中竹竜二氏×篠田真貴子氏が語る「組織文化と心理的安全性」
司会者:こんばんは。今日もみなさん、よろしくお願いします。中竹竜二さんの新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』発売記念イベントにご参加くださいまして、どうもありがとうございます。こちらは新刊発売を記念して、さまざまな業界の第一人者の方々と組織文化について語り合うオンラインイベントになります。
今日で第3回目になるんですけれども、中竹さん、今回のゲストはどなたですか?
中竹竜二氏(以下、中竹):はい。篠田真貴子さんです。楽しみにしておりました。よろしくお願いします。
司会者:よろしくお願いします。篠田さんにご登場いただく前に、簡単にプロフィールをご紹介させていただきます。現在はオンライン1on1を提供されている、エール株式会社の取締役を務めていらっしゃいまして。
先日、発売になったこちらの『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』という、心理的安全性をテーマにした本の帯に推薦文を書かれていらっしゃいます。
これまでのキャリアを振り返ると長銀(日本長期信用銀行)であったり、マッキンゼー、ノバルティスファーマ、ネスレ、ほぼ日。そしてジョブレス期間を経て今のベンチャー企業という、かなり幅広い組織文化に触れていらっしゃると思うので、ぜひお二人にお話を聞かせていただこうと思っています。
約1年半ぶりに対談を行う、両氏
司会者:では篠田さん、どうぞよろしくお願いします。
篠田真貴子氏(以下、篠田):よろしくお願いします。ドキドキしますね。なんかすごくいっぱいいらっしゃって。
中竹:よろしくお願いします。すごい、さすがですよ。もう、集客力がハンパじゃない。
篠田:とんでもない。みんな、中竹さんの話が聞きたいから。
中竹:いえいえ、これはもう第3回なので。私の話はだいたいもう飽きてて「また同じ話かよ」になるかもしれないので……。
篠田:そんなことないです(笑)。
中竹:今日は篠田さんの話をたくさん聞きたいなと思っています。
篠田:「高校とか大学でラグビーやってました」という友達から「なんでお前が(中竹氏と共演するの)?」と、すごく責められてます(笑)。
全国のラグビーファンのみなさん、申し訳ございません。ここから1時間、私と中竹さんで(笑)。
中竹:こういった対談はティール(「Teal Journey Campus」)以来ですかね。去年、おととしでしたっけ、あれ。
篠田:はい。ちょうど1年半ぐらい前にお話させていただきました。
中竹:そうですよね。
篠田氏が未だによく語る、かつての中竹氏との印象的な会話
篠田:あの時もおもしろかったですよね(笑)。未だに私も、人にお話しする時に「中竹さんにこれを言われた」という、よくあの時の会話を材料にさせていただいてます。
中竹:あの「料理の話」からになりますよね(笑)。その流れ、私も非常に印象に残ったので、篠田さんから簡単に紹介してもらってもいいですか?
篠田:料理の話ですね(笑)。私が「仕事をして家に帰って、たいていは毎日夕飯を作るんです」という話をしました。その夕飯の献立を考えて作るプロセスを思いながら、イキイキ話していたら……(笑)。普通に話してるつもりだったんですけど、中竹さんがすかさず……。
本題は私がその「料理から仕事に切り替える」、つまり「公私がどうの」みたいな、確かそういう話題の流れだったと思うんですが。
中竹:そうです。そうです。
篠田:しかしその流れとはまったく関係なく、中竹さんが「篠田さんが話しているこの様子が『好きなことで輝く』ってことですよ!」みたいなことを言ってくださったんですよね、確か(笑)。
中竹:まさにそうですね。
篠田:ぜんぜん自分では意識できてなかったので。それまで私は、なんとなくふんわりと「料理は嫌いじゃないし、なんか(公私の)切り替えになるからやってる」という認識だったんですが。中竹さんにそう言っていただいて、私は「料理するという行為」よりも、その手前の「計画のプロセス」がすごく好きなんだという自覚に至りましたよ。本当にありがとうございます。
社員が特に意識しない“日常”にこそ、企業文化はあらわれる?
中竹:いえいえ。私もあの時のことはすごく覚えていて。佐宗(邦威)さんと3人で話をしてたんですよね。
「頭の中で仕事とプライベートをどう切り分けるか?」みたいな話から、やりがいの話になった時に。これは今回のウィニングカルチャーにも通じるんですけど、カルチャーそのものって、本人はやっぱり気づかないんですね。どっぷり浸かっていると。
篠田さんが話したのは、話した言葉・テキストのとおりなんですけれども、私が話を聞いているときに何を見てたかというと、その空気ですよね。篠田さんの空気としゃべっている表情で、これはたぶん音声を消して見ていたほうが……。要するに、篠田さんの本当の思いとか雰囲気、篠田さんの中にある価値観であったりカルチャーというのがわかりやすいなと思ってですね。それで指摘をさせていただいたんですけれども。
組織文化もそういうものなんじゃないかな? と私は思ってるので。本人たちは気づかず「なんかこれいいよね」みたいなことが、実はその中心にあるカルチャーだったりするのかなということを、改めて思いましたね。
篠田:本当にそうだと思うんですよね。中竹さんのカルチャーの定義というのも、本に書いていらっしゃって。「ああ、確かにな」と思って読んでましたし。それ以前に「組織カルチャーとは何か?」というのを、いろんな方がいろんな定義をされている中で、その前に聞いて、わりとしっくり来ていたのは海外の方がおっしゃった……。
ルンバを作った会社(アイロボット社)の社長だったか、がおっしゃったと思うんですけれども。組織文化というのは、要は「社長がその場にいない時に、みんながどうやって物事を決めているか?」だという言い方をされていて、なんかしっくりきたんですよね。
中竹:あぁ、おもしろいですね。
篠田:それも今、中竹さんが言ってくださったみたいに、その社員の方々は特に意識してないんだと思うんです。「自分たちがどう物事を決めているか?」って、日常だから。
中竹:そうですね。
篠田:けど、そこに企業文化というのが色濃くあらわれるんだよというのは、確かにそうかもと思っていました。
社内で頻繁に交わされる「問い」が、組織文化とつながっている
篠田:もう1個いいですか。
中竹:はい。はい。
篠田:その「意識してできない」ということでいくと、たまたま私は何社かを転職で経験して、途中で気がついたんですけれど。その会社で、わりと頻繁に交わされる問いというのがあって。それがある時、組織文化と密接につながってるなと思ったんですよ。
中竹:まさにそうですね。
篠田:初めに働いていた銀行って、今よりちょっと状況が違っていて。(当時は)銀行はもっといっぱいあったし。いっぱいある中で序列がすごくあって、固定化されているんですね。「どこが1番手、2番手、3番手」って。
1番手は、今はみずほ銀行になってる興銀(日本興業銀行)だったんですけど、私は業界で2番手の銀行で働いていて。そこで常に飛び交っている質問は「“対興銀”は何パーセントなの?」という“興銀は絶対に越えられない前提”なんですよ。
「興銀を100とした時に、自分たちがどれぐらいだとOKなのか?」というイメージがあって。それが「対興銀、何パーセント」。
中竹:その問いがもう染み付いていたんですね。
篠田:そう。私は気だけが強い、何もできない若者だったので、すごく腹立たしくて。なんかそうやって「1番手と比べて」という、もうそのマインドが嫌だって、ちょっと思ってしまったんですよね。その会社は4年ちょっとで辞めちゃったんですけど。なんかそんなことも思い出しました。
中竹:そこの問いを変えにいくか、その問いの中だと自分の存在価値がもしかしたらそんなに高められない(から転職するか)。この2択だと思うんですよね。やっぱりそういう意味では、問いを根底から変えるって相当大変ですよね(笑)。