2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
テキサス大学 卒業スピーチ2021 ロバート・A・アイガー(全1記事)
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ロバート・A・アイガー氏:ハーツェル学長、エルタイフ理事長、教職員のみなさん、保護者のみなさん、そして卒業生のみなさん、こんばんは。全員がこうして一堂に会することができたのは、すばらしいことですね。
卒業生のみなさん、おめでとうございます。今年は外出自粛やZoom講義、マスクや鼻腔検体採取、一生分のテイクアウト外食など、ひととおりを体験した1年でしたね。そしてついにみなさんは卒業します。平時の状況であれば、盛大にお祝いしたいところなのですが、今年の卒業式は少々異なる様相を呈しています。
今宵みなさんの前でどんなお話をしようかとひとしきり悩んで、自分の48年前の卒業式を思い返してみました。誰がスピーチをしに来たのか、さっぱり思い出せませんでした。卒業式のゲストを覚えている人など、ほんの5、6パーセントに過ぎないのではないでしょうか。
幸い、みなさんのお手元にはカメラつきの携帯電話があるでしょうから、機会があれば写真を見て、半世紀後に私がゲストだったことをぜひ思い出してください。というわけで、お写真はご自由にどうぞお撮りください。
(会場笑)
さて、自分の卒業式はあまり思い出せないのですが、大学を卒業したばかりの若い頃、自分の人生が今後どうなるのかまったくわからなかったことはよく覚えています。こんな風に卒業式のスピーチを依頼されるなんて、まったく予想しませんでした。
ハーツェル学長並びにご列席のみなさんに感謝いたします。このような特別な日に、フォーティエイカーズ(テキサス大学の愛称)の式に参列できたのは、たいへんな名誉であり、光栄なことです。
さらに、当時は4人もの子どもに恵まれるとは夢にも思いませんでした。そのうちの一人が今日、ここを卒業します。
(会場拍手)
名前はマックスなのですが、こんな風に紹介されてきっとたいへん恥ずかしがっているでしょう。でもこれはぜひ言いたかったのです。マックス、どこにいるかわからないけど、ごめんね。
彼はUT(テキサス大学)で、とても楽しい時間を過ごしたそうです。テキサス訛りも身につけました。カリフォルニア州出身者としては喜ばしいことですよね。そして、高度な教育を受けました。彼の母親も私も、たいへん感謝しております。友達もたくさんでき、きっと生涯の絆で結ばれることでしょう。
マックスの弟も、UTに進学を決めました。
(会場拍手)
というわけで、一家に2匹、ロングホーン(テキサス大学の学生の愛称、主にスポーツ分野で用いられる)がいることになります。うれしい限りです。
今日はみなさんの人生の中でも、もっとも記念すべき日の1つです。そして、いろいろな終わりの日であると同時に、始まりの日でもあります。しかしみなさんの中には、圧倒されてしまっている人もいることでしょう。
若い人の出発点として、この時代はいささか非日常的で、不安定であることは疑いの余地もありません。グローバルレベルや地域レベルでの大きな困難が待ち受けており、簡単な解決策はありません。
一方で、胸の高鳴る時代でもあります。なぜなら私たちの世界は、想定以上に速いスピードで変化しているからです。数多の破壊がありましたが、創造も多くなされました。新しい産業やビジネス、今までにない新しい職業ができました。そんな職を手にすることができる、ここテキサス州オースティンのような期待に満ちた地も存在しています。私たちは、発明やイノベーションの真っ只中にいるのです。
このようにダイナミックかつ急激に変化していく時代は、無数の困難があったとしても、みなさんの世代に大いなるチャンスを与えてくれるのです。そこで今宵は、これまで私が学んで来た、「チャンスを最大限に利用するコツ」について、いくつかのアドバイスと教訓をお伝えしようと思います。
これまで私がもっとも多く受けてきた質問は、2つあります。「ディズニーキャラクターで一番好きなのは誰ですか?」。なぜかみんな必ずこの質問をするんですよね。
(会場笑)
もう1つは「今のあなたの成功の一番の秘訣は何ですか?」。
最初の質問の答えは「ティンカーベル」です。ティンカーベルって実は、成長したベビーヨーダなんですよ。
(会場拍手)
これはあまり重要ではありませんね。
2番目の質問の答えは「大胆さ」です。大胆になるべき時はいつかと問われば、今まさにこの時です。人生で意味のあることを成し遂げる唯一の道は、大胆に行動することであると、私の経験や、指導者や友人らから学んで来ました。遠慮していては、誰も何も達成できません。
当然ですが、遠慮しないことが大胆さだというわけではありません。大胆さとは、恐怖や不確実な状況に直面した時に、迅速で有意義な行動を取れることです。つらく、人が避けるような選択の道に、勇気と信念をもって立つことです。揺るぎない信念を持って、誠実かつ高潔に向き合い、正しいことを行うことです。人、場所、考えに対し、常に深い探求心を向け続け、まったく新しいことに挑戦する確固たる意志を持つことです。
さらに大胆さとは、大志を持つこと、すなわち大きな夢を持ち続けることを指します。ほとんどの卒業生のみなさんが、今まさにそうであろう20代前半には、「大きすぎる夢」など存在しません。みなさんの可能性は無限大です。
ここで私からのアドバイスです。楽観主義でいきましょう。自信を持ち、自分自身と自分の能力に信念を持ってください。そして、夢は叶えられると信じるのです。他人に無理だとは言わせないでください。
近年よく耳にする言葉だと思いますが、レジリエンス(適応する力)を持ってください。ありがたいことに、空前絶後の苦難に満ちたこの一年を乗り越え、無事卒業していくみなさんは、レジリエンスの持ち主だということをすでに証明していますね。
お話ししたすべての資質、すなわちレジリエンス、大志を抱くこと、探求心、楽観主義、大きな夢を持ち続けることは、みなさんの役に立ち、チャンスを最大限に利用する助けになるだけでなく、失敗などの困難に立ち向かうすべにもなります。
ちなみに、失敗とは世界の終わりではありません。行き止まりですらありません。私がみなさんくらいの年齢の時は、全国ネットのアナウンサーであるアンカーマンが夢でした。新卒で小さなテレビ局のお天気キャスターに就職し、そこからのキャリアアップを考えていました。
ところが、早々にお天気キャスターの才能が皆無であることを自覚し、追い求めていた夢を挫折しました。そこで23歳の時に辞職し、まったく別の職に就くことにしました。これは大胆な行動でした。将来の見通しがまったく立たなかったからです。
私はABCテレビで一番下っ端の、つまり最下層のプロダクションアシスタントの職を得ました。ところがまもなく、ボスのオフィスに呼ばれて「昇進は無理だ」と告げられ、わずか2週間の猶予を持って解雇されました。上司から、23歳にして昇進は無理だと言い渡されたわけです。
私のキャリアは、いささか荒っぽいスタートを切ったように見えますよね。新卒2年にしてお天気キャスターとして失敗し、上司には無能だから仕事は無いと言われてしまったわけです。
幸運なことに、上司は間違っていました。私は昇進し、転職を成功させ、その後には「時代を築いた」などと評価してもらえているのですから。
みなさんは今後、誰かに足を引っ張られたり、否定されたりするでしょう。だから何だというのでしょう。それが人生というものです。私の知る限り、成功した人はすべて、いずれかの時点で苦労したり失敗したりしています。
スティーブ・ジョブスは、自分が創設した会社、Appleから解雇されました。彼を追い出した当事者は、後年それを「人生最大の過ち」だったと言っています。本当の話ですよ。
ウォルト・ディズニーは、若い頃にイラストレーターとして勤めていた新聞社を「イマジネーションに乏しく、オリジナリティに欠ける」としてクビになりました。なんだか信じがたい話ですよね。ウォルトはその後、何年もの間失敗を重ねましたが、楽観主義であり続け、大きな夢をあきらめず、大胆に行動し続けました。今日の私たちも、そんな彼の遺志を受け継いでいることを誇りに思います。
ハーツェル学長が冒頭で好意的にご紹介くださったように、私の在職中、ディズニー社は常に大胆な経営を続けました。そして私たちの大胆さの根幹には、常に「ストーリーテリング」がありました。
数年前のことですが、ピクサーの才能あるチームが、メキシコ固有の伝統文化「ディア・デ・ムエルトス」、つまり「死者の日」をテーマとした映画を制作しました。色彩豊かなキャラクター、フォークアート、すばらしい本物の音楽、それらすべてがデジタルで極めて美しい世界に紡ぎ出されていました。
懐疑的な人は、「世界観が狭く文化的依存度が高すぎるため、グローバル市場では絶対にうけないだろう」と言いました。しかしその真逆であったことが立証されました。
映画『リメンバー・ミー』は、リリースされたすべての国の人々の心を打ちました。なぜなら、人間の経験の多様性、メキシコ文化の美しさと躍動感を賛美する作品だったからです。
(会場拍手、歓声)
そのすぐ後にも、類似の事態が起こりました。マーベル・スタジオの映画『ブラックパンサー』をご覧になった方は大勢いるでしょう。私がもっとも誇りとする作品です。
この作品は、ライアン・クーグラーという才能ある黒人監督の手によるものでした。黒人のスーパーヒーローの物語であり、主なキャストが黒人であることから、ここでも再び、「興行的には成功しないだろう」と言う人がたくさんいました。当然のことながら、それは大きな誤りでした。
『ブラックパンサー』は革新的な大ヒットとなり、社会現象を巻き起こしました。そして、その後も強い影響力を持ち続けたのです。たった一つの大胆な決断が人々のヒーロー観を変え、世界に永遠に残る衝撃を与えたのです。
物語を紡ぎ出す。キャリアを追い求める。大きな影響力のある変革を起こす。みなさんが貢献する手段として何を選ぼうとも、この世界はみなさんの世代による大胆な行動を必要としています。野心的なプロジェクトを興す場合でも、今日、私たちが直面している問題に取り組む場合でも、それは同じです。
そして、その行動はスケールが大きくなくてよいのです。想像してみてください。仮に小さなことでも、みなさんの世代の一人ひとりがたった1つの大胆な行動を起こせば、何万もの行動が集約した強大な力となります。
もし自分の力を信じることができないのなら、ここUTで成し遂げたことを思い出してください。例えば、この時代におけるもっとも重篤な問題であるCOVID-19ウイルスに対して、みなさんが成し遂げた偉業を思い起こしてください。ワクチンの臨床研究が行われたのは、まさにこの大学の研究室でした。重要視されていないコミュニティも見落とさずに、地元コミュニティでの予防接種を実施し、その中心的な役割を担ったのもみなさんでした。
さきほどのお話にもありましたが、テキサス大学で始まったことが世界を変えるのです。みなさんはすでに実践しています。
(会場拍手)
みなさんは恐らく、前のいずれの世代よりも力があり、よりよい装備を携えて世界を変えることができます。驚異的な進歩を遂げたツールがたくさんあり、それを使いこなすことができるのですから。
それらのツールを、破壊ではなく創造に使ってください。理解、尊敬、寛容性を創造してください。大胆に行動し、憎悪や蔑視がつくる害悪と戦ってください。この世界の善の力となってください。
広くすべての人が充足し、納得でき、成功できるチャンスに必ず手が届くように、支援をしてください。真実と礼節を破壊するのではなく、創造する側になってください。
そして、変革できると信じることを止めないでください。かつてスティーブ・ジョブスは言いました。「世界を変えられると信じるようなクレイジーな者こそが、世界を変えることができる」。
さて、人生でもっとも不思議なのは、過ぎ去るその「速さ」です。若い人には理解しがたいことかもしれませんが、だからこそみなさんにお伝えしておこうと思います。
ここUTで過ごした時間が、あっという間だったことを思い出してください。私は今70歳ですが、たくさんの夢を抱き、達成するための前途が広がっていた22歳当時が、昨日のことのようです。振り返っても、これほどまでにすばらしいチャンスが待ち受ける年月が続くとは、夢にも思いませんでした。まさに大冒険であり、この旅路をたどることができたことを深く感謝しています。
今まさに、みなさん全員の前には長い前途が広がっています。世に出て行動を起こし、世界を変えるよう呼びかける一方で、みなさんにはぜひその経験を楽しんでもらいたいと願っています。
もちろん、つらい時もあることでしょう。どん底の時もあるかもしれません。しかし、良い時やすばらしい時もたくさんあるでしょう。そして、多くのうれしい経験や驚きに出会うことでしょう。ほとんどのみなさんは、生涯の伴侶に出会うのはこれからでしょうし、子どもが生まれるかもしれません。情熱を注ぐ何かや、立派なキャリアに繋がる仕事に出会えるかもしれません。
私にとって、人生はとても良いものだったので、振り返って何かを変えたいと願ったことはありませんが、やり直せるとしたら、人への感謝にもっと時間を割いたでしょう。
人生とは、バラの香りを嗅ぐようなものです。でも人生はそれだけではありません。小さなことにくよくよしたり、ささいな理不尽に怒ったりするのが人生ではありません。だらだらしろと言うわけではありませんが、たまには自分に「気楽になること」を許してあげましょう。人生の喜びや幸せ、充足感やすばらしさを堪能できるのは、とても大切な能力ですから。
私の切なる願いは、みなさん全員が人生を享受し、心から満喫してくれることです。夏の日の美しさを楽しみ、人生でこれ以上ないほどおいしいピザに舌鼓を打ってください。私はピザが大好物で、私にとっての「バラの芳香」はピザです。自転車でツアーに出かけてください。サルサを習ってください。デザートを頬張り、ディズニーランドに行ってください!
(会場笑、拍手)
こうしたチャンスをただ待つのではありません。冒険心を持ってください。好奇心を持ってください。新しいことに挑戦してください。特に、今までできると思ってもみなかったようなことを、ぜひ始めてみてください。
一番大切なのは、自分の人生で出会う人々との人間関係を大事にすることです。子どものサッカーチームの監督を務めてください。友達とドライブ旅行に出かけてください。時々は地元に電話をかけて、友人や家族と話すことを忘れないでください。誓いますが、大切な人々と過ごす時間であれば、一分たりとも後悔することはないでしょう。ちょっとびっくりするかもしれませんが、私はみなさんと今この場で、人生を交換してやり直しても良いと思っています。人生とは、先がわからなくて刺激的な、わくわくするような冒険なのですから。
ですから、これから門出を迎えるみなさんに、私から贈るアドバイスは以下のとおりです。
大胆に行動してください。守りに入ってはいけません。より良いものをどんどん創造してください。大きな夢を持ってください。楽観主義で行きましょう。最初の夢が叶わなかったら、次の夢を見つけ、揺るがぬ信念を持って進んでください。
声を上げてください。他者が耳を塞いでも真実を語ってください。人類のもっとも複雑で切迫した問題を、言葉と行動で解決してください。
テクノロジーは、害するためではなく癒すために使ってください。この世界の善の力となってください。なぜなら、世界は改善が必要なもので溢れているからです。
その道中では、人生を享受してください。謳歌してください。楽しんでください。一瞬一瞬を満喫してください。これらを今すぐに始めてくださいね。
聡明なエッセイストにして作家であるE.B.ホワイトはこう言いました。「私は朝目覚めると、世界をより良くしたいという願いと、満喫したいという願望のはざまで引き裂かれる」と。
世界を改善してください。満喫してください。みなさん一人ひとりが、人生の1日1日を全力で生きてください。
今日は輝かしくて喜ばしい、幸せな日です。みなさんが成し遂げた偉業を、全員で心から祝福します。みなさんを誇りに思います。今この瞬間を祝い、堪能してください。ご卒業おめでとうございます。
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