日本特有のビッグマーケットに着目したビジネス展開

須藤憲司氏:Kaizen Platformの須藤と申します。「SBI証券様と歩んだIPOの道」ということでお話しします。ウェルスナビの柴山さんの内容(「時価総額700億円超の上場はいかにして実現したか 『FinTech SaaS』を掲げたウェルスナビ、大型IPO成功までの24ヶ月」)が本当に素晴らしかったので、私はどちらかというとリアリティのあるお話をできればと思います。

まず我々のIPOの話をするために、事業概要からご説明します。Kaizen Platformといって、お客様のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を支援する会社として事業を行っています。

我々のオファリングの概要を先にお伝えした上で、それをどんなかたちで進めてきたかをお話しします。ウェルスナビさんと同じく旧臨時報告書方式で行っておりまして、当社の場合は主幹事証券がSBI証券様で、ジョイント・ブックランナーとしてクレディスイス証券さんにお手伝いいただきました。オファリングの株式総数が576万600株で、総額が66.2億円。想定時価総額は177.4億円で進めてきました。

我々は、上場の1年以上前から機関投資家との対話を始めました。上場のかなり前から機関投資家にアプローチしたのは、ウェルスナビさんと同様です。

時価総額を高めるために、エクイティ・ストーリーは非常に重要だと思っていて。エクイティストーリーを作りながら対話を深め、機関投資家のみなさまに自分たちの事業をどう理解していただくかということを意識してきました。

続いて会社の概要です。当社は2013年にアメリカで創業し、2017年に日本法人にインバージョンをして事業を行ってきています。

インバージョンの理由はよく質問も受けるのですが、我々はSaaS事業から始めて、アメリカのSaaSの会社と同じようなKPIを使いながら事業を伸ばしてきました。そのうちに日本国内の事業が大きくなってきたため、インバージョンをして事業継続してきました。

事業について機関投資家に理解いただくためにどういうことをお伝えしなければならないのか、実際に機関投資家とのミーティングで対話をしながらエクイティ・ストーリーを作ってきています。

特に、海外の機関投資家にストーリーを説明する時には、国内のマーケットをご理解いただく必要があります。当社の場合は「DXに関する巨大アウトソーシング市場を狙う」と書いていました。

アメリカや中国、ヨーロッパなど海外の会社では、DXというと自分たちの会社の中で従業員を入れ替えながらエンジニアを採用して、インハウスでやっていくのが通例です。が、日本では労働法と解雇規制があるため、実際にDXを行う時に「従業員の中身を入れ替える」という構造にはできません。

「DXをやろうとすると、アウトソースのパートナーを使って実現しなければならないのが日本のマーケットである」ということ。これを丁寧に説明しないと、海外の機関投資家には我々が何をやっているかというのがまったく伝わらないんです。「どのような順序で説明していくと、自分たちのマーケットを魅力的に伝えられるのか」を意識してお伝えしています。

ミッションは「世界をKAIZENする」。これも「KAIZEN」という言葉が海外でも通じる日本語だということで、自分たちのフィロソフィーもアピールしながら説明しています。

では我々とほかのSaaSの会社さんとは何が違っていたのかというと、成長可能性資料のところに書いていますが、ひとつは「収益が出始めている」というのが大きな特徴です。売上の伸びと併せて、黒字に転換し始めているタイミングでロードショーを行うことで、業績をお伝えできています。

収益が伸びていることにはいくつか理由があります。ひとつは「収益性が非常に高い」ということです。

我々はアウトソース事業を行っていますが、単なるアウトソーシング、例えば人材派遣や請負、あるいはシェアリングエコノミー、クラウドソーシングの会社さんだと、テイクレートが20~25パーセントくらいになってしまいます。我々の場合はSaaSがしっかり入ることで、お客様からいただくプロジェクト費用のうち、半分以上は当社のテイクレートとして残ります。

もうひとつは、実は動画のビジネスがアカウントオープナーとしてうまくワークしているということです。CAC(顧客獲得単価)が低く、LTV(顧客生涯価値)は高いというビジネスを構築できています。この動画の取引をフックに取引のアカウントが急速に拡大していき、そのあとクロスセルが効いてARPU(ユーザー1人あたりの平均売上金額)が上がっていく……というストーリーをしっかりと訴求できたのが、我々の特徴です。

丁寧なロードショーを重ね、理想的な株価での上場を実現

実際の株価の推移については、想定価格を1,100円で出し、仮条件を1,100円~1,150円としました。公募価格は1,150円の上限いっぱいで決まり、そのあとの初値が1,170円でした。

逆に初値が高くつきすぎると、IPOとしては非常に悩ましいというか。会社の中に入ってくるお金、あるいは売り出していただいた投資家のみなさまに「しっかりとした評価がされていない」と思われてしまうと、初期の頃から支えていただいていたVCのみなさまへの責任とプレッシャーも感じていました。

公募価格プラス20円と、いいかたちで初値がつき、そのあと今日の終値ベースで1,737円。じわじわ上がっていくことを目標にしてIPOができました。これに関しては本当に「こういうふうにやっていきたいな」というイメージどおりに実現できたと思っています。

こちらは先日の決算発表で出した、12月末時点の株式の分布状況です。売り出し時の機関投資家による保有比率を非常に高く実現できました。特に機関投資家が約26.7パーセント、国内の機関投資家が7.1パーセントと海外が19.6パーセントと、約6割を海外の機関投資家に保有いただけています。それから一般の個人株主が10.6パーセントで、これも狙いどおりに形成できました。

先ほどの柴山さんのお話について、我々も考え方として似ていると思ったのが、まずロングオンリーの機関投資家に訴求軸をアピールしながら、自分たちの立っているマーケットと自分たちの事業をしっかりお伝えしたことです。

かつ、どんな投資家様に入っていただきたいかのリストアップもしていて、SBI証券様とクレディスイス証券様にそのアポイントをしっかりと入れていただけました。ロードショーの前から何回かお会いしている機関投資家様も含め、59本のロードショーのミーティングをしっかりと行ったおかげで、よいかたちで推移しました。

最後に、資料には載せていませんが、我々もこのように需要をうまく積み上げてくることができまして。実際にいわゆる一般の投資家の需要だと、我々の売出しに対して224倍くらい、機関投資家が21倍という需要で、合計でも120倍ぐらいの需要をブックビルディングでうまく積み上げることができたということで。

こちらはやり方として柴山さんたちと同じです。ただ、海外機関投資家を狙っていくとすると、上場の時価総額が177億だったので、我々のほうはけっこう小型ですよね。そのサイズの中で非常にうまく訴求ができたのではと考えております。

以上が私からのプレゼンテーションです。このあとのパネルディスカッションでいろいろお話できればと思っております。以上です。