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組織づくりのトップランナー石黒氏と考える 自律型人材の育成論 ~組織を強くする 戦略人事~(全8記事)

企業の存在意義である「ミッション」を、組織に浸透させるカギ 「知らない間に決まった」と言わせないための、決定過程の公開

先の読めないコロナ禍以降の社会において、急激な変化にスピーディ・柔軟に対応できる組織づくりが、より一層求められています。そんな中、変化に強い組織づくりのカギを握るのは、自ら考え、行動できる“自律型社員”。そこで本記事では、5年で60名→1800名に急拡大したメルカリで人事を立ち上げ、採用・育成・評価など幅広い領域で成長を牽引、現在はLayerX執行役員と共にデジタル庁人事戦略アドバイザーも務める石黒卓弥氏が登壇した「組織づくりのトップランナー石黒氏と考える 自律型人材の育成論 ~組織を強くする戦略人事~」の模様を公開します。

1つ前のパートはこちら

ミッションとは「企業が存在する『使命』」であり、向かう方向

斉藤知明氏(以下、斉藤):ではQ&Aに入っていければと思います。たくさんクエスチョンをいただいてますね。こうやってたくさんいただけるっていうのは、ウェビナーのいいところですね。

斉藤:Sさんのご質問です。「ミッションという言葉がたくさん出てきたと思うんですけど、ミッションってそもそも何ですか? どういうものとして解釈すればいいですか」というご質問をいただいているんですけれども。こちら、いかがですかね。

石黒卓弥氏(以下、石黒):ミッションって、一言で言ってしまうと「企業が存在する意義」ですよね。何を成し遂げるために(その企業が社会に)いるのか? という話かなと。ミッションってたぶん日本語だと「企業が存在する『使命』」みたいな言い方になるのかなと思うんですけども、向かう方向ですよね。

石黒:これ、企業っていう単位なので「ミッション」って言い方してますが、チーム単位でも「チームのミッション」でもいいのかなと思っていて。例えば人事部だったら、ミッションっていろいろあるじゃないですか。そのミッションをどう置くか? ですよね。「人を200人採用すること」を置くのか。

例えば「時間外労働をカチッと管理すること」って置くのと「会社に所属するメンバーのパフォーマンスを最大化する環境をつくること」だったら、たぶん後者のほうが人事部としてはワクワクするわけですよね。そのために「会社のメンバーのパフォーマンスを最大化するためにできる仕組みって、何だっけ? 環境って何だっけ? どういう福利厚生がいいんだっけ? どういう給与制度がいいんだっけ? どういう評価制度がいいんだっけ?」……というのを考えていく。

なので、なにかを考える時の軸になるし、その方向性を定めるものが「ミッション」。逆に言うと、これがないとどこに向かっていいかわからないので。戻る巣がなくなっちゃったアリンコみたいに、どこに行っていいかわからなくなっちゃうので。向かう企業活動、もしくはチーム活動ですね。チームもしくは組織として、向かう方向性を定めるものがミッションかなと私は思っていますね。

最後に立ち返る、一つの合言葉

斉藤:ミッション・ビジョン・パーパスって、たくさん言葉としてはあると思うんですけど、企業によってはミッションしかない企業とかもけっこうありますし。ビジョンしかない企業、パーパスしかない企業っていうのもある中で「どれでもいいと思います」っていうことだと思っていて。最後に立ち返る一つの「俺らが成し遂げるのってこれだよね」っていう合言葉なんですよね、きっとミッションって。

石黒:本当、そうですね。

斉藤:なかなか難しいですけど、弊社はビジョンとミッションを定義していますし。この「すべての経済活動を、デジタル化する」っていうのは、これはタグラインか。

石黒:いや、まさにLayerXのミッションです。なので、例えばLayerXは今3つぐらい事業やってますけども、その事業を1個潰してほかの事業立ち上げても、この目的の達成のために事業をやっていくってことになりますね。

斉藤:「これできてますか?」「あなたの行動はこれにつながってますか?」っていうことを問うていく、一番大きな目的ということなのかなと。

小さくてもいいから成功体験を積むと、気持ちよく自走できる

斉藤:では次の質問にもいかせてください。「自走の難しいところは『範囲』だと思っています」と。「すべて自走では丸投げ感もありますし、会社の求めている答えに合っているか不安になります。どこからどこまでを自走にしたらいいんでしょうか?」と。なかなか定義は難しいものだと思うんですけど、どう捉えるといいですかね。

石黒:僕も教えてほしいですけど、これ(笑)。

斉藤:(笑)。

石黒:本当これ、すごくいい質問だなと思っていて。ポンと渡しちゃって「なんかよくわかんねーな」ってうちに、どこまで渡したのかもわかんない、みたいなことがあるので。まずは「小さくお任せしていく」っていうのを、私はお勧めしたいなと。小さくお渡しして、範囲を広げていく。

もしくは最初は例えば、毎日はやりすぎかもしれないですから、3日とか1週間に1回ぐらい「どう? 進捗」って。慣れてきたら2週間に1回、1ヶ月に……と、頻度を少なくしていくみたいなお任せの仕方なのかなと思います。

これも実は、チームメンバーとマネージャーっていうコミュニケーションでも使えますし。今は特にコロナ禍ということもあって新入社員、新規入社の社員ですね。中途・新卒限らずですけど、オンボーディングの時にすごく意識するといいかなと思います。

自走って、どうすればそのあと気持ちよく自走できるか? っていったら、成功体験を積むことだと思っています。小さくてもいいから成功体験を積む、もしくは中途入社の方だったら、以前の会社で得意な領域だったことをお任せする。小さく成功することで今後の自走に自信がつきますし、お任せできる範囲が増えてくるかなと思います。

なので範囲が小さくてもいいし。もしくはマネージャーとして不安だったら、渡してもすぐ戻して自分でできることですね。そうすると安心して渡せるかなと思います。もしくはちゃんとケツを拭ける……ってちょっと言い方アレですけど、自分が一番フォローしやすいことをお渡ししていくのがいいかなと思います。

大企業における、ミッション・バリューの浸透への課題

斉藤:ありがとうございます。たくさん質問をいただいている中で、次の3つの質問がおそらく包括してお答えいただけるといいかなと思っているので、少しだけサマライズをさせていただきますと。

「大手です。ミッション・バリューを心底共感するものに磨き上げつつ、かつみんなに浸透・理解・共感してほしいと思っているんですが、その『作るプロセス』って従業員の意思を反映したほうがいいのでしょうか? また、作るプロセスから反映するプロセス、個々人が自分ごと化するプロセスまでって、どうやって進めていったらいいものかを悩んでます」っていうことかなと思うんですけれども。いかがですかね。

石黒:私が社外の方からご質問・相談受ける中で、トップ1、2ぐらいに多いご相談ですね。それこそ私がいたメルカリや、今のLayerXのような小さな組織だと、新しく入ってくる方に「共感した方だけ入ってよ」っていうことをやっていけばいいんですが。大きな会社さんでのミッション・バリューの浸透は、みなさん課題感をお持ちでいらっしゃいます。

特に形骸化してしまっているケースなんかもあったりします。とはいいつつ「実はちゃんと読み込むといいミッション、いいバリューなんだよね」っていうのがあると思っていて。ご質問にもありましたように、やっぱり「従業員が参加するかたちになる。自分の言葉で語れるようなものになっていく」のはすごくいいことかなと思うので。

もしくはリニューアルプロジェクトみたいなやつをやって。例えば5個あるうちの1個を入れ替えていく。そこで「もう1回見直したけどやっぱこの5個でいいよね」「この3個でいいよね」っていう議論ができると、すごくいいのかなと思います。

決まる過程を公開して「知らないうちに決まった」と言わせない

石黒:あとはその時に、例えば「人事部、これ任せるわ」じゃなくて、社長もちゃんとコミットするとか。重要なキーパーソンがちゃんとそこに参加する、っていうことかなと思いますし。社長が言ったから偉いわけでも、メンバーの誰かが言ったから偉いわけでもなく、そこがフラットにオープンな場で議論できるといいのかなと思っています。またそのディスカッションされたプロセスが、必ずすべて公開されていることは、すごく大事かなと思っていて。

斉藤:なるほど、決まる過程が。

石黒:そうですね。決まる過程を公開して「いや、俺の知らないところで決まったし」って言わせない、これもすごく大事で。「ディスカッションをオープンにします、参加する方を募ります」とかって言うと、1~2割の方は手挙げるんですけど、8割ぐらいの方は「ふーん」なんです。

「オープンにするからね。これは会社のみんなで大事にしていくものだよ、目指すものだよ」といった時に、その「ふーん」って言う方にもちゃんとプロセスを公開してあげるっていうのは、すごく大事なところかなと思います。

斉藤:なかなか難しいですよね。従業員のみんなに参加してもらえれば腹落ちする、ってものでもないじゃないですか。で、そのあと採用するみなさんもいるじゃないですか。(ミッション・バリューを決めたあとに)採用して入ってきてくれるみなさんもいるから。その中で、そのあとのみんなも個々人が納得できる状態をつくるって、すごく難しいなって。

石黒:細かいTipsは山のようにあって、Slackとかチャットコミュニケーションのスタンプを作るとか、Tシャツに書くとか、すごくたくさんあります。例えば「Unipos」のハッシュタグとして使っていくとか、そういう細かいところ。本当、神は細部に宿ります。

インタビューで意識すべきポイント

石黒:あとは、もしここにいらっしゃる方が人事や広報、もしくは社長室とかマネージャーとかでいらっしゃったら。社内・社外のインタビューですね。社内報でもいいし社外でもいいんですけどインタビューに出る時に「ここをめちゃくちゃ意識する」というのをお伝えいただくといいかなと思います。

要は「インタビュー初めてなんですけど、何しゃべったらいいですか?」とか、相談受けるんですよ。「今日はどんなふうに答えたらいいですか?」って言われるんですけど「ミッションとバリューのことを考えてしゃべって。もしくは頭の中で飛んじゃったらそれだけ見て、そこに立ち返ればいいからさ」って言うと、すごく芯の通ったインタビューができあがるんですよ。みんなそれに則ってしゃべるので。

斉藤:なるほど。

石黒:例えば「LayerXは『徳』というのを大事にしてまして……」って言うわけです。そうすると会社から社会に出る、もしくは社内の刊行物で「常にみんながバリューとかミッションのことをしゃべってる状態」ができあがっていくんですね。みんな、もともとはそれが好きな言葉なので、話しても違和感ないですし。そういったものを目にする機会が増えていくのは、すごく社内に浸透していく中で大事な営みかなと思います。

斉藤:ありがとうございます。まさにそうですね。社長がその考えを示す。そして決めた最後の人がその考えを示すだけではなくて、一人ひとりが自分の言葉で語ってる環境をいかにつくれるか? というのは、1つのTipsとしてすごくおもしろいなと思いました。ありがとうございます。

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