同じ野球でも、グラウンドを1歩離れると見え方が変わってくる

池上雄太氏(以下、池上):今は、解説者とかOBとして野球に関わっていらっしゃいますけど、グラウンドから少し離れた今、今後チャレンジしていきたいことってあったりするんですか? 

高橋由伸氏(以下、高橋):そうですね。グラウンドから離れて、今年で3年目になるんですけれども。やっぱり野球と携わることのほうが、当然、多いんですけれども。同じ野球でも、さっき言ったように選手から監督になると、また見え方であったり感じ方が違うといったところで。1歩グラウンドから離れた今の状況から同じ野球を見ていても、またさらに違ったものが見えてきたり。

当然、プレイヤーであったり、監督時代に周りから言われたことでも、当時は良くも悪くも「ユニフォームを着て戦っている」というプライドがあったり、少し固くなっていた部分もあったと思うんですけれども。今は少しプレッシャーから解放されたというわけではないんですけれども、少し自分が柔らかくなっているというか。同じことを言われても、自分に入ってくる。入り方というか、自分の受け取り方というのもなにか違ってきているように、自分自身でも感じていますし。

同じ野球でも「あ、こういうふうに見えるんだ」とか「こういうふうに感じるんだ」ということを、野球というスポーツでまた違った勉強の仕方というか、吸収の仕方をさせてもらっていますので。またそういったものを通じながら、他のものに活かせていければ、それは一番いいなと思ってます。

当然、野球とはまた別の出会いであったり、いろんなこともさせてもらってますから。そういったものの中から、またさらに自分が成長しながら、そしてそれが野球界なのか、それともまたぜんぜん違う世界なのかはわからないんですけれども。

僕自身がさっきから言ってるように、周りから期待されたり。そういったふうに、僕は常にありたいと思っていましたので。またいろんなことを経験する中で、自分自身がいろんなところから期待してもらえるような人間に、さらになりたいなと思っていますし。当然、もっともっと勉強して、学んで成長していかなくちゃいけないなと、今は思っていますかね。

「今ある目の前のことに最善を尽くす」という哲学

池上:あの…...今の趣味は?(笑)。

高橋:趣味はそうですね(笑)。冒頭で言ったようにゴルフをしたり、なかなかいい季節にやれることが、プロ野球の時代はなかったですし。本当に僕自身、自分でいうと、本当に野球にすべてをかけてきたような時間を過ごしてきましたので。本当に今、いろんなものを経験させてもらいながら、なにかまた熱中というか、趣味として自分ができそうなことがあればいいな、と過ごしてはいるんですけども。なかなか見つからないですね(笑)。

池上:(笑)。また今後、監督に戻られる可能性も、なきにしもあらずという?

高橋:まぁ、そこはやっぱりさっきも言ったように、一番、野球を得意としてというか、野球で成長させてもらってきていますので。またそういった声がかかるように、僕自身も努力しなきゃいけないですし。求められるというか、期待される人間にならなくちゃいけないなとは思いますね。

池上:ありがとうございます。現役から監督まで仕事をされてきた高橋さんの、自分の中での哲学みたいなものは、一言で言うとなにかあるんですか? 

高橋:哲学と言いますか、とにかく「今ある目の前のことに最善を尽くす」というか。僕自身、ある方から教えていただいた「置かれた場所で咲きなさい」という言葉があるんですけれども。とにかくあーだこーだ文句を言うのではなくて、今ある現状、今与えられたものに対して最善を尽くして、自分を磨きながら次に進んでいくと思ってますので。

この言葉に出会ったのは、そんな昔ではないんですけれども。ただ、自分が幼少期の頃からやってきたことというのは、まさしくこの言葉に近いのかなとは思っていますね。

池上:最善を尽くす。ありがとうございました。変化をしながら熱狂し続けていくということが、人生を豊かにする方法なのかな? というのを、すごく気づかされた気がします。

前に進んでいるうちに、解決策は1つじゃないと気づく

池上:ではここで視聴いただいているみなさんから、続々と質問をいただいておりますので。時間の許す限り、高橋さんにお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

高橋:はい。

池上:「変化に対して、面倒やキツイと感じ、挑戦することに疲れモチベーションが下がってきた場合、自分自身の中でどう乗り越えていますか?」。

高橋:さっきも言ったように、どうしても逃げたくなるというか、なかなかすぐには結果が出ないことのほうが多いと思うんですけれども。ただそこで、なんとか自分を奮い立たせるというか、前に進まないとやっぱり先がないと思うんですよね。

しかもやっていくうちに、道というか解決策というのは1つじゃないことに気づいていくと思うんですよね。そしていろんなことを考えるうちに、やっぱりもっと視野が広がるというか。相手というか、状況というものが見えてくると思いますから。疲れたから、モチベーションが下がったからといって、奮い立たすきっかけというのは、なかなかないと思うんですよ。もう、立ち向かうしかないと僕は思っていますので。

さっき言った「どうしたら緊張しなくなるか?」といっても、そんな方法はないと思っているので。そこは、答えにはなってないかもしれないんですけれども、解決するにはやっぱり戦うしかないと思っていますから。

戦わずして、なかなか結果というのはないと思うので。そこはきつい、大変かとも思いますけれどもね。なんとか逆風の中でもやっぱり進んでいかなくちゃ、なにか方法を探さなくちゃいけない。逆風が吹いていても、1歩前に進まなくちゃいけないと思いますから。そこはなんとか奮い立たせて、進んでほしいと思いますよね。

池上:正面突破ですか。

高橋:いや、それはアレですよね。方法を見ていく中で、正面からじゃなくても横から回ったっていいじゃないか? という方法も、出てくるかもしれないですよね。

池上:なるほど。そうですね。

高橋:そこはさっきも言ったように、越え方・やぶり方というのは、1つじゃないと思いますし。壁も登らなくたって堀ったっていいかもしれないし、そこはいろいろ表現はいろいろあると思うんですけど。

選手と監督、どちらが自分に合っていると思うか?

池上:じゃあ次の質問へ。「選手と監督、どちらが自分に合っていると思いますか」。

高橋:そうですね。合ってる……。アスリート・スポーツ選手というのは、やっぱりプレイヤーが一番だと思うんですよ。プレーしてて、一番楽しみも感じると思いますし。監督という仕事は魅力がありますけれども、どっちと言われるとね、難しいですけど。やっぱり野球をするなら、プレーしたほうが楽しいと思います。

ただ監督というのは、いろいろな経営に似た部分もあると思いますから。人事であったり、いろんなことも動かせる。そうすると僕自身はまだ、監督よりも選手に向いてるのかな? と思ってしまいますね。

ただ、監督に向けて自分が監督に合っていると思うような、いろんなものを僕は吸収していかなくちゃいけないのかなと思っています。これからプレイヤーには戻れないので(笑)。

「切り替える」よりも「受け入れる」ことが大事

池上:ありがとうございます。じゃあ次の質問にいきます。「スパっと切り替えたいときに、どうやって前考えていたことを断ち切るマインドセットをしていますか?」。

高橋:僕自身プレイヤーの時は、さっきも言ったように、すぐに反省と。試合を振り返って、その課題に対してしっかり解決してから家に帰るようにしていました。それはもしかしたら、スポーツであったり目の前で結果がすぐ出ることなので、それができたのかもしれないんですけれども。プレイヤーの時はそういうふうにしていました。

ただ監督の時は、さっきもお話しさせていただいたとおり、なかなかすぐに結果が出ないことも多くて。スパッと切り替えられることが、ほとんどなかったですよね。ただ、切り替えられるという時には、やっぱりその問題・困難に対して、ある程度の兆しが見えたり、結果が出た時だと思いますので。切り替えるというよりも、とにかくさっき言ったように目の前で起きていることに対して、しっかり受け入れることのほうが僕は大事なのかなと思っています。

中高生には、「逆側になにがあるか?」を理解してほしい

池上:じゃあ次の質問に。「今の中高生に伝えたい、やってほしいことはありますか?」。

高橋:今の中高生に伝えたいこと。やってほしいこと。うーん、今、我々の時代よりもいろんな情報を取り入れる方法であったり、いろいろやることであったり、いろんな選択肢が非常に多いと思いますし。自分の主張というのも、非常に通る時代だとは思うんですけれども。ただそればかりではなくて、やっぱり「その逆側になにがあるか?」ということを、しっかり理解してほしいなと思います。

自分たちのやりたいことの裏には、やっぱりいろいろな与えられた環境であったり、いろいろなものがあって今があるということを、自分の主張ではなくて。その主張ができる、もう1歩後ろには「自分たちがなんで、今こういうふうにできているのか?」といったところをね。1歩下がってというか、1歩広げてというか、見る努力をしてほしいかなとは思いますね。

池上:高橋さんはお子さんたちには、野球をやってほしいとかあるんですか? 

高橋:いや、私のところは女の子2人なんで、逆に野球をやらなくてよかったなと思っています。自分自身が野球をやってきていましたので。ついつい野球になると、親子ではなくて監督と選手になってしまいそうで。女の子なので、親子のままいられるので、それはそれでよかったかなと思っています。

池上:ソフトボールとか。

高橋:(笑)。やると言われたら、当然、後押し・協力はしたいなと思っていますけれども。そこは自分自身が冷静にいなくちゃいけないなと思いますね。

期待や恩義を、結果で返さなければいけないという思い

池上:なるほど、そうですね。次の質問にいきます。「怪我を恐れないプレーが大好きでした。怪我に悩んだ時期もあったと思いますが、リハビリはどのようなモチベーションで行われていましたか」。

高橋:やはりさっき言ったように、怪我をしたくてしたわけじゃないですし、自分の最善を尽くした中での結果だと思っていましたので。そこは受け入れるべきところは受け入れながらも、やはり次に進む時には「さらに大きくなって強くなって帰るんだ」と思っていました。

しかも、その怪我から立ち上がるということは、まぁ当然、今まで期待してくれていた方たちの「早く戻ってほしい、またがんばってほしい」という、その期待に応えたいという思いもありましたし。当然、ドクターであったり、トレーナー、いろいろな方たちが支えて、僕をまた次の舞台へ押し上げてくれようとしていますので。

そういう人たちの期待であったり、そういう人たちの恩義を、やっぱりグラウンドというか、結果で返さなくちゃいけないという。そういう思いは、強く持ってましたね。

困難を乗り越えるための「発見」ができる考え方

池上:そろそろお時間がきてしまったので、今日は本当にありがとうございました。それでは最後にご覧いただいている視聴者のみなさまへ、一言メッセージをお願いいたします。

高橋:今回のテーマである「乗り越える」というところ。「乗り越えよう」としているということは、たぶん今、困難であったり逆風であったり、そういったところにいる方が多いと思うんですけれども。当然、今は少し逆風の世の中になってますけども。ただそれを「今はこういう時だからダメなんだ」「あの人はなかなかわかってくれないからダメなんだ」と。やっぱり自分以外のもののせいにしても、解決策であったり、変わることというのはなかなか少ないと思うんですね。

なので、そういった状況の中でも「じゃあ自分がなにをしたら、自分がなにかを変えたら、自分が変化したら、なにかが変わるんじゃないか?」。さっきも言ったように、また違った道が見えてくるんじゃないかという発見があるんじゃないかなと思っていますし。僕自身はそうやっていくつかの困難というか、そういうものを乗り越えてきたつもりでいますので。そういうふうに考え方を……。僕が生きてきたというか、今日話したことを少し共感であったり、参考になることがあればいいなと思っています。

池上:最善を見つけて、前に進むと。ありがとうございました。この辺りで当セッションを終了させていただきます。高橋さんに大きな拍手を。ありがとうございます。

高橋:ありがとうございました。