「シンプルに答える」「質問が理解できなければ聞き返す」

石倉秀明氏(以下、石倉):僕はぜんぜんアプローチが違うかもしれない。

寺田有希氏(以下、寺田):えっ、それ聞きたいです。

石倉:プライベートの場合の年上というか目上の方は、ちょっと違うなと思うんですけど、仕事においての目上の方になった時に、特に会社で役職が上に行けば行くほど、いきなりポンと、端的に質問だけしてくる人って多いじゃないですか。

寺田:あぁ~、はい。

石倉:何を聞かれているのかわからないけど、なんかミスをしないように、ちょっと遠回りに言って、無難な回答を探りにいくようなことって多いじゃないですか。僕もちょっと“大物”と呼ばれるような方たちとお仕事するんですけど、そういう人ほど求めているのって、普通に(自分がした)質問の答えだったりするんです。

年上とか目上の人とか役職が上の方から聞かれた時に「シンプルに質問に答える」というのは、まず1個、絶対にやっている。

寺田:考え方は、面接と一緒ですね。

石倉:面接と一緒。なんか役職が上の人ほど、わりとその傾向を強くしている気はしている。それと「わからない質問に、わかった気で答えない」。

寺田:それは、私も同じことをしてます。知ったかぶりはしないです。

石倉:「ちなみに、すみません。ちょっとわからなかったんですけど、どういうことですか?」とか「これって、こういうことですか」と絶対に聞くのが2つめ。

「仕事なんで」は、めちゃくちゃ最強の言い訳

石倉:3つめは、いうても仕事なので、目的や利害関係があってやっているじゃないですか。なので、究極わかりあえなくても、仕事に必要なコミュニケーションがとれていればいいということを、僕の中で1つ持っていて。

「仕事なんで」ってめちゃくちゃ最強の言い訳なんですよ。「仕事なので、失礼かもしれませんが言いますけど」と言うと、だってこれやらなきゃいけないんでという。「仕事なんで」を言い訳にして伝えるべきことを伝えることは、けっこうやってるかもしれないです。

だから、僕(の目上の人とのコミュニケーション方法)はその3つかな。「仕事なんで」って最強の言い訳だなって気づいたんですよね。

寺田:それはいつぐらいに気づいたんですか? 

石倉:正直気づいたのは、DeNAという会社にいた時だったと思います。たまたまお仕事の特性上、上司がこの間、社長を退任された守安(功)さんという方だったり、この間、経団連の副会長に内定された創業者の南場(智子)さんという方だったりしたので。特に南場さんとかは、世間的にはわりと大物なのですが、一緒に仕事をしている時に気づいたことかもしれないですね。

「別に全部が合ってるワケじゃないんだな」という気づきはけっこうあって。自分たちも合っていると思ってないけど、(部下には)言っていることもたくさんあるし、質問にただ答えてほしいだけのこともあるなと、薄々思っていたんですよね。

僕は、年上とか役職が上の人と話すことがすごく苦手だったんですよ。DeNAに行く前は、上司と仲良くなったり関係を構築するのがめちゃくちゃ苦手だったんですね。基本は上司とけんかしかしないという。

寺田:けんかしてたんですか? 

石倉:けんかするというか、(上司が)言うことを聞かないから。僕もわかってもらおうと思ってないので、関係を構築しようと思ったことがなかったんですよ。ある意味、捨ててたんですよ。

でも、本当に経営陣と呼ばれる人と仕事をすることになった時に「あ、なんかわりとシンプルなことなんだな」と気づいたので、そこから目上の方への苦手意識がなくなったんですよ。僕、もともとは目上の方がめちゃくちゃ苦手です。それで諦めてたんですけど、わりとシンプルなことだったなと。

大物はみんな“大物的に扱われること”を嫌う

寺田:石倉さんのおっしゃっていることがめちゃめちゃわかるんですけど、私がその境地にいけない理由って、たぶん特殊な仕事をしていて。自分がタレントで、嫌われたらもう終わりだから……。その「仕事なんで」というキラーワードが……。

石倉:ちょっと使えないかもしれないですね。

寺田:そうなんですよ。だから、たぶんその人との関係をちょっとうまく生かすほうに、頭がすべてシフトしてるんだと思います。

石倉:それは、個人でやられていることもあるかもしれないですけど。でも共通点として思ったのは、大物とか目上の方は特にそうですけど“大物的に扱われること”はみんな嫌いじゃないですか。

寺田:そうなんです! 

石倉:実は普通に扱ってほしいじゃないですか。でも周りがそうしてくれないから、(相手が)普通に話してくれると、けっこう(目上の人も)普通に会話してくれるということになるなぁと思っていて。

寺田:それこそ意外と、意見を言われることは嫌いじゃない人のほうが多いので。

石倉:意外と、意見をぶつけ合いたかったりしますよね。

寺田:そう、そう、そう! “よいしょ”してほしいワケじゃなくて、昔みたいに意見交換がしたいんだと思っている人がけっこう多いので。目上だからって、ほいほい持ち上げなきゃいけないという思いは、私は一切捨てています。

石倉:確かに。中にはいらっしゃると思うんですよ、持ち上げてほしい人(笑)。それはしょうがない。

寺田:そうですね! でも、それはたぶん空気感で伝わると思います。なんか頑固そうな感じとか「俺を褒めろよ」感って、一番出やすいので。それ以外の人はたぶん思わなくていいだろうなって。

石倉:ほとんどの人はそう思わなくて、たぶん大丈夫ってことですよね。

寺田:はい。

仕事をする上で、基本的に人のことは無条件に信頼する

寺田:用意していたことがけっこう話しきれたかなぁという印象もあるので、何個か質問いきましょうか。「苦手な人への自分自身の心の開き方」。

石倉:難しいねぇ。

寺田:心、開きます? そもそも「この人嫌い、この人好き」という線引きって、けっこうしますか? 

石倉:あんまりないです。ただ「話が弾まないな」とか「考え方とか言葉遣いが苦手だな」という方は確かにいらっしゃる。そういう人とプライベートでお付き合いをするかというと、もともと苦手だし、自分からいこうとは思っていないですね。仕事は、さっきの最強の「仕事なんで」的なぐらいのお付き合いになるという感じかな。

寺田:じゃあ基本的に「心を開く」とかは考えない。

石倉:そうですね。苦手な方だと、あんまり考えないかもしれないですね。

寺田:そもそも苦手じゃなかったとしても、仕事関係とかにおいて「心を開く」って考えますか? 

ここまでのお話を聞いていると「仕事なんで」もそうですけど、心を開くという前に、もちろん成果が出せればいいワケじゃないですか。心を開いたからって仕事が成功するワケじゃないから。

石倉:そうですね。でも、立場が経営者だからっていうのもあるかもしれないですけど、僕は今、仕事をする上で基本的に人のことは無条件に信頼することにしています。疑ってもキリがないんで。

僕は信頼関係って2つあると思っています。自分が信頼をする立場の時と、自分が信頼される立場の時があるじゃないですか。

信頼する立場の時って、みなさん勘違いしているんですけど「信頼するかどうか」は自分で決められるんですよ。「信頼されるかどうか」は、自分でコントロールができないので、失礼がないようにはしようとか、期限を守ろうとは思うんですよね。それ(相手に信頼されるかの判断)は自分にはできないから。

でも、信頼するかどうかは自分で決められるから、僕は「信頼する」って決めたんです。会社をやっているんで、自分の頭の中で考えていることとか思うことは、全部言う。僕らの場合は、チャットのほうが多いと思いますけれど。

寺田:おもしろい!

「石倉さんが言いそう」ってなったら勝ち

 

寺田:若干違うんですけど、私が心がけているのは、全員のことを尊敬することです。

石倉:あぁ~、(信頼の)最上級な感じですね(笑)。

寺田:私の場合、本当に特殊で。それぞれができるスキルが本当に違うことのほうが多いから、たぶん「信頼」という言葉より「尊敬」がしっくりくるだけなんですけど。

石倉:お仕事柄、みんなプロフェッショナリティが違う上でチームになっているというところがありますよね。

寺田:そうなんですよ。だから、(私は)出る側のプロとして呼んでいただいていて、(スタッフは)制作する側のプロとして呼ばれていて。それぞれ違う畑で育ってきたプロたちだから、信頼ももちろんなんですけど、まずはその方たちがやってきたプロセスや、やっている仕事を尊敬しているかも。そうすると、伝えられることも多くなるなという印象は確かにあります。

石倉:そうなんですよね。僕は、その人の気持ちとか、感情とか、空気とかを読み解いたりするのがあまり得意ではないので、どちらかと言うと自分が思っていることや考えていることを全部言って、相手に理解してもらおうという気持ちのほうがすごく強いです。

だから僕の中で「石倉さんが言いそう」ってなったら勝ちなんですよ。なにか言った時に「うわ、言うと思った」ってメンバーが言ったら、勝ち。

寺田:ちょっとゲーム感覚でやってるんですか? 

石倉:ゲーム感覚じゃないですけど、僕が何か社内に向かってチャットした時やしゃべった時に「石倉さん言いそう~」「うわ、言うと思った~(笑)」となった時に、「あぁ、伝わってるな」と思って。

寺田:なるほどなぁ。

石倉:僕はもう、完全にそっちに(振り切っています)。けっこう昔の上司に言われたんですよね。「お前は、周りを知るんじゃなくて、知ってもらえ」と。「『あの人は空気読めないから、しょうがないよね』キャラの立ち位置にいけ」と言われてからは、特にそう思ってたりします。

寺田:これ、今日の序盤の話にもちょっと通じますね。

石倉:確かに。そうなんですよね。

アンチコメントがついても「この世界だけだ」って割り切れる

寺田:あと1問ぐらい何かいきますかね。「ネットの露出が多くなることで、日常生活や気分的に不便を感じること、ありますか?」

石倉:僕は露出が多いといっても、別に有名人ということでもないので、(不便に思うことは)ないかなぁ。

僕は、ゆうこすさんと何度かお仕事した時に言っていた言葉が、すごく真理だなと思っています。ゆうこすさんの「今より有名になる前、SNSですごい炎上した時に、USJに遊びに行ったら誰にも気づかれなかった。そんなもんなんだと思った」という言葉を聞いて「あ、なるほどな」と思って。

そういう話も聞いているからなのか、あまり不便や窮屈さは感じないですね。どちらかと言うと、会社という守るべきものがあるので、変な意見で炎上しないようにとは思っていますけど(笑)。酔っ払った時にツイートしないとか、子どもの顔を出さないとかぐらいかな。あまりないですね。

僕は逆にネットで人と交流して距離を詰めるのが得意なので、むしろ積極的に使いたいです。

寺田:(笑)なるほど。

石倉:あります? 

寺田:私も、正直そんなに不便を感じていなくて。というのも『ホリエモンチャンネル』でアンチコメントがぶわーってついてた時代とかも、もちろん心は痛めるし、傷つくんですけど、それで町を歩いても誰にも気づかれないし。例えばそれこそ、町で石を投げられることなんてないワケですよね。

石倉:ないですよね。投げられたらヤバいけどね(笑)。

寺田:でも、それほどまでに気づかれてないんだなって思うと「まぁこの世界だけだ」って、意外に割り切れるというか(笑)。

石倉:ヤフコメとか、ちょっとヤバい時あるじゃないですか。

寺田:私、ヤフコメがヤバいって知らなくて、この前見ちゃって。大打撃を受けて……(笑)。

石倉:でも、町を歩いて、なんか舌打ちとかされないから……。そうやって考えると、別世界なのかなってちょっと思う時ありますよね。

寺田:うん。あと、これぐらいでもそんなもんなんだから……。超目上、フォロワー数が多い人とかが、まだまだ上にいるから、自分は大丈夫って思う(笑)。

石倉:それはわかります。なんか堀江さんって、ガチで戦う時とかあるじゃないですか。それはすげぇなと思う。

寺田:それはまだちょっとできないなとは、正直思っちゃいますけどね(笑)。

石倉:そうですよね。僕も大炎上を経験してないからかもしれないですけど。

寺田:ということでちょっとお時間が来てしまいましたね。あっという間でした! めっちゃ楽しかったです。

石倉:いやぁ、楽しかったです。こちらこそ、ありがとうございました。

寺田:ありがとうございます。質問にも本当は全部答えたかったんですけど、ちょっと時間が足りなくて申し訳ないです。楽しんでくれてたらいいなと。

石倉:何か1個、明日から使えるものがあったら。もしかしたら明日から面接で、みんなこの2問しか聞かないかも。

寺田:(笑)。本当にそうかもしれない。

石倉:明日から面接でこの2問を聞かれたら、ここに参加してた人なんだなっていう。

寺田:そうですね! いきなり上司のこととか褒め出すかもしれない(笑)。

石倉:褒め出した上で、優しく言い始めるかもしれない。

寺田:なるかもしれない(笑)。何か明日から使えるスキルが生まれたらいいなと思っての対談だったので、ぜひ何か1つでも明日から試していただけたらいいなと思います! ということで、みなさんご覧いただきまして、ありがとうございました~! 

石倉:ありがとうございました。