての考え方を掘り下げて理解していただいて、機械学習モデル独特の保守・運用の考え方をご理解していただきます。機械学習モデルの再学習が必要であるとか、そういったところをここではお伝えさせていただきます。

そして「予防保全」「不用品検知」「レコメンド」といった代表的な事例について、サンプルの企画をご紹介させていただきます。ビジネス活用に関するフレームワーク、弊社で「ML Business Canvas」と呼んでいるフォーマットがあるんですけれども。そのフレームワークを活用して、サンプルの企画書をご紹介させていただきたいと思っています。

最後、エンディングですね。本講義で学んだことを復習していただいて、実際にワークシートを使って、機械学習のビジネス活用を行う企画を立案していただきたいと思っています。機械学習のビジネス活用に関して、どういうポイントに注意すればいいのか? というところを一通りご理解いただいた上で、実際に企画を作るところを、実践的に学んでいただけるような講座になっております。

先ほどもお伝えさせていただきましたが、本講座の教科書がこちらの『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』という本になります。

こちらが先ほどお話しさせていただいた「ML Business Canvas」と呼んでいるものです。「プランニング」と「モデリング」と「デプロイ」というフェーズを、大きく3つに分けているんですけれども。それぞれで必要な観点「課題」「投資対効果」であるとか「入力データ」「出力データ」「実運用」。そして、その間で考えなければいけないことを図式化したものになります。プランニング、モデリング、デプロイというような流れで、実際にはプロセスを進めていくかたちになります。

企画書として文字化する時には、こちらのフォーマットシートをご利用いただくことが多いです。こちらをしっかり書くことによって、プランニングからモデリング、デプロイまでをしっかりと企画できるようになります。そうすると今までのソフトウェア開発・システム開発とは違った観点を、もれなく比較できるようになるので。まずこちらのご紹介した講座を受講いただいて、この「ML Business Canvas」を書いていただくというようなところが、おすすめかなと思います。

「7つのルール」が生まれたきっかけ

登坂:そろそろ、弊社代表の石川が……。

石川聡彦氏(以下、石川):はい、出てます。

登坂:お疲れさまです。今、私のパートが終わったところで、ぜひここからは私から石川さんへ、質問をいくつか投げながら。「『7つのルール』がどうやってできたのか?」とか、「お客さまからどういったところが悩ましいと聞くことが多いのか?」とか。お話しできる範囲で、ぜひお話しいただけたらなと思っています。

今までのところで、今回の石川さんの著書である『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』のご紹介であるとか、昨日リリースさせていただいた講座をどういう方に受講していただきたいかとか。あとは、実際の講座の構成とかゴールといったところをお話しいたしました。

そして、ここからは私から石川さんに質問をいくつか投げさせていただきたいなと思ってるんですけども。この「7つのルール」が生まれたきっかけについて、お話しいただけたりしますか?

石川:まず、本質的でないところからあえてしゃべりますと、本を売る時に「奇数にしたほうが売れる」という、そんな話がありまして。

登坂:(笑)。

石川:「7つの習慣」「5つの〇〇」とか「5日で〇〇」とか「3日で終わらす」とか。なぜか3・5・7が売れるらしいんですね。今回の講座って『投資対効果を最大化する AI導入7つのルール』っていう本をベースにさせていただいたんですけども「6じゃなくて8じゃなくて、7にしてくれ」と言われて奇数にした、というところでございます。なので数字的にはそういう意味があると。

数字がどうこうというところは本質ではなくて、やっぱりこのターゲットとして、管理職とか企画職の方に向けて書かれた本でございます。最近多くなってはきたんですけれども、機械学習・AIのプログラミング、モデル作りというのが今、どんどんハードルが下がっていて。「民主化」と言われたりしますけれども、機械学習のモデル、AIを作ることのハードルがどんどん下がってくると。

そうなってくると相対的に重要性を増してくるのが「そもそもどういう課題を解くのか?」とか「どういうデータで何を推論するのか?」という「AIの構造を明確にする」という部分。そこにこれから重要性が増してくると思っておりました。

実際、私たちもAidemyというサービスをご提供する中で、お客さまの求めるものがどんどん、この2年間で変わってきたと。2年前は技術者、AIの作り手をどんどん育てていきたいというニーズが多かったですけども、最近はむしろ「どういう課題をAIで解くのか?」という課題選定とか「企画職とか管理職向けの教材のほうが、むしろほしい」というかたちで、お客さまの課題感の部分がどんどん変わってきたんですね。

やっぱり背景としては、そういったAIの民主化みたいな話もありますし、もしくは「PoC疲れ」とか言われたりする、試行錯誤の連続になかなか疲れてしまっていて。そもそも「どういう課題を解くのか?」というところが、やっぱり根本として大事になってくる最上流の部分ですから。そのあたりの人材をもっと育成していきたいと、そういったニーズをうかがいました。私の「7つのルール」、そういった方に向けてわかりやすく、7つに絞って企画作りのポイントを紹介したようなものになります。

登坂:ありがとうございます。そういったビジネスプランナー的な方々が必要とされてきているということは、なにかお客さま先でも「エンジニア系の方々は足りてきてる」みたいな、そんな状況ではあったりするんですか?

石川:もちろん足りてはいないですね。エンジニアもすごくニーズがあります。ただ彼らと同じぐらい、やっぱり企画職の方のニーズが強まったというのがあるかなと思ってまして。ただ母数で言うと技術者の方より企画職の方のほうが、やっぱり多いんですよね。ですので人数感の課題とかが、声として上がってきやすいのはむしろ企画職の方だなと。そんなことを思っています。

機械学習の企画で一番大事なことは?

登坂:ありがとうございます。じゃあ次の質問に進んでいきたいと思います。機械学習の企画で一番大事なことは何でしょうか? これは本とか講座の中身と、ちょっとかぶってしまうところもあるかもしれないんですけれども(笑)。

石川:今回リリースさせていただいた教材のタイトルにもなっておりますし、本の副題にもなってはいるんですが「投資対効果を最大化する」。やっぱりビジネスインパクトが大きいものが一番大事なことになります。そうは言っても「それは当たり前だろう」とおっしゃると思うので、もうちょっと深掘りしてお話しすると……。

特にこの機械学習・AIという分野ですね、非常にユニークな点としては「データの蓄積によって性能が上がる」と。これは十分条件ではなくて必要条件なんですけれども「データが貯まれば貯まるほど、性能が高い機械学習・AIのモデルになる」というところが、非常にユニークなポイントで。これが従来のITシステムの開発と、ぜんぜん違うことなんですよね。

ですので、ある意味、競合優位を作ることができると。つまり会社の競争の源泉が何か、いろんなユーザー基盤だったりバリューチェーンだったり調達力だったり、もしくは特許のような知財だったり。いろんな競争優位があると思うんですけども、その中の1つになり得るんじゃないかなと。

例えばデータを蓄積するのに、仮に「絶対に3年はかかるような機械学習モデル」ができたら、やっぱり3年間、競合は作れないわけですから。そこは非常にユニークな点ですし。例えば今のメルカリとかって、いろんなAIを使ってショッピングが楽になっている。画像をパシャッと撮れば、どういうタイトルで、それがどういうカテゴリで、いくらで売れそうなのか出てくるわけなんですけども。そういうものもやっぱり、僕が仮にすごく技術力があったとしても、データがないので同じものは作れないわけですよね。

ですので、データの蓄積によってそれが競争優位に変わるという、そういった課題をどう見つけていくのか。企画職の方にとって、それがやっぱり一番大事なことだなと思います。

「手元にあるデータの利用」をファーストに考えないほうがいい?

登坂:やっぱり最後は「ビジネス上でどの課題を解決するか?」というところが、一番大事になるということですね。AIとか深層学習とか機械学習っていうソリューションに目がいきがちではあるんですけども「ビジネス課題のどれを特定するか?」であるとか。

特定するにしても、さっき石川さんがおっしゃっていた「データ」というのがすごく大事になってくるんだなと思うんですけども。データで言うと、どういったところに気をつけたらいいとかってあったりしますか?

石川:手元にあるデータを利用することを、まずファーストに考えないほうがいいというのは、言えることだと思います。「ガベージイン・ガベージアウト」とか言われたりするんですが、「ゴミを入れたら、絶対ゴミしか出てこない」ということを揶揄した表現で。まさしく機械学習のプロジェクトで、そういう傾向があるなと。

僕もけっこう、新しいAIを考えようとなると「こういうデータがあるから、これを活かして」っていう発想にはなりやすいんですけれども。やっぱりそれでPoCをしても、良い結果になることは、本当にまれなんですよね。

なぜかというと理由は2つあって、1つ目は「そもそも自分たちが解きたい課題に即したデータではないから」。もう1つは、仮に(自分たちが解きたい課題に)合ったとしてもそれが「すぐに機械学習をかけられるぐらいフォーマットがきれいで、正規化されているデータでないことがほとんどだから」なんですよ。

いずれの場合も、データは取り直しになってしまうケースがやっぱり多いんですよね。であれば「今こういうものがある」なら、当然それを使えればいいのは間違いないんですけれども、そもそも機械学習で何を解きたいのか? 特に画像認識で解けるようなものは、かなり性能が上がっているので。今までセンサーで取っていたものを画像で取ることで自動化できないか、とかですね。そういった切り口でいろんな課題を洗い出していくと、非常にユニークな企画ができるのかなと思っています。

登坂:ありがとうございます。既存のデータを使いたいという気持ちはものすごくわかるんですけれども、やっぱりビジネス上の課題を解くために、じゃあどういうデータが必要なのか? で、たまたま既存のデータを使えるということであれば、使ったらいいということだと思うんですけども。やっぱりビジネスプランナーとしては、そういうプロセスで課題の解決を考えていかないと、機械学習の企画としてはイマイチになってしまう感じでしょうね。ありがとうございます。