「自律してる状態」を示す、3つのパラメーター

斉藤知明氏(以下、斉藤):ありがとうございます。石黒さんのお話、何枚かキースライドがあったなと思いました。「自律型」と「ほったらかし自走」とか、すごくいろんな言葉があるんですけど、難しいなって思うんです。

斉藤:ただ、今って資本主義じゃないですか。会社は法人格なので、目標って「利益を追求すること」じゃないですか。どうしても「社会で貢献すること」になるんですよね。

そのため「自律の定義」を、改めて僕らの中で一本、通したいなと思ってるんです。「目的、向かう先」というパラメーターと「一人ひとりの裁量権」というパラメーターと、「上司部下の関係性」というパラメーターの、3つぐらいあるのかなと思っています。

石黒さんの中で「自律してる状態」って、それぞれのパラメーターがどういう状態になっていることを表しますか?

石黒卓弥氏(以下、石黒):まずは、自分の言葉で「どこに向かっているかを語れる」というのが、1つめの「どこに向かうか?」っていう話ですよね。

斉藤:「自分の言葉で語れる」。

石黒:はい。だから「あなたのミッションは何ですか?」って聞いた時に「ちょっとマネージャーに確認してきます」じゃ、自律とは言えないですよね。自分の役割をちゃんと認識していることが、たぶん1つ。

「任せたこと」に、責任を取れるような状態にし続けられるか

斉藤:「自分の目的を持っている」と。そのうえで、この「『手法論』より先に考える『デジタル組織の成功』に必要なこと」というところの。この、自律人材が活躍し続ける組織OSを拝見している中なんですけど。

斉藤:「トップのコミットメント」と「共通の目的と判断軸を持つ」というのが初めにきているというのが、この「『自律』という話をしているけどトップダウンじゃん」と(みなさんが)感じられるのか、それとも……みなさんがどう感じられたのか? というのはあると思うんですけど。

自律って「個人」の話ではなくて、やっぱりメインは「マネージャーのコミット」というところなんですかね?

石黒:そうですね。だからそのコミットメントというのは、例えば「責任を背負う」という言い方ではなくて。要は2点目とかからの「変化への許容」とか「失敗をした時にちゃんとコミットできるか」って、結局のところ、権限委譲をして「これ任せるからさー」と言ってうまくいかなかった時に、ちゃんとマネージャーとしてその約束……コミットメントって要は約束なので。

「任せたという約束」に対して、ちゃんと責任を取れるような状態にし続けられるか? とか。「ナイストライだったよね」と失敗した時にちゃんと言えるか。

失敗して、目標に対して100パーセントいかない。「98パーで終わりました」という時に「いや、お前に任せなきゃよかったよ」と言っちゃうのか。それとも「いや、ナイストライ。この2パーセントは絶対に次のクォーターで取り戻そう」と言えるか? の違いですよね。この「ちゃんと後者のコミットを持てるか?」という話だと思います。

「自由放任」と「ちゃんと任せる」の違い

斉藤:その時に「いや、ぜんぜんやってたこと違うじゃん」と思っちゃうと、心で言えないと思うんですよね。うわべだけ褒めると、だめだと思っていて。

それがだからこそ、みんなで「目指す方向はこっちだぜ!」というのがトップのコミットメントだし、ミッションとバリューというもので。「それに従って、チャレンジしたことはよかったじゃん」ってねぎらうということなのかな? って思ったんですよ。

石黒:そうですね。斉藤さんがおっしゃっている、まさにちょうど今コメントも頂戴してますけれども「自分の成長先と会社の目指す方向があっているのは、すごくいいですよ。幸せですよね」と書いてあって。これって、本当にそうだなと思うんですよね。

なので、まさに今、斉藤さんが言っていた「任せたんだけど、彼がよくわかんないやり方でやって失敗したら、それはやっぱりちょっと違うよね」と。「このプロセスの何がよくなかったんだっけ?」というのを、やっぱりちゃんと伝えたほうがいいかなと思うんですけれども。

一方で「どこに向かっているの? どうやって進めようとしてるの?(を事前に確認したうえで)じゃあ、お任せするわ」というところ。「自由放任」なのと「ちゃんと任せる」の違いというのは、やっぱりちゃんと考えておいたほうがいいですよね。

工夫できる環境があって、それが許容されている状態が「自律」

斉藤:なんで「自律型組織が強くなる」とこれだけ語られているのか? というと、目的は一緒ですと。さっき石黒さんがおっしゃっていた「自分に期待されていることを部下に開示する」というところって「チームとして期待されていることを、チームのみんなに開示する」ということにも言い換えられると思うんですよね。

石黒:はい。

斉藤:ならば「組織が社会から求められていることを、チームのみんなで共有する」というのも相似系だと思っていまして。その目的が一緒の中で、一人ひとりが工夫できる環境があって、その工夫が許容されているというのが「自律」。自分を律するの「自律」という言葉の定義、と解釈するといいのかな? って思いながらお話を伺っていました。

石黒:その「許容」という単語はいいですね。許容って許すというよりは「工夫の余地」がないと。結局、さっきの1つめの質問で、みなさんが書いていたコメントがあったと思うんですけれども(笑)。

「工夫の余地がないとやっぱりつまんなくなるし、考えなくなるよね」という話がある。その工夫の余地をちゃんとお任せしていきながら、そこがどんどん責任とか権限としてつながっていくと、楽しんで目的に迎えるようなチームとができるんじゃないかなと思います。

マネージャーにとって一番怖い、組織が“しらける”状態

斉藤:まさに「共通の目的判断軸を持つミッション・バリューの定義」というところの、この“しらけを生む”というところに、何人かの方が共感のコメントを書いてくださっていたんですけど。ここ、しらけが生まれているのって「どっちなんだろう?」って立ち返っているところがありますよね。

斉藤:「トップとして明確な方針を定義できていない」なのか? 「逆説だが、チームとして同じ、一貫した意思決定、信念に基づいた行動が必要だ」とコメントで書いていただいてますけれども。

それを提示してない状態で、別の行動をしたことを「それ、やめてよ」って言われると、個人からすると「いや、せっかく組織のためにと思ってやったのに、なんか頭ごなしに否定されてつらい」ってなっちゃうのが“しらけ”ということなのかな? とすごく共感しましたね。

石黒:ちなみに「しらけのコントロール」という言葉は、私が尊敬するサイバーエージェントの曽山(哲人)さんがよくお使いになられる言葉でして。そのしらけって、マネージャーもしくは人事として、すごく怖いんですよね。組織がしらけるのって、たぶん一番ぐらいに怖いことだと思うんですけども。

しらけを、どう生まないようにしなきゃいけないか? 一瞬、しらけそうな空気とかってあるので。それを「なんでそうなったんだっけ?」とか、聞いていくように私はしていますね。