2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
江成充氏(以下、江成):武田さん、Rettyさま側の組織変革や遷移も含めて、スドケンさんに触れていただいた「ご自身の今の振る舞いと組織の変化」も交えながら、お話を伺いたいです。
武田和也氏(以下、武田):今、沿革のスライドを出していただいていますけど、これが月間の利用者数の推移です。こう見ると、なんか順調に伸びていたように見えるんですけれども。
江成:右肩上がりですね。
武田:そうですね。この10年間でいろいろとあったなという。今のスドケンさんの話を踏まえて、もちろんいくつか自分の考え方の変化は大きくあるんですけれども。
代表的なところでいうと、もともとうちの組織は最初の2年ぐらいは5~6人でやっていて。そこから毎年だいたい10〜20人くらい採用しました。直近だと新卒もドカッと20人とか採用したので、今は130人くらいの組織なんですね。
そんな状況なんですけれども、2014年〜2015年くらいのタイミングで、大きな変化があって「組織の階層」を明確に作ることにしました。もちろん基本的にフラットな組織なんですが、それまではマネージャーとか部長みたいな、階層をあえて作らなかったんですね。
ずっと開発が中心の組織なので、みんなフラットなほうが働きやすいし。実際フラットな状態で今でも働いてはいるんですけれども「マネージャーなんていう制度はいらないだろう」とずっと思っていたんですよ。本当に。
江成:(笑)。
武田:(笑)。Googleの本とかを読んでいたら「昔はそうだったと書いているしな」みたいに思っていて(笑)。
Googleもそれは「どうやら失敗だった」と認めているらしいんですけど。もしかしたらKaizen Platformもそういう思想なのかもしれないんですが、一人ひとりがちゃんと自立して、みんなが自然と考えて動いていくことができれば、組織って階層を作らなくてもぜんぜん回っていくと思っていたんですよね。というので、2015年くらいまではマネージャーなどを作らずにやってはいたんですけども。
やはりそうするとどうしても、いろんな情報共有の問題や一体感の問題が、2015〜2016年くらいにどんどん出始めて。結果的に、モチベーションサーベイとかも入れていたんですけれども、やはり大幅にスコアが低くなった時が1回あったんですね。51くらいまで下がったことがあって。
それで「ちょっとこのままだとヤバいな」というところもあって、ちゃんと組織にマネージャーや評価制度の仕組みを入れて運営するようにしました。今までは上長やマネージャーでもなかった人が、いきなり自分のマネージャー(になって)評価されることになるので、最初は戸惑うことも多かったです。
江成:確かに。
武田:最初はうまく導入が進まなかったところがあったんですけど、そこから1年〜1年半くらいである程度慣れて、徐々に組織化ができた状況ではありますかね。
須藤憲司氏(以下、須藤):フラットな状態でほころびが出てきたのって、(従業員が)何人ぐらいの時だったんですか?
武田:40~50人くらいですかね。
江成:なるほど。
須藤:それ、僕もわかるというか。30人くらいって、ぶっちゃけフラットのほうが良かったりしません?
武田:いやぁ、そうなんですよね。
須藤:50人くらいになってくると、急にコミュニケーションの複雑度がすごく増してきて、明らかにハブになる人がいないといけないですよね。
武田:本当にそのとおりですね。ちゃんと言語化してくれるとか、解釈して伝えてくれる人は必ず必要になるので。50人とかになると、評価の納得性とかも最初はなかなか難しいところもあったりするので。
須藤:評価って、50人の時とかやってた?
武田:評価はその頃はやっていました。基本的には社長がやるかたちではありましたね。もちろん見られているところもあるんですけれど、ただ全員が全員、完全にちゃんと細かくは見られていないところも当然ありましたが、そこまで不満はなかったと思います。
江成:慣れるまで1年から1年半ぐらいかかったとおっしゃっていましたが、今までフラットだった組織から、ある種、評価者・非評価者に分かれていた時に、多少関係性がギクシャクしたりとか。
今考えると、もしかしたらギクシャクも必要なプロセスだったのかもしれないんですけど、もう少しギクシャクする期間を短くしたりとか。そういう組織体の方々が、評価者・非評価者に分かれて組織を作っていく時に「この辺に気を付けたほうがいいよ」とか、武田さんが当時のご自身にアドバイスするとしたら、どの辺りがポイントになりますか?
武田:やはり改めて思ったのは、ちゃんと王道というか、一般的なやり方をやったほうがいいんだろうな(笑)。
(一同笑)
武田:本当に、本当に。
江成:(笑)。スドケンさん、めっちゃ頷いてる。
武田:最初はいろいろ「そんなのイケてないよ。古いよ」とか思いながら。世の中にごまんとある会社が、そういうふうに(王道なやり方で)やっている理由がよくわかってくると。結局、世の中の多くの会社が取り入れている方法は基本的には正しいんだなと気が付きましたね。
江成:一方でスドケンさんもおっしゃっていましたけど、従業員が30人くらいまでは、わりとフラットなほうがやりやすいんですね。
須藤:正直たぶんその時って、僕らも評価とかすらしていなかったから。評価制度を入れたのは、たぶんもうちょっと後です。
江成:へえ。
須藤:そういう時はむしろ、事業に邁進していたほうがいいんで。組織的にも、とにかく事業に向き合う状態でしたね。
江成:それって、半年や1年の査定というか、給料を上げる・下げるといったこともしていなかったんですか?
須藤:そうですね。振り返りとかはやっていましたけど、あまりやっていなかったですね。
江成:それでも社員からは、そんなに違和感の声も出ず?
須藤:いやわかんない……僕が気付いていない可能性が高いかも(笑)。
(一同笑)
江成:気付いてなかったのかもしれないですけど。
須藤:忙しすぎて、ちょっと(社員の声を)聞いていなかった可能性はあります。
江成:確かに、作っていくタイミングだと(忙しい)。
武田:評価の話ですごく大事な観点だと思うのが、特に成長期。もちろん今もそうだと思うんですけど。変な話、成長期の30〜50人ぐらいまでのフェーズは、会社の成長に従ってちょっとずつでもいいので、みんなの給料を自動的に上げていく仕組みがあれば何とかなるんですよ。
そこであえて評価で厳しくしようとして、C評価やD評価を付けてコミュニケーションコストがいっぱい発生してしまうよりは「一律で毎年いくら上げる」くらいのほうが、スムーズにはいきます。もちろん、働いていない人がいたらそこはしっかり動くべきですが、組織の問題を起こさないように、事業の成長を最大化できていくようなフェーズだろうなと思っているので。
もうちょっと(会社の規模が)大きくなってくると、ちゃんと制度を取り入れてやっていったほうがいいと思うんですけれども。究極はそのくらいわかりやすく「みんなが何かしら(給料が)上がる」くらいの状態にしたほうが、うまくいくのかなと思いますね。
須藤:制度って、入れると運用するのが大変だもんね。
(一同笑)
江成:そうなんですよね(笑)。
須藤:事業のビジネスモデルがしっかりしてくると、初めて運用できる。しかもほとんど、制度の設計以上に運用が肝じゃないですか。だから運用するフェーズに入らないと「とりあえず制度だけ入れたんだけど、運用が雑だからみんなからすげぇ不満が出る」とかが起きますよね。
武田:本当にそうです。会社も「全員一律5万円アップ」とかにしたほうが、本当にうまくいくと思いますよ。
江成:さっき、コミュニケーションコストの話もありましたもんね。
江成:けっこう質問をいただいていて「めちゃくちゃ生々しくて参考になります」というご感想と共に、これは具体的なんですが「10名を超えた時点で急に組織課題が増えてきました。ミッション・バリューの設定や評価基準の設定の基本的な施策以外に『この施策が効いた』という具体的な例があれば教えていただきたいです」と。ちょうど今、お困りのタイミングなんだと思います。
武田:なるほど。
須藤:10人を超えたくらいだったら、1on1で話す時間を作るとか。ミッションを作っていたかな。
江成:確かに、この方が抱えられている組織課題が何かによって、打ち手は変わりそうです。さっき武田さんは2015年ぐらいのタイミングだったとおっしゃっていましたけど、組織(の人数)が少しずつ増えていく中でキーポイントになったタイミングとか「あの時、組織が壊れたな」「あの時はうまくいったな」みたいなタイミングでの課題と打ち手。アーリーステージ(起業直後の時期)に寄せてお伺いできたら、もしかしたら参考になるかなと思います。
武田:そうですね。ミッションやバリューについての話に近くなっちゃうんですけども、うちの会社はバリューをだいたい2年間に1回程度、更新していました。
バリューを設定するやり方として、全員で合宿に行く。特に10人くらいだとぜんぜん行けると思うので、合宿にみんなで行って。いろいろ意見を出しながら、組織の問題と「2年後ぐらいに目指したい事業ってこんなかたちだよね」という目線合わせをやるじゃないですか。
組織の課題を解決するものとしてバリューを設定するワケなんですが、これが2年くらい経ってくると、また組織も大きくなって新しい組織課題のフェーズになるので。そこでもう1回更新をしますよ、という。全員でそこをアップデートし続けていたのは、すごく良かったですね。
須藤:確かに。僕も思い返せば、毎月オフサイトミーティングというか、合宿をやっていて。毎月20営業日ぐらいのうち、1日は全部の手を止めて全員集まって「会社の1年後どうする?」「2年後どうする?」「こんなことやりたいよね」「今の足元どうだっけ?」というのを毎月やっていましたね。
江成:いつぐらいまでやっていたんですか? 人数規模なのか、事業フェーズなのか。
須藤:頻度は下げましたけど、今も四半期に1回やっています。
江成:へえ! 目線合わせはかなり注力されてやっているんですね。
須藤:したほうがいいと思います。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには