2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大澤陽樹氏(以下、大澤):もう1つは社員の相互尊重に直接つながってるかわからないんですけど、コロナ禍でも多少リスクを持ちながらも仕事しなきゃいけないエッセンシャルワーカーというか。例えば飲食店もそうですし、スーパーマーケットやドラッグストアとか、僕たちが生きていくうえで必要不可欠な業界ってあるじゃないですか。でも、企業なので利益も出さなきゃいけない世界です。
なので、利益も出しつつ最大限に従業員の命や健康を尊重する対策をしてたり、(状況の変化に対して)運動神経よく反応できていた。経営と従業員の生活を両立できてる会社は、けっこうこのスコアが上がってたりしましたね。ちょっと社名は言えないですけど、ドラッグストアなどもけっこうこの1年で評価が分かれました。
江成充氏(以下、江成):あぁ、そうですか。
大澤:やっぱり現場ですごく対策してる。あとこれも、本当は社名とか言いたいんですけど……。
江成:大澤さん、口パクで。
(一同笑)
大澤:いやいや(笑)。誰もが知ってる百貨店とか、何社かあるじゃないですか。如実に分かれましたね。そういうの(従業員の健康や生活)を無視して「『売上を追え!』みたいな大号令がかかった」といったクチコミが書かれてる会社とかもあって。そこはやっぱりすごく点数が下がってましたし。
もちろん業績も追うけど、例えば免疫疾患がある従業員の方から内勤にするような配慮とか。利益を稼ぐ中でも最大限できることをやろうとしてた会社は、逆に非常にスコアが上がってたりしましたよね。
江成:今の2つの業界、例えばドラッグストアや百貨店業界も、実は2015〜2017年あたりで業界再編があったり、合併とかがあって。もともと文化や風土がちょっと混沌としているタイミングで、コロナがきてしまったところがあるので。
大澤:確かに。
江成:もしかしたらさっきおっしゃってた“運動神経”や“反射神経”がいいところが、ランキングが上がってきたかもしれませんし。一方で、合併してPMIの段階で“準備運動”というか、「文化をちゃんと強くしよう」というところが、結果として上がってきたのかなと。
大澤:そういう意味で言うと、サイバーさんとかはけっこうすぐのタイミングで「月曜日はリモートにしよう」みたいな。
石田裕子氏(以下、石田):そうです。
大澤:いろんな会社がまだ「どうしよう、どうしよう」って悩んでる時に、藤田(晋)さんとか、けっこうすぐに強烈に発信したじゃないですか。あれとか、“運動神経の良さ”の最たる例なんですよ。
石田:おもしろい。“運動神経”って言葉いいですね。変化に対してどう対応するか、会社としての方針をいかに早く打ち出していくかという反射神経って、確かに従業員が見ているポイントだと思います。
「どうなってるんだかよくわかってない」「経営層は何してるんだろう」という会社って、やっぱり社員の満足度って普通に下がっていく。確かにお話をお伺いしてて、本当にそのとおりだなと思ってたんですけど、難しいのが、早すぎてもよくないんですよね。
江成:確かに。
大澤:あぁ、わかる(笑)。
石田:表現が難しいんですけど(笑)。「とりあえず波に乗っておこう」じゃないけど、「時代の流れ的に今はこういうふうに言っといたほうが得だ」という損得で動くようなところって……別にどこか(特定の会社)ということではなくてですね。損得だけで考えて、「会社のPRもセットで一緒にやっちゃえ」「こういうこと言っとけば、今バズるぞ」みたいな(笑)。
そういうところは今、もしかしたらちょっと方針転換に苦しんでたりするかもしれないですよね。「言っちゃった手前やらなきゃいけない」ということになってしまってるんじゃないかなと勝手に推測してるんですけど。なので流れを的確に捉えるというか、タイミングもすごく大事ですし。
最後は、経営(層)がある程度トップダウンで決めなければいけないんですけど。どういう人がいてどういう悩みがあって、何に困っていてっていう、社員の声を聞くとか、障壁の内容を取り除く動きとセットでやっていかないと、ただのパフォーマンスになってしまいます。
さっきの採用の話ではないですけど、「誰もが活躍できます」「私たちの会社は素晴らしくて欠点は一つもありません」って、そんなわけない、みたいな(笑)。
江成:「そんなわけない」(笑)。
石田:(笑)。言ってることと実態に乖離があってはいけないと思ってるので、今お話をお伺いしていて、そこらへんもおもしろいなと思いました。運動神経も大事だけど、タイミングや方針の中身も当然大事という。
江成:石田さん、それは御社だと「Geppo」でいろいろ調査したり、改善していくのに使われていますよね。
石田:そうなんですよ。Geppoって月次報告の略で、月1回社員の声をデータベース化しているシステムがあるんですけど。社員のコンディションを毎月アンケートで答えてもらうんですが、「雨」「雨」って続いて「晴れ」になったら「コンディションが良くなった、なにかが変わったんだ」っていう。プラスに転じた理由を把握して、良いやり方があればそれを横展開していけるかたちになるといいなとも思ってます。
逆も然りですよね。「すごくコンディションが良い人が急に悪くなったのは、なんでだろう」とか。リモートワークになったことでコミュニケーションの量が減って、人間関係があまりうまくいってない人は「雨」になってたり。そういう変化をちゃんとリアルタイムに捉えて、すぐに手を打つ。これは相当アナログな(やり方な)んですけど。
大澤:経営(層)とかも見てるんですか?
石田:役員会でも社員の声一覧を見て、よく議論しています。
大澤:なるほどねぇ、それが強いよなぁ。
江成:確かに月報を役員会で見るとか、なかなか(やらないと思います)。
大澤:すごいですよね(笑)。
石田:もちろん全部は(データを)持っていかないんですけど、部署ごとにサマライズしたものだったり。あとは特に気になる声をしっかり拾ってリアルタイムに解決していく。
そうすると、社員も言った甲斐があるというか、「意見が反映された」「声を拾ってくれた」ということにもつながる。それがこの「風通しの良さ」みたいなスコアにもおそらくつながっているのかなとも思いますけどね。
大澤:なるほどね。
江成:確かにこれは、ポジティブなスパイラルになりますよね。相互尊重してもらえて、経営(層)とメンバーとの風通しというか、透明度が高くて。それで士気が上がるから、新しい事業をやりたいとも思うし。ポジティブループが生まれてくるっていう、素晴らしい(流れがある)。
石田:ありがとうございます。今のも私が言ったことにしていただいて(笑)。
(一同笑)
石田:「ポジティブループ」っていいですね(笑)。
江成:これはズルい(笑)。
石田:点じゃないんですよね。
江成:そうですよね、つながっていきますよね。
大澤:今、質問がきています。1個目が、たぶん今の話につながると思うんですけど。「フィッティングを重視していく中で、人事のあり方をどうしていくか」。まさに今のGeppoの話もそうですし、僕も人事採用をやっていたのでわかるんですけど、ヘッドカウントを集めるという役割(だったところ)から、社内のインナーブランディングも大事じゃないですか。
一人ひとり会う人材が、その会社を体現してないといけないので。採用現場に出てくださる方へのトレーニングや、「らしさ」を表現・体験してもらうトレーニングといった、ふだんからの組織づくりも大事ですし。
そもそも会社の情報って、にじみ出ていくものじゃないですか。「こういう会社だよ」「運動神経のいい会社かどうか」とか。そういう意味でいくと、さっきのGeppoを使って常に経営に届けていく。採用マンの役割が「ヘッドカウントを集める」から、「どういう会社にしていくか」に。僕は「体臭」ってよく言うんですけども、やっぱりクセの強い会社って匂いがもう出てるんですよね。
でも、そのほうが採用効率が良くなると思っています。なので採用担当は採るだけじゃなくて、組織づくりまで役割を広げていくのが、今後大事になっていくかなと思いますね。
江成:だって受けてらっしゃる中で「サイバーさんぽいな」「リンクアンドモチベーションさんぽいな」っていう、「ぽいな」がなんとなくやっぱりありますよね。
石田:確かに会社によってありますよね。おもしろいのが、けっこう学生さんも言ってますよね(笑)。
江成:言ってますよね(笑)。
大澤:「サイバーっぽい」ってよく聞きます(笑)。
石田:誤解されてないといいなと思うんですけど(笑)。これも本当に採用広報の重要なところだと思うんですけど、間違って解釈されているというか、サイバーエージェントでもけっこうあるあるなんですよね。よく学生さんの言葉で言われるのが「ウェイウェイしてる」。すみません、私は年代的には言わないんですけど(笑)。
(一同笑)
石田:「ウェイウェイしてる」ってよく言われるんですけど、仲がいいとか風通しがいいとかはあるにせよ、「ウェイウェイ」はしてないんですよね。ただやっぱりそういう会社だと思って、「なんか楽しそうだから」「とりあえず受けます」みたいなことがあったりします。セルフスクリーニングがまだまだできてないところ……それは私たち企業側の責任なんですけども。
「こういう社風なんだよ」「こういう風土なんだよ」「こういう人が活躍できるんだよ」「楽しいけど、でも愚直に、苦しいこともたくさんあるんだよ」っていうことを、ちゃんとうまく伝えていかないと入社後にイメージとのギャップが出てきてしまいますよね。
大澤:大事。マジで大事。
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