2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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澤田真由美氏(以下、澤田):教育総合サミット2021 Spring、ご来場のみなさま、こんにちは。合同会社先生の幸せ研究所の澤田真由美です。お相手はこのお二人です。自己紹介をお願いします。
庄子寛之氏(以下、庄子):東京都の公立小学校の教員をやっています、庄子と申します。よろしくお願いします。
(会場拍手)
妹尾昌俊氏(以下、妹尾):みなさん、こんにちは。教育研究家の妹尾と申します。今日は楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
澤田:今日は、「先生も子どもたちも幸せになる、働き方のモデルチェンジ」について一緒に考えていきたいと思います。私たちの共通点と言えば、「学校の先生の働き方について」の活動をしていることだと思います。それぞれどんな活動をしているか、簡単に教えてもらっていいでしょうか。庄子さんからお願いします。
庄子:私は数年前に『学級担任のための残業ゼロの仕事のルール』という本を書かせていただいたのがきっかけで、働き方のイベントに呼んでいただくことが多くなりました。「(学校は)ブラックだ、ブラックだ」と言われる世の中だからこそ、定時に帰ると決めています。
もちろんやることはたくさんあるんですけど、その後にいろんなところで学ぶことが自分のためにもなるし、結局は子どもたちのためになると思って行動した結果、いろんなところに呼んでいただいています。よろしくお願いします。
澤田:はい。お願いします。妹尾さんはいかがですか?
妹尾:僕は謎の仕事ですけど(笑)。一番多いのは校長先生向けに研修会をやったり、コンサルタント的に動いたり。教育委員会のアドバイザーなんかもやっています。この1年は、激動の1年だったので、ちょっとでも先生方がイキイキと元気になるようなご支援をしたいなと思って仕事をしています。
澤田:私も少し紹介しておきます。
妹尾:どうぞどうぞ。
澤田:私は学校や教育委員会のコンサルティングが主な仕事で、年間を通して関わって、中から一緒に変えていくことがあります。それ以外では妹尾さんと似ているんですけど、単発で講演や研修をしたり、全国の学校や教育委員会と関わらせていただいています。
澤田:さっそく庄子さんに伺っていきたいんですけど、庄子さんはだいぶ前から働き方をすごく工夫していらっしゃって、しっかり結果や成果を出しながら定時に帰られている先生だと思っています。その秘訣というか、ここ最近はどんな感じなのかも含めて伺ってよろしいでしょうか。
庄子:そんな大したことないんですけど。
澤田:いえいえ。
庄子:私は道徳が専門で、道徳の指導教諭という立ち位置なんですね。主幹(教諭)と同じ役職になるんですけれども、外で飛び回ることが多いです。あとはつい最近まで大学院に行かせていただいていました。
あとはラクロスの日本代表の監督をしていました。子どもたちを置いて海外に飛んで行くとか、夏休みとか冬休みとかはもう海外に遠征に行くような生活をしていたので、自然と18時から予定があるので、もう17時には帰らなきゃいけない。
となると、17時までにどれだけ生産性をあげようかということになってくるんですよね。逆算して考えていくと早く帰れるようになった、というのが一番な気がします。
澤田:もうちょっと詳しく伺っていいですか? 逆算して考えるって、例えば?
庄子:うちの職場でも21時、22時に帰る先生って、けっこう当たり前のようにいるんですけど、私は17時に帰らざるを得ない。となると、(他の教師の)みなさんがやっている教材研究は、できる限り1日にまとめて、いっぺんにやってしまうことがあります。
あとは、教えること自体に限界があるかなと思っています。教えるのではなくて、子どもたちから学ぶ姿勢を作るだけで、授業の時間の準備はすごく少なくなります。子どもたちから学ぼうと思うと、純粋に心の底から褒められるので、子どもたちの関係もよくなっているような気がします。
教えることよりも、その場で観察することや、その場で引き出すことをけっこう重点に置いているので、17時に退勤したあとは、コーチングのセミナーに行ったり、企業で行われているファシリテーションのゼミに行ったりして、(外で)学ぶことで(学校の)授業がより有意義になっているような気がします。
澤田:なるほど。コロナでいろいろ影響があったと思うんですけど、特に変わらず(定時退勤を)続けられているんですか?
庄子:そうですね。どこまで話せるかわからないんですけど。コロナに応じて(学校現場も)大変になったことはメディアでは騒がれているんですけど、行事がなくなったので、私たち教員はその分のゆとりも同時にできていると思うんですよね。
もちろん消毒とかいろいろ忙しい点はあるんですけど、そのゆとりをうまく使って、教員同士が対話できたり、子どもたちのための教材研究にしたり、今まではできなかった新しいことが、うちの職場でも行われていました。(ほかの)いろんな職場で行われてきたことじゃないかなと思います。
澤田:なるほど。外に学びに行くというお話があったんですけど、私ももともと教員をしていていたので、すごく長時間労働していた時代もありました。ある時から早く帰れるようになった経験があって、そのきっかけってやはり外に出るようになったことだなと思って。
子どもと向き合わない時間を増やして自分を磨くようになったら、教材研究の時間も短くなって、保護者や子どもからも喜んでもらえるようになって。庄子さんと話しているといつもその経験がリンクするなと、今日も「うれしいな」と思って聞いていました。
庄子:私もです。
澤田:妹尾さんは何かありますか?
妹尾:その関連でいうと、全国各地の教育委員会って、「なんで働き方改革するんですか」と言われると、「子どもと向き合う時間の確保のためです」と言うんですけど、子どもと向き合い過ぎてるから先生方が忙しくなっている部分があって。
典型的には部活動とか。もちろん授業準備はすごく大事で軽視はできないんですけど、ただ、どこまでもどんどんやるとか、添削もどんどん熱心にやると、結果的に子どもたちの主体性をちょっと損ねたりするかもしれない。
もちろん短ければいいという話でもないんですけど、時間も有限なので、うまく大切に使いたいですね。僕は「子どものために」とばかり言わないで、「自分のためにも働き方改革をする」と言ったほうがいいとずっと思っていますね。
澤田:「自分のために」でいうと、庄子さんがいつも言っていらっしゃることなんじゃないかなと思うので。
庄子:今、しゃべろうと思いました。
(一同笑)
澤田:ですよね。やはりそうかなと思って。
庄子:学校って「子どものため」が正義になっちゃうんですよね。「子どものために、子どものために」と言うんですけど、自分をおろそかにしていると、実は子どものためになっていない。
やはり先生が暗そうな顔をしていると、子どものためにできないですよね。楽しそうで、ラクそうで、のんびりしている先生にこそ声をかけたくなるじゃないですか。子どもが「先生も疲れているし、忙しそうだから声かけるのやめよう」となった時に、意外と問題って起きたりすると思うので。やはり楽しんで教師をすることが大切になってくるかなと思います。
妹尾:そうね。ある養護教諭、保健室の先生から聞いたんだけど、養護教諭っていろんな仕事があって、不登校の対策をしたり、教職員のケアもしたり、すごく忙しい。実は事務作業もあるし。
「だけど、私は忙しくないように見せています。そうしないと子どもたちが寄ってこないし、保健室に来ないし、先生方もなかなか相談に来ないので、そういうところを大事にしたい」と言っていて。
だから「先生方のゆとりを取り戻そう」とか、「自分のための時間を取り戻そう」というのを、働き方改革の見直しの時には大事にしたいですよね。
庄子:うーん。まさにおっしゃるとおりですね。
澤田:「子どもと向き合う」という話があったんですけど、時間的には十分子どもと一緒に過ごしていると思っています。いろんな先生方に出会うんですけど、(授業の)時数をもっと増やしたいという人には、1人も出会ったことがないので。
庄子:(笑)。
澤田:たぶん(直接は)向き合わないで、子どものことを考える時間とかを増やしたいと言っているんだろうなと思ったりします。妹尾さんと一緒に行政委員をさせていただいた時に、「子どもと向き合う時間」という文言をあえて削除しましたもんね。
妹尾:削除しましたね。
澤田:そういうことに気が付ける自治体や学校が増えていくと、先生も子どもも幸せに近づいていくんじゃないかなと思ったりします。
澤田:ただ、なかなか「先生が幸せになっていいんだ」って、思い切って飛び込めない学校や先生もまだまだ多いかなと思うんです。そのあたりはなにかお考えがありますか?
妹尾:そういう意味ではどうだろう。僕も庄子さんに聞きたかったんだけど。ラクロスの日本代表ですか。すごいですね。そういう経験が教育活動とか学校に、今思えば活きたかなとか、良かったかなとか、何かありますか?
庄子:いや、もう、たくさんありますね。学校ってやはり狭い文化なんですよね。かつ、教室という文化に常にいる。子どもたちと大人1人の環境で常にしゃべっているので、なんとなく自分が正解な気がしてしまうんですよね。
周りの先生たちと話していると、周りの先生たちが「こうだよ」って、先輩たちが「こうするものだよ」という、「ねばならない」を、(自分も)「あ、そうだな」と自然と思ってしまって、子どもたちにも「ねばならない」と教えちゃうんですけど。
世界を見ると、日本の教育って日本の当たり前であって、世界の当たり前じゃないですよね。海外だったらいい姿勢をしていなくてもなにも怒られなかったりとか。それが良い悪いではないんですけど。
ガミガミ言っていることって、本質的に本当に怒らなきゃいけないことなのかなと気付くんですよね。一番大事なのは、今日のテーマでもある「先生も子どももハッピー」であるはずなのに、細かい生徒指導で怒ってしまうと、怒っている教師も嫌だし、怒られている子どもも嫌だし、負のスパイラルが生まれてしまって、なんかハッピーじゃないというのがよく生まれるんです。
ラクロスで海外に出ていると、いろんな世の中を見られたので、「自分だったらこうしよう」というアイデアでいろんなことにチャレンジできるようにはなったと思いますね。
妹尾:そっか、そっか。世の中の多様性を感じるのはすごく良い学びになった、ということですよね。
庄子:そうですよね。なんかしゃべり過ぎていますけれども(笑)。
妹尾:どうぞ。
庄子:日本の教育現場の中で、「やらない権利」を認めなさすぎているなと思っていて。やらない子がいると、どうしても「やりなさい」と言ってしまうし、そうは言わなくても、「やろうよ」と教師がエネルギーを費やしてしまうんです。
人の背景ってわからないし、家の中でそういう怒られやすい立ち位置なのかもわからないし、昨日はすごく疲れていたのかもしれないし、昨日はすごく怒られたのかもしれないと考えると、一斉に同じことを「先生が言ったからやりなさい」としなくていいような気がしていて。
人にさえ迷惑をかけていなければ、「やらない権利」も認めつつ、でも「やらない」といういつもと違う行動をしているなら、「どうしたの?」と声をかけてあげるべきだし。「今、休んでていいけど、後で休んでいた理由教えてね」って声をかけていくことで、信頼関係って生まれてくるんじゃないかなと思っています。
働き方改革では、現場の先生はかなりエネルギーを割いて「教える」ことをやるんですけど、教えるためには、やはり人間関係ができていないとダメじゃないですか。相手との信頼関係がまったくなくて、どんなにいい教え方をしても響かない状況なのに、「響かないから教材研究して」って(言われて)先生も(帰る時間が)遅くなって、それでも響かないからその子を怒ってしまうという負のスパイラルになっている気がするので。
やはり「やらない権利」を認めることと、教えることにエネルギーを割き過ぎないことを、私は意識していますね。
澤田:「やらない権利」という言葉で、今は子どもについて言っていたと思うんですけど、先生はずっと「子どもを見ていなければならない」という呪縛もあるなとすごく感じていて。むしろ見過ぎじゃないかなというところもあって。
でも、庄子さんが前に、実は授業中に子どもが自律的に学習していたら、別のことができたり個別指導ができたりするとおっしゃっていました。うまい時間の使い方をいろいろされているなと思うんですけど、そのあたりはいかがですか?
庄子:私ばかりしゃべっているんですが(笑)、いいですか?
澤田:はい、気になることなので。
庄子:私が今意識しているのは、黒板の前に立つ時間を減らそうということです。黒板の前に立てば立つほど、子どもとの距離感もありますし、「教える」ことをメインにしてしまうなと思うからです。
子どもたちの机の周りをウロウロするのを、今日は何回やれたかなと常に意識しています。とにかく個別に接すること。私たち教員って、それをわりと授業が終わったあとに、ノートにコメントを書いたり親に電話したりでやってしまうんです。そういうことを、授業中にやれたらいいなと思っています。
やはり日本の教育は、一斉授業が多いじゃないですか。となると、教師がひたすらしゃべって子どもたちが聞いて、ノートに取ることがメイン。その中に最近はペアワークを入れたり、グループワークを入れたりするけれど、あくまで教師の指示でやっているんですよね。そうじゃなくて、自由な時間をしっかり取ってあげて、1日の授業の中で、子どもたち同士が自然と対話する時間を意識して取りたいなと思っています。
例えばですけど、国語で「今日はこの説明文をやるよ」となったら、説明文から派生する勉強であればすべてOKというイメージでいます。普通の授業だと「今日のこの主人公の気持ちを考えよう」というワークシートがあって、「この主人公はこの場面の時、どう思っただろう。四角の中に書いてみよう」と書いて、隣と話して、グループで話して……となるんですけど、その「話している」って、本当の会話じゃないですよね。
なので、もっと(勉強の範囲を)広くして、「このお話どう思う?」「いや、あまりおもしろくなかったな」とか、そういう話でぜんぜん構わないと思うんですけど。自由にしゃべって、自由にお互いを知り合える関係を、教室で作りたいと日々思っています。
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