シニアのキャリア研修ができている企業は、わずか33パーセント

松岡永里子氏:エンファクトリーの松岡と申します。本日は「新・50代以上のベテラン社員研修! ベンチャー企業でセカンドキャリア開発を」と題しまして、お話させていただきます。

アジェンダは以下のとおりです。1、「ベテラン研修」事情。2、50代以上のベテラン社員の本音。3、人生100年時代に必要なスキルとは? 4、「50代以上の研修」で覚醒するポイント、という流れでお話させていただきます。

「1、『ベテラン研修』事情」。まずは、データを中心に見ていきたいと思います。

HR総研、人材育成「テーマ別研修」に関するアンケート調査によると、研修予算を比較的確保できている従業員数1,100人以上の会社さんに限っても、33パーセントの企業しかシニアをターゲットにしたキャリア研修をできていません。多くの企業がシニア研修をできていないという結果になります。

続いて、シニア向けの研修をやっている企業が、どのような研修をしているかを見てみます。これからについて考えるセカンドキャリア、ライフプラン研修。そしてこれまでを考える自己理解、スキル能力の棚卸しの研修を行っているようです。

キャリアプランの作成について、「ベテランの社員の方は意欲がわかない」「ご自身の過去の実績から評価を求める傾向がある」「時代のニーズと本人の求める仕事とのギャップに悩む」「環境の変化と、本人の力の差を理解させるのが難しい」などの声が上がっており、ベテラン社員がご自身のキャリアを自分ごと化ができていない中で、キャリア研修を行っているという現状があります。

さらに、今は多くの企業でオンライン化が進み、そもそもオンラインの研修の効果自体を疑問視する声も上がっています。しかし、コロナ禍の対応がいつまで続くかわかりません。オンラインで基本的に研修を実施していくしかないのではないでしょうか。

高齢人口の増加により、ベテラン社員対応は必須に

また、ベテラン社員対応はずっと続く見込みです。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の高年齢者の人口割合の推移は2019年に28.4パーセントとなりました。この高齢者、65歳以上の割合は今後も上昇を続け、2040年には35.3パーセントになると見込まれています。

こうした65歳以上の人口が増えていく中で、65歳までの雇用機会の確保が義務化。2021年4月からは70歳までの就業機会の確保が努力義務となります。これらはどちらも企業に求められているものです。人生100年時代において、働き続ける環境と人づくりが企業に求められている、と読み解くことができます。

一般社団法人 定年後研究所が行った、定年後研究ニッセイ基礎研究共同開発の結果によると、92パーセント。ヒアリングを行った企業のほとんどが「50代以降の社員の活性化、戦力化に向けた取り組みを早急に対処すべき」と考えています。

実際、私が接しているクライアントさんでも「シニア世代の処遇をどうしよう」「このまま放置したら会社が潰れてしまうかもしれない」という声も聞いています。50代以上のベテラン社員研修を効果的に行うことは、先送りできない課題です。

今の会社で働き続けたいのに、9割以上が「不安あり」と回答

続いて「50代以上のベテラン社員の本音」を見てみたいと思います。一般社団法人 定年後研究所「70歳定年」に関する調査によると、70歳まで働く場合、約7割の人が「今の会社で働き続けたい」と回答しています。これまでの苦労や人間関係の構築から「簡単に辞めたくない」「今のままなら」と考えるのが普通なのでしょう。

一方で、ほぼ100パーセントの96.1パーセントの人が、今の会社で働き続けることに「不安あり」と答えています。働き続けたいと思うのに、不安に思う理由のヒントになりそうな、ジョブパフォーマンスに関するデータがあります。

「任された役割を果たしている」「担当業務の責任を果たしている」「仕事でパフォーマンスを発揮している」「会社から求められる仕事の成果を出している」「仕事の評価に直接影響する活動に関与している」などの、5つの項目からジョブパフォーマンスの割合を測定したところ、50歳から51歳のこの点で、最も落ち込んでいることがわかります。

同じデータでは、42歳以降、キャリアに対して終わりを意識しつつも未着手。目標がない状態が続くという調査も出ています。さらに拍車をかけるように「キャリアショック」とも呼ばれる、50代でのポストオフが行われます。

これまで社内キャリアだけを見つめて、いわば強制的に会社の中の階段を登ってきた従業員が、急に野に放たれるようになります。キャリアが自分ごと化されておらず、会社のものになっているのに、まるで梯子を外されたような状態になってしまうのです。そうして冒頭の「研修についていけない」という状況が起こります。

ミドルシニアが苦しいのは「積み上げたものを背負っていこうとするから」

「3、人生100年時代に必要なスキルとは?」。では、ベテラン社員にはどのような考えが必要なのでしょうか。経済産業省によると、人生100年時代において、キャリアオーナーシップや成果を出すマインド、そのための社会人基礎力が必要不可欠な土台と言われています。

付加価値を発揮し続けるためには、一億総学び社会の下で、絶えず学び直しを通じたアップデートや、新たなスキルの獲得が必要不可欠です。一方で、これまでの働き方は社内スキル重視でした。他のスキルももちろんあるのですが、社内スキルの追求をする研修・業務ばかりだったのです。個人が長い人生で幸福を追求するためにも、ミドルシニアの躍進こそが最も重要な社会課題の1つです。

積み上げたものを背負っていこうとするから苦しい、とも言えます。VUCAの時代に、人生100年時代に、必要なのは常にアップデートし続けていくことです。でも、具体的にはどうすればいいのでしょうか? それは社外に飛び出すことです。

でも「今の会社で働きたい」と思う方が7割。パフォーマンスは50歳でダウン。確固たる自信があるのは社内スキル。今の状況でセカンドキャリアやライフプランの研修をしても無駄になってしまうのです。こうした研修の無駄打ちをせずに、社会に出ていくにはどうしたらいいでしょうか?

田中研之輔氏が提唱する、ミドルシニアの“学び直しメソッド”

ここでヒントをお伝えできればと思います。法政大学の教授、田中研之輔先生が共著で『ビジトレ:今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』を出されているのですが、そこにミドルシニア向けの学び直しメソッドがあります。その内訳がこちらです。1、現状を把握する。2、目標を設定する。3、適度な負荷を与える。4、徐々に強度を強める。5、日常的に継続する。

この「ビジトレ5原則」を研修に置き換えてみます。1、現状把握は自己理解。自分のことを理解すること。スキルの棚卸しなども含むと思います。2、目標設定はキャリアプランも含まれると思うのですが、VUCAの時代になかなか目標を持つのは難しいと思います。そこで、実践型のプログラムを作って、その中で目標を持つのがいいと思います。

3、適正負荷。人によって差があるので、オーダーメイドで研修を作ることが大切です。4、漸進負荷。適正負荷とも近しいですが、負荷が大き過ぎないように、潰れてしまわないように伴走する必要があります。そして5つ目に、継続行動を促すような仕組みづくりが大切です。

研修に必要な要素として、この5つが挙げられます。でも、これを会社の人事の方がすべて対応するのは大変ですよね。

週1回、ベンチャー企業で“武者修行”するサービスとは?

そこで、弊社が提供している複業留学というメニューをご紹介します。複業留学はベンチャー企業で“武者修行”するサービスです。武者修行といっても、毎日ベンチャー企業に行くのではなく、週1回程度。時間にすると、月10時間から30時間。2ヶ月から3ヶ月の間、本業をやりながらパラレルワークを実践していただく仕組みです。

複業留学中も、その前後も、Teamlancerエンタープライズというオンラインプラットフォームを活用し、日々の気付きや学びをアウトプット。仲間と高め合ったり、刺激し合ったりするような仕組みも含まれています。

「ビジトレ5原則」を複業留学に当てはめると、1、複業留学では留学先のベンチャー企業にエントリーします。その際にアピールシートを書くため、ご自身のスキル・経験・ノウハウの棚卸しを行い、強みや弱み、なぜ複業留学を行うかなどを言語化していただきます。これにより自己理解が深まります。現状把握ができるのです。

2、副業留学では受け入れ企業で何をするか、どのようなミッションを持って働くのかをご自身で決めていただきます。目標設定も複業留学内でできるのです。3、適正な負荷は1人きりではわからないものです。オンラインツールで日々共有することで、孤立化させず、ほど良い背伸びを実現できます。

4、徐々に負荷を与えていくというのもまた1人では難しいものです。弊社がサポート・伴走し、初回の面談、中間の面談、日々の進捗、励ましなどを行います。最後に、継続行動は、複業留学の間だけではなく、日々の気付きや学びをシェアする習慣がつく、オンラインツールをご用意しております。

個人の越境を共有していくことで、身近な人同士を変え、組織を変えていく。そうすると、より効率的に組織文化、会社全体を変えていくことができます。こうした取り組みを経て、ベテラン社員のみなさんが人生100年時代をより輝けるようにサポートしていきます。

エンファクトリーは「生きるをデザイン」を掲げて事業を展開しております。この複業留学が、ベテラン社員の生きる力を身につけるきっかけになってくれるとうれしいです。最後までご視聴いただき、ありがとうございました。