一緒にやってくれそうな仲間を探してみる

司会者:ありがとうございました。もうひと方、メッセージいただいていますね。鎌田さんの著書を買っていただいてありがとうございます。

「湯浅さんのお話で気になったのは、かつての「密」は深刻な人権侵害や搾取の存在である「密」であったと思われます。これからは人の尊厳が守られる、新たな「密」の関係の作り方を広げていきたいなと願っています。この本にはとても希望を感じています。また、この本には手がかりとなるフレームワークがあるように思います。一読者の私は小さい力なので、どう活用していけばいいか迷っています」とコメントをいただいています。鎌田さん、いかがでしょうか?

鎌田華乃子氏(以下、鎌田):対談の中でカバーできなかったんですけど、「どうすれば行動できるか」という質問も(湯浅さんに)したかったので、すごくいい質問をいただいてよかったなと思います。

私自身も1人で行動できるタイプじゃないですし、ぜんぜんアイデアも浮かばないので。私だったら、さっきの1対1じゃないですけど、まず仲間がいないかどうか、同じことを感じている人がいないかどうかを友だちや周りの人に聞いてみて、話してみて、紹介してもらったりして、いろんな人に会っていくと思います。

自分の考えていることは、多くの人が「ちょっとおかしい」「なんとかしたい」と思っていることなのかを確認したり、一緒にやってくれそうな仲間を探してみる。仲間が2~3人集まったら、みんなで「何ができるかな」と話してみることから、アイデアが生まれてくるんじゃないかなと思います。

コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンだって絶対1人では作れなかったですし、コミュニティ・オーガナイジングがなければ、こんなことしていない(笑)。人と話すことによって勇気をもらって「私の考えは間違っていなかったんだ」と思って、少しずつ仲間を増やしていった感じです。湯浅さん、お願いします。

追いやられていた人たちが主役になるのが、こども食堂

湯浅誠(以下、湯浅):「かつての密はいろいろと問題があった」って、そのとおりですね。「地域のしがらみ」という言い方をしますけれども、しがらみは強くて、しかもおじさんとかが威張っていて、女性や若者はそこに居場所がなく周辺的に追いやられる。そういうところから離れたくて都会に出てきて、それが現代的な生き方だったわけですよね。

ところが、あまりにも行き過ぎたところがあって、だからもう1回「密」を作るという話になっているワケですけど。ただ、過去に戻ることじゃなくて、インクルーシブな密を作りたいということなんだと思うんですね。

地域のしがらみの中で、ともすれば周辺に追いやられていた人たちが主役になるから、そういうものが作れるワケです。

日本の地域にもいろいろあって、特に東北はわりと(その傾向が)まだ強いですけど、寄り合いに行ったらテーブルに座るのは男性たちで、女性たちは壁にへばり付くように座って、寄り合い中はひと言もしゃべらないですよね。

だけど終わったら、みなさんの(会話の)花が開くみたいになるワケです。その人たちが主役になるのがこども食堂です。自分たちの運営する場としてやるので「みんなが関われる場所」「みんなに役割がある」「はじかれる人がいないような場所にしたい」という思いでやられる。

「密」と「疎」でいうと同じ「密」になっちゃうけども、よりインクルーシブな、バージョンアップした「密」を作りたいという思いで、みなさんやられているんだと思いますね。

オンラインでも「深い話」をしていくことを避けない

司会者:湯浅さん、ありがとうございます。納得ですね。もうひと方、ご質問いただいていますね。

「コロナ禍で、対面ならではの雑談から発見される課題や思わぬ共通点などが生まれにくくなっていると思います。そんな中で、オンラインでもできる、または意識するといいコミュニティ・オーガナイジングの方法はありますか? また、現在オンライン上でどのような、こども食堂支援が行われていますか?」とご質問をいただいています。これは、どちらからお答えいただけますでしょうか。

湯浅:鎌田さん、さっきの話じゃない? オンラインのワークショップでうまくいっているって。

鎌田:ああ!(笑)。なるほど、そうですね。オンラインのワークショップでも、ストーリーのコーチングとか関係構築とか、すごく深い話ができるんですね。だからひるまないで、どんどんやっていったほうがいいと思います。

それを逆に求めているって、今、人と会えないので心のつながりがすごく減りますよね。逆にオンラインでもそれ(深い話)ができるとなると、強いつながりが生まれると思うので、深い話をしていくことを避けないのも大事だと思います。

あと、オンラインツールがいろいろあるので、Zoom以外でもお話する方法があると思います。アメリカで、アバターを使っていろんな人とパーティできるアプリがあるんですよね。そういうのもうまく使って、楽しい会もしながら、真剣に話す会もするのはどうかなと、ご質問を聞きながら思いました。

オンラインでこども食堂支援を行うには、まずインフラ整備から

湯浅:(質問の)1点目に関しては、私も関わっている「むすびえ」という団体でも、エンカウンターワークショップをオンラインでやり始めていますけれども、手探りを始めたところなので、まだまだこれからです。

2点目。「オンライン上でどのような、こども食堂支援が行われていますか?」ということで、ありがとうございます。オンライン食事会をやることもないワケではないんですけれども、まずインフラを整えないといけない。中には「Wi-Fi環境がありません」という人もいて、こども食堂の人たちも公民館なんかでやっているわけですけど、地域の公民館はWi-Fi環境がまず整っていないんです。

インフラ整備から始めないといけないから、すぐには無理なんですね。我々もいろんな業者さんと組んで、タブレットを送ったりWi-Fi機器を無料貸し出ししたりしているんですけど、まあ「ちょっとすぐには」という感じ。慣れていない方には使い方も伝えてないといけないので、簡単にはできないんです。

今、どちらかというと力を入れているのは、リアルで会うことを何らかのかたちでできないかと。現場の模索もそうです。一堂に会してみんなで食事をするのがどうしてもまだ厳しい人たちは、お弁当や食材を配布したり。何とかしてつながり続けようと、みなさんがんばっておられるので、そこを応援していく。

去年と今年の緊急事態宣言の違いは「学校がやっている」こと

湯浅:あるいは、この1年間の症例の蓄積の中で、子どもはある意味コロナに強いことがわかってきているので、今回の緊急事態宣言下でも学校はやっているワケですよね。去年の緊急事態宣言下と今年の一番の違いは、「学校がやっている」ことです。

なんで学校がやっているかといったら、学校では感染がしづらいからですね。子どもは(コロナが)うつりにくい、うつしにくい、重症化しにくいことが、世界の症例からわかってきている。専門家の方たちが「学校閉鎖をしても、市中感染を抑える効果は少ないです」と散々言われているので、文科省も今回は(学校を)開くことになっているんです。

こども食堂も子ども中心の集まりであれば、基本的には開いてもいいはずなんですよ。だけれども、地域がまだまだ学校と同じようには見てくれないという問題もあって。

それを何とかしようというので、こども食堂の人たちが自分で点検できるシートを、日本小児科学会さんという専門家の方たちと一緒に作って、自分で自分たちの場を点検できるようにしました。

自分たちである程度の対策が取れているとなったら、こういうマークを貼れるようにしていて。これは厚労省も後援してもらったんですけど、そういう(取り組み)のがより具体的に伝わるようにするために、30分くらいの番組も作りました。こういう番組を見てもらいながら「ああ、なんだ。自分たちも大丈夫なんだ」と思ってもらう。関心があればぜひ見ていただきたいです。

我々としては、別に(こども食堂を)開かなきゃいけないとか、やっちゃいけないみたいなことはどっちも言わないんですけど、開きたいと思うんだったら開けるように応援する、というところですね。

質問者3:詳しくお話しいただいて、ありがとうございました。

湯浅:ありがとうございます。