多方面で活動する、NewsPicks・野村氏

小池彩加氏:4時間目は「経済のお話」をしていただきます。4時間目を担当していただくのは、株式会社ニューズピックスの野村さんです。野村さん、どうぞよろしくお願いいたします。

野村高文氏(以下、野村):みなさん、こんばんは。NewsPicksの野村です。前田敦子さんの次(のセッション)で、M-1でめちゃめちゃ盛り上がった漫才コンビの次に登場する漫才コンビ、みたいな気持ちでおります(笑)。ぜひごゆるりとお聞きいただければと思います。

今日は経済の話ということで、いくつかみなさんにお伝えしたいことを持ってきました。「誰も教えてくれない『経済』の話」ということで、今日はお話していきたいと思います。

簡単に自己紹介をさせていただきますと、私はNewsPicksという経済メディアで、テキストの編集者と音声コンテンツのプロデューサーをしています。もともと出版社で編集者をやっていまして、そのあと外資系のコンサルティング会社に移籍して、6年前にNewsPicksに入社しました。

NewsPicksでは、いろんな経済やビジネスの記事を書いたり編集したり。あとは3年間ほど事業マネージャーを担当していまして、そこでは学びのコミュニティの運営をやっていました。なので、いろんな角度からいろんな経営者やビジネスパーソンに取材をしている立場もそうですし、こういった事業を回してきた立場で、今日はみなさんに経済の話をできるかなと思ってやってまいりました。

ちなみにTBSラジオの『テンカイズ』という番組に出ていまして、宇賀なつみさんと一緒にしゃべっていたりしますので、よろしければぜひ聞いていただけるとうれしいです。

これが(自身が)担当した記事ですね。何が言いたいかと言うと、オードリー・タンからDJ社長まで、幅広く記事を作っていることがお伝えできればいいかなと思っています。

そもそも「経済」って何のこと?

野村:今日はまず経済の話ということで、「そもそも『経済』って何ですか?」というところから始めていきたいと思います。なかなか、ぱっと一言で経済について答えられる人っていないんじゃないですかね。私はこの質問があった時に、ちょっと困りました。

辞書を引いてみると、こんなことが書いてあるんですね。「国を治め民を救うこと」。経国済民、政治、それからeconomy。人間の共同生活の基礎をなす財・サービスの云々かんぬん。転じて、金銭のやりくり。

それから「経済的」とも言いますが、倹約といった費用・手間のかからないこと。これは広辞苑の定義ですが、「ちょっとよくわからんな」という感じがしますよね。一言で言うと、経済は「お金」に関する世の中の仕組み全般だと私は捉えています。こういう捉え方をするのが、経済を一番適切に理解できるかなと思っています。

ということで、経済と言うとぱっとこんな絵が浮かびますよね。これはソフトバンクの孫(正義)社長とトヨタの豊田(章男)社長が提携の発表をして、挨拶をしているものなんですけど。(経済と聞くと)こんな写真が思い浮かぶと思うんですけど、実は経済はもっと幅広い概念です。

例えば最近、『花束みたいな恋をした』という映画がめちゃめちゃ流行りましたよね。実はこの映画が流行ったことも、経済活動の1つなんですね。この映画が流行って、みなさんがお金を投じてわざわざ見に行っている。お金に関する世の中の仕組みですよね。その社会的な背景は何なのかというと、まさしく経済のニュースなんですね。

なので経済を堅苦しいと思わずに、世の中のいろんなことが含まれていると思っていただければと思います。

「社会人1年目」は、みんな等しく苦労する

野村:というわけで、世の中はすべて「お金」を媒介して回っているんですね。つまり、人々が給料をもらえるのももちろんそうですし、あなたが消費者として何かサービスを受けるのも、お金を中心に回っています。

これを聞いてくださっている方には、ひょっとして社会に出て「社会貢献がしたいな」「世の中のためになることがしたいな」と思われる方もいらっしゃるかと思うんですけど。それでも、実はお金とは無縁ではいられないんですね。

お金がうまく回る仕組みを作れば、それが回りまわって社会全体のためになることがあるので。とにかく、お金とうまく付き合っていくことが大切になっていくということを、これから社会に出るみなさんに1つお伝えしたいと思います。

おそらくこれから社会に出る方々は、1年目ぐらいでこんなことに直面します。いきなり脅かすようで恐縮なんですけど(笑)。社会人1年目というのは、仕事はうまくいかないことのほうが多いと思ったほうがいいと思います。

おそらく、会社を選んで望んだ会社に入れた方も、就職活動があまりうまくいかなくて、望んだ会社に入れなかった方もいらっしゃると思うんですけど。社会人1年目は、等しく苦労すると思ったほうがいいです。

どんなことで苦労するかと言うと、まずはそもそも「あれをやれ、これをやれ」と上司から指示が来るんですけど、それをうまくできずに怒られることがあります。

それから、もうちょっと一通り自分の与えられた仕事ができるようになってくると、「これをやったらいいんじゃないか」「これをやってみたい」「このプロジェクトをやってみたい」「こんなアイデアが思い浮かんだ」というのが出てくると思うんですね。ただその時も、提案しても却下されることが起きると思います。

仕事をやめたくなる時、自分を助けてくれることとは

野村:それから一番よくあるのが、自分がうまくいっていない時に、周りの大学時代の友達や一緒に会社に入った同期が「あいつはうまくやっているな」と輝いて見えたりします。

それから、この上の3つみたいなことが重なってくると、だんだんと「自分はこの仕事が向いていないんじゃないか」「他にやりたいことも出てきた」と思い始めてしまって、(今の仕事を)やめたくなると思うんですね。

これは脅すわけではまったくないんですが、社会人になってけっこう高い確率で直面することなんですね。その時に、経済の知識が自分の身を助けてくれることが多いんですよ。経済の知識ってどういうことかというと、まずは世の中がどういうふうに回っていて、どこからどこにお金が流れていて。

その中で、あなたの今いる会社はいったい何で稼いでいるのか。消費者や取引先にどういった価値を提供して、お金を稼いでいるのか。そういうふうに、会社はなんらかの価値を提供して、対価を得る集団なんですね。その集団の中で、あなたには何の役割が期待されているのか、ということですね。

新入社員には新入社員の、3年目には3年目の。私はもう社会人十何年目なんですけど、そういった「年次の人には年次の人への期待」が必ずあるんですね。その時に、いったいあなたには「何を期待されているのか」と考える。さらにそういったものを踏まえた上で、「どういうふうにこの先を生きたいのか」を考えてみてください。

ぱっと「これを考えてみてください」と言われても、なかなか「うーん……」となると思うんですけど、これはすなわち経済の知識なんですよ。1番上と2番目は確実にそうですよね。世の中でどうお金が取引されているかというもの。

あなたの会社が「どういうふうに稼いでいるか」はまぎれもなく経済の知識ですし、あなたに「どういう役割が期待されているか」も、キャリア論という意味で経済の知識なんですね。

経済を学ぶと「どう生きたいか」が見えてくる

野村:最後の(項目の)、「あなたはどう生きたいのか」。これは経済から遠いと感じるかもしれませんが、実はまぎれもなく、経済と密接に関わったものなんです。こういったものを理解すると光が見えることが多いから、「経済をしっかりと学んでいきましょう」と言いたいです。

さっきから、「こういった情報はすべて経済に関わっています」という話をしているんですけど、一口に経済情報といっても実はさまざまな側面があるんですね。多くの人は「経済情報」というと、例えばどこかの自動車メーカーがどこかの企業を買収しました、といったニュースを思い浮かべるかもしれませんが、それはあくまでも業界動向の一つに過ぎないんですね。

実はその周りには多様な世界が広がっていて、もう少し最先端なものになれば、業界動向ではなくてテクノロジーの知識となります。それをもう少し社会全般のマクロな視点で見ると、金融の知識やマクロ経済の知識になります。それからもう少し個人に寄せると、キャリア論や働き方論になります。

最近ではライフシフトといった議論が流行っていて、「人生100年時代で、どういうふうにキャリアを構築していくべきか」みたいな議論が、経済メディアではすごく花盛りになっているんですけど。そういったものは、キャリア論の一環として捉えられます。

ちなみに、この縦軸の先端に「普遍」と書いたんですけど。先端は、まさに時代の一番先っぽにいったい何が起きているのかを捉えること。逆に普遍というのは、どの時代も変わらない本質的な情報は何なのかを考えること。実はそれも経済情報なんですね。

「哲学」と「経済」の関係性

野村:ここに「哲学」と書いてあります。哲学と経済ってなかなか結びつかないかもしれないんですけど、いやいや、そんなことはないです。哲学は、昔の人がどう考えていたのかもそうですし、あとは「世の中がどういうふうにできているのか」「自分とはいったい何なのか」を探求する学問です。

こういった知識があると、「ガラケーがスマートフォンになりました」「スマートフォンが別のデバイスになりました」みたいに世の中の多少のテクノロジーの変化が起きても、人間の欲求や、「自分が何を心地いいと思うか」「何を正義と思うか」といった根本的なところは変わらなかったりするんですね。

なので哲学の知識があると、時代の変化に惑わされずに、「変わらないものはいったい何か」を捉えることができます。というわけで、サイエンスやカルチャーといった知識もそうですし。例えば個人の生き方、「自分は仕事を問わず、家庭も含めてどういうふうに生きていきたいか」という話も、実は経済情報なんですね。

ニュースで経済情報を見る時には、これらのものがいったいどこに当てはまるのかを頭の中でプロットしながら見ていくといいんじゃないかなと思います。